『トランスフォーマー』:2007、アメリカ

中東のカタール。米軍の特殊作戦軍司令部では、空軍中尉ウィリアム・レノックスや部下のエップス、ホルヘ、ドネリーたちが任務に就いて いた。未確認の軍用ヘリが接近しているとの報告を受けた司令官は、基地への着陸を命じた。それはアフガニスタンで撃墜されたはずの ヘリだった。基地に着陸した軍用ヘリはロボットに変形し、攻撃を仕掛けてきた。
アメリカのロサンゼルスに暮らすサム・ウィトウィッキーは、16歳の冴えない少年だ。先祖について発表するという学校での課題で、彼は 曾曾祖父アーチボルトについて調べた。アーチボルトは有名な探険家であり、1897年には北極の調査に訪れている。しかし彼は親族を失い、 最後は正気を失って「巨大な氷の男を発見した」と繰り返していたという。
サムはアーチボルトに関する調査報告よりも、遺品をクラスメイトに売り込むことに熱心だった。サムは車を購入するため、金を貯めて いたのだ。アーチボルトのメガネなど数点を、彼はネットオークションにも出品していた。下校したサムに、父ロンは「車を買ってやる」 と告げた。サムが先生に頼み込んだこともあって、約束した成績を収めたからだ。
喜んで父の車に乗り込んだサムだが、着いた先が中古車ショップだったのでガッカリした。それでもサムは、一台の古いカマロが気に 入った。それは中古車ディーラーのボビー・ボリヴィアも見覚えが無い物だった。予算は4千ドルだったが、ボビーが5千ドルを主張した ため、仕方なくサムは車を降りた。するとカマロのドアが勝手に開き、隣の車を破損させた。さらに、他の車の窓が全て割れたため、 ボビーはカマロを4千ドルで売った。窓の破損は、カマロが仕掛けたことだった。
ワシントンD.C.では、データ分析の専門家が各地から集められていた。マギー・マドセンも、その内の一人だ。そこに国防長官の ケラーが現れ、カタールの基地が何者かに襲われて生存者は確認されていないこと、敵が軍事ネットをハッキングしたことを説明した。 幸いにもデータ流出は無かったが、敵が再び襲撃してくるだろうとケラーは語る。
ケラーはマギーたちに、敵の正体を突き止める唯一の手掛かりがネットワークに入り込んだ信号だと説明した。国家安全保障局が信号を 分析中だが、ケラーはマギーたちにも協力を要請した。一方、カタールの基地からは、レノックス率いる数名と現地の少年一名が逃げ延びて いた。通信手段が全滅したレノックスたちは電話を借りるため、少年の村へ向かうことにした。
サムは友人マイルズをカマロに同乗させ、湖畔へと向かった。そこでは、サムが好意を寄せるクラスメイトのミカエラが、恋人トレントや 仲間たちと遊んでいた。ミカエラは仲間と別れ、歩いて帰ろうとする。サムはマイルズを降ろしてミカエラに声を掛け、カマロで送っていく ことにした。サムは小学校から一緒だったが、ミカエラは彼のことを全く知らなかった。途中でカマロが止まってしまったため、ミカエラ は歩いて帰ろうとする。その途端、カマロは再び動き出し、サムはミカエラを家まで送り届けた。
翌日、国防総省の国家軍事指揮センターでは、マギーたちが信号の分析作業に取り組んでいた。同じ頃、飛行中のエアフォース・ワンの機内 では、ラジカセが小型ロボットに変形していた。ロボットは人々に気付かれぬよう移動し、コンピュータを使って軍事ネットのデータを 盗み出そうとする。ハッキングに気付いたマギーは、役人に知らせた。サーバーは遮断されたが、ロボットはデータの一部を盗んだ。 ロボットは駆け付けたシークレット・サービス3名を射殺し、ラジカセに戻った。
小型ロボットは着陸した飛行機から密かに抜け出し、パトカーに乗り込み、「サム・ウィトウィッキーを探せ」と仲間に通信した。その夜 、サムはカマロが動き出したのに気付き、「泥棒だ」と外に出た。自転車に乗って追跡したサムは、カマロがロボットに変身するのを見て 驚いた。猛犬に襲われたサムが慌てて逃げ出すと、そこにカマロがやって来た。慌てて駆け出すと、そこにパトカーがやって来た。サムは 自動車泥棒と間違えられ、警官に逮捕されてしまった。
ケラーはデータを盗み出そうとしている敵について、ロシアか北朝鮮ではないかと疑っていた。マギーは「どんな高性能のコンピュータを 使っても不可能な速度」と、想像を超えた敵である可能性を主張するが、ケラーは全く耳を貸さなかった。一方、レノックス達は地中から 出現したサソリ型ロボットに襲撃され、村へ逃げ込みながら応戦した。レノックスは少年の父に電話を借り、ケラーに連絡を入れて応援を 要請した。応援の空軍ヘリが急行して攻撃すると、サソリ型ロボットは地中へと消えた。
