『ザ・サークル』:2017、アメリカ

水道会社のお客様窓口で派遣社員とした働くメイ・ホランドは、車のトラブルに見舞われた。彼女は友人のマーサーに連絡して来てもらい、車を直してもらった。両親の家を訪ねたメイは、「マーサーとならお似合いよ」と言われて「付き合ってないわよ」と否定した。父のヴィニーは多発性硬化症を患っており、母のボニーが治療に多額の費用が掛かることを話す。メイは一流企業のザ・サークルで働く友人のアニー・アラートンから、頼んでおいた面接が決まったことを知らされた。仕事は顧客対応なので現在と変わらないが、働く環境は今までと大きく異なる。
翌日、メイはザ・サークルのオフィスへ赴き、ダンという社員の面接を受けた。入社したメイは、アニーにオフィスの敷地を案内される。ザ・サークルは巨大企業で、ヘリポートやジム、有機農業やサロンなど様々な施設が充実していた。途中からダンが案内を引き継ぎ、訓練担当のジャレッドを紹介した。ジャレッドはメイに、顧客対応の仕事を説明した。1週間後、「ドリーム・フライデー」と称する恒例のイベントがあり、イーモン・ベイリーCEOの話を聞くため社員は講堂に集まる。アニーはアムステルダムからロンドンとニューヨークへの出張を経て、講堂にやって来た。「睡眠は取ったの?」とメイが訊くと、アニーは「2、3時間。薬も飲んだ」と答えた。
ドリーム・フライデーでは、開発中の商品を紹介することになっている。1度目はタイ・ラフィートが「トゥルー・ユー」を発表しており、今回はベイリーが「シー・チェンジ」を紹介した。彼は趣味のサーフィンについて語り、「ビーチに設置したカメラで波は見られるが、映像が荒い」と言う。しかしワイヤレスで小型のシーチェンジを使えば、鮮明な映像で波を捉えることが出来た。ベイリーはリアルタイム解析処理の機能もあること、数ヶ月以内に販売することを語った。彼が「世界中の人権活動家にアカウンダビリティーが必要だ。全てが見えるし聞こえる。何か起きれば我々が知る」と話すと、社員たちは喝采を送った。
メイはアニーに連れられて社内パーティーに赴き、ベックがステージで歌う様子を見て驚いた。メイは幹部であるアニーに、「ベイリーはどんな人物なの?」と質問した。するとアニーは立ち入り禁止の部屋へメイを案内して、「ここはベイリーとステントンの作戦ルーム」と教えた。アニーは「アンタはパーティーに戻って」と言い、仕事に戻った。パーティー会場へ向かったメイは、黒人男性を見つけて話し掛けた。男性は隠しておいた酒を取り出し、メイに勧めた。ザ・サークルという職場について感想を訊かれたメイは、「ワクワクする。前の職場では、朝から晩まで怒っている人をなだめていた。今は大満足」と述べた。
週末に両親と会ったメイは新しい職場について問われ、「もう他の会社じゃ働けない」と話す。ボニーは友人にメイの給料を話し、「ウチの娘は世界一の会社に勤めてる」と自慢していた。メイはマーサーから、ザ・サークルを独占禁止法で潰そうとしている議員がいることを聞かされた。両親の家を去った後、メイは趣味のカヤックで海に出た。出勤したメイは、ウィリアムソン上院議員が反トラスト小委員会に独禁法の疑いでザ・サークルの調査を求めたことを報じるニュースを見た。COOのトム・ステントンは取材を受け、「申し立てが覆されると確信しています」とコメントした。
メイは先輩社員のジーナとマットから、ソーシャルネットワークを設定するよう勧められる。課外活動まで手が回らないことをメイが釈明すると、ジーナは「プロフィールの入力やアクティビティーへの参加は社内活動に不可欠よ」と語った。マットは「仕事だけじゃなくてコミュニティーも大事だ。全てが繋がっている」と言い、ジーナはメイが週末や夜のイベントを休みがちであることに苦言を呈した。大勢の社員がアクティビティーに参加していることを聞いたメイは、週末に両親と会っていたことを話した。
ジーナとマットはメイのデータをチェックし、父親が多発性硬化症だと知った。すると2人は、「この件でサークラーに相談した?多発性硬化症に関するグループが4つあって、親が患ってる人の会も2つある」と言う。メイが週末にカヤックをしていたことを知ったジーナは「プロフィールに記載が無い。いいねも無いし書き込みも無い」と言い、ソーシャルネットワークへの参加を改めて促した。ジーナはメイに、既に1週間で8千通もメッセージが届いていることを教えた。
ジーナは参加ランクについて説明し、「人気ランクと呼ぶ人もいるけど、インナーサークルでの貴方の活動を集計し、アルゴリズムで計算した数字」と告げた。メイはアカウントを設定し、ソーシャルネットワークに参加した。彼女は週末に実家へ戻る習慣を取り止め、ボニーはテレビ電話で寂しさを吐露した。実家にはマーサーが作った工芸品である鹿のシャンデリアが飾られており、その写真をメイは自分のアカウントにアップした。
