『スター・クレイジー』:1980、アメリカ

金持ちが集まった昼食会で、ゲストの面々はサラダを絶賛した。彼らだけでなくホストの貴婦人も、給仕係のハリーに「もっとサラダを」と注文した。同じ頃厨房で作業をしていた調理人のシシーは、女中がオレガノと間違えて給仕係のマリファナを料理に使ったことを知った。百貨店の警備係を務めるスキップは女性客に声を掛け、「貴方は女優でしょ。僕は脚本家だ。ワークショップで貴方を見たことがある」と告げる。女性が消えるよう要求すると、スキップは「コートの下は裸でしょ。それに万引きしていますよね」と指摘した。
シシーは「バレたらクビにされる」と焦るが、ハリーは「このマリファナは本場で取れた貴重な物だったんだぞ。料理に入れるなんて」と腹を立てた。スキップは女性に付きまとい、「貴方は子服売り場へ行き、盗んだドレスをゴミ箱に捨てた」と余裕の態度で説明した。女性は腹を立てるが、彼は笑い飛ばした。ハリーは食堂へ戻り、マリファナで気持ち良くなった面々にワインを注いだ。スキップはレストランでハリーと合流し、クビになったことを話す。するとハリーは、自分も解雇されたことを告げた。
スキップはハリーに、「僕らは生まれて初めて自由になった。この街を出るのも自由だ」と言う。タクシー運転手のチコと客のアレックスが支払いを巡って喧嘩になるのを見たスキップは、「あの2人に必要なのは、思いやりのある優しい言葉だ」と口にする。ハリーが呆れて「あいつらの所へ行って話してみろよ。きっと分かってくれるさ」と挑発すると、ハリーは快諾した。スキップは仲裁に入り、アレックスがチコに金を渡して問題は解決した。
スキップはハリーの元へ戻り、「太陽の輝く街へ行こう。こんな騒音なんか無い街へ」と持ち掛ける。「ニューヨークやプロードウェイを捨てるのか。ニール・サイモンのオーディションに呼ばれた。俺は役者だ。ここに残る」とハリーが嫌がると、スキップは「役者としての去年の収入は、たった35ドルだろ」と指摘する。ハリーが腹を立てて「お前は脚本で幾ら稼いだ?」と言うと、スキップは「一銭も稼いでない。だからこそ街を出たいんだ。途中で稼いでハリウッドへ行こう」と提案した。女性たちと楽しく過ごす妄想を彼が語ると、ハリーも提案に乗った。
スキップとハリーはオンボロの車に乗り、ハリウッドヘ向かって出発した。しかしグレンボロの街で車が故障してしまい、彼らは修理代で150ドルを支払う羽目になった。バーに立ち寄ったスキップは、パンチングボールで遊んでいる南部の男たちに目を留めた。彼はハリーに「いい仕事がある。この店が気に入った。ワクワクする」と興奮した様子で言う。スキップは「彼らと話してくる」と告げ、ハリーの制止も聞かず2人組に歩み寄った。「この街に仕事の口は無いか?」と彼が尋ねると、2人組は威嚇するような態度を取る。しかしスキップは全く気付かず、ハリーは慌てて彼を連れ出した。
スキップはハリーに、「銀行の支店長に、新しい宣伝のアイデアを売り込んだ」と告げる。2人はキツツキのキグルミに身を包み、客の前で歌い踊って銀行を宣伝した。休憩に入り、2人はキグルミを置いて外へ昼食に出掛けた。その間に強盗2人組がキグルミを盗み、それを着て宣伝マンに化けた。彼らは銃を構えて客と行員を制圧し、金を強奪して逃走した。何も知らずに銀行へ戻って来たスキップとハリーは、強盗犯として逮捕された。