マギーはデータを盗み出し、天才ハッカーの友人グレン・ホイットマンに分析してもらう。だが、すぐにFBIが現れ、2人は拘束された。 サムはカマロが勝手に動き出したのを見て怖くなり、自転車に乗って逃げ出した。カマロが追ってくる中、パトカーが現れた。サムは助け を求めるが、パトカーはロボットに変身して「メガネはどこだ」と凄んだ。そこへミカエラが現れたため、サムは逃げるよう告げる。 カマロが現れてドアを開けたため、サムはミカエラを乗せた。するとカマロは、勝手に走り始めた。
敵のロボットはパトカーに戻り、カマロを追ってきた。カマロはサムとミカエラを降ろし、ロボットに変身して戦い始めた。敵を退散 させた後、ロボットは再びカマロに戻った。サムはミカエラを乗せ、カマロを走らせた。ミカエラが「おんぼろカマロ」と口にすると、 カマロは最新型のモデルにチェンジした。サムたちの前には複数の車が現れ、全てロボットに変形した。
ロボットの一体が口を開き、自分達が惑星サイバトロンから来た金属生命体“オートボット”であることを説明した。そのロボットが リーダーのオプティマス・プライムで、他にジャズ、アイアンハイド、ラチェットという面々が集まっていた。カマロもサムのガードマン としての任務を務めていたバンブルビーという仲間だが、声を出す機能が損なわれてしまったのだという。
オプティマスは、かつてサイバトロンが平和な星だったこと、メガトロン率いる悪の軍団ディセプティコンの反乱で星が荒れ果てたこと、 オールスパークが宇宙に消えたことを語る。メガトロンはオールスパークを追って地球に降り立ったが、手に入れ損なって北極で凍って いた。それを氷壁の下に落ちたアーチボルトが発見し、ナビゲーション・システムを起動してしまった。それにより、オールスパークの ありかを示す座標が彼のメガネに記されたのだとオプティマスは説明した。
オールスパークをメガトロンが入手した場合、地球のマシンをトランスフォームさせて新たな軍団を作り、人類を抹殺するとオプティマス は語る。メガトロンより先にオールスパークを手に入れるため、オプティマスたちは地球にやって来たのだ。サムはメガネを探しに自宅へ 戻るが、オートボットが勝手に動くため、両親に見つからないかと焦った。
ようやくメガネを発見したサムだが、そこへセクター7の捜査官を名乗るシモンズ達が現れた。シモンズたちは「国家の安全に関わることだ」 と言い、サムと両親、ミカエラを車に乗せて連行しようとする。そこへオプティマスたちが現れ、車を包囲して銃を取り上げた。だが、そこ にセクター7の応援部隊が駆け付けた。彼らはバンブルビーを凍らせて動きを止め、サムたちを連行する。離れた場所で待機していた オプティマスは、様子を見るよう仲間たちに命じた。
ケラーの元をトム・バナチェックという男が訪れ、セクター7の上級調査部員だと称した。彼は大統領命令で来たこと、セクター7が政府 の秘密機関であることを説明した。バナチェックは2003年に起きた火星探査機ビーグル2号の事故について語り、極秘だった記録映像の 存在を明らかにした。バナチェックは、データを盗み出そうとしている敵が、その映像に写っているのと同じ相手、つまり宇宙からの 侵略者だと告げた。ケラーは全部隊に攻撃準備を命じ、マギーに「アドバイザーになってくれ」と持ち掛けた。
サム、ミカエラ、マギー、グレンは軍用ヘリに乗せられ、セクター7の秘密基地に連れて行かれた。携帯電話に化けたディセプティコンの 一味フレンジーも、密かに潜入していた。基地には、冷凍されたバンブルビーが収容されている。メガネの座標からオールスパークの場所 を知ったオプティマスは、バンブルビーの奪還よりも任務の遂行を優先するよう仲間たちに告げた。
サムやミカエラたちは、冷凍状態のメガトロンが基地に収容されていることを知った。さらに彼らは、セクター7がオールスパークを保管し 、厚いコンクリートで覆って感知されないようにしていることを聞かされた。オールスパークの場所を知ったフレンジーは、仲間たちに通信 を入れた。様々な乗り物に変形していたディセプティコンは、基地へと向かい始めた…。

