『ソードフィッシュ』:2001、アメリカ

ロサンゼルス空港で、不審なパスポートを所持していたハッカーのアクセル・トーバルズが拘束された。彼を雇ったライズマン上院議員は、部下のキャプランに手を打つよう命じた。FBIのサイバー犯罪取締官ロバーツは、トーバルズの取り調べを開始した。しかしロバーツが電話で呼び出されている間に、トーバルズは殺し屋によって射殺された。
元クラッカーのスタンリー・ジョブソンは、今はテキサスで油田の管理をしながらトレーラーで生活していた。かつてFBIの監視システムをハッキングした彼はロバーツに逮捕され、裁判でパソコンに触ることを禁じられたのだ。妻メリッサは彼を捨てて再婚し、スタンリーは娘ホリーと自由に会うことも許されていなかった。
スタンリーはジンジャーという女から、ある人物に会って話を聞くだけで10万ドルを渡すという話を持ち掛けられた。ジンジャーの案内でガブリエルという男に会ったスタンリーは、いきなり60秒以内に国防省のシステムに侵入するよう脅される。ガブリエルの手下マルコに銃を突き付けられながら、スタンリーはシステムへの侵入を成功させた。
スタンリーはガブリエルに命じられ、ネットワークに侵入するための暗号解読プログラム作成を開始した。そんな中、スタンリーはジンジャーが自分の身体に盗聴器を仕掛けている姿を目撃した。ジンジャーはスタンリーに、自分はDEAの潜入捜査官だと告げた。一方、当初は計画の推進者だったライズマンは、中止命令に背いたガブリエルの始末を部下に命じた。
ガブリエルはスタンリーに、1980年代にDEA(麻薬取締局)が実行したソードフィッシュ作戦について語った。DEAは麻薬捜査のために架空の会社を作ったのだが、それによって多額の利益が生じ、その闇資金が今では95億ドルになっていた。ガブリエルは、その金を奪う作戦を立てているのだという。彼はスタンリーに、自分は国の安全を守るために行動しているのだと語った…。

監督はドミニク・セナ、脚本はスキップ・ウッズ、製作はジョナサン・D・クレイン&ジョエル・シルヴァー、共同製作はダン・クラッチオロ&スキップ・ウッズ、製作協力はアンソン・ダウンズ&リンダ・ファヴィラ、製作総指揮はブルース・バーマン&ジム・ヴァン・ウィック、撮影はポール・キャメロン、編集はスティーヴン・リフキン、美術はジェフ・マン、衣装はハ・ニューエン、音楽はクリストファー・ヤング&ポール・オーケンフォルド。
出演はジョン・トラヴォルタ、ヒュー・ジャックマン、ハル・ベリー、ドン・チードル、サム・シェパード、ヴィニー・ジョーンズ、ドレア・デ・マッテオ、ルドルフ・マーティン、ザック・グルニエ、カムリン・グライムズ、アンジェロ・ペイガン、チック・ダニエル、カーク・B・R・ウォラー、カーメン・アルジェンツィアーノ、ティム・デケイ、ローラ・レイン、テイト・ルパート、クレイグ・ブラウン、ウィリアム・メイポーサー、イリア・ヴォロク、ジョナサン・フレイザー、ショーン・ウッズ、レオ・リー他。


『カリフォルニア』『60セカンズ』のドミニク・セナが監督を務めた作品。ガブリエルをジョン・トラヴォルタ、スタンリーをヒュー・ジャックマン、ジンジャーをハル・ベリー、ロバーツをドン・チードル、ライズマンをサム・シェパード、マルコをヴィニー・ジョーンズ、メリッサをドレア・デ・マッテオ、トーバルズをルドルフ・マーティンが演じている。

冒頭、ガブリエルが「今のハリウッド映画に足りないのはリアリズムだ」と語り始める。カメラが引いて、彼が銀行強盗中であり、包囲している警察の前に姿を現して堂々と喋っていることが分かる。警察の愚かな行為によって、人質に付けられた爆弾が爆発する。ここまでのオープニングは、ものすごく惹き付けるものを持っている。
しかし、最後まで見終わった結果として最初に脳裏に浮かんだ言葉は、「結局は最初の数分だけだったな」という言葉だ。冒頭のガブリエルのハリウッド映画批判も、「この映画のことを自虐的に言っているのか」と思ってしまう。リアリズムが足りないと言うからには、本作品では見せるのかと思ったら、この映画こそリアリズムなど無視しているのだから。

爆発シーンでは「タイムスライス」という表現技法を使用し、スローモーションで360度回転した面白い映像を見せる。だが、タイムスライスを使うのは、そのシーンだけ。出し惜しみして1度しか使わないことによるメリットは何も無いので、予算の問題で複数回の使用は無理だったのか。
あるいは、使うのが面倒になったのか。

どうやら最初にガブリエルが自信満々で『狼たちの午後』のアル・パチーノを批判するように、彼を相当に頭がいい悪党として描きたいようだ。確かに結果的には、彼は金も入手しているし逃げ延びている。しかし、それでも彼を知性の高い完璧な悪党と見ることは難しい。むしろ、どこかバカっぽさを感じてしまうのだ。
なんせ演じているのがジョン・トラヴォルタだし。

なぜバカっぽく感じるかというと、ガブリエルの行動が行き当たりばったり(にしか見えない)だからだ。それは、たぶんミスリードが目的なのだろう。しかし、最終的に「全ては計算通りの行動だった」という印象を与えて映画を終わらせない限り、例えミスリードのための行為だったとしても、そのシナリオは失敗だったということになる。
本当に利口な人間であれば、FBIに簡単に写真を撮影されたりしないだろう。わざわざ素顔をさらして警察の前にノコノコと現れたり、派手な劇場型犯罪をやらかしたりしないだろう(他に方法が無いならともかく)。そういう行動は「見せたがりのミーハー精神」と受け取れる。そして、それは「自分が利口だと過信した愚か者の取る行為」に見える。

好意的に受け取れば、正義の名の下に犯罪を行うアメリカを皮肉った社会的テーマ、深いテーマを持った作品と考えることも出来る。しかし結果としてB級アクションの世界の中に埋没しているわけだから、テーマがあろうと無かろうと大して意味は無い。言ってみれば、スティーヴン・セガール主演作における環境保護のメッセージと同じようなものだ。
そう、これは最初の数分間が過ぎると、B級アクション映画になる。素人の意見ではあるが、ハッキングやコンピュータに関する描写は荒唐無稽に見えるので、そこにリアルを求めるサスペンス映画でないことは確かだ。そもそも、女にフェラチオさせながらスタンリーにクラッキングを命じるところからして、もうバカ満開だ。

ガブリエルの一味は銀行に出向いて金を奪おうとしているのだが、スタンリーの腕があれば外部からシステムに侵入できると思う。しかし、それだと終盤に待っているカーアクションやスカイ・アクションなどが出来なくなってしまうのだ。アクションのために無理のある展開を通してしまうのは、やはり「B級アクション映画だからこそ」だろう。
しかしB級アクション映画と割り切って見るならば、それなりに楽しめるのではないだろうか。必然性よりも「お約束」を重視して挿入されたと思われるカーチェイス&銃撃&クラッシュもある。バスをヘリで吊り下げて飛行するという見せ場もある。それに何より、B級アクションとしては豪華すぎる役者が揃っているのだから。


第22回ゴールデン・ラズベリー賞

ノミネート:最低主演男優賞[ジョン・トラヴォルタ]
<*『ドメスティック・フィアー』『ソードフィッシュ』の2作でのノミネート>

 

*ポンコツ映画愛護協会