『シックス・デイ』:2000、アメリカ

2007年、クローン技術の進歩によって動物の複製が作られるようになった近未来。世界は人間のクローンを禁止する法律を制定した。その法律は旧約聖書に書かれた「神が6日目に人間を生み出した」という一節を取って、“6d法”と命名された。
2010年、アダム・ギブソンは妻ナタリー、娘クララと暮らしている。ある日、彼が帰宅すると、アダム・ギブソンが妻や娘と誕生日を祝っていた。自分はここにいるはずなのに、家の中には“もう1人の自分”がいたのである。
謎の男達に襲撃されたアダムは現場から逃走し、調査を開始する。アダムに襲い掛かる一味は、何度倒してもクローン技術で復活する。やがてアダムは、今回の一件にクローン企業の社長ドラッカーの陰謀が関係していることを知る…。

監督はロジャー・スポティスウッド、脚本はコーマック・ウィバーレイ&マリアンヌ・ウィバーレイ、製作はジョン・デヴィソン&マイク・メダヴォイ&アーノルド・シュワルツェネッガー、製作協力はデヴィッド・レイサム、製作総指揮はデヴィッド・コーツワース&コーマック・ウィバーレイ&マリアンヌ・ウィバーレイ、共同製作総指揮はダニエル・ペトリーJr.、撮影はピエール・ミニョー、編集はマーク・コンティ&ドミニク・フォーティン&ミシェル・アルカン、美術はジェームス・D・ビッセル&ジョン・ウィレット、衣装はトリッシュ・キーティング、特殊効果監修はマイケル・ランティエリ、コンセプチュアル・イラストレーターはロン・コッブ、メイクアップ効果はアレック・ギリス&トム・ウッドラフJr.、視覚効果コーディネイターはキース・ハマカワ、音楽はトレヴァー・ラビン。
主演はアーノルド・シュワルツェネッガー、共演はマイケル・ラパポート、トニー・ゴールドウィン、マイケル・ルーカー、サラ・ウインター、ロバート・デュバル、ウェンディ・クルーソン、ロドニー・ローランド、ケン・ポーグ、コリン・カニングハム、ワンダ・キャノン、テイラー・アン・レイド、ジェニファー・ギャレイス、ドン・マクマナス、スティーヴ・ベイシック他。


アーノルド・シュワルツェネッガーは、肉体派アクション俳優としてトップスターへの階段を上がってきた人だ。屈強な肉体と脅威的なパワーで無敵の強さを見せ付ける、そんなヒーローを演じ続けてきた。コメディーに出演することもあったが、その場合でも彼の「肉体派」としての個性は強調された。

だが、実際はインテリ人間であった彼にとって、「単なる筋肉マンとして単純なアクション映画に出演する」という現状に満足することは、耐え難かったのかもしれない。
だから、いつしか彼はチャレンジを始めるようになった。

そして、シュワルツェネッガーは今作品でも、単純なアクション映画からの脱却を目指している。クローンによる自分との対面、アイデンティティーへの不安、遺伝子工学の問題など、今作品には難解なエッセンスが多く詰まっている。

しかし、製作サイドはシュワルツェネッガーの限界を知っている。
役者の意欲がどれほど素晴らしくても、それが能力的に実現不可能であれば無意味だということを、製作サイドは良く分かっているのである。

だから、難しい説明は脇役の連中に喋らせることで処理してしまう。
シュワルツェネッガーには「驚く、怒る、暴れる」といった程度のことしか要求しない。
難しい芝居は除外して、アクション俳優としての彼を生かそうとするのである。

だが、アクション映画に難解なテーマや複雑な展開を持ち込んだ場合、それがアクション映画の醍醐味を邪魔してしまう危険性がある。ドラマとアクションのミスマッチが発生した場合、その間を埋めることは非常に困難な作業だ。

人間には分不相応ということもある。
人間のクローンを作ることは、テクノロジーの暴走なのかもしれない。
それは人間にとって、分不相応なのかもしれない。
それと同じように、アーノルド・シュワルツェネッガーという人が難しいことに挑戦するのは、分不相応なのかもしれない。


第21回ゴールデン・ラズベリー賞

ノミネート:最低主演男優賞[本物のアダム・ギブソンを演じるアーノルド・シュワルツェネッガー]
ノミネート:最低助演男優賞[クローンのアダム・ギブソンを演じるアーノルド・シュワルツェネッガー]
ノミネート:最低スクリーンカップル賞[本物のアダム・ギブソン役のアーノルドとクローン役のアーノルド]


第23回スティンカーズ最悪映画賞

ノミネート:【最悪のカップル】部門[アーノルド・シュワルツェネッガー&アーノルド・シュワルツェネッガー]

 

*ポンコツ映画愛護協会