『スピード・レーサー』:2008、アメリカ&オーストラリア&ドイツ

スピード・レーサーは幼い頃から、カーレースにしか興味を持てなかった。授業中でもレースのことばかり考えているため、母は小学校の 教師から呼び出しを受け、「父親がレーシングカーの設計をしているもので」と釈明する。テストの時間でも、スピードは自分がレースに 参加する妄想を膨らませる。そんな彼のことを、クラスメイトのトリクシーが見つめていた。スピードは授業が終わると、すぐに学校を 飛び出した。外はレーサーをしている兄レックスが待っており、スピードは彼の車に乗り込んだ。
スピードはレックスに、「サーキットに連れてって」と必死にせがむ。レックスは仕方なく承諾し、サーキットに連れて行く。スピードは レックスにサポートしてもらい、車を運転した。レックスは「車ってのは生き物だ。目を閉じて、車が何を望んでいるかを聞くんだ。ベン ・バーンズは目を閉じたまま走って優勝したことがある」と語った。そして現在、スピードはサンダーヘッド・レースウェイでのレースに 参加していた。彼はトップを走り、スネークの追跡をかわす。しかし彼はメカニックのスパーキーに「今日は無理だ」と言い、レックスの 持っている記録の更新を諦めようとする。幼少時代のスピードは、同じレックスが記録を作ったレースを見ていた。
スピードがトップを走る様子を、両親と弟のスプライトル、チンパンジーのチムチム、そして恋人となったトリクシーが眺めていた。 トリクシーは幼い頃、スピードをバカにするブロンドの同級生に激怒して殴り付けた。その頃から彼女は、スピードに恋をしていた。 スピードはトリクシーを自宅に招き、ファンだと名乗る人物から渡されたプレゼントの包みを父に差し出した。すぐにレックスが爆弾と 気付き、車庫の外で爆発させた。
ある夜、レックスは深刻な顔でスピードに「今回は連れて行けない。これをやろう」とマッハ号のキーを渡し、家を出て行くことを決めた 。彼は「後でみんなが俺を悪く言うだろう。だが、お前は信じないでくれ」とスピードに告げた。チームを移籍したレックスは、意図的に 車をぶつけてクラッシュさせる妨害行為を繰り返した。彼はマスコミから激しく糾弾され、スピードもイジメを受けた。
やがてレックスのチームは解散となり、背後にギャングの親分ベネリがいたことが明らかになった。レックスがレース中の事故で死んだ際 には、ベネリが関与しているという噂が出た。サンダーヘッドのレースで、スピードは新記録を出す寸前まで来ていた。しかし彼はゴール 直前で速度を落とし、わずかの差で新記録は生まれなかった。レーサーXは、そのレースをテレビで見ていた。恋人のミンクスが「いい ドライバーね」と言うと、Xは「彼はきっとナンバー1になる。奴らに潰されなければな」と口にした。
翌日、大企業の会長をしているローヤルトンが、自家用機でレーサー家にやって来る。彼はスピードをベタ誉めし、スポンサーになって バックアップしたいと持ち掛ける。父は「昔からウチのチームはスポンサー無しでやって来ているんだ」と言うが、ローヤルトンは諦めず 、一家をローヤルトン・タワーへ招待した。マネージャーのジニーがスピードたちを出迎えた。タワーには最新の設備が整っており、大勢 のスタッフが作業を行っていた。また、ドライバーを訓練するため、多額の費用を費やしたハイテク機械を揃えていた。
ローヤルトンはスピードたちを、社交場へ案内した。そこには幾度も優勝経験を持つキャノンボール・テイラーがおり、スピードは 「サンドーヘッドでは、いい走りだったよ。優勝したいなら、ローヤルトンと組むがいい」と聞かされる。ローヤルトンは「専属シェフや マッサージ師も用意し、恵まれた環境を用意する」と説明した。しかしスピードは、「考えさせてほしいと」答えを保留した。「来週の頭 に、また会おう」とローヤルトンは告げた。
レーサーのテジョ・トゴカーンは、ギャングのクランチャー・ブロック一味に捕まり、走行するトラックの中でリンチされていた。そこへ Xの車が近付いたため、一味は攻撃を仕掛ける。しかし反撃を受けたため、一味はテジョを突き落として逃走した。Xはテジョを救出し、 「君が早く利口になってくれないと、救ったことにならないぞ。あの組織に勝とうとしても無理だ。君はずっとクランチャー・ブロックの 手先だったから、堂々と戦うことを忘れたんじゃないか」と語った。
Xが「今こそ、あの連中に正義の裁きを与えねばならない」と言うと、テジョは「正義なんかに価値は無い」と嘲笑する。Xは彼を車から 降ろした。テジョが「フジでまた会おう」と告げると、Xは「君は完走できない。負けても命があれば、ここに連絡しろ」と言い、捜査局 (CIB)の名刺を渡した。ローヤルトンは新しい車の開発状況について、日本人実業家のミスター・ムシャと話していた。ムシャは長年 に渡り、ライバルであるトゴカーン・モーターズの買収を狙っていた。彼はローヤルトンから取引を持ち掛けられ、「トゴカーンの 権利が手に入るなら、トランスポンダーの利益をそっちに渡そう」と承諾した。
スピードはローヤルトンと会い、オファーを断った。するとローヤルトンはバカにして笑い、「世間知らずのバカめ。今のは聞かなかった ことにして、君に教えてやろう」と自動車レースの組織WRLの内幕を語った。ベン・バーンズの優勝した第43回グランプリでは、彼の 所属するシラス飛行機の株が急騰し、買収を狙っていたパワーセルは計画を断念した。2週目でリタイアしたレーサーと契約していた アイオダイン産業のジョエル・ゴールドマン社長は自社株を底値で買収し、シラスと合併した。その結果、アイオダイン産業は多額の利益 を得た。それを語ったローヤルトンは、「レースにとって大切なのは企業が利益を上げることであり、レーサーや車など関係が無い。重要 なのは権力と金の力だ」と口にした。