監督はマイケル・ベイ、原案はアレックス・カーツマン&ロベルト・オーチー&ジョン・ロジャース、脚本はアレックス・カーツマン& ロベルト・オーチー、製作はドン・マーフィー&トム・デサント&ロレンツォ・ディ・ボナヴェンチュラ&イアン・ブライス、製作総指揮 はスティーヴン・スピルバーグ&マイケル・ベイ&ブライアン・ゴールドナー&マーク・ヴァーラディアン、撮影はミッチェル・ アムンゼン、編集はポール・ルベル&グレン・スキャントルベリー、美術はジェフ・マン、衣装はデボラ・L・スコット、音楽は スティーヴ・ジャブロンスキー、音楽スーパーバイザーはデイヴ・ジョーダン。
出演はシャイア・ラブーフ、ミーガン・フォックス、ジョシュ・デュアメル、タイリース・ギブソン、レイチェル・テイラー、アンソニー ・アンダーソン、ジョン・ヴォイト、ジョン・タートゥーロ、マイケル・オニール、ケヴィン・ダン、ジュリー・ホワイト、アマウリー・ ノラスコ、ザック・ウォード、バーニー・マック、W・モーガン・シェパード、ジョン・ロビンソン、トラヴィス・ヴァン・ウィンクル、クリス・エリス、ラヴィ・ パテル、サマンサ・スミス、ピーター・ジェイコブソン、カルロス・モレノJr.、ジョニー・サンチェス他。


1980年代、アメリカのハズブロ社が日本の玩具会社タカラ(現在はタカラトミー)と業務提携して北米で発売した変形ロボット玩具 “トランスフォーマー”シリーズは、大ヒット商品となった(中にはタカラの商品だけでなく他社の製品も含まれていた)。
タカラも逆輸入の形で、“トランスフォーマー”シリーズとしての展開を開始した。
善と悪のロボットが戦う設定はアメリカで絶大な人気を集め、マーベル・コミックのアメコミや日米合作によるTVアニメーションも 作られた。
そんな“トランスフォーマー”シリーズを初めて実写で映画化したのが、この作品だ。

サムをシャイア・ラブーフ、ミカエラをミーガン・フォックス、レノックスをジョシュ・デュアメル、エップスをタイリース・ギブソン、 マギーをレイチェル・テイラー、グレンをアンソニー・アンダーソン、ケラーをジョン・ヴォイト、シモンズをジョン・タートゥーロ、 バナチェックをマイケル・オニール、ロンをケヴィン・ダン、ジュディーをジュリー・ホワイトが演じている。
他に、ホルヘをアマウリー・ノラスコ、ドネリーをザック・ウォード、ボビーをバーニー・マック、アーチボルトをW・モーガン・ シェパード、マイルズをジョン・ロビンソン、トレントをトラヴィス・ヴァン・ウィンクルが演じている。
オプティマス・プライムの声をピーター・カレン、バンブルビーをマーク・ライアン、メガトロンをヒューゴ・ウィーヴィングが担当して いる。
監督は『アルマゲドン』『アイランド』のマイケル・ベイ。

日本で放映版されたアニメーションでは、幾つかの名称や用語が日本独自のものになっていた。
今回の映画は英語版の名称で統一されているため、アニメ版とは異なる点が幾つかある。
例えばアニメ版のコンボイは、映画ではオプティマス・プライムだ。
同様に、サイバトロンはオートボット、デストロンはディセプティコン、バンブルはバンブルビー、マイスターはジャズと呼ばれている。

