『三銃士』:1993、アメリカ&イギリス&オーストラリア

剣の腕に自信のあるダルタニアンは、パリへ行って近衛銃士隊に入ることを決意した。そんな中、彼は自分に好意を寄せていた女性の兄ジェラルドから決闘を要求される。「僕は何もしていない」と決闘を嫌がるダルタニアンだが、ジェラルドに「お前の父親は国王を守っていたが、国王は殺された。お前の父親は恥さらしだ」と侮辱され、激怒して剣を奪い取った。ジェラルドの兄たち4人が駆け付けたので、ダルタニアンは馬で逃げ出した。
その頃、パリでは近衛隊長のロシュフォール伯爵が銃士隊に解散を通告していた。彼は国王ルイ13世とリシュリュー枢機卿の命令だと言い、イングランドとの戦いに備えて歩兵隊に身柄が移るのだと銃士隊に説明した。ロシュフォールは指示があるまで故郷で待機するよう命令し、国王の警護はリシュリューの親衛隊が担当することを話す。銃士隊は憤りを露わにするが、「1人でも逆らえば全員を投獄する」と言われたため、従わざるを得なかった。
それは全てリシュリューの企みであり、ルイ13世は何も知らされていなかった。まだアラミス、アトス、ポルトスの三銃士が戻っておらず、リシュリューはロシュフォールに「問答無用で捕まえろ」と命じた。ダルタニアンはパリへ向かう途中、馬を走らせる女性2人を男たちが追走している様子を目撃した。ダルタニアンは男たちが夜盗だと確信して退治するが、女性の1人から「彼らは王妃様の護衛兵です」と教えられる。その女性はアンヌ王妃の侍女コンスタンスだった。銃士になるためにパリへ行くと話すダルタニアンに、コンスタンスは「幸運を祈っています」と微笑して去った。
パリの町に到着したダルタニアンは、銃士隊の本部に足を踏み入れる。だが、そこにはアトスしかおらず、銃士隊が解散したことを告げる。ダルタニアンの生意気な態度に、アトスは「まず礼儀作法を覚えろ」と告げる。するとダルタニアンはアトスに対して挑戦的な態度を示し、決闘を要求した。アトスは「町外れの城跡の庭で正午に」と告げ、その場を去った。ダルタニアンは追って来たジェラルド兄弟に見つかり、慌てて逃げ出した。
ダルタニアンはポルトスに迷惑を掛けてしまうが、謝らずに決闘を要求した。ポルトスはダルタニアンに、午後1時に裏庭へ来るよう告げた。神父のアラミスは、教会に来た女性から誘惑されて抱き合った。そこへ女性の夫が乗り込んできて発砲したので、アラミスは教会から逃げ出した。飛び降りたアラミスにぶつかられたダルタニアンは腹を立て、決闘を要求した。アラミスは「午後2時に修道院で」と告げ、その場を去った。
ルイ13世はリシュリューが銃士隊を解散させたと知り、「すぐに解散させろとは言っていない。私が事情を説明するつもりだった」と抗議する。リシュリューは笑って受け流し、「今はイングランドと一触即発の状態。勝つためには銃士隊を戦場に送るしかありません」と語る。ルイ13世が「何が最善の策かを決めるのは私だ」と言うと、リシュリューは「もちろんです。お許し下さい」と口にするが、本気で謝罪したわけではなかった。
ロシュフォールは三銃士が飲んでいる酒場へ行き、「銃士の資格を放棄しろ」と宣告する。かつてロシュフォールは、銃士にあるまじき行為をして隊を追放されていた。その際、彼の行為を証言したのが三銃士だった。そのため、ロシュフォールは三銃士に恨みを抱いていた。三銃士はロシュフォールの配下を退治し、「我々は国王警護の任務を続行し、枢機卿と戦う。帰って枢機卿に伝えろ」と告げた。
ダルタニアンが最初の決闘の場に赴くと、アトスだけでなく立会人としてアラミスとポルトスも現れた。アラミスとポルトスは、自分も決闘を約束したことをアトスに話す。3人が銃士だと知って驚くダルタニアンだが、決闘の意思は変わらなかった。そこへ枢機卿の近衛兵5名が来て、三銃士に「お前たちを逮捕する」と告げた。ダルタニアンは三銃士に、戦いに加勢することを申し入れた。4人は近衛兵と戦い、全員を退治した。三銃士はダルタニアンにパリを去るよう告げ、馬で走り去った。
