『スマイル、アゲイン』:2012、アメリカ

1993年から2005年まで、スコットランド人サッカー選手のジョージ・ドライヤーはヨーロッパの各国リーグでストライカーとして活躍した。しかし試合中に重傷を負い、36歳で引退した。現在、アメリカのヴァージニア州で暮らすジョージは、失業状態が続いている。彼は口座の残高がマイナスになっており、クレジット会社から支払いを求める電話が来ても無視した。彼は家賃を払うことも出来ず、ユニフォームやシューズをスポーツグッズの販売店に持ち込んだ。店主からヴァージニア州に住んでいる理由を問われた彼は、「息子に会いに来た。今は母親と暮らしてる」と答えた。全て売っても300ドルにしかならず、ジョージは落胆した。
ジョージは息子のルイスを迎えに行くため、元妻であるステイシーの家へ急いだ。ルイスを車に乗せた彼は、ステイシーから必ず7時までに戻るよう釘を刺された。「この2週間、放っておいて悪かったな」とジョージが謝ると、ルイスは「もっと長いよ」と指摘した。ルイスは所属するサッカーチームの調子を問われ、「負け続けで得点はゼロ」と答えた。息子をサッカー場へ送り届けたジョージは、コーチのジェイコブが電話をしながら子供たちに間違った技術を指導する様子を目撃した。
練習後にダイナーでルイスと昼食を取ったジョージは、ステイシーが恋人のマットと結婚する予定だと知った。ルイスを家まで送り届けたジョージはショックを隠し、ステイシーに「おめでとう」と告げた。翌日、ジョージはテレビ局を訪れ、元チームメイトで解説者のチップ・ションストンと会う。チップから「今はカナダで不動産の商売だっけ?」と訊かれた彼は、「別荘をやってたが、ただの宣伝役だ」と答える。「スポーツ・バーもやってたな」と言われた彼は、「不景気で潰れた」と返した。ジョージはチップに「君が勧めてくれた解説の仕事をやろうかと思ってる」と言い、自宅で撮影したデモ映像を渡した。
ジョージがルイスの練習を見学に行くと、ジェイコブは電話を掛けながら適当に指導していた。我慢できなくなったジョージはグラウンドに入り、子供たちにシュートの技術を教えた。その夜、ジョージはステイシーからの電話で、「貴方って第一印象はいいの。少年チームの親たちからコーチの要請が」と言われる。断ろうとするジョージだが、「ルイスのために何かしてくれたことがあった?」と指摘されて引き受けることにした。これまでコーチを担当していたジェイコブは、アシスタントコーチになった。
翌日から指導を始めると、ハンターという子供の父であるカールが挨拶に来た。彼はジョージの現役時代を知っており、興奮した様子で「感激だよ、アンタが息子のコーチなんて」と述べた。カールは封筒に入った高額の寄付金を渡し、「出来れば息子をゴールキーパーに。娘もいるんだ。試合で国歌斉唱を」と頼んだ。サマンサの母親のデニースが練習を見ていると、ビリーの母親のバーブが来た。デニースはジョージについて「あの新しいコーチは誰?」と尋ねるが、バーブも知らなかった。近くにいた女性が2人に、ステイシーの別れた夫で持つサッカー選手だと教えた。バーブはデニースから「狙ってる?」と訊かれ、「もう男は懲り懲り」と否定した。しかし実際には、2人ともジョージに興味を抱いていた。
帰宅したジョージが留守電を確認すると、子供たちの母親から様々な要望のメッセージが吹き込まれていた。翌日、ジョージがサッカー場へ行くとバーブが話し掛け、「ビリーは下手だけど頑張ってる。私も相手をするけど下手で。父親に頼んだけど忙しいって。ウチは離婚して色々あって」とと語る。ジョージが「ビリーは大丈夫。俺で手伝えることがあれば喜んで」と優しく言うと、彼女は泣き出す。バーブは「ありがとう」とジョージに抱き付き、客席に戻った。
ジョージはカールに頼まれた通り、娘に国歌斉唱を担当させてハンターをゴールキーパーに起用した。試合を見ている母親たちは、子供がジョージを気に入っていること、練習に熱を入れるようになったことを語り合う。カールは妻のパティーに、「いいコーチだ。顔もいい」と言う。「貴方には負けるわ」と告げると、彼は「勘繰るな。いい男だと言っただけだ」と語った。試合に勝利したジョージがルイスを車に乗せて帰ろうとすると、デニースが声を掛けた。ジョージは「見覚えがある」と言い、デニースのヒントで彼女が元スポーツキャスターだと思い出した。