アニーはメイに「ご両親の状況を調べてみた。いい方法がある」と告げ、女医のジェシカ・ヴィラロボスを紹介する。ジェシカはメイに健康診断を受けさせてリストバンドを装着し、センサーと同期していること、サークル内でデータが共有されることを説明した。アニーは両親も会社の保険に加入できることを教え、メイは感謝した。ステントンは野外ステージで社員たちにスピーチし、アカウンタビリティーとオープン性の大切さを語る。彼はウィリアムソン議員の違法取引が暴露されたことを例に挙げ、「これは教訓です。より良いサービスのために、議員たちが税金で何をしているのか我々は知りたい」と述べた。
ステントンは「ある女性が劇的な一歩を踏み出しました」と語り、オリヴィア・サントス議員を紹介した。サントスは社員たちに、自身の全ての電話やメールを有権者からリアルタイムでアクセス可能にすると発表した。夜のパーティーで先輩社員のサビーネと会ったメイは、彼女も以前は顧客対応部門だったこと、現在は子供を犯罪から守るための追跡システムを開発していることを聞く。彼女の「骨にチップを入れる」という言葉を冗談だと思ったメイは笑うが、サビーネは「今すぐに犯罪を本気で撲滅するの」と真剣に語った。
あの黒人男性が1人でいるのを見つけたメイは、彼に話し掛けた。「サントスのプレゼン、どう思った?」と質問されたメイは、「歴史に刻まれるようなことよ」と答える。しかし「本音はどうだ?」と質問されると、「ちょっとやり過ぎじゃないかな」と苦笑した。メイが「データはクラウドのどこかに保存されるの?」と尋ねると、男は「いい物を見せてやる」と地下へ案内する。彼はリストバンドを外させ、立ち入り禁止の場所へ入る。そこは廃線になった地下鉄のホームで、全ての人間のデータが保存されると男は説明した。
男が「サントスは始まりに過ぎない。記録されて配信された全てのデータが保存され、ザ・サークルのために使われる。君は健康診断を受けたな。そのデータも、ザ・サークルの収益のために使われる」と語ると、メイは「でも任意でしょ。全てを1つにするのが、トゥルー・ユーの本来の目的でしょ」と意見を述べる。男は自分が開発者のタイだと明かし、「この会社を変えなくてはいけない。富と支配のために他人のデータを活用するのは間違ってる。僕の構想とは大違いだ」と語った。
メイはマーサーの訪問を受け、「俺の作品をアップしただろ」と確認される。マーサーが「君に悪気は無いんだろうけど、俺は鹿殺しって言われてる。ぶっ潰すというキャンペーンも始まっているし、殺すという脅迫も受けた」と話すと、メイは驚いて「ごめんなさい。何とかする」と言う。マーサーは「俺は君の作り出す世界の一部になりたくない。周りの奴らを見ろ。ここを出ようとは思わないのか」と責めるように言うが、メイが理解できない様子なので立ち去った。
深夜にカヤックで海に出たメイは転覆してしまうが、シーチェンジのおかげで助かった。シーチェンジを見ていた人物が転覆に気付いて、レスキュー隊に連絡したからだ。大勢がオンラインで見ていたため、メイの一件はすぐに広まった。彼女はベイリーとステントンから作戦ルームに呼び出され、「今回の出来事で、シーチェンジの重要性が多くの人に知れ渡った」と言われる。ベイリーは作戦ルームへの無断入室を知っていたと明かし、軽く笑い飛ばした。ベイリーはメイに「秘密を持たずに、知識や情報を独占しなければ豊かな可能性を実現できる」と語り、ある計画を提案した。
次のドリーム・フライデーで、彼はメイをステージに上げる。メイはベイリーとの問答で、「見られていれば行動は良くなる」「秘密とは嘘」「秘密があると犯罪が起きる可能性がある」と社員たちに話す。ベイリーは息子がであることを語り、「息子は何か経験したければ、ビデオや写真を見る。他の人が経験したことを通じて世界を見る」と社員たちに告げる。彼の質問を受けたメイは、自分の体験を他の人々にシェアさせないのは間違いだと断言する。「今後は改良されたシーチェンジ・カメラを身に着け、どんな時も自分を透明化します」と彼女が宣言すると、社員たちは拍手を送った。
透明化の生活を始めてから3週間が経つと、メイのフォロワーは230万人を突破した。メイは同じリストバンドを両親にも装着してもらい、テレビ電話の様子もシーチェンジ・カメラを通じて透明化した。ある夜、帰宅したメイが両親と連絡を取ろうとすると、カメラに性的な光景が写し出された。慌ててカメラを切り替えたメイだが、多くの人々が見ていたので大きな話題になった。この一件を受けて両親はメイとの連絡を絶ち、シーチェンジのカメラを外した。メイはベイリーに求められ、重要な会議にも出席した。
ベイリーは「ザ・サークルのアカウントで自動的に選挙登録できるようにすべきだ」と語り、全ての州知事が口頭で合意してくれたことを明かす。するとメイは「もう一歩、先に進めてみては?」と言い、「投票年齢に達した人に、ザ・サークルへの登録を義務付けては?」と提案する。「加入しない者はどうする?」とベイリーが質問すると、彼女は「システムを統合すればいい。ザ・サークルのアカウントで、税金も投票も、駐車違反の罰金も全て処理できます。ユーザーの利便性は高まるし、国は多くの出費を削減できる。想像して。これこそ真の民主主義です」と語った…。

