『トランスフォーマー/最後の騎士王』:2017、アメリカ&中国&カナダ

イギリスの暗黒時代。ブリトン人のアーサー王や騎士のランスロットたちが敵の軍勢と戦う中、魔法使いのマーリンは到着が遅れていた。アーサーはマーリンに期待していたが、騎士たちは「マーリンは魔法使いではない」「役立たずの大酒飲み」と言う。実際、戦場へ向かうマーリンは、すっかり酔っ払っていた。彼は峡谷へ行き、墜落したエイリアンの船から見つかったサイバトロンのストームレインに呼び掛けた。マーリン「私はペテン師だが、せめて一度は世界の役に立ちたい。我々を滅亡から救ってくれ」と訴えると、ストームレインは杖を渡して「ドラゴンが命令通りに動く。戦いに勝てる。この杖を守れ。いつか大いなる悪が奪いに来る」と語る。マーリンは3つ首竜のドラゴンストームと共に、戦場へ駆け付けた。
1600年後。オプティマス・プライムは創造主を説得するため、地球を去った。メガトロンも消えた地球では、人間とロボットの戦いが勃発した。ロボットは違法な存在とみなされ、準軍事組織のTRFが創設された。キューバだけがロボットの解放区となり、そこではシーモア・シモンズも暮らしていた。シカゴに住む少年4人組は、地球外生命体で汚染された立入禁止区域に侵入した。監視ロボットは彼らを発見し、投降を命じた。
そこへイザベラという女性が現れ、トランスフォーマーのスクィークスと共に4人を救って連れ出した。もう1人の相棒であるキャノピーと共に、イザベラは廃墟で暮らしていた。TRFのサントスたちは子供たちの居場所を探知し、戦闘機でキャノピーを撃って始末した。ケイド・イェーガーはイザベラたちの元へ駆け付け、車に乗るよう指示した。バンブルビーが監視ロボットを倒し、ケイドとイザベラも車に乗せて逃げ出した。
ケイドはイザベラと子供たちを区域外へ脱出させた後、墜落した宇宙船に乗っていたスティールベインの元へ向かう。スティールベインはタリスマンをケイドに託し、クインから守るよう頼んで息を引き取った。ケイドはサントスたちに包囲されるが、バンプルビーやハウンドが駆け付ける。ウィリアム・レノックスが現れて「TRFに指揮権がある」と言うと、ケイドは「アンタらが攻撃するから、こうなる」と指摘した。彼が「ここにディセプティコンはいない」と告げて去ると、TRFはバンブルビーに発信機を発射した。
メガトロンは潜入させていた部下のバリケードから報告を受け、タリスマンを奪えなかったことに怒りを示す。「あれが無ければ杖が手に入らないんだぞ」と彼が言うと、バリケードはTRFが案内役になることを告げた。メガトロンの動きを掴んだ米軍は、大統領から杖を見つけるよう指示されていた。オプティマスはサイバトロン星に着き、故郷が瀕死状態に陥っていることを知る。創造主のクインテッサに捕まった彼は、「お前が故郷を滅ぼした。復活させなければトランスフォーマーは死滅する。命令に従うのだ」と言われた。
イギリスのフォルガン城に住むエドモンド・バートンは、召使いロボットのコグマンから「1600年も待っていたことが起きました。騎士が現れ、タリスマンを授けられました」と報告を受けた。オックスフォード大学で教授を務めるヴィヴィアン・ウェンブリーは、アーサー王の伝説について若者たちに解説した。その様子を見ていたエドモンドは、ヴィヴィアンの車に「もうすぐだ。終末が近付いてる。すべきことは分かるな」と話し掛けた。
オプティマスはクインテッサに「私の力の源である杖が、12体の騎士に奪われた。彼らは私を裏切り、地球に杖を隠した。サイバトロンを蘇らせることが出来るのは、その杖だけだ。お前が杖を見つけ、罪を償うのだ」と言われ、「仰せのままに」と口にした。サウスダコタ州バッドランズ。ケイドは警察署長から、盗んだパトカーを返せと要求された。彼はグリムロックが犯人だと確信し、急いで廃車置き場へ戻った。ケイドはジミーという男を騙して雇い、多くのトランスフォーマーを廃車置き場で匿っていた。
デイトレーダーはスタースクリームの頭部をケイドに渡し、「これでビーが声を出せる」と言う。タリスマンを目にした彼は、「本物じゃないよな?俺が引き取る」と言い出した。値打ち物だと感じたケイドが何なのか尋ねると、デイトレーダーは「黙示録にある最も重要な兆しだ。それが本物なら、この星を逃げ出さないと」と語った。イザベラが廃車置き場へ来て「TRFは家族同然のキャノピーを殺した。ここにいてTRFと戦う」と涙をこぼして訴えると、ケイドは「戦っても勝てないぞ。世界中が奴らの味方だし、お前は子供だ」と言う。イザベラがディセプコンの攻撃で両親を亡くしていると知ったケイドは同情するが、「子供は置いておけない」と告げる。しかし彼女がトランスフォーマーに関する知識に長けていると知り、面倒を見ることにした。
西アフリカのナミビア、中国北部、ヨルダンなど世界の6ヶ所に謎の角が出現し、急激に成長した。調査でナミビアを訪れたエドマンドは、サイバトロンが来ることを確信した。アメリカではNASAの科学者が分析し、政府高官に「惑星大の物体の接近で重力異変が起きています。このままだと3日後に地球が滅びます」と告げた。国防総省ではレノックスがモーシャワー将軍に呼び出され、「角がある全ての場所でメガトロンが目撃された。CIA局員2人を拉致し、TRFに接触して来た。仲間を釈放しろという要求を受け、軍の監視を条件に司法省も了解した」と聞かされる。