夜になって帰宅したジョージは、ルイスを彼のために用意した寝室へ案内した。部屋にはイタリアの湖畔へ家族で遊びに行った時の写真が飾られていたが、まだ幼かったルイスは記憶に無かった。2人でホラー映画を見たジョージは、ルイスを寝かし付ける。パソコンを使っていた彼は、デニースから「私を思ってる?」とメールが入ったので困惑した。しかし悪夢を見たルイスが「ママに電話したい。帰りたい」と頼むので、仕方なくステイシーの元へ送り届けた。「楽しいお泊まりも終わりか」と彼が残念そうに立ち去ろうとすると、ステイシーは「時間を掛けて」と諭した。
翌日、練習に赴いたジョージはカールから「金曜の夜にパーティーがある」と誘われる。「いい客が来るし、お楽しみのチャンスもある」と頼まれ、ジョージは承諾した。カールと入れ違いでバーブが話し掛けて来るが、すぐに泣き出してジョージに抱き付いた。ジョージが練習を始めると、今度はデニースがやって来た。彼女が「共通の友人に会ったわ。チップよ。デモ映像のコピーを貰った。良ければ誰か紹介するわ」と話すと、ジョージは「ありがたい」と歓迎した。
ジョージはキング邸のパーティーへ行き、客を笑わせて大いに場を盛り上げた。カールは彼を気に入って、パーティーに招いた女性と浮気していることを明かした。彼はパティーをジョージに紹介し、席を外した。ジョージはパティーからカールの浮気相手について質問され、「考えすぎですよ」と告げた。屋敷を去ろうとした彼は、カールのフェラーリを眺めた。するとカールが現れ、車を貸すと言う。ジョージがステイシーの家へ行くが、誤って車の警報を鳴らしてしまう。気付いたマットが声を掛けると、ジョージは「ルイスのことでステイシーと話したくて」と釈明した。
外に出て来たステイシーが苛立った様子で「何の用?」と言うと、ジョージは旅の思い出を語るが、ステイシーは「もう夜中よ。話から朝に電話して」と冷たく告げる。ジョージが「考えたことはないか。俺が全て壊さなければと」と話すと、彼女は「いつも考えてた。貴方は私の人生の華よ」と口にした。ジョージが帰宅すると、名簿で住所を見たというバーブが待っていた。「毎週金曜日はビリーを父親に預け、女友達と夜遊びしようと思うけど車でグルグル回るだけ」と語る彼女を、ジョージは家に招き入れた。ジョージは一緒にビールを飲み、もっと自分に自信を持つようバーブを励まい。バーブは彼に抱き付き、キスをした。その様子を、大家のパラムが見ていた。
翌朝、ジョージが目を覚ますと、ベッドを共にしたバーブはメモを残して去っていた。そこへカールから電話が入り、「1万ドルほど保釈に必要なんだ」とジョージは言われる。酒を飲み過ぎたカールはパティーに色目を使った男を殴り、留置場に入れられたのだ。2時間後にルイスとサッカーをする約束があったジョージだが、カールから「家に寄って金を受け取り、保釈に来てくれ」と頼まれる。ジョージがキング邸へ行くと、パティーは「もう嫌よ」と抱き付いた。
ジョージは留置場からルイスに電話を掛け、「少し遅れるが、必ず行く」と言う。保釈されたカールは、「彼女を他の男は渡せない。浮気相手は殺す」と述べた。ジョージがフェラーリでルイスを迎えに行き、彼の機嫌を取るため膝に乗せてハンドルを握らせた。ルイスから「ママの再婚は悲しい?」と訊かれたジョージは「悲しい」と素直に求めた上で、「でもマットはいい奴だ」と告げた。そこへデニースから電話が入り、ジョージば「ESPNが人材を求めてる。今すぐにデモを作り直しましょう」と言われる。ジョージはデニースの家へ行き、サマンサのシッターにルイスも預かってもらった。