監督はジェームズ・ポンソルト、原作はデイヴ・エガーズ、脚本はジェームズ・ポンソルト&デイヴ・エガーズ、製作はゲイリー・ゴーツマン&アンソニー・ブレグマン&ジェームズ・ポンソルト、製作総指揮はステファニー・アズピアズー&ロン・シュミット&ピーター・クロン&スティーヴン・シェアシアン&エヴァン・ヘイズ&サリー・ウィルコックス&ラッセル・レヴィン、共同製作はソフィア・ディリー、撮影はマシュー・リバティーク、美術はジェラルド・サリヴァン、編集はリサ・ラセック&フランクリン・ピーターソン、衣装はエマ・ポッター、音楽はダニー・エルフマン、音楽監修はティファニー・アンダース。
出演はエマ・ワトソン、トム・ハンクス、ジョン・ボイエガ、カレン・ギラン、ビル・パクストン、エラー・コルトレーン、パットン・オズワルト、グレン・ヘドリー、ママドゥー・アティエ、スミス・チョー、ネイト・コードリー、プールナ・ジャガナサン、ジュディー・レイエス、アミール・タライ、エレン・ウォン、エルヴィー・ヨスト、ベック、イヴ・ゴードン、ジュリアン・ヴォン・ナーゲル、エイミー・マッカーシー=ウィン、ニコラ・バートラム、ローレン・ボールドウィン、ハンター・バーク、ダニエル・ウィリアム・ジョーダン、アラナ・アイマク他。


