『デッドフォール』:1989、アメリカ

レイ・タンゴとゲイヴ・キャッシュはロサンゼルス市警の刑事。タンゴはアルマーニをパリッと着こなすダンディ男。キャッシュは陽気でワイルドな典型的ヤンキー男。2人はそれぞれ破天荒な捜査で活躍しており、新聞はライバルとして書き立てている。
犯罪組織を牛耳るイヴ・ペレは、何度も邪魔をしているタンゴとキャッシュの存在を疎ましく思っていた。もうすぐ武器弾薬の大きな取り引きがあり、それを妨害されるわけにはいかない。そこで、ペレは2人を罠にハメようと考える。
タンゴとキャッシュはそれぞれ別のルートから、フロントストリートで取り引きがあるという情報をつかむ。現場に向かった2人は、そこでFBI捜査官の死体を発見。その直後にFBIが突入してくる。2人は殺人罪で逮捕されてしまった。
裁判で有罪となり、タンゴとキャッシュは刑務所に入れられてしまう。命を狙われながらも、脱獄に成功した2人。調査を進める内に、自分達を罠にハメたのがイヴ・ペレだということを知る。タンゴとキャッシュはペレのアジトに乗り込んでいく…。

監督はアンドレイ・コンチャロフスキー、脚本はランディ・フェルドマン、製作はジョン・アヴネット&ピーター・グーバー&ジョン・ピータース、共同製作はラリー・J・フランコ、製作協力はバーバラ・カリッシュ&トニー・ムナフォ、製作総指揮はピーター・マクドナルド、撮影はドナルド・E・ソーリン、編集はロバート・A・フェレッティ&ヒューバート・C・デ・ラ・ブイヤリー、美術はJ・マイケル・リーヴァ、衣装はバーニー・ポラック、音楽はハロルド・フォルターメイヤー。
主演はシルヴェスター・スタローン&カート・ラッセル、共演はテリー・ハッチャー、ジャック・パランス、ブライオン・ジェームズ、ジェームズ・ホン、マーク・アラモ、フィリップ・タン、マイケル・J・ポラード、ロバート・ジダー、ルイス・アークエット、エドワード・バンカー、レスリー・モリス、ロイ・ブロックスミス、スーザン・クレブス、デヴィッド・バード、リチャード・ファンシー、ジェリー・マルティネス、マイケル・ジェッター他。


スタローン演じるタンゴとラッセル演じるキャッシュ。波長の合わない2人が次第に仲良くなっていき、協力する中で絆を深めていくという典型的なバディ・ムービー。
軽妙なタッチのバディ・ムービーとして作ろうという方向性は見えるが、成功しているとは言い難い。

タンゴとキャッシュの活躍シーンから映画は始まるのだが、見せ方が下手。そこで2人のキャラをもっと分かりやすく表現した方が良かった。悪の組織の強大さがあまり見えないのもマイナス。悪党の凄さが描かれないから、「2人が巨大な悪に立ち向かっていく」という図式がボンヤリしてしまう。

スタローンとラッセルではコントラストが足りない。もっと対照的な2人を組ませるべき。スタローンも最初はアルマーニのスーツを着ているが、開始30分ほどで刑務所に入れられるので、そうなるとスーツを脱ぐことに。スーツを脱いだら、ちっともダンディじゃなくなってしまう。

つまり表面だけはダンディを装っているが、中身はキャッシュのキャラクターとあまり変わらないのだ。タンクトップで暴れ出す様子など、相変わらずのスタローンだ。せめてファイトスタイルに違いがあればマシだったのだが、2人とも同じようなケンカファイトを見せる。

2人は罠にハメられ、殺人罪として逮捕されるのだが、この罠がメチャクチャ。証拠物件もデタラメだらけだし、有罪になるのが不思議に思えてしまう。罠に穴がありすぎるので、どうにも話に乗り切れない。追い詰められる展開がハンパなので、反撃にも充分なパワーが生まれない。

シナリオの問題か、それても編集のせいなのか、ストーリーに厚みが感じられない。デタラメな展開をカバーするだけの圧倒的なパワーも無い。脱獄劇にスリルは無いし、脱獄後の話もスムーズに流れない。無駄な寄り道を繰り返すから、一向に盛り上がっていかない。

後半に入り、オーウェンという男が作った改造車が登場したり、タンゴの妹キャサリンが関わるエピソードが続いたりする。しかし、どれも取って付けたような感じが否めない。全体がツギハギだらけで、強引にまとめたような印象がしてしまう。


第10回ゴールデン・ラズベリー賞

ノミネート:最低脚本賞
ノミネート:最低主演男優賞[シルヴェスター・スタローン]
<*『ロックアップ』『デッドフォール』の2作でのノミネート>
ノミネート:最低助演女優賞[女装のカート・ラッセル]

 

*ポンコツ映画愛護協会