『トゥームレイダー2』:2003、アメリカ
ギリシアのサントリーニ島沖で、大規模な地震が発生した。その影響によって、紀元前330年に火山噴火で海に飲み込まれた月の神殿が、2300年ぶりに海底に姿を現わした。月の神殿には、アレクサンダー大王が世界中から集めた財宝が眠っている。世界中のトレジャー・ハンターが財宝を求め、サントリーニ島沖に集まってきた。
ガスと2人の息子ニッキー&ジミーが船で待機している所へ、トレジャー・ハンターのララ・クロフトが現れた。ララはニッキー&ジミーと共に、神殿へと足を踏み入れた。ララはアレクサンダー大王の像の胸にあるメダルと黄金のオーブを発見し、それを持ち帰ろうとする。だが、尾行していたチェン・ローの一味に襲撃され、ニッキーとジミーは殺害される。メダルとオーブを奪われたララは神殿を抜け出し、潜水艦で現れた執事ヒラリーとプログラマーの友人ブライスに救出された。
ウィンブルドンの豪邸に戻ったララは、MI−6の情報部員スティーヴンスとキャロウェイの訪問を受けた。彼らによると、チェン・ローの一味にオーブを奪わせたのは、生物兵器設計の第一人者ジョナサン・ライス博士の仕業だという。彼は「生命のゆりかご」と呼ばれる土地に封印されたギリシャ神話の秘宝、「パンドラの箱」を入手しようと企んでいた。ララが発見したオーブは、「生命のゆりかご」の場所を示す地図になっているのだ。パンドラの箱が開かれたら、人類滅亡の危機が訪れることになるという。
女王陛下の指令を受けたララは、かつてチェン・ローの組織“シェイ・リン”に潜入した恋人テリー・チェリダンの協力を得ることにした。かつてテリーは海兵隊の将校だったが傭兵になり、政府からは裏切り者として扱われている。ララはカザフスタンへ向かい、刑務所に収容されているテリーを出所させた。ララはテリーと共に、シェイ・リンのアジトがある中国へ飛ぶ。
ララとテリーはチェン・ローの手下達に捕まり、アジトの洞窟へ連行された。ララはチェン・ローを倒し、メダルを奪還する。しかし、オーブはチェン・ローの弟ジェンによって上海に運ばれていた。ララとテリーは上海のフラワー・パゴダへ行き、ジェン達とライス一味の取引現場を襲撃する。しかしライスはジェンを殺してオーブを奪い、ヘリコプターで逃亡してしまう。
ララとテリーは香港へ飛び、ショッピング・モールの地下にライスの研究所があることを突き止めた。研究所に潜入したララ達はオーブを奪い、追っ手を振り切った。テリーが目の前を通るライスを撃たなかったことに不審を抱いたララは、彼に手錠を掛けて任務終了を宣告した。ララはブライスの協力によってオーブの模様が示す音波を解読し、「生命のゆりかご」がキリマンジャロのジャングルにあると知る。キリマンジャロへ飛んだララは、マサイの友人コーサの案内で神の山へ向かう・・・。監督はヤン・デ・ボン、原案はスティーヴン・E・デ・スーザ&ジェームズ・V・ハート、脚本はディーン・ジョーガリス、製作はローレンス・ゴードン&ロイド・レヴィン、共同製作はルイス・A・ストローラー、製作協力はシェリー・クリッパード&ホリー・ゴライン、製作総指揮はジェレミー・ヒース=スミス、撮影はデヴィッド・タッターサル、編集はマイケル・カーン、美術はカーク・M・ペトルッセリ、衣装はリンディ・ヘミング、音楽はアラン・シルヴェストリ。
主演はアンジェリーナ・ジョリー、共演はジェラルド・バトラー、シアラン・ハインズ、クリストファー・バリー、ノア・テイラー、ジャイモン・フンスー、ティル・シュヴァイガー、サイモン・ヤム、テレンス・イン、ダニエル・カルタジローン、ファビアーノ・マーテル、ジョナサン・コイン、ロバート・カヴァナー、ロナン・ヴィバート他。
同名アクション・ゲームを基にした2001年の『トゥームレイダー』の続編。
ララ役のアンジェリーナ・ジョリー、ヒラリー役のクリストファー・バリー、ブライス役のノア・テイラーは前作に引き続いての出演。
