『ショウタイム』:2002、アメリカ

ロサンゼルス市警の熟練刑事ミッチ・プレストンは、堅物で厳格な男だ。一方、警官のトレイ・セラーズは俳優志望の目立ちたがり屋で、仕事の合間にオーディションを受けたりする。ある夜、ミッチは相棒レイと共に、麻薬の売人レイジー・ボーイとリランを捕まえるための潜入捜査に赴いた。ところがレイジー達の中古電器店へ入るミッチ達を見たトレイが強盗だと勘違いし、警察のヘリとTV番組のクルーを呼び寄せた。
警察のヘリが来たことで潜入捜査は失敗し、ミッチはリランを捕まえた。逃げたレイジーを追うミッチの前に、トレイが銃を構えて立ちはだかった。しかしテレビを気にしたトレイが目を放した隙に、ミッチは彼を本人の手錠で拘束する。ミッチは撃たれたレイを気遣うが、そこへマクシスTVのカメラマンが現れる。ミッチは腹を立て、カメラを撃ち壊した。
マクシスTVのプロデューサーをしているチェイスは、低視聴率を救う男としてミッチに目を付けた。チェイスはミッチに密着した警察ドキュメンタリー番組を企画し、上司のブラッドからOKを貰う。チェイスは番組を作るに際して、ミッチに相棒を付けようと考えた。トレイは同僚から番組の相棒オーディションを知らされ、意欲を燃やす。
チェイスはロサンゼルス市警に対し、破壊したカメラ代金1千万ドルを請求する告訴を取り下げる引き替えとして、番組への全面協力を申し入れる。ミッチはテレビなどお断りだが、上司のウィンシップから署長が承諾したことを聞かされる。トレイは友人カイルにチェイスのバッグを奪わせ、彼を捕まえてアピールしようとするが、現場に居合わせたミッチにインチキを見抜かれる。しかしチェイスはミッチとトレイが言い合う姿を見て、2人にコンビを組ませることを決めた。
逃亡に成功したレイジーが恋人と共に隠れ家にいると、そこへ麻薬組織の頭領ヴァーガスから連絡が入った。ヴァーガスはレイジーが組織の銃を乱射したことに怒り、手下と共に彼の隠れ家へ銃弾を撃ち込んだ。レイジーは死亡し、家は崩壊した。一方、ミッチはチェイスに連れられ、トレイと共にウィリアム・シャトナーの演技指導を受けさせられた。
ミッチはトレイやカメラマンのフリオを伴い、レイジー殺害現場に赴いた。女性刑事ジーナや弾道分析官チャーリーが仕事をする中で、トレイはカメラにカッコ良さをアピールしようとして勝手な行動を取る。チェイスは警察署をテレビ用に改装し、ミッチとトレイの部屋を設置した。そして彼女は契約を盾に、固定カメラの前に毎日必ず5分は座るようミッチに要求した。いざ番組が始まると、カメラの前で調子良く喋るトレイは大人気となった。
チェイスとトレイは、取り調べのシーンを番組で放送しようと考えた。そこでトレイは無罪を訴えるケーブルTVの番組製作者に成り済まし、リランと面会する。トレイはリランから黒幕がヴァーガスだと聞き出し、立ち寄るクラブの場所も喋らせた。ミッチとトレイはクラブへ行くが、何も証拠が無いので逮捕することは出来ない。ヴァーガス達は現金輸送車を襲撃し、追跡するミッチとトレイを振り切って逃亡する。ミッチは派手に町を破壊したことを咎められ、停職処分を下されてしまう・・・。