デイヴ・エガーズの同名小説を基にした作品。
監督は『いま、輝くときに』『人生はローリングストーン』のジェームズ・ポンソルト。
脚本はジェームズ・ポンソルト監督と原作者のデイヴ・エガーズが共同で担当している。
メイをエマ・ワトソン、ベイリーをトム・ハンクス、タイをジョン・ボイエガ、アニーをカレン・ギラン、ヴィニーをビル・パクストン、マーサーをエラー・コルトレーン、ステントンをパットン・オズワルト、ボニーをグレン・ヘドリー、ジャレッドをママドゥー・アティエ、ジーナをスミス・チョー、ダンをネイト・コードリーが演じている。
ミュージシャンのベックが、本人役で出演している。

導入部でメイはザ・サークルの面接を受け、入社することになる。
この時点では、ザ・サークルがどんな会社なのか全く分からない。面接のシーンでメイは「トゥルー・ユーはバラバラだったアカウントを1つに統合しました。本名を使うし、クレジットカードも直結です」と話しているけど、それでは何の足しにもならない。
ちなみに、このシーンでダンは「ポール、ジョン?」「マリオ、ソニック?」と二択の質問をするのだが、これって何なのか。ワシはIT企業に詳しくないんだけど、そういうのが普通なのかな。
ただ、それが普通かどうかはともかく、少なくとも観客を掴む力は無いし、ザ・サークルという会社の一端を示すシーンとしても正解とは思えない。

メイがザ・サークルの面接を受けると決まった段階で、「ザ・サークルとはどんな会社か」について説明するチャンスはある。だが、その時点では、まだ説明してくれない。
面接シーンというタイミングもあるが、ここでも前述したように会社の概要は分からない。
入社したメイをアニーが案内するシーンもチャンスだが、ここでも説明しない。
いつになったら説明するのかと思ったら、なんと説明しないままで話を進めてしまう。
それは手落ちだと断言できるぞ。

「こんなことをやっている会社です。こういうことで世界的な企業になりました」という簡単な説明ぐらい、1分ぐらいで済むことだろう。
なのに、その手間を惜しんで何の意味があるのかと。
ザ・サークルという会社の概要が、物語に全く無関係なら一向に構わないよ。でも、「どういう方針で何をやっている会社なのか」とか、「トゥルー・ユーがどういう物なのか」ってのは、物語の根幹に関わる大切な要素になっているのだ。
だったら、早い段階で紹介すべきでしょ。

ベイリーがシーチェンジについて説明すると、社員たちは拍手を送る。だけど、シーチェンジってのはザックリ言うと監視システムなわけで、全ての社員が喜んで賛同するのは「こいつらイカれてるのか」と言いたくなる。
ベイリーが語る持論も、危険思想にしか思えないが、それも社員たちは賛同しているのよね。もはや巨大企業と言うよりも、カルト教団のような状態だ。「管理社会のメタファー」として解釈するにしても、受け入れるのは難しい。
っていうか、ここで描かれる「管理社会の恐怖」って、とっくの昔にジョージ・オーウェル辺りが取り上げていたわけで。そこに現在らしくSNSという要素は持ち込んでいるけど、なんか時代遅れじゃないかと感じる。
むしろ、SNSという要素を持ち込んだことで、余計に「それなのに今さらなことを描かれても」と感じてしまう。

ベイリーの講義やシーチェンジに他の社員が拍手を送っても、メイは新入りなので異なる感想を持ってもいいはずだ。なので、「最初は新しい職場に胸を躍らせていたが、次第に違和感を覚えて」という風に彼女を動かしていくのかと予想した。
ところが、メイはすぐに他の社員と同様の洗脳状態へ落ちるのだ。主人公が何の疑問も持たず、ザ・サークルの信者になって積極的に活動するようになるのだ。
だけど、こっちは早い段階からザ・サークルが危険な集団だと分かっているわけで。
なので、そんなヒロインは不愉快なだけだし、簡単に崇拝者へ変貌するのも「バッカじゃなかろか」と呆れてしまう。