テリーをジェラルド・バトラー、ライスをシアラン・ハインズ、コーサをジャイモン・フンスー、ライスの手下ショーンをティル・シュヴァイガー、チェン・ローをサイモン・ヤム、ジェンをテレンス・インが演じている。前作の監督は『コン・エアー』のサイモン・ウエストだったが、今回はヤン・デ・ボンに交代している。
ヤン・デ・ボンは『ツイスター』『スピード2』『ホーンティング』と3作連続で大コケし、『スピード』だけの一発屋だったことは既に明白になっているはずなのだが、それでもまだ大作メジャー映画を撮らせてもらえるのだから、幸せな人だ。一応は続編だが、シリーズとしての流れや統一感に対しては、何のこだわりも無いようだ。冒頭でララを待っているのが前作の登場人物ヒラリー&ブライスではない辺りからして、そしてララが「ララ・クロフト」としてのコスチュームを着用していない辺りからして、こだわりの無さは明らかである。
ようするに「アンジェリーナ・ジョリーがララ・クロフトという名のヒロインを演じるアクション映画」という部分だけを踏襲すれば、後は好き勝手にやってOKということなんだろう。こだわりの無さは、ララの中身がデタラメという部分にも顕著に表れている。
彼女は情報部員2名を付けるというMIー6の申し出を断ってまで、ムショに入っているのを出所させてまでテリーを相棒にしたにもかかわらず、いざ彼を連れて中国へ行くと、すぐに「釈放されるためにウソをついたわね、本当は場所を知らないわね」と疑って銃を向けるぐらいメチャクチャな女になっている。
前作からの路線の変わりっぷりは、「インディアナ・ジョーンズがジェームズ・ボンドになった」と表現すれば分かりやすいだろう。今回のララは女王陛下の指令を受けて行動を開始し、さらには「いつ何時でもテリーを始末して構わない」という殺しのライセンスまで貰っている。
もはやトゥームレイダーでも何でもありゃしない。確か今作品の公開時期に、アンジェリーナ・ジョリーが「前作より2作目の方が好き」とコメントしていた記憶がある。もちろん宣伝としての意味もあるんだろうが、ある部分では本音だったのではないかとも思う。
というのも、「アンジェリーナ・ジョリーを見せるための映画」としての徹底は、前作よりも強くなっているからである。
その目的を徹底するために、前作でキャラクターをアピールしたヒラリーとブライスは申し訳程度に顔を見せるだけの扱いで、全く活躍することが無い。新しく登場するライスやチェン・ローも、ララの相棒を務めるテリーでさえ、てんで冴えない状態にしてある。
それも全て「アンジェリーナ・ジョリーだけを目立たせる」というための処置だ。アクション映画なので、もちろんアクションシーンは多く含まれる。水上バイクで登場する際に回転してみたり、中国の山奥へ行く時にテリーとバイクチェイスをしてみたりと、まるで無意味な動きを何度か挿入するほど、アクションへの意識は高い。話の流れに沿ったアクションだけに限定すると、間が持たなくなるのだ。
さらには、チェン・ローがアジトでララと2人きりになる(手下を彼女の近くに配置したりしない)という無理を通し、1対1の格闘シーンへ持って行くという荒業も見せる。
そうそう、今回のララは、とにかく人を射殺しまくる。まあ敵が人間だから当然といえば当然だが、これも前作からのテイストの違いと言っていいだろう。それまではパンドラの箱ぐらいしかファンタジーが無かったのに、終盤に来てモンスターを登場させて、帳尻を合わせようとする。ララがモンスターと戦わないし、帳尻は合っていないんだが、そんなことはどうでもいい。「アンジェリーナ・ジョリーだけを目立たせる」という目的は達成されているんだから、たとえ映画が犠牲になろうとも、それでいいのだ。
などと、そんな風に自分を納得させようとしてみたが、どう頑張っても無理だったのは、まだまだ私の修行が足りないからに違いない。
第24回ゴールデン・ラズベリー賞
ノミネート:最低主演女優賞[アンジェリーナ・ジョリー]
<*『すべては愛のために』『トゥームレイダー2』の2作でのノミネート>