ダルタニアンは駆け付けたロシュフォールと部下たちに捕まり、簡易牢に入れられた。ダルタニアンはロシュフォールに父の戦利品である剣を奪われ、三銃士の居場所を吐くよう要求された。ダルタニアンが取引を拒否すると、ロシュフォールは彼を地下牢に入れるよう見張りの男に命じて立ち去った。見張り役を倒したダルタニアンは、地下洞窟の部屋にリシュリューと黒衣の女性が入るのを目撃した。
黒衣の女性はミレディー・ド・ウィンターという名で、リシュリューの配下だった。死刑になりそうだったミレディーは、リシュリューに救われていた。しかしミラディーは、欲情するリシュリューに体を許そうとはせず、ナイフで脅して強気な態度を取った。かつて夫を殺害したミラディーに、リシュリューは1つの任務を指示する。それは協定書をイングランドのバッキンガム公爵という任務だった。
リシュリューはミラディーに、イングランドと同盟を結ぶつもりだと語った。そして「他に手立ては無い。国王はフランスを統治するのは私ではなく、自分だと思い始めている。すぐカレーへ向かい、ペルセポネ号でイングランドに行くのだ。火曜日に船が出る。金曜の国王の誕生日までに、協定書にバッキンガム公の署名を貰って来るのだ」と指示した。ミラディーは任務を了解し、部屋を出て行った。
2人の会話を盗み聞きしていたダルタニアンはロシュフォールに見つかり、リシュリューの前に連れ出された。三銃士の居場所を話すようリシュリューに要求されたダルタニアンは、「知らない。知っていても喋らない」と告げる。リシュリューはダルタニアンの処刑を命じた。ダルタニアンは処刑台に連行されるが、三銃士が駆け付けて救出した。彼らはリシュリューの場所を奪い、町から脱出した。
ダルタニアンは三銃士に、盗み聞きしたリシュリューの企みを話した。4人がカレーに向かったと知ったリシュリューは、賞金稼ぎたちに首を狙わせようと考え、何羽もの鳩を飛ばした。ダルタニアンは酒場で休息を取った際、1人だけ離れて飲んでいるアトスに声を掛けた。アトスは彼に、ある友人の話をする。その伯爵は美しい娘に夢中になり、結婚した。ある日、伯爵は妻に死刑囚の刺青があるのを知った。妻は無実だと釈明するが、伯爵は役人に引き渡した。伯爵は妻が変わらぬ愛を告げて連行された時、激しく後悔したという。
次の日、4人は賞金目当ての連中に見つかり、二手に別れて逃げることにした。アトスはダルタニアンと共に森へ入り、「お前は父親にそっくりだ」と告げた。「父を知ってるのか」と驚くダルタニアンに、アトスは彼の父が国王の暗殺計画を突き止めたこと、同僚の手引きで罠に掛けられて殺されたことを話した。追っ手が迫ったため、アトスはダルタニアンに「ここは俺が引き受ける。お前はカレーへ行け。枢機卿の密使を捕まえろ」と命じた。
ダルタニアンはアトスを心配しながらも、馬を走らせた。疲れて眠りに落ちた彼は落馬してしまい、そこへ通り掛かったミラディーは場所へ運ぶよう側近2名に指示した。ダルタニアンはカレーの宿で目を覚まし、ミラディーがリシュリューの密使だと知らずに自分の目的を話してしまう。ミラディーはダルタニアンを誘惑し、油断させて殺そうとする。気付いたダルタニアンが取り押さえると、ミラディーの肩には死刑囚の刺青があった。
ミラディーは部下たちにダルタニアンを捕まえさせ、カレーの港へ向かった。一行は船に乗り込むが、乗組員は全て始末されていた。アラミスとポルトスが先回りして待ち受けていたのだ。ミラディーは三銃士に手下たちを退治され、その場から逃走を図る。そこへアトスが立ちはだかるが、ミラディーの姿を見て驚いた。ミラディーはアトスの妻で、処刑されたはずだった。アトスがダルタニアンに話した内容は、友人ではなく彼の体験した出来事だった。
アトスは密書を渡すようミラディーに要求し、銃を構える。しかしミラディーが「撃つなら心臓を」と無防備な態度を示すと、アトスは引き金を引くことが出来なかった。そこへミラディーが殺した夫の兄が現れ、ミラディーを連行して投獄した。三銃士とダルタニアンは、リシュリューとバッキンガム公の同盟協定書を手に入れた。そこには、リシュリューが権力の証を立てることが約定の条件だと記されていた。どうやってリシュリューが権力の証を立てようとしているのか分からないため、アトスは処刑を待つミラディーと面会して情報を聞き出そうとする…。