拘置所に入れられたスキップとハリーは、国で最も長い刑期が下される州だと知らされた。担当弁護士のレン・ガーバーが来たので、2人は無罪だと主張した。するとガーバーは、「私に出来るのは起訴の取り下げを申し立てることだけだ」と述べた。スキップとハリーは裁判に掛けられ、判事から125年の懲役を宣告された。彼らは刑務所に移送され、ゲイで黒人のロリーやメキシコ人のヘスースと知り合った。ロリーはハリーに好意を抱き、しつこく付きまとった。スキップは看守に反抗的な態度を取り、荒っぽく制圧された。
スキップとハリーは他の囚人を怯えさせる巨漢を目撃し、ロリーとヘスースから凶悪な殺人鬼のグロスバーガーだと教えられる。スキップは「心を開いてくれる相手が誰もいないんだ」と言い、グロスバーガーに笑顔で歩み寄る。しかし大声で威嚇されたため、慌てて逃げた。スキップとハリーは、刑務所を牛耳っているジャック・グラハムが何でも調達できること、、ブレードが黒人たちを仕切っていることをロリーとヘススから聞かされた。
スキップは刑務主任のウィルソンと刑務所長のビーティーから、ロデオマシンに試乗するよう指示される。毎年恒例のロデオ大会があり、新しい受刑者には適正能力を見るために乗ってもらうのだと彼らは説明した。スキップが天才的な能力を発揮したので、ビーティーは驚く。ウィルソンが子飼いにしているグラハムでさえレベル4が限界だったが、スキップはレベル6を余裕で乗りこなしたのだ。ビーティーは10年に渡ってヘンリー・サンプソンが所長を務めるドーリン刑務所に負け続け、金銭的トラブルを抱えていた。
スキップはヘスースから、大会の優勝賞金は10万ドルだが受刑者には払われておらず、ビーティーが私腹を肥やしていることを知らされる。それでも受刑者が出場するのは、ビーティーが「命令に逆らえば仮出所を取り消す」と脅しているからだった。ヘスースはスキップに、「テキサスのロデオ大会なら受刑者も賞金が貰える。あそこの看守たちは良心的だ」と話す。ハリーは上告審が棄却されると確信しており、ロデオ大会を利用して脱獄しようとスキップに持ち掛けた。
ビーティーはサンプソンに電話を掛け、賭け金は取り戻すと宣言した。ヘスースはスキップに、脱獄に向けた行動を指示した。スキップはビーティーから大会への出場を促され、母が「獣医だったので動物を虐待するのは無理です」と嘘をついた。彼は見えない母と話しているフリをして、その場を去った。スキップとハリーは早朝から叩き起こされ、奉仕活動として連日の肉体労働を課せられた。さらにスキップは些細なことで罰を与えられるが、気丈に振る舞った。
スキップがハリーの元へ戻されると、グロスバーガーと同房にされていた。しかしスキップとハリーはグロスバーガーとすぐに仲良くなり、ビーティーとウィルソンの目論みは外れた。ガーバーは弁護を手伝ってもらう親戚のメレディスを同伴し、スキップとの面会にやって来た。ガーバーとメレディスは再審に向けて準備を進めており、銀行にいた6歳の少女が犯人は別人だと証言してくれること、強盗の1人は手にタトゥーがあったことをスキップに教える。しかしメレディスに惹かれたスキップは、全く聞いていなかった。
ビーティーはウィルソンに、早くスキップを従わせろと指示した。スキップはビーティーと会い、大会に参加する代わりに自分のチームを選ぶ権利を要求した。ビーティーは承諾するが、ウィルソンにグラハムやブレードを使って監視するよう命じた。スキップは本物の馬に試乗するが、すぐに振り落とされた。彼はハリーたちと共に、脱獄のための道具を密かに集め始めた。ガーバーとメレディスは再び面会に訪れて状況が良くないことを伝え、他に手掛かりは無いかと尋ねる。しかしスキップは再審に全く関心を示さず、メレディスを口説こうとする。彼は「新しい脚本を書いてる。初日の夜に来てくれ」と誘い、OKを貰って喜んだ…。

