『シャザム!〜神々の怒り〜』:2023、アメリカ

ギリシャのアテネ。アクロポリス博物館では「神々の杖」のテーマで展示が行われており、ツアーガイドがフィラデルフィアのゴミ屋敷で発見された折れた杖について解説した。甲冑姿で近付いたヘスペラとカリプソの姉妹はガラスケースを破壊し、杖を手に取った。カリプソは警備員や見物客を魔法で操り、暴れさせた。ヘスペラは魔法を使い、会場にいた全員を石像に変化させた。姉妹は目的を果たすため、次の行動を起こすことにした。
ビリー・バットソンはスーパーヒーローの姿に変身し、精神科医のダリオ・バーヴァを訪ねて「家族はヒーロー扱いするけど、詐欺師の気分だ」と相談した。フランクリン橋で車道に亀裂が入り、ケーブルが断裂する事故が発生した。その情報を知ったビリーとフレディーはメアリー、ダーラ、ユージーン、ペドロに声を掛け、一緒に変身して現場へ急行した。ビリーたちは事故に巻き込まれた市民を救助するが、橋の崩落は防げなかった。
ビリーは隠れ家でミーティングを開き、事故を防げなかったことを反省して復習しようとする。しかしフレディーたちは何かと理由を付け、次々に退席した。メアリーは大学に行くために勉強しており、ビリーに「5ヶ月後には18歳。里親が望んでも制度は適用されなくなる」と話す。ビリーが「仕組みは分かってるよ」と言うと、彼女は「家賃もやっとなのに、私を養う補助金が切れた。貴方の分ももうすぐよ。私は家に貢献したい。いつかは働くか、家を出ないと」と自覚を促した。
ヘスペラとカリプソは牢に閉じ込めた魔術師の元へ行き、父の杖を直すよう迫った。魔術師は拒否するが、姉妹は魔法で強制して杖を修復させた。登校したフレディーは、転入生のアンに心を惹かれた。2人が喋っているとブレットとバークの兄弟が来て、アンに「困った時は何でも言ってくれ」と告げる。フレディーは兄弟を馬鹿にする言葉を吐き、暴力を振るわれた。「殴られるのを承知で守ってくれたの?」とアンが訊くと、彼は「楽しいんだよ。笑いを取れば取るほど殴られる」と語る。アンは「私を笑わせた。だからヒーロー」と笑顔を見せ、その場を後にした。
魔術師はビリーの夢に入り込み、「アトラスの娘たちが来る。人類は住む世界を破壊され、永遠の苦悩を味わう。お前のせいで2つの世界の壁が崩れ、奴らはお前の家族を襲う」と警告した。フレディーは学校の食堂でアンに声を掛け、一緒に昼食を取った。2人は「兄(姉)のことが好きだが、子供扱いで監視されるのが嫌でウンザリしている」という考えが一致して意気投合した。フレディーはビリーから夢のことを聞かされ、放課後のミーティングに参加するよう促された。しかしフレディーはアンに夢中で、その要求に従わなかった。
ビリーはミーティングを開いてメアリーたちに夢の内容を説明し、助けを求めた。ペドロはビリーたちを書庫に案内し、物知りで意志を持つペンのスティーヴを紹介した。ビリーがアトラスの娘について尋ねると、スティーヴは本の題名を羊皮紙に書いた。フレディーはアンと校舎の屋上で会い、ヒーローに会わせると約束した。彼はヒーローに電話を掛けるフリをして姿を消し、スーパーフレディーに変身してアンの前に現れた。
ビリーたちはスティーヴが教えてくれた本を発見し、アトラスの娘に関する情報を得た。アトラスは生命の木から杖を作り、神々に力を与えたり奪ったりしていた。事態が悪化すると、人間の魔術師たちは杖を盗んでアトラスから力を奪った。魔術師たちは神々の世界を球体にして閉じ込め、魔力と切り離して永遠に封じたのだった。テレビのニュースで博物館の事件を知ったビリーは、自分が折って捨てた杖が奪われたのだと悟った。ビリーが杖を折ったせいで、世界を隔てる壁が壊れたのだ。
ビリーはアトラスの娘が3姉妹でアンテアという末娘がいると知り、それがアンだと確信した。スーパーフレディーの前にはヘスペラとカリプソが現れ、攻撃を加えた。フレディーか元の姿に戻り、アンは驚いた。フレディーは再び変身しようとするが、姉妹の魔法によって封じられた。教師のゲックルが屋上に来ると、カリプソが魔法で飛び降り自殺させた。ビリーたちがヒーローのに変身して駆け付けると、カリプソが「全員を始末する」と意気込んだ。アンが「生命の種を探しに来た。計画に従わなくては」と言うと、ヘスペラはカリプソを制した。彼女はフレディーを人質に取り、「首をへし折る」とビリーを脅した。
姉妹はフレディーを連れて逃亡し、ドーム方バリアで街を覆って出入り不可能な状態にした。フレディーは魔術師と同じ牢に閉じ込められ、「一緒に逃げよう」と誘う。すると魔術師は「私の力は子供に無駄遣いされた」と漏らし、諦めるよう告げた。ビリーはメアリーたちに、姉妹と会って交渉しようと提案した。「フレディーと交換で力を渡す」と嘘をつき、姉妹の1人を捕まえて人質交換しようというのが彼の作戦だった。ビリーは鳥になって飛ぶ羊皮紙を使い、招待状を作成した。
ヘスペラはフレディーの首を締め上げ、仲間の情報を吐かせようとする。そこへ招待状が届くと、カリプソはフレディーを魔術師のいる穴に落とした。フレディーと魔術師はアトラスの庭の守り主であるラドンに襲われるが、アンに救われた。アンは人間界に戻る扉の場所を教え、いじめっ子から守ってくれたお礼だと述べた。ヒーローの姿になったビリーはオープンカフェでヘスペラと会い、取引を持ち掛けた。ヘスペラは彼の芝居を見抜いており、「大人のフリしてるけど、やり方が下手ね」と冷淡に言い放った。
ビリーはヒーローに変身した兄弟を呼び寄せ、勝ち誇った態度を見せた。するとヘスペラはカリプソを呼び寄せ、一緒にビリーたちを攻撃した。ビリーはヘスペラを昏倒させ、隠れ家に運んで永遠の岩に監禁した。しかしビリーたちが去った直後、ヘスペラは生命の木に宿る黄金のリンゴを盗んで脱走した。リンゴを見たアンテアが「私たちの世界に植えましょう」と言うと、カリプソは「人間界に植えては?」と言う。それは人間界を滅ぼすことに繋がるため、アンテアは反対した。
ヘスペラは「生命の木は人間界では育たない。怪物に変化する」と言い、当初の計画を進めるようカリプソを諫めた。するとカリプソは、「私たちの怪物を送り込んで、人間たちに仕返しする」と反論した。フレディーは隙を見てリンゴを盗むが、三姉妹に気付かれた。そこにビリーが駆け付け、フレディーと魔術師を連れて逃亡する。カリプソはラドンに乗り、彼らを追う。ビリーと兄弟はヒーロー姿で里親の元に戻り、家から避難するよう告げた。
ビリーたちが避難した直後、家はラドンによって破壊された。カリプソは杖を使い、ビリー以外の面々からヒーローの力を奪った。彼女はリンゴを奪還し、球場に埋めた。すると生命の木が一気に成長し、街を侵食した。生命の木からは怪物の群れが出現し、市民を襲い始めた。アンテアはフレディーに「カリプソを止めるようヘスペラを説得する」と告げ、キスをして去った。ビリーは兄弟に怪物の対処を頼み、ラドンの退治に向かった…。