モーシャワーは「想像を超える武器が存在する。地球を救うため、メガトロンを利用する」と言い、取引の交渉役をレノックスに任せた。レノックスはバーサーカーの釈放を拒否したが、モホーク、ドレッドボット、ニトロ・ゼウス、オンスロートは了承した。モーシャワーはレノックスに、「メガトロンはイェーガーを追って武器を見つける気だ。ディセプティコンを利用するため、イェーガーの居場所を教える。メガトロンを追い、武器を奪え」と命じた。署長はTRFとの到来を知り、無線でケイドに危機を伝えた。ケイドは急いで武器を車に積み、イザベラたちと共に逃走した。 ケイドたちは廃墟の町に身を潜めるが、スクィークスがディセプティコンに見つかってしまう。イザベラが引き渡しを求めて姿を見せたため、トランスフォーマーとディセプティコンの戦いが勃発する。ディセプティコンは早々に撤退したものの、すぐTRFが駆け付けた。発砲を受けたケイドたちがビルへ逃げ込むと、エレベーターでコグマンが待ち受けていた。エドモンドと通信したコグマンは、ケイドに「貴方が使命を果たすまで、タリスマンは離れません。貴方は選ばれたのです。混乱の原因は貴方です。仲間を救いたければ付いて来てください」と語った。
ケイドはイザベラをドリフトたちに預け、コグマンの用意した飛行機でビーと共にイギリスへ向かう。その動きを探知したメガトロンは後を追い、レノックスもチームを率いてイギリスへ向かうよう命じられた。キューバのシーモアはエドモンドに電話を掛け、「ケルズの書を見つけた。風化寸前だ。トリニティー図書館へ今日の午後4時に行け」と告げた。クインテッサはオプティマスに、「地球にはユニクロンという別名がある。サイバトロンの古い敵だ。彼を破壊しなさい。生気を杖で吸い取るのよ。そうすれば地球は滅びて、貴方の故郷は復活する」と語った。
ヴィヴィアンが車に乗り込むと、エドモンドの残した招待状が置いてあった。彼女の車はオートボットのホット・ロッドで、ドアをロックして勝手に走り出した。ケイドはエドマンドの屋敷に到着し、「君も知りたいはずだ。なぜ彼らが次々と地球に来るのかを」と告げられる。そこへヴィヴィアンも来て、エドモンドはケイドたちを邸内へ招き入れた。彼は自分がウィトウィック騎士団の最後の1人であること、騎士団は遥か昔から数々の著名人が参加していた秘密結社であることをケイドたちに話した。
エドモンドは騎士団がトランスフォーマーの地球における歴史を守ってきたこと、ヴィヴィアンの亡き父もメンバーだったことを語った。それから彼は、アーサー王の時代にトランスフォーマーが騎士たちと交流したこと、「いつか最後の騎士が選ばれ、世界の再生を助ける」という伝説があること、その最後の騎士がケイドであることを話す。エドモンドの邸宅にはサイバトロンの円卓が置いてあるが、マントラの謎は解き明かせていなかった。マントラの古代サイバトロン語は「死んでも杖を守れ」という意味で、スティールベインがケイドに言い残した言葉と同じだった。
エドモンドが「マーリンのDNAは杖と融合し、彼だけが異星人の力を解き放てた。杖はマーリンと共に埋葬され、隠されてきた。悪者が手に入れれば、世界は滅びる」と話すと、ケイドはメガトロンがタリスマンを狙っていることを口にした。エドモンドはヴィヴィアンに、「メガトロンと戦い、先に杖を手に入れなければ。マーリンの直系の子孫だけが、あの杖を使える。君はマーリンの最後の子孫であり、人類最後の望みだ」と語った。
コグマンは家系図の書かれた書物を見せ、エドモンドが「杖のありかは君の父上が教えたはずだ。手掛かりを残さなかったか」と尋ねる。しかしヴィヴィアンは父から、「書斎を出て行け」としか言われていなかった。MI6とTRFが屋敷へ来たため、ケイドたちは逃亡した。エドモンドはロンドンのクリスティー図書館に向かい、ヴィヴィアンはケイドを伴って自宅へ戻った。シーモアはエドモンドに電話で騎士団への入団を要求し、それと引き換えに古文書の場所を教えた。古文書を読んだエドモンドは、クインテッサが地球を滅ぼして自らの星を再生するつもりだと知った。シーモアはエドモンドに、6つの角が地殻変動の前は円を形成していたこと、その中心にストーンヘンジがあることを教えた。
ヴィヴィアンは秘密の戸棚に隠してあった絵本を見つけ、「海軍博物館のアライアンス号」という手掛かりを得た。ケイド&ヴィヴィアンとエドモンドはTRFの追跡を逃れ、潜水艦のアライアンス号で合流して見物客を追い出した。エドモンドはケイドたちに「残念ながら、私は同行できない。私には別の任務がある」と言い、コグマンを残して船を降りた。ヴィヴィアンが操縦桿を握ると、アライアンス号は動き出した。アライアンス号は普通の潜水艦ではなく、騎士団に協力するオートボットだった。
アライアンス号は海軍による魚雷の攻撃を回避し、海中を進んだ。エドモンドは秘密の入り口を使って英国首相の元へ行き、オートボットで警備の連中を脅した。彼は首相に自己紹介し、「あらゆる策を講じて軍を総動員しろ。世界の破滅が、ある場所で始まる。その場所と時間を教えよう」と告げた。アライアンス号が深海に眠る巨大船に到着すると、コグマンはケイドに゛「貴方のタリスマンが、あの船を動かせる」と説明した。第5艦隊と合流したレノックスも潜水艇で異星人の巨大船を見つけており、アライアンス号に続いて中に入った。アライアンス号を降りたケイドたちが巨大船の奥へ進むと棺があり、マーリンのミイラが杖を握っていた…。