監督はシドニー・ポワチエ、脚本はブルース・ジェイ・フリードマン、製作はハンナ・ワインスタイン、製作総指揮はメルヴィル・タッカー、製作協力はフランソワ・デメニル、撮影はフレッド・シュラー、美術はアルフレッド・スウィーニー、編集はハリー・ケラー、衣装はパトリシア・エドワーズ、音楽はトム・スコット。
出演はジーン・ワイルダー、リチャード・プライヤー、ジョーグ・スタンフォード・ブラウン、ジョベス・ウィリアムス、ミゲランジェル・スアレス、クレイグ・T・ネルソン、バリー・コービン、チャールズ・ウェルドン、ニコラス・コスター、ジョエル・ブルックス、アーランド・ヴァン・リドス、ルイス・ヴァン・バーゲン、カーミン・マーセロ、フランクリン・アジャイエ、エステル・オーメンズ、ピーター・ルーニー、セドリック・ハードマン、ダグ・ジョンソン、ヘンリー・キンジ、ジョセフ・マッセンゲイル、ハーマン・ポップ、ルイス・アヴァロス、エスター・サザーランド他。


ジーン・ワイルダーとリチャード・プライヤーが『大陸横断超特急』に続いてコンビを組んだ作品。
監督は『ブラック・ライダー』『12月の熱い涙』のシドニー・ポワチエ。小説家のブルース・ジェイ・フリードマンが、初の映画脚本を手掛けている。
スキップをワイルダー、ハリーをプライヤー、ロリーをジョーグ・スタンフォード・ブラウン、メレディスをジョベス・ウィリアムス、ヘスースをミゲランジェル・スアレス、ウィルソンをクレイグ・T・ネルソン、ビーティーをバリー・コービン、ブレードをチャールズ・ウェルドン、サンプソンをニコラス・コスター、ガーバーをジョエル・ブルックスが演じている。

もしも貴方が「ハリウッドのヌルいコメディー映画が見たいなあ」と思ったのなら、この作品はうってつけと言える。
そんな映画を見たいと思う奇特な人は稀だろうけど、そんな稀な人にはピッタリだ。裏を返せば、そういう人じゃないと向いていないってことになる。
ジーン・ワイルダーはともかく、リチャード・プライヤーなんて「黒いレニー・ブルース」と評されたぐらいだから、かなり過激なスタンダップ・コメディアンだったはず。
ところが、なぜか2人がコンビを組んだ映画は、総じてヌルく仕上がっているのである。

そのヌルさは、最初のギャグシーンから顕著に表れている。
会食している金持ちたちは、次々にサラダを注文する。厨房に切り替わると、オレガノと間違えてマリファナを料理に投入したことが分かる。瓶を受け取ったハリーは、「半分も使ったのか」と嘆く。ここでシーンは終了し、スキップのパートに移る。
こうやって簡単に書いただけでも、ヌルさは何となく伝わっただろうか。
まず、サラダを注文する面々は朗らかに会食しているだけで、何も奇妙な様子が無い。ここで1つチャンスを逸している。
「オレガノと間違えてマリファナを入れた」と気付く手順もヌルいが、ここは次へのステップとして捉えればOK。ところが、その事実が露呈して「さあ、どうなるのか」と次の展開を待っていたら、ハリーが瓶を受け取って終わってしまうのだ。
もうね、やる気が無いのかと。

一方、スキップのパートでは、彼が女性に「女優ですよね」と声を掛けた後、万引きを指摘する。でも、最初に「貴方は女優で僕は脚本家。ワークショップで見たことがある」なんてことを説明している意味は皆無だ。
ハリーはヘラヘラしながら女性に付きまとうのだが、ここで再びハリーのパートに戻る。ここでオチを付けるならスキップのパートを挟むのは邪魔なだけだが、まだ戻るだけマシではあるとは思った。
ところが、「大事なマリファナを料理に使われて怒る」「気持ち良くなったゲストにワインを注ぐ」ってのを描いて、それで終わるのだ。
そんなことを描くだけなら、そのパートを引っ張る意味なんて何も無いよ。

一方、スキップのパートと言うと、「女性は憤慨し、スキップはヘラヘラしながら付きまとう」ってのを描くだけで終わってしまう。
いや終わるっていうか、何も終わってないだろ。レストランでハリーと合流した時にスキップは「今日、クビになった」と言うけど、それならクビになるシーンをハッキリと描いた方がいいでしょ。
前述した描写で終わらせていたら、なぜクビになったのか良く分からない。
そして良く分からないだけでなく、ギャグシーンとしても途中で投げ出しちゃってるぞ。ハリーも「俺もクビになった」と言うけど、こっちも手順をスッ飛ばしているようにしか感じないし。

もうウルヴァリンが登場しないのなら、せめてプロフェッサーXとマグニートーの話にしちゃえばいいと思うんだよね。だけど、そこは今までの作品でもさんざん触れて来たので、「もういいだろう」ってことだったのかな。
ただ、これまでのジーンの扱いを考えた時、ラストで主役を張るには力不足じゃないかと。まだミスティークを主役に据えた方が遥かに納得できるわ。
ところが、そのミスティークは主役じゃないだけでなく、前半で使い捨てにされてしまう。他のミュータントは吹き飛ばされても無事なのに、彼女だけは「柵が腹に刺さったから」ってことで死んじゃうのだ。
しかも、彼女を殺すのは暴走したジーン。
ここでミスティークを殺し、ジーンに償い切れない重罪を背負わせるって、ダメなことを重ねてどうすんのよ。