ローヤルトンは「分かったか、バーンズは自分が勝つと知っていた。勝負は最初から決まっていた。毎年、チームのオーナーが集まって グランプリの優勝者を事前に決めているのだ」と言い、「最後のチャンスだ、この契約書にサインしろ」とスピードに迫った。スピードが 断ると、彼は「お前は次のレースで完走することさえ出来んぞ」と言い放った。フジ・ヘレクシオン・サーキットのレースに出場した スピードは、妨害の車に激突されてクラッシュした。
スピードが落ち込んでいると、バーンズが来て「いいレースだった」と声を掛けた。スピードが「聞きたいことがあるんです。43回大会で 、勝つことを知っていましたか」と質問すると、彼は「ライバルとの反目が噂になったが、親友だった」と答えた。フジで違反装置を使用 したという疑惑がマスコミで大きく取り上げられ、スピードのチームは糾弾される。父は「相手がその気なら戦え。真実が勝つ」と言うが 、スピードは「パパは甘すぎるよ」と溜め息をついた。母は「貴方のレースは芸術よ。私に感動を与えてくれる。貴方の母であることが 誇らしくて泣いてしまう。家族が力を合わせれば、きっと何とかなるわ」と息子を励ました。
ディテクター警部がレーサーXと共にレーサー家へやって来た。ディテクターは以前からローヤルトンを調べていたが、有罪にするための 証拠が掴めていないという。Xは捜査局と協力し、レーサーをスカウトしているのだという。ディテクターはスピードたちに、テジョの ことを話す。ブロックに雇われていたテジョは、わざとレースに負けるよう指示され、逆らうようになった。そんな彼が捜査局に助けを 求めているのだという。
ディテクターはテジョから、ブロックとローヤルトンが繋がっていることを示す証拠を握っていると聞かされていた。それを入手するのは 、トゴカーン一族の会社を買収から救うことが条件だという。次のレースでテジョが優勝すればトゴカーン・モーターズは復活し、買収は 不可能になる。そこで、テジョのチームメイトとして、スピードにも参加してほしいというのがディテクターの頼みだった。
スピードが「でも次はグランプリで、Xにもスピードにも出場資格が無い」と言うと、ディテクターは「サーキットのレースではなく、 クロスカントリー・ラリーだ」と言う。カーサ・クリスト・ラリーだと聞いて、両親の顔が青ざめる。父は「ラリーはならず者が集まり 、反則が横行する。私はラリーでレックスを失った。二度とごめんだ」と断った。しかしスピードは父に内緒で、ラリーに参加することを 決める。トリクシーは「空からヘリでナビするわ」と言い、同行を申し出た。
捜査局は違反装置を使うレーサーが大勢いるラリーに備えてマッハ号を改造し、7つの秘密兵器を装備した。スピードは、レックスが 腐ったレース界を命懸けで変えるために家を出たと気付き、レースに臨む。彼はシャーク・ドライバーの妨害を軽くかわし、市街地を 抜けて砂漠へ出る。トップを走るのはスネークだ。多額の報酬で雇われたドライバーたちが攻撃してくる中、スピードは秘密兵器と優れた 運転技術で対抗する。チームメイトであるXの的確なアドバイスも、スピードの助けとなった。
初日が終了し、スネークが独走で休憩ポイントのコルテガに到着した。テジョは「このままだと、このレースに負ける」と苛立ち、自分を クラッシュから助けてくれたスピードにも「お前が余計なことをしなけりゃ勝てる」と八つ当たりする。ローヤルトンは妨害行為に失敗 したブロックに電話を入れ、「大金を支払ったのに、このザマか。あいつらが優勝したら、お前に代償を払わせるぞ」と怒鳴る。スピード はレーサーXが兄ではないかと考え、そのことをトリクシーに語った。
テレビ中継を見た父は、スピードがラリーに参加していると知り、家族とスパーキーを連れてホテルにやって来た。彼は「こんなレースに 出ても、何も変わらない。帰るぞ」と言うが、スピードは「嫌だ。僕はこのレースを最後まで走る」と拒む。怒る父を母が制し、「私たち が残りましょう。みんなで家に帰る方法を考えましょう」と告げる。父はスピードに、「マッハ号を改造しただろう。バランスが悪く なってないか」と問い掛けた。バランスが崩れていると聞き、彼はスパーキーを引き連れて調整に向かった。
深夜、テジョの部屋に侵入したニンジャが薬物を盛る。Xの部屋にもニンジャが侵入し、吹き矢を放った。しかし察知したXは、格闘して ニンジャを退治した。スピードの部屋にもニンジャが忍び込むが、父が駆け付けて退治した。薬のせいでテジョーの体は衰弱し、時間が 経過するまで運転は不可能な状態になった。そこで翌日、トリクシーが代役としてレースに参加した。トゴカーン・チームは、スネークを 抜いてトップに立った。妹のハルコに化けたテジョは、襲撃に来たブロックを捕獲した。
スピード、トリクシー、Xは合流地点に到着し、テジョたちと会った。そこへブロック一味が現れたため、格闘となった。スピードたちは 一味を倒すが、その間にスネークがトップを奪還する。テジョーがトリクシーと交代し、チームはレースに戻る。チームはレックスの事故 が起きた氷の洞窟へ向かう。スピードはスネークの攻撃を受けて崖から転落するが、秘密兵器でコースに復帰した。スネークは拳銃を発砲 して来るが、スピードは彼を突き落とし、トゴカーン・チームは優勝した。しかしテジョの父トゴカーンは株価を吊り上げることが目的で 、テジョは最初から証拠書類を渡す気など無かった。捜査局もスピードも、まんまと騙されたのだ…。