監督はスティーヴン・ヘレク、原作はアレクサンドル・デュマ、脚本はデヴィッド・ローヘリー、製作はジョー・ロス&ロジャー・バーンバウム、共同製作はネッド・ダウド&ウィリアム・W・ウィルソン三世、製作総指揮はジョーダン・カーナー&ジョン・アヴネット、撮影はディーン・セムラー、編集はジョン・F・リンク、美術はウルフ・クローガー、衣装はジョン・モロ、音楽はマイケル・ケイメン、主題歌はブライアン・アダムス&ロッド・スチュワート&スティング。
出演はチャーリー・シーン、キーファー・サザーランド、レベッカ・デモーネイ、クリス・オドネル、オリヴァー・プラット、ティム・カリー、ガブリエル・アンウォー、マイケル・ウィンコット、ポール・マッギャン、ジュリー・デルピー、ヒュー・オコナー、クリストファー・アダムソン、フィリップ・タン、アーウィン・レダー、アセクル・アンセルム、ブルーノ・トスト、オリヴァー・ホッパ、エマ・ムーア、ハーバート・フックス、ニコラ・コーデイ、セバスチャン・エックハート他。


アレクサンドル・デュマの小説『三銃士』を基にした作品。
脚本は『スター・トレック5/新たなる未知へ』『パッセンジャー57』のデヴィッド・ローヘリー、監督は『ビルとテッドの大冒険』『飛べないアヒル』のスティーヴン・ヘレク。
アラミスをチャーリー・シーン、アトスをキーファー・サザーランド、ミレディーをレベッカ・デモーネイ、ダルタニアンをクリス・オドネル、ポルトスをオリヴァー・プラット、リシュリューをティム・カリー、アンヌをガブリエル・アンウォー、ロシュフォールをマイケル・ウィンコット、ジュザックをポール・マッギャン、コンスタンスをジュリー・デルピー、ルイ13世をヒュー・オコナーが演じている。

いかにもウォルト・ディズニー・ピクチャーズらしい、明朗で健全な作品である。
それが完全に幼児向けの映画だったりすれば、「明朗で健全」ってのは褒め言葉になる可能性が高い(絶対とは言えないが)。
しかし、大人の観客もターゲットに入れて作られているはずの本作品では、その健全性がプラスに作用していない。
アクも毒も無くて、面白味に欠けるという状態を生み出してしまっている。

アクも毒も無いだけでなく、全体的に単調でメリハリに欠ける。
酒場で女を口説くシーンは、メリハリと言うよりも、ただダラダラしているとしか感じない。
そこは「アトスが“友人の話”として自分とミラディーの関係について話すために設けられているシーンであり、それを説明しておくのは必要な手順だ。
ただ、そのための前振りとして女を口説く様子を描いて時間を消費するってのは、支払う犠牲が多いんじゃないかと感じてしまう。

ダルタニアンがジェラルド兄弟に追われると、ダルタニアンが作業中の男性とぶつかるとか、その男がハシゴにぶつかったために女性が追っ手の上へ落下するとか、ダルタニアンがロープを切って材木を追っ手に落とすとか、そういうアクションがある。
最初に見栄えのするアクション・シーンで観客を引き付けようってことなんだろうけど、残念ながら、ちっともテンションが高まらない。
たぶん原因の1つは、その時点で、まだダルタニアンという男に何の魅力も感じていないからだろう。
演じている役者が大物スターであれば、役者の持っているパワーだけで充分かもしれないが、クリス・オドネルでは弱い。
ただし、それ以降に何度か用意されているアクションシーンも今一つなので、見せ方やテンポがイマイチという問題の方が大きいとは思うが。

っていうか、「その時点でダルタニアンという男に何の魅力も感じない」ということでは済まなかった。
その後も、ダルタニアンという男に何の魅力も感じないまま、どんどん物語が先に進んでいく。
「血気盛んで自信に満ちた若者」というキャラクターとして描きたいのは分かるんだよ。
でも、それを「未熟で思慮深さに欠けるが好感の持てる若者」としてアピールできているのかというと、まるで出来ていないんだよな。
ただの不愉快な若造にしか感じられない。

例えば銃士隊本部でアトスに決闘を要求するのは、相手が銃士だと知らなくても、明らかにダルタニアンが悪い。銃士隊が解散したのは事実なんだから、そこでアトスを責めても仕方が無いでしょ。
ポルトスに決闘を申し込むのも、やはりダルタニアンが悪い。「アメリカの王妃から貰った」というのはポルトスの嘘だけど、しかしズボンを濡らしてしまったのは事実なんだから、まずは謝れよ。
アラミスとの一件に関しても、もちろん相手がぶつかって来たことは確かだが、アラミスは謝っている。
ダルタニアンって、最初から「何かあったら決闘してやろう」という気で歩き回っているようにしか見えないんだよね。
で、繰り返しになるけど、そういう好戦的すぎる若者を魅力的な人物として伝えることが出来ていれば、問題は無い。でも、そんな風には見えない。ただただ、不愉快だ。