アニーが忙しく働いていることが、前半から何度か示されている。
やたらとアピールされるので何かストーリー展開に関係あるのか、後で重要な意味を持って来るのかと思ったが、特に意味は無い。
新入りのメイが出世してアニーが嫉妬する展開はあるが、「嫉妬したアニーがメイに何か仕掛ける」みたいな展開は無いし。「ザ・サークルという会社では忙しく働くことが求められる」というわけでもないし、それがストーリーに大きく影響するわけでもない。
これは「野心家のヒロインが出世を目指す物語」ではないんだし、アニーが多忙であろうが無かろうが「管理社会の恐怖」には何の関係もないし。

アニーはメイからベイリーはどんな人物なのか尋ねられた時、立ち入り禁止の部屋へ案内する。
機密事項なので口外しないよう彼女は釘を刺しているが、新入りの社員を立ち入り禁止の部屋へ案内している時点でアウトでしょ。
そもそも、幹部だからって、なぜ簡単に立ち入り禁止部屋へ簡単に入ることが出来ているのか。色んな商品で「全てを知る」ってことを追求している会社のようだけど、そういうトコの警備体制はユルユルなんだな。
後から「ベイリーは入室を知っていた」ってのが明らかになるけど、「知っていたから入ってもOK」ってわけではないぞ。そこをユルユルにしていると、テーマの徹底という意味でも傷になるぞ。

メイはアニーから「パーティーに戻って。楽しんで」と言われて、パーティー会場へ戻る。1人でいる黒人男性を見つけた彼女は、すぐに話し掛ける。
このシーン、ものすごく不自然なのだ。なぜメイは、彼に話し掛けるのか。
その男はタイ・ラフィートであり、「メイとタイを会わせておく」という目的を果たすために用意されたシーンなのは言うまでもない。「先にメイがタイと会っていて、後から彼がタイと知る」という展開にしたければ、そんなのは一向に構わない。
だけど、もっと上手くやらないとダメでしょ。そんなに不自然極まりない形しか取れないのなら、「相手がタイと分かって対面する」というシーンだけにした方がマシだわ。

メイはザ・サークルについて、タイに「ワクワクする。今は大満足」と話したり、両親に「もう他の会社じゃ働けない」と言ったりする。
だけど、その時点で観客に示されている情報からすると、そこまで彼女がザ・サークルに大きな満足感を抱いている理由が分からないのだ。
そりゃあ水道会社のクレーム係に比べれば、何しろ巨大企業なので給料は上だろうし、それだけでも嬉しいだろう。ただ、「もう他の会社じゃ働けない」と語るぐらい満足できるポイントは、まるで描かれていないのよ。
そこまでに描かれたことって、「施設の充実」と「ジャレッドの指導」と「ドリーム・フライデー」と「パーティー」の4つだ。
「それで充分じゃないか」と思うかもしれないけど、それによってメイが大きな喜びや充実感を抱いているという印象は受けなかったのよ。

メイはジーナとマットから、ソーシャルネットワークやアクティビティーへの積極的な参加を促される。次のシーンで、彼女はテレビ電話でボニーと話している。
どうやら「今までは週末に必ず実家へ戻っていたが、その習慣を変えた」ってことを示しているシーンらしい。
だけど、あまりにも省略し過ぎで説明不足になっているので、ものすごく分かりにくいぞ。
一応は母と話すまでに「メイがパソコンを操作したり、オフィスの敷地に出たりしている」という様子を描いているんだけど、それが「メイが参加ランクを意識してソーシャルネットワークを利用したり、アクティビティーに参加したりしている」という表現としてはボンヤリしすぎなのよ。