脚本&監督はザ・ウォシャウスキー・ブラザーズ、製作はジョエル・シルヴァー&グラント・ヒル&アンディー ・ウォシャウスキー&ラリー・ウォシャウスキー(ラナ・ウォシャウスキー)、共同製作はジェシカ・アラン&ロベルト・マレーバ &ヘニング・モルフェンター&カール・L・ウォーケン、、製作総指揮は デヴィッド・レイン・セルツァー&マイケル・ランバート&ブルース・バーマン、撮影はデヴィッド・タッターサル、編集はザック・ ステーンバーグ&美術はオーウェン・パターソン、ロジャー・バートン、衣装はキム・バーレット、視覚効果監修はジョン・ガータ&ダン ・グラス、音楽はマイケル・ジアッキノ。
出演はエミール・ハーシュ、クリスティーナ・リッチ、ジョン・グッドマン、スーザン・サランドン、マシュー・フォックス、ロジャー・ アラム、ポーリー・リット、ベンノ・フユルマン、真田広之、RAIN(ピ)、リチャード・ラウンドトゥリー、キック・ガリー、ジョン・ ベンフィールド、クリスチャン・オリヴァー、ラルフ・ハーフォース、スコット・ポーター、ユー・ナン、ナヨ・K・ウォレス、 メルヴィル・プポー、ラモン・ティカラム、ベン・マイルズ、ピーター・フェルナンデス、コスマ・シヴァ・ヘイガン、モーリッツ・ ブライブトロイ、カール・ユーン、ジョーン・パーク他。


