『スタスキー&ハッチ』:2004、アメリカ
1970年代のベイシティー。リース・フェルドマンは大型ヨットを海に浮かばせ、愛人のキティー、秘書のケヴィン、部下のテレンス・ メイヤーズと一緒にいた。テレンスが飛行機4機の内の1機を紛失したため、リースは厳しく叱責した。「ヤクは金が掛かる。飛行機 だってそうだ」とリースは言い、拳銃でテレンスを射殺した。テレンスは後ろに弾き飛ばされ、海中に沈んでいった。
ベイシティー警察のスタスキー刑事は正義感が強くて熱い男で、財布を盗んだコソ泥を執拗に追い掛ける。しかし街の中で派手に暴れた ため、ドビー主任から手厳しく叱責される。スタスキーは頭が固くて協調性が無いため、4年で12人も相棒が交代している。同僚刑事の ハッチは犯罪組織への潜入捜査を行っていたが、その最中に入手した金は懐へ入れている。ドビーはハッチを呼び、そのことで叱責する。 スタスキーとハッチは対照的な考え方の持ち主で、だから全く反りは合わない。しかしドビーは「お前たちは似た者同士だ」と言い、 コンビを組むよう命じた。
リースとケヴィンは犯罪組織のボスたちを集め、開発した新種のコカインを披露していた。そのコカインは麻薬犬も反応しないのだ。 ケヴィンは彼らに「3週間ほどで販売できるようになる」と説明した。ハギーの友人であるハッチは、スタスキーをバー「ハギーズ・ プレイス」へ連れて行く。オーナーのハギー・ベアは、その一帯を取り仕切る顔役であり、情報屋でもあった。そしてハッチの親友だ。 ハッチはスタスキーをハギーに紹介する。しかしスタスキーはハギーの手下たちが持っている銃を見つけると、許可証を提示するよう 要求する。スタスキーと手下たちは一触即発となるが、ハギーが仲介に入った。
マリーナに死体が浮かんだという無線連絡が入り、スタスキー&ハッチは現場に向かう。見つかったのはテレンス・マイヤーズの死体だ。 スタスキーが目を離した隙に、ハッチは死体のポケットから財布を取り出し、金を盗んだ。スタスキーが警官だらけのカフェで昼食を 取るので、ハッチは呆れる。店にいた警官のマネッティーとエディーは警察無線を使い、スタスキーをバカにして嘲笑った。
財布からは、リース・フェルドマン・コーポレーションの名刺が見つかった。スタスキー&ハッチはリースの邸宅へ赴いた。リースと ケヴィンは、テレンスは元受刑者を支援するプログラムに参加した男だと偽証した。部屋に飾ってある大型ヨットの写真にハッチは気付く 。キティーは「チアガールと付き合っていた男でしょ」と言うが、それが不用意な発言だったため、リースの顔が強張った。
スタスキー&ハッチはベイシテイー・ボブキャッツのチアガールたちが練習している所へ向かった。チアガールのステイシーとホリーは、 スタスキー&ハッチに興味を抱いて自分たちから話し掛けて来た。テレンスのことを尋ねると、チームメイトのへザーと交際していたが、 つい最近になって別れたという。ヘザーに質問すると、テレンスかが何に関わっていたかは知らないという。彼女は「役に立つかどうか は分からないけど」と言い、テレンスのジャケットを2人に渡した。
ハッチは親しくしている少年ウィリスを学校まで迎えに行き、同行したスタスキーを紹介する。スタスキー&ハッチはハギーと会い、情報 を求める。するとハギーは、コカインの大きな取引が行われるというネタを提供する。テレンスのジャケットをハギーに見せると、そこに ある刺繍はバイカー・バーを経営するビッグ・アールの仕事だということが分かった。リースはケヴィンに指示し、スタスキー&ハッチの 情報を得た。「警察が動いている間、取引は延期しよう」とケヴィンは進言するが、リースは「予定通り進める。こいつらは俺に任せろ」 と自信満々に告げる。
スタスキー&ハッチはライダーに変装し、バイカー・バーへ赴く。店を預かっていたジェフは、ビッグ・アールが2週間前に捕まって 刑務所に入っていることを教えた。スタスキー&ハッチは刑務所へ行き、アールにテレンスのことを尋ねる。2人はアールの恥ずかしい 要求に応じ、彼とテレンスがヤクの売人だったことを聞き出し、コカインを手に入れた。しかし2人が警察署に戻ると、ドビーは彼らが 持ち帰ったコカインについて「調べたが、それは人工甘味料だ」と言う。
