『タイタンの逆襲』:2012、アメリカ
デミゴッド(半神半人)のペルセウスは怪物クラーケンを倒し、世界を救った。父である神々の王ゼウスは神の座を与えると申し出たが、 ペルセウスは人間として生きることを選んだ。彼は妻のイオが死んだ時でさえ、神の力を借りようとしなかった。あれから10年が経ち、彼 は一人息子のヘレイオスを育てながら、漁師として静かに暮らしていた。彼は息子の前では、戦士としての姿を全く見せなかった。
ある夜、ペルセウスの元にゼウスが現れ、「災いが近付いている。人間は祈らなくなった。それによって神々の力が衰退し、タルタロスの 壁が破られそうになっている。さらに力が衰退すれば我々は死に絶え、クロノスが戻るだろう。世界は混沌に陥り、滅亡する。だが、力を 合わせれば解決できる」と助けを求めた。しかしペルセウスは「それは神々の問題だ」と告げ、関わることを望まなかった。
ゼウスは次兄のポセイドン、息子のアレスを伴い、冥界へ赴いた。彼は長兄のハデスに「過去は忘れよう、団結するんだ」と呼び掛け、 タルタロスを修復するための協力を要請する。しかしハデスは恨みを忘れておらず、手下の魔物たちに襲撃を命じる。ポセイドンは重傷を 負い、その場に倒れ込んだ。アレスは密かにハデスと結託しており、ゼウスを殴り倒して彼の武器であるサンダーボルトを奪った。
タルタロスの壁が破られ、魔物のキメラが地上に飛び出した。ペルセウスの住む漁村にもキメラが襲来し、村人たちを次々に殺害する。 ペルセウスはキメラを退治した後、世話になっている老女クレアから「貴方には分かってるはずよ」と告げられる。ペルセウスが「息子 には父親が必要だ」と言うと、彼女は「分かってるわ。貴方は奥さんに誓った。でも貴方には力を使う義務があるわ」と述べた。
ペルセウスはゼウスと話そうと考え、ヘレイオスを連れてアイドル山の寺院へ出向いた。ペルセウスがゼウスに呼び掛けると、瀕死の ポセイドンが出現した。彼はペルセウスに、ハデスとアレスがクロノス側に立ったこと、神々が姿を消したこと、ゼウスがタルタロスに 幽閉されていることを伝える。ポセイドンは「もう一人のデミゴッド、私の息子であるアゲノールを見つけ出せ。アンドロメダと一緒に いる。堕神の元へ案内させるんだ」と語って三つ叉の矛を託し、塵となって消えた。
ハデスはゼウスに、自分たちが不老不死になれるという条件でクロノスと取引したことを明かす。彼はゼウスの力を奪い、クロノスを解放 しようと目論んでいた。ペルセウスはヘレイオスをクレアに預け、天馬ペガサスに乗って村を後にした。彼がアンドロメダ女王のいる 野営地に到着すると、キメラとの戦いで多くの兵士が犠牲となっていた。アンドロメダの家臣の一人が神に祈ろうとするので、ペルセウス は「アレスは敵になっている」と教える。「だったら和平を結びます」と家臣が言うので、ペルセウスは呆れ果てた。
アンドロメダから意見を求められたペルセウスは、「解決する方法がある」と告げる。ペルセウスはアンドロメダに案内してもらい、投獄 されているアゲノールの元へ行く。泥棒のアゲノールは、王冠の宝石を盗もうとして捕まっていた。ペルセウスが「お前の父親は死んだ」 と教えても、彼は反抗的な態度を取った。しかしペルセウスが堕神の元へ案内するよう説得すると、アゲノールはアンドロメダに釈放を 願い出た。アンドロメダは承諾し、アゲノールの求めに応じて船を用意した。
ペルセウス、アゲノール、そしてアンドロメダと彼女の兵隊は、船で出航した。アゲノールは「見つける相手はヘパイストスだ」と一行に 教える。ゼウスのサンダーボルト、ハデスの槍、ポセイドンの矛は、全て鍛冶の神であるヘパイストスが作った武器だ。ペルセウスが矛を 渡すと、アゲノールはそれを使って船の向きを島の方へ変更した。島に上陸した一行は、一つ目巨人のサイクロプス3兄弟に襲撃される。 ペルセウスが一人を昏倒させてポセイドンの矛を構えると、残る2人は戦闘態勢を解いた。
ペルセウスはサイクロプスに案内され、ヘパイストスの住む洞窟に到着した。ペルセウスゼウスを助け出す助力を要請すると、彼は軽口で 受け流すした。荒っぽい態度で一行を拒絶したヘパイストスだが、アンドロメダが低姿勢で助力を求めると態度を変える。ヘパイストスの 妻アフロディーテに似ていたからだ。ヘパイストスは、タルタロスは自分が建造したものであり、秘密の抜け穴を用意してあると語る。 巨大な迷宮を抜けると、タルタロスの中心部まで行くことが出来るという。