クビになった2人だが、まるで落ち込む様子は無い。それどころかスキップに至っては、「これで自由になった」と喜んでいる。
しかし、なぜ仕事を失った彼が晴れ晴れとしているのか、その理由は良く分からない。
「太陽の輝く街へ行こう。こんな騒音なんか無い街へ」とハリーは語るので、以前から街を出たいと思っていたんだろう。ただ、それなら冒頭のエピソードは「ニューヨークは嫌なことばかりでウンザリする」と感じさせる内容にしておいた方がいいでしょ。
彼がニヤニヤして余裕の態度を取る様子を描いたら、「この街を出たい」と訴える展開に上手く繋がらないでしょ。

スキップはアレックスとチコの喧嘩を見て「彼らに必要なのは優しい言葉」と言い、ハリーが「聖人君子かよ」と呆れて仲裁するよう挑発する。スキップは余裕の態度で快諾し、仲裁に入る。
綺麗に前フリがあるので、きっと「スキップが余裕で仲裁に入るけど酷い目に遭う」というギャグになるんだろうと予想していた。
ところがどっこい、その直前に「殴られていたチコがペンチで反撃に出てアレックスの股間を挟む」という状態になっており、スキップが仲裁に入るとアレックスがチコに金を払って喧嘩は終了するのだ。
これって、どこで笑えばいいのかサッパリ分からないぞ。

グレンボロでバーに立ち寄ったスキップはパンチング・ボールで遊んでいる2人組に目を留め、ハリーが止めるのも聞かずに話し掛ける。
相手が威嚇してもスキップは全く気付かず、ハリーが慌てて連れ出す。
なぜスキップが2人組に興味を抱いて陽気に声を掛けるのか、その理由はサッパリ分からない。
「好奇心が旺盛」ってことなのかもしれないが、だとしても上手く表現できていないから意味不明でキテレツな行動にしか思えない。
相手の威嚇に気付かないのも、そういうキャラなのを上手く表現できていないから笑いに繋がらない。

スキップはハリーに「いい仕事がある」と言った後、その2人組に話し掛ける。なので、その2人組と仕事は関係あるのかと思ったら、何も関係が無い。
だったら、先に「いい仕事がある」と言うのはタイミングが違うでしょ。
で、彼は連れ出したハリーから仕事の心当たりを問われて「銀行の支店長に、新しい宣伝のアイデアを売り込んだ」と話すけど、「いつの間に?」と言いたくなるぞ。そんな行動を取るシーン、どこにも無かったでしょうに。
街に来て車を修理して、すぐバーに立ち寄ったんじゃないのかよ。その前に、銀行の支店長に接触していたのかよ。
そういうトコだけ、すんげえ迅速なんだな。

「ニューヨークにウンザリしたスキップとハリーがハリウッドを目指す」ってのが導入部なんだから、ハリウッドに行ってからのドタバタを描くか、あるいはハリウッドを目指す2人の珍道中を描くか、どちらかになるんだろうと思っていた。
しかし実際にはグレンボロで強盗に間違えられて、刑務所に収容される。そして、刑務所が主な舞台になるのだ。
なんかね、行き当たりバッタリの展開にしか思えないのよ。
刑務所を舞台にしたコメディーにするのなら、そこまでの手順に余計な前置きが長すぎるわ。スキップが売れない劇作家なのも、ハリーが俳優志望なのも、以降の展開には何の関係も無いし。

スキップとハリーが銀行の宣伝マンとして働き始めた途端、強盗事件が発生する。この強盗2人組、警備員や女性客を殴り付け、金を強奪して逃亡する。
でも、それって全くコメディーとしての雰囲気をブチ壊しているんだよね。
強盗を起こすにしても、そこで荒っぽい行為は要らないでしょ。
「拳銃を構えて客と行員を制圧しました。支店長に金を出させました。逃げました」ってだけで、話としては何の問題も無く成立するわけで。