っていうか、根本的なことを言っちゃうと、その「3人と決闘の約束を交わす」という手順が面倒に感じてしまったんだよなあ。
それは原作通りにやっているだけなので、決して脚本家が間違った改変をやらかしているわけではない。ただ、いっそのこと、ダルタニアンと三銃士の出会いを大幅に変えても良かったかなあと思ったりもする。
なんかねえ、そこが無駄に手間を掛けているように思えてしまうんだよな。
さっさと三銃士とダルタニアンを一緒に行動させて、それ以降の物語を厚くした方がバランスがいいんじゃないかと。

ダルタニアンは、馬を走らせる侍女2名を追走している2人の男たちを見て退治する。でも、「ダルタニアンが夜盗と勘違いした」ってのは、彼のセリフがあるまで全く分からなかった。それどころか、妙な悪戯心とか、あるいは馬を奪おうとしたとか、そういうことに見えてしまった。
理由は2つあって、まず、馬を走らせる4人の姿が遠いこと。
だから、「前の女2名を後ろの男2名が追い掛けている」というのが伝わりにくい。
もう1つは、その様子を見ていたダルタニアンが、笑みを浮かべていること。
だから、悪戯心とか、あるいは馬を奪おうとしたとか、そんな感じにさえ見えてしまう。そこはハッと気付いて真剣な顔で助けるべきじゃないのか。

リシュリューはミラディーに、同盟を結ぶための協定書をイングランドのバッキンガム公爵に届けて署名を貰って来るよう命じる。それを知った三銃士とダルタニアンは、それを阻止するために動き出す。
ここ、ちょっと構図として分かりにくい。
もちろん三銃士たちが善玉、リシュリューは悪玉なので、同盟を阻止するのは「正義のための行い」なのだ。
しかし、同盟を結べば戦争は回避できる。三銃士たちの行動は「同盟による和平よりもイングランドとの戦争を選ぶ」ということだから、ちょっと素直に応援しにくいんだよな。

それと、「ルイ13世が国を統治しようとしているので、リシュリューはイングランドとの同盟を結ぼうとする」ってのも、良く分からない。
リシュリューの最終的な目標は、ルイ13世を排除して自分がフランスを掌握することにある。でも、そのためにイングランドとの同盟を結ぶってのは、どういう方程式なのか分かりにくい。
そこには「イングランドと密約を結んでルイ13世を失脚させ、自分が王位に就く」という企みがあって、それは後半に入ると分かって来るんだけど、ミラディーに任務を命じる段階で明示してほしい。
そのためには、ホントはバッキンガム公爵が悪党であることも示しておくといいんだろうけど。

物語が進むにつれて、ダルタニアンに対する不快感は消えて行く。
だが、それは「リシュリューの一味と対峙し、陰謀を阻止する」という目的に向かって行動することによって、そこの部分が薄まっているだけに過ぎない。
悪党に対して生意気な口を叩いたり、無闇に戦おうとする態度を取ったりしても、それは好意的に捉えることが出来るからね。
ただそれだけのことであり、ダルタニアンが精神的に成長するドラマが描かれているわけではない。

「明朗で健全」と前述したけど、パリの町でダルタニアンが近衛兵と戦って殺したり、カレーの港ではアラミスとポルトスが始末した船員の死体が転がっていたりと、ダルタニアン&三銃士による殺人行為は、ハッキリと描いているんだよね。
もちろん、殺傷能力のある武器で戦っているし、4人は相手を殺す意思を持って戦っているんだから、その結果として敵が死ぬのは当然っちゃあ当然だ。
でも船員はともかく、近衛兵は逮捕が目的であり、殺す意思は無かったはず。
なので、そういう相手に戦いを要求して殺してしまうってのは、ちょっと引っ掛かる部分が無いわけでもないぞ。

この映画を見たことは無くても、ブライアン・アダムスとロッド・スチュワートとスティングの歌うエンディング曲の『All For Love』を聴いたことがあるという人は、結構いるんじゃないだろうか。
タイトルでピンと来なくても、実際の歌を聴けば「ああ、なんか知ってる」と思う人も少なくないと思う。
大物歌手の3人にエンディング曲を歌ってもらっているのは、もちろん三銃士に引っ掛けてのことだ。
ただ、肝心の三銃士は、今一つ個性を発揮できていないかなあという印象。
あと、コンスタンスは完全にオマケみたいな扱いだ。ダルタニアンに惚れるキャラだが出番は少ないし、ダルタニアンと絡むのも序盤の後は残り10分程度になるまで無いし。

(観賞日:2013年12月4日)


第14回ゴールデン・ラズベリー賞(1993年)

ノミネート:最低助演男優賞[クリス・オドネル]

 

*ポンコツ映画愛護協会