『トワイライト・サーガ/ブレイキング・ドーン Part 1』:2011、アメリカ
ジェイコブ・ブラックが父ビリーと暮らす家にベラ・スワンとエドワード・カレンの結婚式への案内状が届き、彼は怒りに打ち震えた。 その案内状は、ベラの父チャーリー、母レニーの元にも届いていた。カレン一族のカーライル、エズミ、エメット、ロザリー、ジャスパー 、アリスは、翌日の結婚式の準備を進めていた。その夜、エドワードはエメットたちに誘われ、バチェラー・パーティーに出掛けた。一人 で眠りに就いたベラは、親友や身内がヴォルトゥーリ一族のアロたちに惨殺される悪夢を見た。
翌朝、ベラが式に備えていると、チャーリーとレニーが訪れて髪留めをプレゼントした。結婚式にはベラの友人ジェシカやアンジェラたち もやって来た。ビリーやスー、セスたちは出席したが、ジェイコブは現れなかった。カレン一家の親戚に当たるデナリ一家のエリエザル、 カルメン、ケイト、イリーナ、ターニャもやって来た。セスたちに気付いたイリーナは、顔を強張らせた。イリーナが愛していたローラン は、キラユーテ族によって殺されていたからだ。エリエザルたちから落ち着くよう諭された彼女は、目に涙を浮かべて怒りを吐露し、その 場を立ち去った。
ダンス・パーティーが始まる中、エドワードは「贈り物が届いた」と言ってベラを会場から連れ出す。すると、ジェイコブが姿を現した。 ジェイコブはベラを祝福し、エドワードは気を遣って席を外した。ジェイコブはベラが結婚しても人間のままでいるつもりだと知り、 それは愚かな選択だと厳しく批判する。そこへエドワードが戻ったので、ジェイコブは「ベラを殺すつもりか」と彼を責める。ジェイコブ は駆け付けた仲間のエンブリーたちに制止され、憤懣やるかたないといった様子で立ち去った。
ベラとエドワードはみんなに見送られ、ハネムーンに旅立った。ベラが知らされていなかったハネムーン先はブラジルだった。リオに到着 したエドワードは、カーライルからプレゼントされた島の別荘にベラを案内した。2人はベッドに入り、肌を重ねた。翌朝、幸せな気分 だったベラは、エドワードから謝罪を受ける。自分を抑制できず、ベラの体を傷付けてしまったからだ。しかしベラは「素敵な夜だった」 と言い、エドワードとキスを交わす。彼女は自ら求めて、エドワードとの情事にふけった。
まだベラを愛しているジェイコブは行動を起こそうとするが、サム・ウーレイから「協定がある」と厳しく止められる。リアはジェイコブ に、「誰かに刻印すればベラを忘れられるわ」と告げる。ベラがエドワードとの別荘生活を続ける中、妊娠が判明した。結婚式から14日目 のことだ。2人は急いでカレン家へ戻る。しばらくしてカレン家を訪れたジェイコブは、ベラの妊娠を知って驚愕する。しかも胎児の成長 は異様に早く、ベラは力を吸い取られて衰弱していた。
ベラはカーライルが胎児を取り出すことを望まず、出産しようとしていた。ジェイコブはエドワードから、ベラの説得を頼まれる。しかし ジェイコブが予期した通り、ベラは説得に応じなかった。ベラが吸血鬼の胎児を宿していると知ったキラユーテ族の面々は、「産まれたら 渇きを制御することが出来ない」と確信し、その前にベラともども始末しようと考える。サムから一緒に戦うことを求められたジェイコブ は、それを拒否して群れを抜ける。
セスはジェイコブに付いて来て、行動を共にすることを申し入れた。「姉さんと戦うことになるかもしれないんだぞ」と群れに戻るよう 促すジェイコブだが、セスの考えは変わらなかった。ジェイコブはエドワードに、キラユーテ族がベラを殺しに来ることを知らせる。 ジェイコブとセスの元にリアが現れ、サムの計画を教える。ジェイコブはカレン家の面々に、リアから聞いたことを説明した。
