『ストリート・オブ・ファイヤー』:1984、アメリカ

生まれ故郷で凱旋コンサートを開いていたロックンロールの歌姫エレン・エイムが、レイヴン率いるストリートギャング“ボンバーズ”に連れ去られた。姉のリーヴァに戻ってくるよう言われ、エレンの元恋人トム・コーディーは久しぶりに故郷に戻ってくる。
リーヴァにエレンを連れ戻すように言われるが、自分より音楽を選んだ女を救い出すことに消極的なトム。しかし彼はエレンを救い出そうと決めて、彼女のマネージャーであるビリー・フィッシュに会い、救出の代わりに金を要求する。
トムはビリー、そして酒場で拾った元女兵士マッコイと共に、ボンバーズの集まるバッテリー地区のトーチーズという店に向かった。ボンバーズを撃退し、エレンを救い出したトム。しかしレイヴンは再び街に現れ、トムに1対1での勝負を要求してくる…。

監督はウォルター・ヒル、脚本はウォルター・ヒル&ラリー・グロス、製作はローレンス・ゴードン&ジョエル・シルヴァー、製作総指揮はジーン・レヴィ、撮影はアンドリュー・ラズロ、編集はフリーマン・デイヴィース&マイケル・リップス、振付はジェフリー・ホーナデイ、美術はジョン・ヴァローン、衣装はマリリン・ヴァンス、音楽はライ・クーダー。
出演はマイケル・パレ、ダイアン・レイン、リック・モラニス、エイミー・マディガン、ウィレム・デフォー、デボラ・ヴァン・ヴァルケンバーグ、リチャード・ローソン、リック・ロッソヴィッチ、ビル・パクストン、リー・ヴィン、ストーニー・ジャクソン、マイケル・T・ウィリアムソン、グランド・ブッシュ、ロバート・タウンセンド他。


冒頭、サブタイトルとして「ロックンロールの夢物語」というテロップが現れる。
時代も場所も正確な設定は無い。
「いつかどこかで」起きた出来事だ。
ウォルター・ヒルの暴力描写とライ・クーダーの音楽の組み合わせだが、これがなかなかマッチしている。

激しいビートに合わせて殴り合い、そしてパニックが起きる。
音楽が流れていない時間が、ほとんど無い。
長尺のミュージックビデオである。
薄い内容を音楽でカヴァーしているというより、音楽ビデオに物語性を出してみたという感じなのである。

エレン救出に関して、さも名案があるように思わせておいて、実際は派手に暴れまくるだけのトム・コーディー。
ロックンロールは、作戦とか計画を立ててはいけないのである。
なぜならロックンロールは頭ではなく、体で感じるものだからである。

登場するキャラクターは、誰も深く考え込んだりはしない。
悩んだり迷ったりしている暇は無いのだ。
わずか数秒だけ考えたら、すぐに行動に移るのだ。考える暇があったら体を動かすのだ。
ロックンロールなので、難しいことは苦手なのだ。

主役はB級映画のヒーロー、マイケル・パレ。
いくら暴れようが、どれだけ強い言葉を吐こうが、最初から最後まで常に目は死んだままのマイケル・パレ。
無表情なのは、おそらく意図した芝居ではない。
彼はとんな作品でも表情に乏しい。そういう役者なのだ。

前半、レイヴン役のウィレム・デフォーが、魚屋みたいな黒ビニールの吊りズボンで登場。
オレも負けていられないと思ったのか、終盤ではマイケル・パレが農夫みたいなモッサリした吊りズボンで登場。
吊りズボン対決に関しては、ウィレムの圧倒的勝利だろう。

歌姫エレンを演じるのはダイアン・レイン。
ところが、舞台上でのダイアン・レインの立ち振る舞いが、とてもロックの歌姫には見えない。
もちろん歌は口パクだし。
歌の上手い女優か、あるいは芝居の出来る歌手を起用したほうが良かったのでは。

MTV風の映画は幾つかあるが、その中ではかなり上質の出来映えと言っていいだろう。
単純明快な物語をスピーディーな展開で見せたのは正解だ。
エレンを救出して街に戻った辺りで、少し流れが停滞してしまうのは気になるが。
多くの歌が使われているが、「今夜は青春」というマヌケな邦題を付けられた主題歌「Tonight Is What It Means To Be Young」は、椎名恵がカバーしてヒットした。


第5回ゴールデン・ラズベリー賞(1984年)

ノミネート:最低助演女優賞[ダイアン・レイン]
<*『コットンクラブ』『ストリート・オブ・ファイヤー』の2作でのノミネート>

 

*ポンコツ映画愛護協会