『トゥームレイダー』:2001、アメリカ
トレジャー・ハンターのララ・クロフトは、プログラマーである友人ブライスの作った戦闘メカを相手に訓練を行う。ララはウィンブルドンの豪邸で暮らしており、執事のヒラリーが身の回りの世話をしている。ブライスは、外のトレーラーハウスで生活している。
一方、イタリアのヴェニスでは秘密結社“イルミナーティー”の会合が開かれていた。彼らは5000年に1度という惑星直列の日を待ち望み、時空の扉を開く鍵を探していた。マンフレッド・パウエルは、「トライアングルの2つの破片を見つける」という使命を受ける。
5月15日。ちょうど20年前、考古学者だったララの父リチャード・クロフト卿が失踪した日である。その夜、ララは不思議な夢に導かれ、隠し部屋を発見する。ララは隠し部屋で時計を発見し、それを壊して謎めいた星図盤を見つけ出した。
ララは父の旧友ウィルソンに会うため、ロンドンの骨董品オークション会場に向かった。そこで彼女は、ライバルのアレックスと出会う。アレックスは、パウエルの下で働いていた。弁護士に成り済ましたパウエルは助手ピムズと共にララに接触し、星図盤を見て関心を抱く。その夜、ララの豪邸に武装集団が潜入し、星図盤を奪い去った。
ララは父の手紙に隠されたメッセージを読み取り、イルミナーティーが時空の扉を開ける鍵となる“聖なるトライアングル”を探していることを知る。トライアングルは5000年前、古代都市スパイラル・シティを滅ぼす際に使われた。その後、トライアングルは2つに割られ、封印された。星図盤は、その場所を示す手掛かりだったのだ。
カンボジアに飛んだララは、アンコールワット近くの遺跡でパウエル達を目撃する。地下迷宮に潜入したララは、イルミナーティーとの戦いで負傷る。父を知る僧侶の治療を受けたララは、パウエルから父がイルミナーティーの一員だったことを聞かされる。ララはパウエル達と共に、もう1つのトライアングルが眠るシベリアへ向かう…。監督はサイモン・ウェスト、原案はサラ・B・クーパー&マイク・ワーブ&マイケル・コリアリー、脚本はパトリック・マセット&ジョン・ジンマン、潤色はサイモン・ウェスト、製作はローレンス・ゴードン&ロイド・レヴィン&コリン・ウィルソン、共同製作はクリス・ケニー&ボビー・クレイン、製作協力はマイケル・レヴィー&ジブ・ポルヘムス、製作総指揮はジェレミー・ヒース=スミス&スチュアート・ベアード、撮影はピーター・メンジースJr.、編集はダラス・S・プエット&グレン・スキャントルバリー&エリック・ストランド&マーク・ワーナー、美術はカーク・M・ペトルッチェリ、衣装はリンダ・ヘミング、音楽はグレーム・レヴェル。
主演はアンジェリーナ・ジョリー、共演はジョン・ヴォイト、イアン・グレン、ノア・テイラー、ダニエル・クレイグ、リチャード・ジョンソン、クリストファー・バリー、ジュリアン・リンド=タット、レスリー・フィリップス、ロバート・フィリップス、レイチェル・アップルトン、ヘンリー・ウィンダム、デヴィッド・Y・チェン、デヴィッド・K・S・ツェー、オジー・ユエ、ラウ・ワイキート、カール・チェイス他。
同名の3Dアクション・アドベンチャー・ゲームを基にした作品。ララをアンジェリーナ・ジョリー、クロフト卿をジョン・ヴォイト、パウエルをイアン・グレン、ブライスをノア・テイラー、アレックスをダニエル・クレイグ、ヒラリーをクリストファー・バリーが演じている。
仲の良い親子を演じている実の親子アンジェリーナ・ジョリー&ジョン・ボイトだが、実際は正反対。ボイトは関係修復を望んでいるが、ジョリーは心底から父親を嫌っている。だからなのか、劇中でマトモに“共演”しているシーンは全く無い。同じカットの中に共存する時でさえ、画面の端と端に位置し、互いの手が触れるようなことさえ無い。基本的に「インディー・ジョーンズ」と「ハムナプトラ」を足して4から8ぐらいで割ったような内容だが、「ゲームが原作」ということが重視されている。前置きは無く、映像が映し出されたら、詳しいキャラや状況説明はスキップし、すぐにゲームがスタートする。
