『007/美しき獲物たち』:1985、イギリス

イギリスが極秘に開発していたマイクロチップが、ソ連で発見された。調査を開始したジェームズ・ボンドは、チップの製造会社の社長ゾーリンに接近する。ボンドは情報部員のティベットと共に、ゾーリンの城に潜入した。彼らは秘密の地下室で大量のチップを発見するが、ティベットが殺されてしまう。
何とか脱出したボンドは、以前はKGBだったゾーリンが、今は命令を無視して勝手に動いていることを知る。地質学に詳しいステイシーという女性と知り合ったボンドは、ゾーリンが断層に海水を引き込んで地震を起こし、シリコンバレーを破壊してマイクロチップ市場の独占を企んでいると気付く。
ゾーリンに恨みを抱くステイシーと共に、ボンドはゾーリンの廃坑へ向かった。岩盤爆破を止めようとするボンドだが、ゾーリンの部下メイデイ達に追われる。その間にゾーリンは作業員を全滅させ、メイデイも置き去りにして飛行船で脱出する…。

監督はジョン・グレン、原作はイアン・フレミング、脚本はリチャード・メイボーム&マイケル・G・ウィルソン、製作はアルバート・R・ブロッコリ&マイケル・G・ウィルソン、製作協力はトーマス・ペヴスナー、撮影はアラン・ヒューム、編集はピーター・デイヴィース、美術はピーター・ラモント、衣装はエマ・ポーテウス、メイン・タイトル・デザインはモーリス・ビンダー、音楽はジョン・バリー、主題歌はデュラン・デュラン。
主演はロジャー・ムーア、共演はクリストファー・ウォーケン、タニア・ロバーツ、グレイス・ジョーンズ、パトリック・マクニー、パトリック・ボーショー、デヴィッド・イップ、フィオナ・フラートン、デスモンド・リュウェリン、ロバート・ブラウン、ロイス・マクスウェル、ウォルター・ゴテル、ジェフリー・キーン、ウィロービー・グレイ、マニング・レッドウッド、アリソン・ドゥーディー、パピロン・スー・スー他。


シリーズ第14作。この作品で、ロジャー・ムーアがジェームズ・ボンドを演じるのはラストになった(マネーペニー役のロイス・マクスウェルも)。
ゾーリンをクリストファー・ウォーケン、ステイシーをタニア・ロバーツ、メイデイをグレイス・ジョーンズ、ティベットをパトリック・マクニーが演じている。
また、ソ連のゴーゴル将軍の護衛役で、ドルフ・ラングレンが出演している。

007なので、もちろんアクションシーンはそれなりに充実している。真っ二つになった車を運転したり、炎上するエレベーターから脱出したり、飛行船で格闘したり。
オープニングから、雪山でのスキーやスノボーでのチェイスがある。
ただ、そこでビーチ・ボーイズの『カリフォルニア・ガールズ』ってのは無いでしょ。
なんで緊張感をBGMで削ぐかな。

現実路線ということが影響しているのか、どうも派手さに欠ける印象を受ける。
リアリティーを重視したマジ路線の007って、個人的には面白くないと感じてしまうんだよねえ。私の中では、荒唐無稽、バカ度数が高いのが007の本道なので。

今回の悪役ゾーリンは、前作『オクトパシー』のカマルに比べれば存在感はある。
ボンドの正体に気付いても簡単には殺そうとせず、馬の障害物レースで痛め付けようとするバカっぽさは、なかなかナイスなモノを感じさせる。
ただし、その存在感は、クリストファー・ウォーケンという役者のクドさに大きく頼っている感じがする。もっと精神欠陥という設定は強調していいと思うが。

ボンド・ガールはステイシー。
ところが、序盤でチラッと出て来た後、ずっと消えている。
後半に入って再登場かと思ったら、KGBのポーラだし。
で、その後にようやく再登場するが、せいぜいボンドの足手纏いになるという程度。ととにかく、ものすげえ影が薄い。

ステイシーよりも、メイデイの方が遥かに目立っている。
怪力の持ち主というキャラクター設定で、車を泉に沈めたり、男を持ち上げて投げ捨てたりする。グレイス・ジョーンズが演じているというのも大きいが、ステイシーどころか、ゾーリンやボンドも食っているぐらいだ。

終盤になってメイデイはゾーリンに裏切られ、ボンドと行動を共にする。終盤でボンドと一緒にいるのがメイデイだということからも、ステイシーの影の薄さは顕著。
で、メイデイは岩盤爆破を防ぐために爆弾を運んで爆死。
ってなわけで、おいしい見せ場を持って行く。
最終作となったムーアを押し退けて、完全にグレイス・ジョーンズの1人勝ちである。


第6回ゴールデン・ラズベリー賞

ノミネート:最低主演女優賞[タニア・ロバーツ]

 

*ポンコツ映画愛護協会