監督はデヴィッド・F・サンドバーグ、キャラクター原案はDCコミックス、『シャザム!』原案はビル・パーカー&C・C・ベック、脚本はヘンリー・ゲイデン&クリス・モーガン、製作はピーター・サフラン、製作総指揮はウォルター・ハマダ&アダム・シュラグマン&リチャード・ブレナー&デイヴ・ノイシュテッター&ヴィクトリア・パルメリ&マーカス・ヴィシディー&ジェフ・ジョンズ、共同製作はダナ・ロビン、撮影はギュラ・パドス、美術はポール・カービー、編集はミシェル・オーラー、衣装はルイーズ・ミンゲンバック、視覚効果監修はブルース・ジョンズ&レイモンド・チェン、音楽はクリストフ・ベック、音楽監修はシーズン・ケント。
出演はザッカリー・リーヴァイ、アッシャー・エンジェル、ジャック・ディラン・グレイザー、レイチェル・ゼグラー、ヘレン・ミレン、ルーシー・リュー、ジャイモン・フンスー、アダム・ブロディー、ロス・バトラー、D・J・コトローナ、グレイス・キャロライン・カリー、ミーガン・グッド、フェイス・ハーマン、イアン・チェン、ジョヴァン・アルマンド、マルタ・ミランズ、クーパー・アンドリュース、リズワン・マンジ、P・J・バーン、ディードリック・ベイダー、デヴィッド・レンゲル、リック・アンドスカ、エリカ・フレーネ、ロッタ・ロステン、ナタリア・サフラン他。