ペルセウスたちがヘパイストスの案内で迷宮の入り口までやって来るが、そこにアレスが現れた。アンドロメダの侍女コリーナが彼に祈り を捧げたからだ。アレスが兵士たちを次々に抹殺していく中で、ヘパイストスは入り口の扉を開けた。アレスの攻撃によって兵士は全滅し 、ペルセウス、アンドロメダ、アゲノールも歯が立たない。ヘパイストスはペルセウスたちを迷宮に入れるため、アレスに立ち向かって 時間を稼ぐ。ヘパイストスは命を落とすが、その間にペルセウスたちは迷宮へ入り、扉は閉じられた。
アゲノールはヘパイストスの地図を使って迷宮を抜けようとするが、何度も行き当たりにぶつかってしまう。やがてペルセウスたちは、 迷宮が絶えず形を変化させていると知る。3人は猛スピードで迫る壁に押し潰されそうになり、ペルセウスは転落する。ヘレイオスの幻が 通り過ぎたので、ペルセウスは後を追う。彼は迷宮の怪物ミノタウロスに襲われるが、戦いの末に仕留めた。ペルセウスはアンドロメダ、 アゲノールと合流した。
ゼウスはハデスに、彼を追放したことを謝罪した。そして「私はお前を許す。お前にも良心があるはずだ。私を解放しろ」と持ち掛けた。 そこにアレスが戻ってハデスを殴り倒し、「もう止められん」とゼウスに言い放つ。ハデスはアレスに飛び掛かり、揉み合いになって崖下 に転落する。ペルセウスたちはゼウスの元へ辿り着き、矛を使って彼を解放しようとする。そこへアレスが舞い戻り、ペルセウスたちに 襲い掛かる。しかしハデスが駆け付け、アレスを妨害した。
解放されたゼウスは、ハデスに「一緒に来い」と呼び掛ける。ペルセウスたちは衰弱しているゼウスを連れて、タルタロスから逃亡を図る 。アレスはハデスの槍を投げ、ゼウスの背中を突き刺した。ゼウスはペルセウスに呼び掛け、ホセイドンの矛とハデスの槍を合体させて 地上へ瞬間移動する。アンドロメダ軍の集結する野営地へ運ばれたゼウスは、ペルセウスに「クロノスが迫っている。私にはそれを止める 力が残っていない」と弱々しく述べた。
ゼウスはペルセウスに、「お前は息子のために戦え。クロノスを倒せるのは3つの槍。それを使いこなせるのはお前だけだ」と語った。 だが、まだサンダーボルトがアレスの手中にある。ペルセウスはアレスに呼び掛け、アイドル山の寺院での決闘を要求した。アレスが承知 したので、ペルセウスはペガサスで寺院へ向かう。するとアレスはヘレイオスを拉致しており、「父親が死ぬ姿を見せるためだ」と不敵に 言い放つ。ペルセウスはアレスに戦いを挑むが、圧倒的な力の差を見せ付けられてしまう…。監督はジョナサン・リーベスマン、原案はグレッグ・バーランティー&デヴィッド・レスリー・ジョンソン&ダン・マゾー、脚本はダン・ マゾー&デヴィッド・レスリー・ジョンソン、製作はベイジル・イヴァニク&ポリー・ジョンセン、製作総指揮はトーマス・タル&ジョン ・ジャシュニ&カラム・マクドゥーガル&ケヴィン・デラノイ&ルイ・ルテリエ、撮影はベン・デイヴィス、編集はマーティン・ ウォルシュ、美術はチャールズ・ウッド、衣装はジェイニー・ティーマイム、視覚効果監修はニック・デイヴィス、音楽はハヴィエル・ ナバレテ。
出演はサム・ワーシントン、リーアム・ニーソン、レイフ・ファインズ、ロザムンド・パイク、ビル・ナイ、エドガー・ラミレス、トビー ・ケベル、ダニー・ヒューストン、シニード・キューザック、ジョン・ベル、リリー・ジェームズ、アレハンドロ・ナランホ、 フレディー・ドレイブル、キャスリン・カーペンター、マット・ミルン、ケット・タートン、スペンサー・ワイルディング、ファン・ レイエス、ホルヘ・ギメラ、アシエル・マカザガ、ダニエル・ガリンド・ロハス、ランベルト・グエラ他。
1981年の同名映画をリメイクした2010年の『タイタンの戦い』の続編。
監督は『テキサス・チェーンソー ビギニング』『世界侵略:ロサンゼルス決戦』のジョナサン・リーベスマン。
ペルセウス役のサム・ワーシントン、ゼウス役のリーアム・ニーソン、ハデス役の レイフ・ファインズ、ポセイドン役のダニー・ヒューストンは、前作からの続投。アンドロメダをロザムンド・パイク、ヘパイストスを ビル・ナイ、アレスをエドガー・ラミレス、アゲノールをトビー・ケベルが演じている。前作で、本来ならばヒロインであるはずのアンドロメダを脇に回し、イオというオリジナルキャラクターをヒロインの座に据えたため、 この続編でも影響が出ている。