スタスキー&ハッチはドビーから、「お前たちを事件から外す。マネッティーにやらせる」と告げられる。アールはリースと電話で話し、 「安心しろ。警察が調べても、あれがヤクだってのは分からねえよ」と言う。リースは「安心できるか」と怒鳴った。スタスキー&ハッチ はステイシーとホリーを家に招く。コーヒーの砂糖が切れていたので、スタスキーはアールから手に入れた粉をカップに入れた。それを 飲んだスタスキーは、すっかりハイテンションになった。
翌朝、ハッチはスタスキーに、粉を調べたらコカインだったことを教える。2人が車に乗り込もうとした時、近くに潜んでいた殺し屋が 狙撃してきた。スタスキー&ハッチは反撃するが、男は車で逃走した。ナンバーは分かっていたため、すぐに2人は所有者のチョウを 突き止めた。チョウを捕まえたスタスキー&ハッチは、彼を雇ったのが白人2人で、ヨットで会ったことを聞き出した。
リースの豪邸では、娘のエリザベスの成人を祝うパーティーが開かれていた。スタスキー&ハッチはゲストで呼ばれたパントマイマーに 成り済まし、パーティーに潜入した。スタスキーはリースがアールと電話で話しているのを盗み聞きし、コカインがガレージにあるのを 知った。スタスキー&ハッチは刑事の正体を明かし、邸宅のガレージを捜索する。だが、そこにあったのはエリザベスへのプレゼントと して用意されていたポニーだった。
スタスキー&ハッチはドビーに叱責され、無期限の停職処分となった。ハギーの店で悪酔いしたハッチは、ウィリスを迎えに行く約束を 思い出した。ウィリスはハッチの家へ行き、「迎えに来るはずだっただろ」と怒ってラグビーボールを玄関に投げ付ける。その衝撃で、 ドアに仕掛けられていた爆発物が起動した。激しい爆発が起き、ウィリスは吹き飛ばされる。ウィリスは怪我を負って入院しただけで 済んだが、スタスキー&ハッチはリースを絶対に捕まえようと決意し、行動を開始する…。監督はトッド・フィリップス、キャラクター創作はウィリアム・ブリン、原案はスティーヴィー・ロング&ジョン・オブライエン、脚本は ジョン・オブライエン&トッド・フィリップス&スコット・アームストロング、製作はウィリアム・ブリン&スチュアート・ コーンフェルド&アキヴァ・ゴールズマン&トニー・ルドウィグ&アラン・リッシュ、製作協力はスコット・バドニック&デヴィッド・A ・シーゲル、製作総指揮はギルバート・アドラー、撮影はバリー・ピーターソン、編集はレスリー・ジョーンズ、美術はエドワード・ ヴェロー、衣装はルイーズ・ミンゲンバック、音楽はセオドア・シャピロ、音楽監修はランドール・ポスター&ジョージ・ドレイコリアス。
出演はベン・スティラー、オーウェン・ウィルソン、スヌープ・ドッグ、ヴィンス・ヴォーン、ジュリエット・ルイス、フレッド・ ウィリアムソン、ジェイソン・ベイトマン、クリス・ペン、カーメン・エレクトラ、エイミー・スマート、ブランディー・ロドリック、 モリー・シムズ、テリー・クルーズ、リチャード・エドソン、 ジョージ・キー・チェン、マット・ウォルシュ、G.T.ホーム、ジェフリー・ロレンゾ、ハー・マー・スーパースター、パットン・ オズワルト、ブリジット・ロマネク、ポール・マイケル・グレイザー、デヴィッド・ソウル、ダン・フィナーティー、ジャーナード・ バークス、オマー・ドーシー、プラモッド・クマール、ロッド・テイト、レイモンド・マー他。
1975年から1979年までアメリカで放送された人気テレビドラマ『刑事スタスキー&ハッチ』をリメイクした作品。
スタスキーをベン・スティラー、ハッチをオーウェン・ウィルソン、ハギーをスヌープ・ドッグ、リースをヴィンス・ヴォーン、キティー をジュリエット・ルイス、ドビーをフレッド・ウィリアムソン、ケヴィンをジェイソン・ベイトマン、マネッティーをクリス・ペン、 ステイシーをカーメン・エレクトラ、ホリーをエイミー・スマートが演じている。
アンクレジットだが、アール役でウィル・フェレルが出演している。ラスト近く、スタスキーに車を届ける2人組として、ドラマ版の スタスキー&ハッチだったポール・マイケル・グレイザー&デヴィッド・ソウルが登場する。