2019年の映画『シャザム!』の続編。
「DCエクステンデッド・ユニバース」(DCEU)の第12作。
監督は前作に引き続き、デヴィッド・F・サンドバーグが担当。
脚本は『シャザム!』のヘンリー・ゲイデンと、『ワイルド・スピード ICE BREAK』『ワイルド・スピード/スーパーコンボ』のクリス・モーガンによる共同。

シャザム役のザッカリー・リーヴァイ、ビリー役のアッシャー・エンジェル、フレディー役のジャック・ディラン・グレイザー、魔術師役のジャイモン・フンスー、スーパーフレディー役のアダム・ブロディー、スーパーユージーン役のロス・バトラー、スーパーペドロ役のD・J・コトローナ、メアリー役のグレイス・キャロライン・カリー、スーパーダーラ役のミーガン・グッドらは、前作からの続投。
他に、アンテアをレイチェル・ゼグラー、ヘスペラをヘレン・ミレン、カリプソをルーシー・リューが演じている。
アンクレジットだが、前作に続いてサデウス役のマーク・ストロングとミスター・マインド役のデヴィッド・F・サンドバーグも少しだけ出演シーンがある。
DCEUからは、他にワンダーウーマン役のガル・ガドット、エミリア・ハーコート役のジェニファー・ホランド、ジョン・エコノモス役のスティーヴ・アギーが出演。また、アトラス役でデレク・ルッソが出演している。

前作のミッドクレジットでは、独房に収監されたサデウス・シヴァナの前にミスター・マインドが現れる出来事が描かれていた。そんなシーンを用意したのだから、今回はサデウスやミスター・マインドが大きく絡む話にするのが当然の流れだろう。
しかし粗筋を読めば分かるように、まるで関係の無い話が描かれている。
サデウスやミスター・マインドを使わないのは、ストーリーが壮大になりすぎたのが理由らしい。
どんな事情があったにせよ、ある意味では前作で期待感を抱いたファンを裏切る内容になっている。

見終わった時、最初に出て来るのは「つまらない」という言葉だ。その一言の後、なかなか具体的な批評のコメントが出て来なかった。
良くも悪くも、引っ掛かりが多いとは言えない映画なのだ。
大きく物語が破綻しているとか、キャラの描写が致命的に間違っているとか、基本設定がデタラメでツッコミ所満載になっているとか、そういうことは無い。
しかし一方で、「ここが面白い」と称賛できるような箇所も、まるで見当たらないのである。

あまり短いコメントで終わらせてもアレなので、捻り出した批評を書いていこう。
アンはフレディーとの初対面で「いじめっ子から守ってくれた」と言っているが、その感覚は解せない。
ブレットとバークは「何かあったら俺たちに言ってくれ」と言っただけであり、アンが嫌がっているのに絡んだわけではない。その段階では、アンは何の迷惑も被っていないのだ。
それなのにフレディーが「病的なナルシストとクラミジア持ち。歩く災いだ」と馬鹿にするのは、アンを守る行動には受け取れない。
そうではなく、「自分がアンと喋っていたのに、邪魔されたので馬鹿にした」という風に見えるのだ。

ビリーは養兄弟から「知恵が足りない」と評されており、実際に抜けている部分が目立つ。しかし、なぜか「アンの正体がアンテア」という真実だけは、すぐに言い当てる。
「アンテア」に「アン」が含まれているというだけで、それ以外には推理のための手掛かりなんて何も無いのに。
これが「名前から思い付いた浅はかな推理」と周囲に思われており、「皆は呆れていたけど実は正解だった」という見せ方にしているなら、何の問題も無い。
だけど普通に「ピンと来た」って感じで描いているので、それはどうなのかと。