カーライルはベラに、「胎児が強すぎて、出産まで心臓が持たない」と警告する。ベラが自分の命を引き換えにしてでも出産しようと 考えるので、エドワードは苛立ちを隠せなかった。衰弱していくベラに栄養を付けさせるため、エドワードたちは保管している血液を 飲ませてみることにした。血液をストローで吸ったベラは、「美味しい」と漏らした。しかしカーライルが血液を補充するために出掛けて いる間に、ベラは激しい痛みに襲われた…。監督はビル・コンドン、原作はステファニー・メイヤー、脚本はメリッサ・ローゼンバーグ、共同製作はビル・バナーマン、製作はウィク ・ゴッドフリー&カレン・ローゼンフェルト&ステファニー・メイヤー、製作総指揮はマーティー・ボーウェン&グレッグ・ ムーラディアン&マーク・モーガン&ガイ・オゼアリー、撮影はギレルモ・ナヴァロ、編集はヴァージニア・カッツ、美術はリチャード・ シャーマン、衣装はマイケル・ウィルキンソン、視覚効果デザイン&監修はジョン・ブルーノ、音楽はカーター・バーウェル、 音楽監修はアレクサンドラ・パットサヴァス。
出演はクリステン・スチュワート、ロバート・パティンソン、テイラー・ロートナー、マイケル・シーン、ビリー・バーク、ピーター・ ファシネリ、エリザベス・リーサー、ケラン・ラッツ、ニッキー・リード、ジャクソン・ラスボーン、アシュリー・グリーン、アナ・ ケンドリック、サラ・クラーク、クリスチャン・カマーゴ、ギル・バーミンガム、ジュリア・ジョーンズ、ブーブー・スチュワート、ミア ・マエストロ、ケイシー・ラボウ、マギー・グレイス、マイアンナ・バーニング他。
ステファニー・メイヤーの小説を基にした『トワイライト・サーガ』シリーズの第4作。
原作小説『トワイライト』シリーズの第4巻を原作とする2部構成の前篇。
監督は『愛についてのキンゼイ・レポート』『ドリームガールズ』のビル・コンドン。
ベラ役のクリステン・スチュワート、エドワード役のロバート・パティンソン、ジェイコブ役のテイラー・ロートナー、チャーリー役のビリー・バーク、 カーライル役のピーター・ファシネリ、エズミ役のエリザベス・リーサー、エメット役のケラン・ラッツ、ロザリー役のニッキー・リード 、ジャスパー役のジャクソン・ラスボーン、アリス役のアシュリー・グリーンは、1作目からの出演者。
アロ役のマイケル・シーンは2作目に続いての登場。ジェシカ役のアナ・ケンドリックとビリー役のギル・バーミンガムは、1作目からの 出演者。レニー役のサラ・クラークは1作目と3作目に続いての登場。リア役のジュリア・ジョーンズとセス役のブーブー・スチュワート は前作からの登場。エリエザル役のクリスチャン・カマーゴ、カルメン役のミア・マエストロ、ケイト役のケイシー・ラボウ、イリーナ役 のマギー・グレイス、ターニャ役のマイアンナ・バーニングは、今回が初登場。前半は、ベラとエドワードの幸せな様子がたっぷりと描かれる。
ベラが身内を惨殺される悪夢を見るとか、イリーナがセスたちを見て怒りに震えるとか、ジェイコブがベラの考えを知って怒るとか、 緊迫感を醸し出す箇所も一応は用意されているが、そんなのはオマケ程度。
そういうことがあった時にはベラも顔を引きつらせたりするけど、まるで後には引きずらず、すぐに幸せモードへと戻っている。
結婚式のシーンなんて、そんなに長く尺を取る必要も無いと思うんだが、かなり丁寧に描いている。
ぶっちゃけ、そこに長く尺を取るってことは、まるで物語が先に進んでいないということだ。
だけど、結婚式のシーンにそれなりの尺を取ることは、観客のことを考えれば必要なのだ。というのも、この作品の主たる観客層はティーンズ女子&恋に夢見る成人女子だからだ。
そういう女子は、ベラに自分を投影して本作品を観賞している。
だから、結婚式のシーンでは、自分も幸せな気持ちになれる。
そういう女子を心地良くさせることを考えれば、そりゃあ結婚式のシーンに時間を割いても当然だ。