スキップとハリーは無実の罪で拘置所に入れられると、強気な態度を取って「揉め事は無しだ」と他の面々に告げる。どうやら「強い男を装うことでトラブルを避けようとする」ってことらしいが、全く笑えないことだけは確かだ。
で、見えない蚊を目で追っている老人を発見したスキップは、なぜか魅入られたように見えない蚊を追い始める。そして黒人の頭を叩き、怒りを買う。黒人が殴って来るが、スキップがよけたので他の男に命中する。
そんな感じでトラブルが起きるが、「なんだコレ?」と言いたくなる。
そもそもトラブルの発端となるスキップの行動が、意味不明でワケの分からんモノになってるからね。こいつの言動って全く笑えないだけじゃなくて、ちょっとイライラさせることが多いんだよね。

あと、拘置所でのシーン自体が要らないんだよね。
「スキップとハリーが無実の罪で逮捕されました、裁判で有罪判決を受けました」ってことで、さっさと刑務所のシーンに移った方がテンポがいい。拘置所のシーンなんて、後の展開には全く繋がらないんだし。
裁判のシーンにしても、双方の主張なんて何も無い内に判事が判決を下しちゃうわけで。だったら、その辺りは短くまとめて片付けてしまえばいいのよ。
いっそのこと、ガーバーの登場も刑務所に収監されてからでも構わないし。

2人が刑務所に収監されると、スキップが看守に抵抗して飛び掛かるシーンがある。ハリーが慌てて制止し、「病気なんです」と釈明する。
ハリーが必死に呼び掛けていると、スキップは「治ったよ。もう大丈夫だ」と言う。すると今度はハリーが服をはだけて、暴れ始める。
慌ててスキップが「発作なんだ」と釈明し、ハリーをなだめて落ち着かせる。
ここも「なんだコレ?」だわ。
唐突にそういうネタを放り込まれても、ただポカンとするだけだ。っていうかポカンともしなかったけどね。ただ冷淡になっただけだ。

スキップはロデオマシンに試乗し、天才的な能力を発揮する。
だが、なぜ彼が異常なほどロデオの能力に長けているのか、その理由は何も用意されていない。そこまでの展開で、伏線が張ってあったわけでもない。
そもそも「ロデオ大会が云々」という展開自体が唐突ではあるが、それ以上に「スキップがロデオの天才だった」ってのは唐突だ。
ニューヨークでの描写が、そこに繋がるわけでもない。警備係の仕事も、劇作家の仕事も、ロデオには何の関係も無いからね。

そろそろ面倒になって来たので、後は駆け足で。
スキップとハリーは肉体労働で体がパンパンになるが、それだけ。スキップは複数の罰を受けても気丈に振る舞うが、それだけ。どっちも演者の言動で笑いを取ろうとしているんだろうけど、笑いはゼロ。
グロスバーガーと同房になっていた2人が次のシーンでは仲良くトランプをしているが、どうやって仲良くなったのかは不明。
「ビビってたのに仲良くなる」というトコで笑いを取ろうとしているのは分かるが、そのための工夫は何もやっていない。

スキップはメレディスに惚れて口説くが、後半に入って急にロマンスの要素を持ち込まれても困惑するだけだ。
それより何より、ハリーが「上訴審は棄却されるから脱獄しよう」とスキップに持ち掛けて脱獄のための行動が始まったのに、その後で「再審に向けた動きが云々」ってのを描くのは順番が逆でしょ。
さらに言うと、メレディスをヒロインとして使いたいのなら、彼女を登場させるタイミングも遅すぎる。
刑務所に収監されるタイミングを早めて、メレディスが登場するタイミングも前倒しにすべきだ。

スキップとハリーが脱獄を決めたのなら、そこからは「準備を進めて実行に移す」という一本道を突き進めばいいはずだ。その中で、計画がバレそうなピンチが訪れるとか、予想外のハプニングに見舞われるとか、そういうことでも描けばいい。
しかし実際のところ、脱獄に向けた行動はロデオ大会の当日までは申し訳程度に触れるだけで、他のことを描いてモタモタしているのだ。
っていうか、そもそも2人は無実なので、脱獄が成功してもハッピーエンドではない。だから「真犯人が見つかって」という展開もある。
なので、脱獄計画という展開自体が、実は大間違いなんだよね。
そっちで盛り上げておいて「脱獄が成功した2人に真犯人逮捕の知らせが届いて喜ぶ」って、どういう計算の脚本なんだよ、それは。

(観賞日:2021年2月25日)


第1回ゴールデン・ラズベリー賞(1980年)

ノミネート:最低助演女優賞[ジョージ・サンフォード・ブラウン]

 

*ポンコツ映画愛護協会