ヴィニーは多発性硬化症を患っており、ボニーが世話をしている。治療には多額の費用が掛かるし、発作を起こすシーンもある。
しかし、メイは父のために稼ぎを増やそうとするわけではない。カヤックに乗りながら泣くシーンはあるが、ヴィニーの病気が物語に上手く絡んでいるとは到底言えない。
「会社の保険が両親にも適用される」という展開はあるけど、だから何なのかと。それが弱みになってメイが会社の指示に従わざるを得なくなるとか、そういうわけでもないし。
それを「メイがザ・サークルの信者になる」という理由の1つとして解釈するにしても、管理システムとは別物なので「なんかズレてる」と感じるし。

開始から40分ほど経過した辺りで、メイは「骨にチップを入れる追跡システムで犯罪を撲滅する」という話を聞く。
この時、彼女は困惑の表情を見せており、そのシステムに決して賛同していないことは明白だ。
なので遅ればせながら、ようやく「ザ・サークルに違和感を抱くようになり」という展開が待っているのかと思った。
その直後にメイがタイから「ザ・サークルは間違っている」と警告されているので、「ここからヒロインの心境は大きく変化し、行動にも出ますよ」と宣言しているようなものだしね。

その2つのシーンだけでも、「メイがザ・サークルに疑問を抱いて自身の行動を変え、それに伴って周囲の社員やシーチェンジの異常性に気付く」という展開へ移るきっかけとしては充分だ。
しかしダメ押しとして、メイのせいでマーサーがバッシングを浴びるというシーンもある。メイはマーサーから激しく批判されるんだし、「ソーシャルネットワークに踊らされていたら危険だ」と感じても理解できる。
だが、なぜか予想を大きく裏切り、メイはザ・サークルの信者になるという展開に突入するのだ。
そうなると、タイの警告やマーサーの怒りという手順は、ほぼ無意味になってしまう。
そこを殺して、何の意味があるのかと。

自身の透明化を宣言したメイは、たちまち有名人になる。単に「ザ・サークルやシーチェンジの恐ろしさに気付かない」ってだけでなく、「ベイリーに洗脳されたような状態になる」ということでもない。彼女は有名人になって、すっかり調子に乗るのだ。
まだ前半の内なら、何とかなったかもしれない。でも、もう映画が始まってから1時間ほど経過した辺りで、「ソーシャルネットワークを使って有名人になり、悦に入る」という姿を見せられるんだぜ。
それはタイミングがあまりにも遅すぎるわ。
むしろ、そういう時期を経て、「ザ・サークルの異常性に気付き、何かを変えようとしたり暴こうとしたりする」という行動に移るべきタイミングでしょ。

しかも両親の一件があっても、こいつは反省もしなけりゃ問題にも気付かない。それどころか、「投票年齢に達した人にザ・サークルへの登録を義務付けては」とまで言い出す。
これをマジに「正しいこと」と彼女は思っているのだ。
標的となる人物を確実に見つける新機能の「ソウル・サーチ」についても、その醜悪さに全く気付かず得意げに発表する。
そのボンクラっぷりは、嫌悪感を抱かせるぞ。
マーサーが犠牲になって、ようやく彼女は自分の愚かしさに気付くけど、もう本編の残り時間は15分ほどしか残っていないのだ。

そこからメイは行動を起こすが、もはや彼女には「反省して贖罪すべき」という感想しか湧かない。本来なら「ザ・サークルの問題を暴き、策謀を阻止する」という行動こそがヒロインとしてふさわしいのだが、そんな資格は彼女には無いのだ。
しかも、この期に及んで彼女は「ザ・サークルに罪があるわけじゃない。悪いのはツールやシステムよ」と言うのだ。どうしようもないクソ女なのだ。
そんで彼女が何をやるのかというと、「ベイリーとステントンの極秘メールを公開する」という行動だ。
だけど、その程度では、ザ・サークルも信者も、何も変わらないぞ。
そんなわけで、最後までメイはクソ女のままなのであった。

(観賞日:2019年12月9日)


第38回ゴールデン・ラズベリー賞(2017年)

ノミネート:最低主演女優賞[エマ・ワトソン]

 

*ポンコツ映画愛護協会