監督はトム・デイ、原案はジョーグ・サラレグイ、脚本はキース・シャロン&アルフレッド・ガフ&マイルズ・ミラー、製作はジョーグ・サラレグイ&ジェーン・ローゼンタール、共同製作はチャニング・ダンゲイ、製作総指揮はウィル・スミス&ジェームズ・ラシター&エリック・マクラウド&ブルース・バーマン、撮影はトーマス・クロス、編集はビリー・ウェバー、美術はジェフ・マン、衣装はクリストファー・ローレンス、音楽はアラン・シルヴェストリ。
出演はロバート・デ・ニーロ、エディー・マーフィー、レネ・ルッソ、ペドロ・ダミアン、モス・デフ、フランキー・R・フェイソン、ウィリアム・シャトナー、ネストール・セラノ、ドレナ・デ・ニーロ、リンダ・ハート、T・J・クロス、ジュダ・フリードランダー、カディーム・ハーディソン、ピーター・ジェイコブソン、ケン・キャンベル、ジョン・カリアーニ、アンジェラ・ローサ・アルヴァラード、ジョニー・L・コクランJr.、リック・クレイマー、レイチェル・ハリス他。


『シャンハイ・ヌーン』のトム・デイが監督し、ロバート・デ・ニーロとエディー・マーフィーが初共演したアクション・コメディー。
ミッチをデ・ニーロ、トレイをエディー・マーフィー、チェイスをレネ・ルッソ、ヴァーガスをペドロ・ダミアン、レイジーをモス・デフ、ウィンシップをフランキー・R・フェイソンが演じている。ウィリアム・シャトナーは本人役で出演しており、劇中では1980年代の刑事ドラマ『パトカー・アダム30』(原題「T.J. Hooker」)の主演俳優として紹介されている。
他に、レイをネストール・セラノ、チェイスの助手アニーをドレナ・デ・ニーロ(デ・ニーロの最初の妻ダイアン・アボットの連れ子)、リランをT・J・クロス、フリオをジュダ・フリードランダー、カイルをカディーム・ハーディソン、チャーリーをジョン・カリアーニが演じている。リランの弁護士役で、O・Jシンプソン事件の弁護士だったジョニー・L・コクランJr.が出演している。

冒頭、ミッチが刑事の仕事に関する堅い話をしている姿が映る。
警官相手の授業かと思いきや、聞いているのは小学生。
最初から笑いを取りに行こうとしたんだろうが、この入り方からして間違っていると思う。
まだトレイが関わっていない内にミッチ単独でギャグシーンを作るというのは、作品の根幹から外れているだろうに。トレイが関わる部分でのみ、ミッチは笑いに参加させるべきだ。

話の土台と配役が全く合っていない。
これは、「堅物で厳格で貫禄たっぷりな熟練刑事と、お喋りでお調子者で目立ちたがりの若手警官」という対照的なコンビの面白さで見せる映画のはず。
だが、エディー・マーフィーは「若手警官」を演じるにはキャリアを重ねすぎており、デ・ニーロには敵わないまでも、大物感が滲み出てしまう。
もう彼は若手を受ける立場になっているのだ。

で、トレイのミスキャストが影響したわけでもないんだろうが、ミッチの「熟練の貫禄」までもが薄くなってしまっている。前述した冒頭シーンから、既に「厳格さを笑いにする」という失態を犯しているが、チェイスを初めて見るシーンもガッカリだ。最初はチェイスが男と思っていたミッチはウィンシップに彼女を指差され、「まあ悪くはないな」と態度を柔らかくする。アホかと。むしろ、相手が女と知って、さらに不快感を強めるぐらいの方がキャラに合っているでしょうに。
その後、ダイナーでチェイスと合うシーンでも、ミッチはそれなりに彼女を受け入れ、それなりに質問にも答えている。トレイやチェイスが急に自宅を訪問した時も、あっさりと招き入れている。もっと頑固さを見せろよ。なんで簡単に相手に合わせちゃうのよ。「この家は地下でビバリーヒルズの豪邸と繋がってる」とか、そんなジョークなんて絶対に飛ばしたらダメじゃん。