監督は『ロード・トリップ』『アダルト♂スクール』のトッド・フィリップス。この映画の舞台は1970年代に設定されているが、大まかな筋書きだけを取ってみると、その時代である必要性は無い。
『刑事スタスキー&ハッチ』の舞台が1970年代後半だったのは、それが放送されていた時代だったからであり、ドラマのために時代設定を 作っていたわけではない。
だから本作品も、映画が公開された2004年の物語にすればいい。
「刑事コンビが活躍する」というのが作品のプロットであり、SFや時代劇ではないのだから、必ずしも1970年代である必要は無いはずだ。それでも1970年代の時代設定にしてあるのは、たぶん「1970年代の刑事ドラマや映画、そのテイストを持ち込みたい」という意識が強く あったためだろう。
ファッション、車、ヒット曲など、「1970年代の風俗」に対するこだわりが見える。
その割りにはバイカー・バーへ行く時の扮装が1969年の映画『イージー・ライダー』の真似なんだけどね。
そこは「1年違えば1970年だし」ってことなのかな。ベン・スティラーが1970年代の映画やドラマをバカにしているわけじゃないってのは、何となく伝わってくる。
ただ、1970年代の作品に対してオマージュを捧げた映画を作りたかったのであれば、それは『刑事スタスキー&ハッチ』を使ってやるべき ではなかったんじゃないか。
『刑事スタスキー&ハッチ』のリメイク映画を見に来た人は、そういうことを求めていたんじゃないと思うんだよね。
っていうか、ホントに1970年代の映画やドラマにオマージュを捧げようという意識があったのかどうかも分からんしね。この映画が抱えている大きな問題は、あまりにも「ベン・スティラーの映画」になりすぎているってことかもしれない。
ベン・スティラーが主演で、彼がスチュアート・コーンフェルドと共に作った映画製作会社「Red Hour Films」が製作に携わっているん だから、それは当たり前と言えば、当たり前だ。
ただ、これは『刑事スタスキー&ハッチ』のリメイクなのだ。
それを考えると、ベン・スティラー色が強すぎるのは、ちょっと考えものだ。主人公の一人は「デヴィッド・スタスキー刑事」のはずなんだけど、そのキャラクターよりも、「ベン・スティラー」であることが強く 感じられるんだよね。
これが本作品のために用意されたオリジナルのキャラクターであれば、「ベン・スティラーにしか見えない」ということでも、別に 構わなかっただろう。
ただ、既存の有名なキャラクターを演じる上で、それでは困る。
ただし、ベン・スティラーってのはアクの強い俳優だから、そもそも企画の段階で無理があるとも言えるんだけどね。ワシは『刑事スタスキー&ハッチ』に関して、「再放送で見たことがあるが、内容はサッパリ覚えていない」という程度の認識度だ。
ただ、ここまでコメディー色が強かったという記憶は無いんだよなあ。
この映画版だと、完全にアクション・コメディーになっているんだよね。
スタスキーの「頭が固くて正義感が強い熱血漢」というキャラクター設定も早い段階で崩れてしまい、マヌケでエロい三枚目キャラに 変貌する。バイカー変装とか、ディスコでのダンス対決とか、もう完全にベン・スティラーの映画だよね。
その辺りも、ベン・スティラーの意向ってことなんだろうか。
監督がトッド・フィリップスだからコメディーに仕上がるのは当然ちゃあ当然だが、ベン・スティラーが望まなかったら、他の人が演出 しているだろうし。(観賞日:2013年2月19日)
第25回ゴールデン・ラズベリー賞
ノミネート:最低主演男優賞[ベン・スティラー]
<*『ポリーmy love』『俺たちニュースキャスター』『ドッジボール』『隣のリッチマン』『スタスキー&ハッチ』の5作でのノミネート>
ノミネート:最低助演女優賞[カーメン・エレクトラ]
第27回スティンカーズ最悪映画賞
ノミネート:【最悪の主演男優】部門[ベン・スティラー]
<*『ポリーmy love』『ドッジボール』『隣のリッチマン』『ミート・ザ・ペアレンツ2』『スタスキー&ハッチ』の5作でのノミネート>