ゲームをやっている時に、プレイヤーは細かいことなど気にしない。立ちはだかる仕掛けや主人公の目的なんて大して考えず、とにかくゲームをクリアすることだけを考える。だから、この映画でも同じように、深く考えずにゲームのクリアだけを目指す。我々の代わりに製作者がコントローラーを持っているゲームだと理解すれば分かりやすい。冒頭、トゥームレイダーが自宅に遺跡セットを作ってロボット相手に戦闘訓練をするという行動から話は始まる。ワケの分からない行動だが、とにかく冒頭でアクションを見せたかったのだ。話のまとまりとか整合性とか、そんなのは無視だ。
途中、なぜかララが自宅でワイヤーに吊り下がって回転運動を繰り返すシーンがある。かなり珍妙に思える回転運動をしつこいぐらい続けるが、それは続く敵との戦闘でワイヤーを使いたいからだ。話の流れとか整合性とか、そんなのは無視だ。冷静に考えると、1つ目のトライアングルを手に入れた後で、ララがパウエル達と手を組み、パウエル達のために危険を侵して2つ目のトライアングルをゲットする意味が無い。1つ目のトライアングルを打ち砕けば、それでパウエル達の野望は打ち砕かれるからだ。まあ、時間を戻して父と会いたかったんだろう。分かりにくいが、他に理由が無いので。
話がデタラメで荒っぽいのは、どうでもいいと割り切っているからだ。どうせ細かい話なんて無駄で無意味なので、そんなところに金や労力を使っても仕方が無いという判断なのだ。そもそもヒロインのララからして、時計の解体作業が待ちきれずにトンカチで破壊してしまうような、細かいことは苦手な荒っぽい女性なのだし。アクション・アドベンチャー・ゲームに、綿密な物語など必要無いのだ。とにかく、次から次へとアクションシーンを用意する。繋がりとか関連性とか、そんなのは無視だ。人間ドラマ?そんなモノ、アクション・アドベンチャー・ゲームに必要だろうか?
とにかく見栄えのするアクションシーンを幾つも用意しており、まだ話は中盤なのに、まるでクライマックスのような巨大仏像とのバトルを持って来る。ちなみに終盤には、いかにもアトラクションでございといった巨大装置でのアクションを用意している。そりゃあアンジェリーナ・ジョリーが活躍するといっても、もちろんアクションシーンではスタント・ダブルを使いまくっているのだが、細かいカット割りと編集、大量の火薬と弾丸、派手な仕掛けを幾つも用意すれば、それなりに誤魔化すことは可能だ。
ただし、腰の抜けたようなパンチやキックは隠し切れない。それを考えると、最後に銃を捨てて素手での格闘シーンを持って来たのは大きなミステイクだと言える。しかしながら、たぶんアンジェリーナがやりたがったんだろうから、まあ仕方が無いだろう。サイモン・ウエスト監督は、この映画の意図を見事に理解している。これは「アンジェリーナ・ジョリーがララ・クロフトを演じる」という、この1点のみに尽きる映画だ。それを生かす、つまりアンジェリーナ・ジョリーをプロモーションすることが何より重要になる。
だからサイモン・ウエストは冒険の面白さではなく、ヒロインのカッコ良さをアピールするよう努める。シャワーシーンを用意したり、クソ寒いシベリアなのにオッパイが強調されるように薄いシャツ1枚で行動させたり、その手のサービス感覚も忘れない。ただし、アンジェリーナ・ジョリーのプロモーション・フィルムとしては、この映画の見せ場だけを抽出したコマーシャルの方が遥かに出来がいいということも付け加えておこう。
101分というのは長くてダラけてしまう。
その1割、せいぜい10分ぐらいで充分だ。
第22回ゴールデン・ラズベリー賞
ノミネート:最低主演女優賞[アンジェリーナ・ジョリー]
<*『トゥームレイダー』『ポワゾン』の2作でのノミネート>
第24回スティンカーズ最悪映画賞
ノミネート:【最悪な総収益1億ドル以上の作品の脚本】部門