タツノコプロが制作した日本のTVアニメ『マッハGoGoGo』を実写映画化した作品。
『マッハGoGoGo』はアメリカでも『Speed Racer』というタイトルで放送されていた。それを子供の頃に見てファンだったという ウォシャウスキー兄弟が、脚本&監督&製作を務めている。
スピードをエミール・ハーシュ、トリクシーをクリスティーナ・リッチ、スピードの父をジョン・グッドマン、母をスーザン・サランドン が演じている。吹き替え版でスピードの声を担当したのは赤西仁だが、かなり嘆かわしいことになっている。
他に、Xをマシュー・フォックス、ローヤルトンをロジャー・アラム、スプライトルをポーリー・リット、ディテクターをベンノ・ フユルマン、ムシャを真田広之、テジョをRAIN(ピ)、バーンズをリチャード・ラウンドトゥリー、スパーキーをキック・ガリー、 ブロックをジョン・ベンフィールド、スネークをクリスチャン・オリヴァー、テイラーをラルフ・ハーフォース、レックスをスコット・ ポーター、ハルコをユー・ナン、ミンクスをナヨ・K・ウォレスが演じている。

ピが演じた役は、当初は日本人の設定だった。しかし彼がウォシャウスキー姉弟に直談判し、韓国人の役に変更してもらったという経緯が ある。
でも妹がハルコ(っていうかクロージング・クレジットだと「ホルコ」になっている)なんだよな。
っていうかテジョ・トゴカーンって、そんな名前の韓国人、いないだろ(そんな名前の日本人もいないが)。
あと、「主人公や捜査局を騙して株価を吊り上げる父に協力する男」というキャラなのに、それを韓国人に変更して、それはOK なのね。結果的にテジョって「主人公を騙す卑劣な韓国人」になっているんだけど、それはピとしては、韓国人としての誇りを傷付け られることにならないのね。
そんで「ハルコ」という日本人名の妹はスピードの元を訪れて父と兄の行為を詫び、グランプリに出場できる招待状を差し出すという 「善玉」扱いなんだから、反日思想の強いピからすると、それは癪に障ることなんじゃないの。
まあ最終的には、なぜかテジョもスピードを応援しているけどさ。

「サイケデリック」という言葉がすぐに思い浮かぶような、ケバケバしい色彩の映像表現になっている。CGを多用しており、しかも 「いかにも作り物です」という映像になっている。
実写とアニメを融合した『ロジャー・ラビット』や『SPACE JAM/スペース・ジャム』という映画があったが、それらは「実写の中にアニメ のキャラが登場する」という形を取っていた。それの逆という感じだろうか。
「CGで作られた映像の中に実写のキャラクターが入り込んでいる」ということが、露骨に分かるようになっている。
そしてCGの世界に入り込んだキャラクターたちは、その体温を失って無機質な存在と化している。

ウォシャウスキー兄弟(今や姉弟になったが)が原作ファンだったことは、良く分かる。マッハ号はほぼ忠実に再現されているし 、漫画的な表現が多く見られる。
内容も、かなり原作を意識したものとなっている。そうなると「秘密兵器を搭載した車に乗る主人公が、悪の組織とレースで戦う」という 内容は、どう頑張っても子供向けになってしまう。
だから大人の鑑賞に堪える映画になっていなくても、それは構わない。
ただし子供向け映画としては、135分は長すぎる。出来れば90以内で収めて欲しかった。
あと、このケバケバしい色使いで尺が長いと、目が疲れるということもあるし。

ローヤルトン・タワーの長い紹介シーンや、スピードとトリクシーのラブシーンなどは、無駄に時間を使っていると感じる。
コメディー・リリーフとして使っているスプライトルとチムチムも、かなり邪魔な存在と化している。
コメディー・リリーフを配置することは、この映画に関しては、そんなに悪くない判断だと思うのよ。
ただ、そこが邪魔に思えるぐらい、時間の使い方がマズいんだよな。