アンは屋上のシーンでヒーローの正体がフレディーだと知り、驚いて「貴方を傷付けるつもりはなかった」と釈明する。しかしゲックルが現れると、カリプソが自殺させるのを何もせずに傍観している。
「ホントは傷付けたくないけど、姉には逆らえないから」ということではなく、何の罪悪感も抱いていない様子だ。
ビリーたちの始末を目論むカリプソの行動は諫めているし、フレディーがラドンに襲われた時も助けている。カリプソと大きく考えの異なるキャラとして描こうとしていることは、明確に伝わって来る。
でもゲックルの件があるので、半端な立ち位置に感じるのだ。
人間に対する良心や善意を持っている設定なら、ゲックルの死を冷淡に傍観しちゃダメだろ。

ヘスペラが隠れ家から逃亡した時、メアリーは「変だと思った。わざと捕まったのね」と言う。つまりヘスペラが捕まったのは、最初から作戦通りという設定だ。
だけど、それならカリプソを呼んでビリーたちを攻撃し、一時的に圧倒する意味が全く無い。そんなのは無駄な時間と労力だ。
ビリーが兄弟を呼んで勝ち誇った時、全く予期していなかったように「まさか」と驚いたり動揺したりする芝居でも見せて、さっさと捕まってしまえば済む話だ。
このシーンにおけるヘスペラの行動は、ただ観客を欺くためだけのモノだ。
それは、ものすごくアンフェアで、ものすごく不細工なのだ。

あとさ、そもそもヘスペラたちの目的が、良く分からないんだよね。
リンゴを持ち帰った時点で「黄金のリンゴを手に入れ、自分たちの世界に生命の木を植える」という計画を進めていたことは、ハッキリと示されている。ただ、その直前にはビリーを非難し、父親が魔術師に奪われた力を返せと要求しているんだよね。
「生命の木があれば力が戻る」ってことなんだろうけど、「だったら最初から博物館を襲撃したりビリーたちを攻撃したりせず、話し合いで済んだんじゃないか?」と思っちゃうのよ。
ビリーたちからすると、リンゴを1つ渡したところで、それでスーパーヒーローの力を失うわけじゃないはずだし。
なので「ヘスペラたちって目的と行動が釣り合ってなくねえか?」と言いたくなっちゃうんだよね。

前半の段階で、ヘスペラとカリプソは考え方に相違がみられた。
後半に入るとカリプソが過激派として勝手に暴走し、完全ネタバレになるがヘスペラの命を狙う。それに伴い、ヘスペラはビリーの味方をする。
そうなると、キャラ的にアンテアと被っちゃうんだよね。だったら姉妹は3人じゃなく、2人でも良かったんじゃないかと。
アンテアを使ってフレディーとの恋愛劇を描きたいのなら、ヘスペラは外してもいい。
あるいは逆でもいいけどね。どうせアンテアとフレディーの恋愛要素は、必要不可欠ってわけでもないし。

前作ではビリーだけでなく、兄弟もヒーローに変身して戦う展開を用意していた。だから今回も当然のことながら、兄弟全員がヒーローとして活動している。ところが終盤に入ると、ビリー以外の面々はヒーローの力を失う。
そりゃあ主人公はシャザムだから、ビリーだけ活躍させるってのは正しいのかもしれない。でも、そんなクライマックスを用意するのなら、最初から兄弟をヒーローにしなきゃ良かったのよ。
前作で「兄弟全員がヒーローになって戦う」という形を見せたのなら、今回も最後まで使うべきじゃないのかと。
元の姿に戻ってからも兄弟は市民を守るために行動するけど、そういうことじゃないし。

完全ネタバレだが、最後はビリーがカリプソとラドンを倒すが、自らも命を落とす。とは言え主人公なので、死んだままで終わらないことは分かり切っている。
どうするのかと思っていたら、埋葬現場にワンダーウーマンが現れ、杖の力で復活させる。ビリーが死んでから復活まで、わずか2分ぐらいだ。
そりゃあビリーが生き返らなきゃ話にならないけどさ、それにしても安直すぎるだろ。そんな都合の良すぎる復活劇だと、興奮も感動も無いぞ。
だからって『魁!!男塾』ぐらい振り切ってギャグ的に描かれているわけでもないし、ただ呆れて苦笑したくなるだけだよ。

(観賞日:2025年6月15日)


第44回ゴールデン・ラズベリー賞(2023年)

ノミネート:最低作品賞
ノミネート:最低主演女優賞[ヘレン・ミレン]
ノミネート:最低助演女優賞[ルーシー・リュー]
ノミネート:最低脚本賞

 

*ポンコツ映画愛護協会