いっそのこと、結婚式で2時間ぐらい使ってもいいぐらいだ。ただ、さすがにそれだと映画としての体を成さないので、結婚式のシーンは開始から30分ほどで終わらせる。
でも、その後はハネムーンが待っている。
ハネムーンも、ベラに自己投影している女子の気持ちを高揚させるには、もってこいのシーンである。
物語の進行だけを考えれば、そこも結婚式と同様で、そんなに無駄な時間を使いたくないところだ。
しかし前述したように、ティーンズ女子&恋に夢見る女子のことを考えれば、時間を取るべきだ。
だから、別荘に到着したベラが初夜で緊張している様子を、丁寧に描いている。初夜が終われば、もう物語としての役目は済んだわけだから、さっさと先へ進めばいい。
だが、その後はしばらく、2人のアツアツぶりを描く時間が続く。
「好きよエドワード、ウフフ」「僕もだよベラ、アハハ」ってな感じで(そんな会話があるわけじゃないけど、そういう雰囲気が伝わって くる映像になっている)、幸せな新婚夫婦がハネムーンを満喫する様子が描かれる。
もはやヴァンパイアとか、人狼とか、そういう設定も、ほぼ無意味な状態になっている。映画開始から50分ほど経過して、ようやく物語に大きな進展が見られる。
とは言っても「妊娠発覚」というものであり、それもベラとエドワードのメロドラマの枠内での出来事に過ぎない。
で、2人はベラの腹がデカくなったことに驚いているが、「妊娠する時期が早すぎる」ということに驚いているのかと思いきや、妊娠 そのものに驚いているのね。
いやいや、避妊しなかったんだろうが。だったら、そりゃあ妊娠することもあるだろうに。
まさかベラもエドワードも、「避妊しなかったら妊娠することもある」という性教育の基本的な情報を知らなかったわけでもあるまいに。ところが、カーライルまで「私にも想定外だった」と言っているんだよね。
どうやら「ヴァンパイアが人間とセックスしても妊娠しない」と思っていたらしい。
今までの3作品で、そういう情報って提示されていたっけ?
提示されていたのなら、ごめんなさい。
そんなに熱心に入り込んで観賞したわけじゃないので、たぶん見落としたんだろう。ベラの妊娠をキラユーテ族が知って、ようやくメロドラマ以外の部分でも物語が動き出す気配が見える。
で、キラユーテ族がベラと胎児を始末しようと決めるので、そこからカレン一族との戦いに突入していくのか、あるいは戦いが始まる タイミングを少し遅らせるにしても、そこまでは対立の図式で物語を構築していくのかと思いきや、そうではない。
その図式はどっかへ追いやって、また恋愛劇に引き戻してしまう。ようやくキラユーテ族が襲撃してくるのは、ベラと胎児を始末すること計画が決定してから30分以上も経過してから。
もう本編の残り時間は数分ぐらいしか残っていない。
しかも、戦い始めたと思ったら、すぐにジェイコブが「産まれた赤ん坊に刻印した」と通告し、「刻印の相手を傷付けることは出来ない」 という掟があるので、キラユーテ族は引き下がってしまう。
この映画のクライマックスはアクションシーンではなく、ベラの出産シーンだったのだ。
いやあ、もう徹底して「夢見る女の子のための少女漫画的映画」なのね。(観賞日:2013年3月11日)
第32回ゴールデン・ラズベリー賞
ノミネート:最低作品賞
ノミネート:最低主演男優賞[テイラー・ロートナー]
<*『ミッシング ID』『トワイライト・サーガ/ブレイキング・ドーン Part 1』の2作でのノミネート>
ノミネート:最低主演女優賞[クリステン・スチュワート]
ノミネート:最低スクリーン・アンサンブル賞[全キャスト]
ノミネート:最低監督賞[ビル・コンドン]
ノミネート:最低序章、リメイク、盗作、続編賞
ノミネート:最低スクリーン・カップル賞[クリステン・スチュワート&テイラー・ロートナーorロバート・パティンソンのどちらか]
ノミネート:最低脚本賞