監督はマイケル・ベイ、原案はアキヴァ・ゴールズマン&アート・マーカム&マット・ハロウェイ&ケン・ノーラン、脚本はアート・マーカム&マット・ハロウェイ&ケン・ノーラン、製作はロレンツォ・ディ・ボナヴェンチュラ&トム・デサント&ドン・マーフィー&イアン・ブライス、製作総指揮はスティーヴン・スピルバーグ&マイケル・ベイ&ブライアン・ゴールドナー&マーク・ヴァーラディアン、共同製作はマシュー・コーハン&K・C・ホーデンフィールド&マイケル・ケース、製作協力はJJ・フック&ダレン・ヒックス&ハリー・ハンフリーズ、撮影はジョナサン・セラ、美術はジェフリー・ビークロフト、編集はマーク・サンガー&ジョン・ルフーア&デブラ・ニール=フィッシャー&ロジャー・バートン&アダム・ガーステル&カルヴィン・ウィマー、衣装はリサ・ノラ・ロヴァース、視覚効果監修はスコット・ファーラー、音楽はスティーヴ・ジャブロンスキー。
出演はマーク・ウォールバーグ、アンソニー・ホプキンス、ジョシュ・デュアメル、スタンリー・トゥッチ、ローラ・ハドック、ジェロッド・カーマイケル、イザベラ・モナー、サンティアゴ・カブレラ、グレン・モーシャワー、ジョン・タートゥーロ、トニー・ヘイル、リアム・ギャリガン、マーティン・マクリーディー、ロブ・ウィットコム、マーカス・フレイザー、ジョン・ホリングワース、ダニエル・アデグボイエガ、トレント・セヴン、ジェマ・チャン、クロード・ノウルトン他。
声の出演はピーター・カレン、フランク・ウェルカー、エリク・アーダール、ジョン・グッドマン、渡辺謙、ジム・カーター、スティーヴ・ブシェミ、オマール・シー、レノ・ウィルソン、ジョン・ディマジオ、トム・ケニー、ジェス・ハーネル、マーク・ライアン、スティーヴン・バー。