マイケル・ベイ監督は前作『アイランド』で初めてジェリー・ブラッカイマーと袂を分かち、見事にコケた。
これまでダメな映画でもヒットに導いてくれた大物プロデューサーと離れ、監督としてのダメっぷりが顕著に表れてしまったマイケル・ ベイだが、今回はスティーヴン・スピルバーグという新たな大物と手を組むことによって、ヒットメーカーの地位を取り戻した。
まあ、どっちにしても本人の資質じゃなく、プロデューサーの力が大きいとは思うけれど。

序盤、軍用ヘリがロボットに変身して暴れ出した時点で、期待感は一気に打ち砕かれた。
他のオートボットやディセプティコンにも共通して言えることだが、あまりにもマシンのパーツが多すぎて、ロボットに変身した時の ワクワク感が全く感じられないのだ。
乗り物だった時の名残りがほとんど無いので、「それなら原型は何でもいいじゃねえか」と思ってしまうのだ。

「ロボットの変身シーンはワンカットで撮る」とマイケル・ベイが強硬に主張し、変身シーンのVFXには多くの時間と予算を使って、 数万個のパーツが動く複雑な変形シーンを描写している。
でもね、複雑にすればいいってもんじゃないのよ。
「原型がヘリコプターだから、ロボットになった時に、そういう形になる」というモノであってほしいのだ。
そして、「乗り物の時の、あの部分が、ロボットになったら、そこに来るのか」といったことが、ある程度は分かるようにしてほしいのだ。

そんな変形ロボットが暴れるアクションシーンが、もちろん本作品のセールスポイントなのだろうが、見せ方が下手。
アップが多いし、カメラがやたらと忙しく動きまくるし、カット割りもやたらと細かいし、何がどうなっているのか良く分からない。
特にオートボットとディセプティコンの戦いになると、どっちが善玉でどっちが悪玉なのかが分かりにくい。

アクションシーンの絵作りは、もしかすると日本のアニメを意識した部分があるのかもしれない。
ただ、同じ動きを描いても、アニメだと線が少なくてスッキリしているが、実写にするとゴチャゴチャしてしまうのだ。
マイケル・ベイってアクション映画の人というイメージが強いが、実はアクションの描写、あまり上手くないんじゃないだろうか(まあ 得意な分野があるかどうかも怪しいが)。

マイケル・ベイ監督作だから最初から話には期待していなかったが、やはりシナリオはデタラメで、キャラクターの行動には不可解な部分 が多い。
メガトロンはディセプティコン軍団のボスなのに、なぜ1体だけで氷漬けになっているのか。
他の仲間は、一緒にオールスパークの捜索に来なかったのか。
1897年にアーチボルトがメガトロンのナビゲーションシステムを起動させたのに、それから2007年まで、他のディセプティコンは何をして いたのか。

メガトロンはオールスパークを入手する目的で地球へ来たはずなのに、なぜ「オールスパークを入手したら軍団を作って人類を滅ぼす」と いう風に目的がズレるのか。
セクター7にバンブルビーが捕獲された時に、なぜ他のオートボットは離れた場所に逃げているのか。
オプティマスたちは「バンブルビー奪還より任務の優先だ」と基地を離れてどこかへ消えるが、オールスパークがあるのは基地だ。
メガネの座標で位置を突き止めたはずなのに、なぜ基地から離れていくのか。

CGによる変形シーンを見せたくて仕方が無いのか、必要の無い箇所でも乗り物からロボット、あるいはロボットから乗り物へと変形 する。
「新型カマロはコンセプトモデルだから傷付けたらダメ」というGM社のお達しが出たせいで、不自然な流れでバンブルビーがオンボロ から新型にモデルチェンジしている。
マギーやグレンはストーリー展開において、何の役にも立っていない。
同じ物体をオールスパークと呼んだりキューブと呼んだりするのは、無駄にややこしい。
まあ、文句はこのぐらいにしておこうかな。

(観賞日:2009年6月24日)


第28回ゴールデン・ラズベリー賞

ノミネート:最低助演男優賞[ジョン・ヴォイト]
<*『Bratz』『ナショナル・トレジャー/リンカーン暗殺者の日記』『September Dawn』『トランスフォーマー』の4作でのノミネート>

 

*ポンコツ映画愛護協会