本来ならアンドロメダはペルセウスの奥さんになるキャラなのだが、さすがに前作の流れで彼女を奥さんにするのは無理があるので、 ペルセウスはイオと結婚している。
ただし、そのイオも既に死去し、なんと前作から10年後になっている。
前作から2年後の公開作品なのに、なぜ10年後という設定にしたのか、その思惑が良く分からない。
どうしても息子を登場させたかったのか。
ただ、ペルセウスと息子の親子関係が、それほど活用されているとは思えないが。で、前作でヒロインの座をイオとかいう良く分からん女に奪われたアンドロメダは、今回は女王として登場する。
だが、前作とは演者が異なっている。彼女だけでなく、アレス、アポロン、アテナも前作から演者が変更されている。
その3人は前作でチョイ役だったし、アポロンとアテナに至っては本作品のどこに出ていたのかサッパリ分からないぐらいだから、別に 構わない(マジで、どこにいたのか全く分からん)。
ただ、アンドロメダの演者が違うってのは、かなり大きいぞ。
もちろん、悪い意味で。そのアンドロメダは今回、勇敢に戦う女戦士になっている。
なんか旧来のアンドロメダのイメージと全く違うんだけど、ヒロインを戦う女性に設定しているのは、そういう時代ってことなのかねえ。
ただ、それは受け入れるとしても、終盤になってペルセウスが彼女にキスをしちゃうのは、ありゃ何のつもりなのかと。
そこまでの展開で、ペルセウスとアンドロメダの恋愛劇なんて微塵も無かったじゃねえか。
そこでアンドロメダにキスしちゃうと、イオやヘレイオスに対する裏切り行為に思えてしまう。話の基本的な構造は前作と似ているが、前作より地味にして、さらに薄っぺらくした感じ。
前作の神々は聖闘士星矢から着想を得た鎧を着用していたが、今回は「力が衰退している」という設定のためか、布の衣装だけ。そして、 神々の威厳を全く感じさせない。
それがプラスに作用しているかというと、むしろ逆。
やっぱり、「偉大な神々が強い力を持っている」という状況の中で、「デミゴッドであるペルセウスが神々の差し向けたクリーチャーや 魔物と戦う」という図式にするべきじゃないかと。どれだけ神々が弱いのかというと、いきなりポセイドンが殺されて、ゼウスがボコられて捕まるぐらいだ。
まあ2人を襲った相手も神ではあるんだけどさ。
で、他にも多くの神々がいるはずだが、「姿を消した」の一言で終わらせてしまう。
最終的にはゼウスも死んでしまい、「そして神はいなくなった」ということになってしまう。
まあ3作目の可能性をゼロにしているという潔さはあるけど、その潔さと引き換えに失ったものは大きいように思えるぞ。今回はタルタロスの迷宮が登場するが、「迷宮でミノタウロスを倒す」って、そりゃペルセウスじゃなくてテセウスじゃねえか。
で、そのミノタウロスは、あっさりと仕留められる。
その直前にペルセウスは息子の幻影を見ており、ミノタウロスを殺そうとした時も「父さん、殺さないで」という声を耳にするが、まるで 怯まずに絞め殺している。
その前の「アンドロメダがコリーナの幻影を見る」という描写も含めて、そこの幻影や幻聴は、何の意味も持っていない。
それと、迷宮は絶えず変化していて、そこを抜け出すのは至難の業のはずなんだけど、実際は「なんか良く分からんけど、いつの間にか タルタロスの中心部に到着している」という感じになっている。「それを言っちゃあ、おしめえよ」ということになるんだけど、そもそも諸悪の根源はゼウスなんだよな。
彼が高慢な態度で身勝手なことを繰り返し、ハデスを冥界に追いやったりしていたから、そのツケが回って来ただけなのよ。
で、ギリギリになってから一応は詫びるんだけど、それも「俺も謝るからお前も許せ」という、すげえ偉そうな態度。
ところが、その途端にハデスはゼウスを許し、共闘しちゃうんだよな。なんちゅう簡単な奴なのかと。
そりゃあ神話の中の神々もチンケなことを色々とやらかしているけど、だからって、こんなに矮小化しなくてもいいでしょ。(観賞日:2013年1月28日)
第33回ゴールデン・ラズベリー賞(2012年)
ノミネート:最低助演男優賞[リーアム・ニーソン]
<*『バトルシップ』『タイタンの逆襲』の2作でのノミネート>