ハズブロの玩具をベースにしたシリーズの第5作。
監督は1作目から一貫してマイケル・ベイが手掛けている。
脚本は第2作から連投していたアーレン・クルーガーが外れ、『アイアンマン』『パニッシャー:ウォー・ゾーン』のアート・マーカム&マット・ハロウェイと『ブラックホーク・ダウン』のケン・ノーランが担当している。
前作と同じ配役で続投しているのは、ケイド役のマーク・ウォールバーグだけ。
マーリン役のスタンリー・トゥッチは前作にも出演していたが、別のキャラクターだった。

仕切り直して再スタートを切るはずだった前作の評判が芳しくなかったことの反省なのか、「やっぱり最初の3部作の方が良かったよね」ってことなのか、レノックス役のジョシュ・デュアメル、モーシャワー役のグレン・モーシャワー、シモンズ役のジョン・タートゥーロが最初の3部作から復帰している。
声優陣では、オプティマス役のピーター・カレンだけがシリーズ全作に出演。
ハウンド役のジョン・グッドマンとドリフト役の渡辺謙は、前作からの続投。メガトロンは最初の3部作にも登場していたが、声優がフランク・ウェルカーに交代している。
他に、エドモンドをアンソニー・ホプキンス、ヴィヴィアンをローラ・ハドック、ジミーをジェロッド・カーマイケル、イザベラをイザベラ・モナー、サントスをサンティアゴ・カブレラが演じている。

テッサ役のニコラ・ペルツやシェーン役のジャック・レイナーたちは前作で「これからの新レギュラー」みたいに登場したのに、1作だけで使い捨てにされている(テッサは電話の声だけが使われているけど)。
そんな中でスタンリー・トゥッチは続投しているのに、前述したように、なぜかジョシュア・ジョイス役ではなく、マーリンとして登場する。
わざわざ同じ俳優を別の配役で続投させているからには、そこに何かしらの仕掛けがあると思っても不思議は無いだろう。
しかし、特に何も無いのである。