スピードがローヤルトンの申し出を断る際に、幼少時代の父との思い出を長々と語るのも、それは必要なのかと。そこで言いたいことは、 もう少しコンパクトにまとめられるんじゃないかと。
っていうか、スピードがオファーを断る理由がイマイチ理解できない。
「父にとってレースは単なる競技じゃない、信仰のようなものです。ウチの家族にとってスポンサーは悪魔と同じなんです」って、どう いうことなのか。
もうちょっと分かりやすい理由にしてくれないかな。そんな説明で、子供は腑に落ちるのかな。
むしろ「俺は大企業が嫌いだから」とか、「アンタからは悪党の匂いがする」とか、そういう理由の方が、まだしっくりと来たんじゃ ないか。

ローヤルトンが「お前は次のレースで完走することさえ出来んぞ」と言い放った後、スピードがフジ・ヘレクシオン・サーキットのレース に参加してクラッシュする様子が描かれる。さらにレース後、父は設計を盗んだ容疑を着せられて起訴される。
で、そこまで描いた後、再びスピードがローヤルトンと話しているシーンに戻る。
つまり、それは「ローヤルトンがスピードに語った、もしも契約書にサインしなかったら、こうなるという映像」ということを描いた部分 という形にしてあるのだ。言ってみりゃ夢オチのようなものだ。
この構成には呆れてしまった。
何の意味があるんだよ。

そこも無駄に時間を費やしているとしか思えない。
普通に現実の出来事を描けばいいだろうに。
で、その後、落ち込んでいるスピードがバーンズから「いいレースだった」と声を掛けられるシーンがあるので、ってことはフジのレース で彼は実際にクラッシュしたってことでしょ。
だったら普通に描けよ。
なぜ現実のシーンと「もしサインしなかったら」という仮定の映像をゴチャ混ぜにするかね。

ニンジャの襲撃とか、要らないでしょ。アクションはカーレースだけに限定しておけよ。
あと、テジョが衰弱したから代役でトリクシーがラリーに参加するとか、そりゃダメだろ。トリクシーに運転技術があるとか、レースに 参加する意欲があるとか、そういう伏線は全く描かれていなかったし。
っていうか、レースが行われている最中、テジョは女装して妹に変装し、殺しに来たブロックの腕を捻って腹に強いパンチを入れているが 、それだけ元気に動けるなら運転も出来るだろうに。
その後の合流地点でのアクションも、無駄にゴチャゴチャしているとしか感じない。
格闘アクションなんか要らないから、もっとカーレースに集中しろよ。そういう無駄を省けば、絶対に90分以内にまとめられたでしょうに。

内容としては明らかに子供向けなのだが、それにしては構成を無駄にややこしくしている。
序盤から回想と現在が何度も行ったり来たりする構成にしている意味を全く感じない。物語は単純なのに、構成のせいで無駄にややこしく する必要は無いでしょ。
それと、ローヤルトンがスピードに「バーンズが優勝した時にアイオダイン産業の社長が自社株を底値で買収して云々」と語り、レースで 八百長をすることによって企業が利益を上げていることが説明されるシーンがあるが、そこの説明って子供にゃ分からないでしょ。

ってことは、どうやら本作品って、どう考えたって子供向け映画のはずなのに、子供向けに作られてないんだよね。
まず製作サイドが「子供向け映画」として宣伝しなかったことも間違いだけど、ウォシャウスキー姉弟も子供向け映画ということを徹底 して意識しているようには思えないんだよな。
自分たちが幼い頃に好きだったアニメを、ただ無邪気に実写化してみたというだけで、あまり観客のことを考えてなかったのかも しれんけど。

子供向けに作られていないとなると、だからって内容としては大人の鑑賞に堪えるものではないので、「子供向け映画を楽しめる大人」が 主な観客層になってしまう。
多額の製作費を注ぎ込んで、そんな狭い観客層だけに受けるようなニッチ産業みたいな映画を作ったら、そりゃ失敗作と言わざるを得ない でしょ。
アメリカでも日本でもコケたのは納得できるよ。明らかに失敗作だわな。
徹底して子供向け映画として作り込まれているのなら、大人の鑑賞に堪えない仕上がりでもOKだけど、そこが徹底されていないから、 結果としては「子供じみた大人向け映画」になってしまっているんだよな。

(観賞日:2012年6月3日)


第29回ゴールデン・ラズベリー賞

ノミネート:最低序章・リメイク・盗作・続編賞

 

*ポンコツ映画愛護協会