チェイスが車をレッカーで持ち去り、いかにもテレビ栄えするような車を用意した時も、それにスンナリと乗ってたらダメじゃん。そこは「絶対にテレビの思い通りになってたまるか」とばかりに、いっそ歩いて警察署に行くぐらいの気構えを見せろよ。そうすることによって、テレビ的に行動したりカッコ付けたりするトレイとのコントラストが際立つんじゃないのか。
ミッチがわざわざオープンスタジオへ行って演技指導を受けるシーンがあるが、ここも中途半端に受け入れすぎ。もっと徹底して芝居なんぞ拒絶した方がいい。まあウィリアム・シャトナーが美味しいトコロをかっさらっていくという面白さはあるが、いっそスタジオに行かない方がいいぐらいだ。そんなことよりも、刑事としての行動を描いて話を進めてほしいと思っちゃうし。

コンビを見せるのがメインだから、用意する事件がシンプルなのは構わない。ただ、関わりが薄いのはイカンだろ。前半なんて、ほとんど捜査らしい捜査はしていない。レイジー・ボーイ事件の現場を見る程度だし、ヴァーガスも1回だけチラッと出てくるのみ。
で、そんな刑事としての行動描写を疎かにして、「番組を開始したらトレイが大人気」というのをダイジェストで見せる。そんなの要らんよ。そこで皮肉的な笑いにでも取ろうとしたのかもしれんが、スムーズに話が流れていないと感じるだけだ。

せっかく対照的なコンビを結成させておきながら、そこのコンビネーションを生かそうという気が乏しいのは納得いかん。リランの取り調べシーンなんて、トレイがヘマをやらかすが、隠しマイクでミッチが指示した通りにやったら上手く行ったということにすればいいものを、ミッチの指示と正反対のことをやって成功するんだから。
で、だったらミッチに対してトレイが「してやったり」ということにするのかと思ったら、何のフォローも無くさっさと次のシーンへ移る。
なんだよ、そりゃ。

黒幕の正体が分かったら、そこからはヴァーガス逮捕に向けた動きに集中すればいいものを、その後でチェイスがミッチの部屋を勝手に改装するシーンを持って来る。
それは構成の順番が違うだろ。
で、そのヴァーガス逮捕においては「実はチャーリーがスパイだった」ということが糸口になるんだが、チャーリーの印象が薄いもんだから「誰だっけ?」と思っちゃうぞ。

あと、意図的なのか結果的なのかは知らないが、テレビ批判の色が濃くなりすぎたのは失敗だと思う。テレビ番組が関わるというのは、あくまでもウマの合わない2人にコンビを組ませるための仕掛けとしてのみ利用すべきだった。
番組スタッフが途中でミッチに感化されて変化するかと思ったら、最後まで虫の好かない連中という印象は不変で、そんな奴らが何の咎めも受けないまま終わるってのもちょっとスッキリしないし。
あとチェイスってトレイと役割が重なる部分が多いし、もっと小さい役にした方が良かったんじゃないの。


第23回ゴールデン・ラズベリー賞

ノミネート:最低主演男優賞[エディー・マーフィー]
<*『プルート・ナッシュ』『アイ・スパイ』『ショウタイム』の3作でのノミネート>
ノミネート:最低スクリーンカップル賞[エディー・マーフィー&ロバート・デ・ニーロかオーウェン・ウィルソンか彼自身のクローンのいずれか]
<*『プルート・ナッシュ』『アイ・スパイ』『ショウタイム』の3作でのノミネート>


第25回スティンカーズ最悪映画賞

ノミネート:【最悪の主演男優】部門[エディー・マーフィー]
<*『プルート・ナッシュ』『アイ・スパイ』『ショウタイム』の3作でのノミネート>

ノミネート:【最悪のカップル】部門[エディー・マーフィー&彼との共演を強いられた任意の俳優]
<*『プルート・ナッシュ』『アイ・スパイ』『ショウタイム』の3作でのノミネート>

 

*ポンコツ映画愛護協会