それどころか、もはやイギリスの暗黒時代を描いているオープニング自体、その必要性が全く感じられない。そこを全て削ったところで、以降の展開には何の支障も無いとハッキリ言える。
現在のシーンで、「かつてこんなことがありまして」みたいなシーンを挿入すれば済む。いっそのこと、台詞だけでザックリと説明しても、そんなに問題は無い。
「中世ヨーロッパの世界にトランスフォーマーが現れる」という「絵」の面白ささえ、これっぽっちも無いのだ。何しろ、ドラゴンストームの見た目は完全にドラゴンだし。
エドモンドがアーサー王と騎士たちについて話す時、ようやく人間型トランスフォーマーが中世騎士と同席している映像が挿入される。でも、一緒に戦うようなシーンは無いし、物足りなさは半端無い。

やたらと上映時間は長いけど中身がスッカスカなのも、やたらとキャラは多いけど全く整理できていないのも、このシリーズでは御馴染みのことだ。
無駄に話がゴチャゴチャして分かりにくいのも、ちゃんと理解したところで何の意味も無いのも、このシリーズでは御馴染みのことだ。
何しろマイケル・ベイ大先生のダメな所が最大限に発揮されているシリーズなので、そのダメっぷりを可愛がる以外に楽しむ方法は無いと断言してもいい。

登場人物は多いが、その大半は何のためにいるのか良く分からない連中だ。存在価値のあるキャラクターは、ほとんど見当たらない。
また、意味ありげに登場したのに、これといった仕事を与えられずに退場する連中もいる。シカゴのパートでは最初に子供たちが登場してスティールベインを見つけたりイザベラと出会ったりするので、それなりに重要な役回りを担うのかと思いきや、その場だけで消えている。
何しろ配役表記からして、ただの「Kid」で名前も与えられていない。「ガキがロボットを操る」という展開になったら、それはそれで疎ましいことになっていたと思われるが、最初から彼らを登場させる意味なんて皆無に等しいのよね。
そんな奴らを登場させるよりも、「いつの間にケイドがスティールベインの存在を知ったのか」ってのを気にしようぜ。そこが明らかになっていないから、ケイドが宇宙船へ向かう行動がギクシャクしちゃってるぞ。

登場させる意味が皆無に等しいってのは、ロボットたちの大半にも言えることだ。
登場するロボットは数体を除き、「質より量」のために投入されているだけだ。
粗筋では名前を表記したが、映画を見ているだけでは、誰が誰なのか分からない奴らばかりだ。全てのロボットを把握して見分けることが出来るのは、かなりの予備知識を詰め込んでから観賞した人に限られる。
また、「何かしらの乗り物からロボットに変形したり、元に戻ったりを無意味に繰り返す」という動きで、御機嫌を窺うことも見られない。
変身シーンが極端に少なくなっているため、もはや「トランスフォーマー」である意味さえ皆無に等しい。

ザックリ言うと「杖の奪い合い」だから、『丹下左膳餘話 百萬両の壷』みたいなモンだ。
ただし、杖はマクガフィンじゃなくて実際に「創造主の能力を蘇らせるための道具」という設定ではあるのだが、途中で「マーリンの子孫であるヴィヴィアンしか杖を使えない」という説明が入る。
つまりクインテッサの手に渡ろうと、メガトロンの手に渡ろうと、アメリカ政府の手に渡ろうと、誰も使えないのだから、その争奪戦の意味なんて全く無いのだ。
そして実際、大事なクライマックスにおいて、杖は何の役にも立っていない。ヴィヴィアンなら何かしらの力は発揮させられるはずだが、彼女が使わないので、まるで意味の無い道具と化している。

今回は「オプティマス・プライムがダークサイドに堕ちる」という出来事があるのだから、それを軸にして作品を構築しようと考えるのが普通の感覚だろう。
そこを否定して変に捻ろうしても、何もいいことなんて無いのだ。
しかし、このシリーズの真っ当なセンスなど期待してはいけない。
「何をもって普通とするのか」という意見はあるかもしれないが、この映画に関してはきっと10割に近い人が「マトモじゃない」と感じるだろう。

