『スマイル・ライク・ユアーズ/緊急!子づくり宣言』:1997、アメリカ

建築技師のダニーと香水専門店を営むジェニファーのロバートソン夫婦は、とても仲が良い。ジェニファーは媚薬の開発に精力を注いでおり、ダニーを実験台にして所構わず性交渉に励む。月に1度は必ずデートをする2人の仲の良さは、ダニーの同僚スティーヴが呆れるほどだ。生理が遅れたジェニファーはフェルバー医師の元へ行くが、妊娠はしていなかった。
フェルバーからポジティヴ・シンキングが大切だと言われたジェニファーは、妊娠のために様々な策を試してみた。やがて彼女は、ダニーに内緒で彼の精子を採取し、フェルバーの元に持ち込んだ。ジェニファーとダニーはフェルバーの勧めで、チン医師のクリニックに出向いて検査を受けた。その結果、ダニーの精子が弱いことが判明した。
ダニーとジェニファーは、人工受精に頼ることにした。そんな中、ジェニファーは共同経営者ナンシーと共に、大会社の経営者リチャードから会議に招かれる。リチャードは、ジェニファーが開発した媚薬を買いたいと申し出た。一方、ダニーは人工授精の費用を捻出するため、建築家リンジーから誘われていたシアトルでの仕事を引き受けることにした…。

監督はキース・サンプルズ、脚本はケヴィン・メイヤー&キース・サンプルズ、製作はデヴィッド・カークパトリック&トニー・アマテューロ、製作総指揮はロバート・ハーリング、撮影はリチャード・ボーウェン、編集はウェイン・ウォールマン、美術はギャレス・ストーヴァー、衣装はジル・オハネソン、音楽はウィリアム・ロス。
出演はグレッグ・キニア、ローレン・ホリー、ジョーン・キューザック、ジェイ・トーマス、ジル・ヘネシー、クリストファー・マクドナルド、ドナルド・モファット、フランス・ニューエン、マリアンヌ・ミューラーリール、シェリダン・サンプルズ、ジーン・ナカシタ、ルイス・ブラウン、ニコラス・ベアード、ジューン・ロメナ、ラトリス・セラーズ、リンダ・マリー・セラーズ、カービー・コールマン、ドゥーニー・ジョーンズ、ビラル・ムスリム他。


ローレン・ホリーがジム・キャリーとの離婚直前に主演したコメディー映画。『子づくり宣言/微笑みの媚薬』という別タイトルもある。
ダニーをグレッグ・キニア、ジェニファーをローレン・ホリー、ナンシーをジョーン・キューザック、スティーヴをジェイ・トーマス、リンジーをジル・ヘネシー、リチャードをクリストファー・マクドナルド、フェルバーをドナルド・モファットが演じている。
監督のキース・サンプルズは、本業はプロデューサーで、『ひとりっ娘2(ひとりっこのじじょう)』や『WISH ウィッシュ/夢がかなう時』などの製作総指揮を担当している。
これまでに『ホミサイド/殺人捜査課』『ザ・プラクティス/ボストン弁護士ファイル』といったTVシリーズの演出経験はあるが、映画の監督はこれが初めて。

前半、ダニーとジェニファーがカラオケ・バーに出掛けるシーンがある。
そこでは何組かの客がカラオケを歌う様子がダイジェストで描かれ、それを見せるために無駄な時間を割いているし、話の流れにも乗っていないし、カラオケ・バーの出来事が後に繋がるわけでもない。
何の意味があるのかと思っていたら、ダニーとジェニファーが歌っている途中でシーンが切り替わり(歌だけは続けて流れる)、2人が様々な場所でデート&セックスに励む様子がダイジェストで描かれる。
ようするに、「ロバートソン夫婦が熱々カップルでセックスに励んでいる」ということを見せたかったわけである。
しかし、そのために、わざわざカラオケ・バーに行く展開を持って来て、歌う所からダイジェストに入っていくという形にする必要性を全く感じない。
何かのセリフきっかけでダイジェストに入ってもいいだろうし、媚薬を使うシーンから薬瓶をアップにして、そこからダイジェストに入るのもいいだろう。
そのカラオケ・バーの場面のギクシャク感は、かなり強い。

ジェニファーは妊娠するために様々な策を凝らし始めるのだが、その描写が甘い。
例えばダニーのブリーフを全て捨ててトランクスに交換するというのも、「ダニーが引き出しを開けるとトランクスが入っている」という形の描写だ。彼がブリーフ派だという前提も事前に示されていないし、クローゼットのブリーフを全て集めてゴミ袋に放り込むような描写も無い。
様々な策を凝らすジェニファーの表情や仕草が、おとなしすぎて、明るさや弾けた印象に欠けている。そこを控え目にしてしまうってのは、本当にコメディー映画として作る気があったのかと疑いたくなってしまう。
クリニックの場面でも、ちょっと不気味な看護婦ウィーラーがいる程度で、変な検査にアタフタするとか、奇妙な医師に戸惑うとか、とにかく笑いを作ろうとする気配ゼロ。
そして、ロバートソン夫婦の熱々っぷりをアピールしてシーンを締め括ってしまう。
アホらしい。

後半、ダニーがリンジーの仕事を引き受け、ジェニファーがリチャードと面会し、それぞれの男女関係を中心に持って来て物語を転がしていくのかと思いきや、2度目の人工授精に挑戦するシーンを持って来る。
それはエピソードの並べ方がマズいだろう。
しかも、その後もリチャードは全く恋愛模様に絡まないし、リンジーは前半からの絡みが少ない。
リンジーがエロのフェロモンをバカみたいに出しまくっていたり、魔性の女としての行動を繰り返したりということはない。ジル・ヘネシーにコメディエンヌとしての芝居をさせているわけでもない。
なので、「仲良し夫婦がいて、夫に惹かれる女が現れることでギクシャクするが、仲直りする」という普通の恋愛劇みたいになっている。
少なくとも、邦題からイメージするようなコメディー映画ではないことは断言できる。


第18回ゴールデン・ラズベリー賞

ノミネート:最低主演女優賞[ローレン・ホリー]
<*『スマイル・ライク・ユアーズ/緊急! 子づくり宣言』『乱気流/タービュランス』の2作でのノミネート>

 

*ポンコツ映画愛護協会