地球を去ったオプティマスはクインテッサに捕まり、洗脳されてネメシス・プライムになる。
「すんげえ簡単に洗脳されるのな」というトコには引っ掛かるが、ともかく早い段階で闇堕ちするので、さっさとネメシスとなって地球へ帰還すればいい。
しかし、こいつは一向に地球へ帰還せず、トランスフォーマー側の主役がいないままで話が進められる。
その一方で、場の空気を壊して流れを止めるだけの喜劇パートを入れるような、余計なサービスはしっかりと用意している。
無駄なお喋りで時間を浪費するシーンは多いし、それがクエンティン・タランティーノ作品みたいに「作品の面白味」として機能しているわけではない。

エドモンドには一族の歴史があるが、そこを説明するためのシーンは無駄に長い。ただグダグダと必要性の乏しいことを喋っているだけで、その大半はバッサリと削っても全く支障が無い。
ヴィヴィアンには亡き父との関係があるが、まるで膨らまないまま適当に放り出される。
わざわざ復活させたメガトロンも、まるで「悪党のボス」としての存在感を発揮できていない。
そんなメガトロンは捕まっている仲間の釈放を要求するが、その連中は映画では初登場のロボットだ。だったら、それなりに個性を紹介するための時間は必要だろうに、そんなことは全く無視している。

レノックスはバンブルビーと敵対する立場になったのに、そこでの苦悩や葛藤なんて全く見えない。他の面々も中身がペラペラで、ドラマらしいドラマを全く生み出そうとしない。
こちらの心に訴え掛けて来るような熱血も、涙腺を刺激するような感動も、これっぽっちも見当たらない。張り詰めた緊張感も無ければ、ワクワクさせてくれる高揚感も無い。
じゃあアクションに特化して、そこの面白さだけを徹底して追求しているのかというと、それも感じない。
やたらとドカーンバカーンと音は鳴り響くが、それに見合うだけの興奮は与えてくれない。

ヴィヴィアンが杖を手に入れた直後、ようやくネメシス・プライムが「人類の敵」として登場する。
オプティマスとバンブルビーが戦うことになるが、「本来は仲間のはずの2体が戦う羽目に」というドラマは全く感じられない。
しかもバンブルビーが「貴方の古い友達だ。貴方のためなら命を捨てる」と口にしただけで、あっさりとオプティマスの洗脳は解けてしまうのだ。
オプティマスがビーたちの敵として登場してから仲間に戻るまで、わずか5分程度しか経っていない。彼が闇堕ちする話は、そのぐらい薄っぺらい扱いなのだ。

「それは何のための行動なのか」「そんな行動を取る理由は何なのか」「っていうか、お前らは何がしたいのか」など、頭にクエスチョンマークが浮かぶシーンの連続となっている。
ハッキリ言えるのは、「みんなバカばっかり」ってことだ。
脚本家がアーレン・クルーガーから交代しても、マイケル・ベイが監督を務めている以上、そこは何も変わらない。
マイケル・ベイはThe ピーズと違い、無理してバカになったわけじゃなくて、それが本質なのだから。

(観賞日:2018年11月16日)


第38回ゴールデン・ラズベリー賞(2017年)

ノミネート:最低作品賞
ノミネート:最低主演男優賞[マーク・ウォルバーグ]
<*『パパVS新しいパパ2』『トランスフォーマー/最後の騎士王』の2作でのノミネート>
ノミネート:最低助演男優賞[ジョシュ・デュアメル]
ノミネート:最低助演男優賞[アンソニー・ホプキンス]
<*『アウトバーン』『トランスフォーマー/最後の騎士王』の2作でのノミネート>
ノミネート:最低スクリーン・コンボ賞[任意の2人の人間、2体のロボット、2つの爆発の組み合わせ]
ノミネート:最低序章&リメイク&盗作&続編賞
ノミネート:最低監督賞[マイケル・ベイ]
ノミネート:最低脚本賞
ノミネート:ロッテントマト賞(酷すぎて大好きな作品賞)

 

*ポンコツ映画愛護協会