デニースはジョージを連れてスタジオへ行き、新たなデモを撮影した。ジョージはテニースに誘惑されて関係を持ち、帰りが遅くなったせいでルイスの機嫌を損ねてしまった。ルイスをステイシーの元へ送ったジョージが帰宅すると、パラムが来て家賃を催促される。そこにパティーから電話が入り、ジョージは「帰ったら貴方のベッドに私がいるわ」と言われる。しかしパティーが間違ってパラムの家に侵入していると気付いたジョージは、自分の住まいは向かいのゲストハウスだと教えた。彼はパラムを引き留めて時間を稼ぐため、カールから貰った寄付金を家賃として渡す。パティーがゲストハウスに来て誘惑すると、ジョージは「彼は友人だ。今すぐ帰ったら何も言わない」と説得した。「夫は何度も浮気して、私は1度も駄目なの?」とパティーが言うと、彼は「貴方は聡明な女性だ。不幸な結婚を続けるべきじゃない」と述べた。
次の日、練習に赴いたジョージはデニースから、「貴方のデモ映像をコネティカットに送ったわ。有望だって」と聞く。ステイシーの車で練習場に来たルイスは、ジョージとデニースがキスする様子を目撃した。試合の途中で、ジョージはバーブから電話を受ける。彼は「今は忙しくて話せないんだ」と困惑するが、バーブは一方的に喋る。ジョージはルイスのシュートを見逃してしまい、慌てて駆け寄るが「見てなかっただろ」と怒鳴られた。ルイスは苛立って相手選手に体当たりし、レッドカードで退場になった。驚いたジョージから「どうした?昨日のことか」と問われたルイスは、「パパもサッカーも大嫌いだ」と怒鳴って去った。
ジョージはステイシーに電話を掛け、「嫌われた?」と訊く。「本気じゃないわ。でもチームを抜けたいって」とステイシーが言うと、彼は「親の心得を教えてくれ。飲みながら話でも」と誘う。ステイシーは「コーヒーならいいわ」と言うが、ジョージはレストランでビールを飲みながら食事することを取り付けた。ステイシーは彼に自分の体験を語り、「親なんか必要ないと思っても、そばにいるべきよ」とアドバイスする。ジョージは「愛した女は君だけだ」と言い、ステイシーとの思い出を語った。するとステイシーは、「あの子のために戻って来たなら嬉しいけど、私のためなら駄目よ。あの子も傷付く」と告げた。
ジョージはルイスと会い、「チームをやめたいって?大きな間違いだぞ」と言う。「どうせ下手だし」とルイスが漏らすと、彼は「そんなことは無い。俺の息子だ。サッカー好きの血が流れてる」と励ます。ジョージが「試合の前だし、公園で練習しないか」と誘うと、ルイスは承知した。2人が公園へ行くと、雨が降り出した。しかしジョージは「小雨だから、すぐに止む」と言い、練習を開始する。車で公園へ行ったステイシーは、2人の様子を見て目に涙を浮かべた…。

監督はガブリエレ・ムッチーノ、脚本はロビー・フォックス、製作はジョナサン・モストウ&ケヴィン・ミッシャー&ジェラルド・バトラー&アラン・シーゲル&ハイジ・ジョー・マーケル&ジョン・トンプソン、製作総指揮はアヴィ・ラーナー&ダニー・ディムボート&トレヴァー・ショート&エド・カセル三世&ボアズ・デヴィッドソン、共同製作はアンドレア・レオーネ&ラファエラ・レオーネ、共同製作総指揮はディエゴ・マルティネス、製作協力はダニエル・ロビンソン&アンディー・バーマン&マーガレット・コル、共同製作総指揮はロニー・ラマティー、撮影はピーター・メンジースJr.、美術はダニエル・T・ドーランス、編集はパドレイク・マッキンリー、衣装はアンジェリカ・ルッソ、音楽はアンドレア・グエラ。
出演はジェラルド・バトラー、ジェシカ・ビール、ユマ・サーマン、キャサリン・ゼタ=ジョーンズ、デニス・クエイド、ジュディー・グリア、ジェームズ・タッパー、ノア・ロマックス、アベラ・ワイス、グラント・グッドマン、グラント・コリンズ、エイダン・ポッター、マーレナ・レイン・ラーナー、イクバル・セバ、マイク・マーティンデイル、ジェイソン・ジョージ、エミリー・ソマーズ、ジェリー・メイ、カティア・ゴメス、ジゼラ・マレンゴ、シンディー・クリークモア、ニッキー・バグス、リッチー・モンゴメリー、ジョン・マック他。


『幸せのちから』『7つの贈り物』のガブリエレ・ムッチーノが監督を務めた作品。
脚本は『ハネムーンは命がけ』のロビー・フォックス。
ジョージをジェラルド・バトラー、ステイシーをジェシカ・ビール、パティーをユマ・サーマン、デニースをキャサリン・ゼタ=ジョーンズ、カールをデニス・クエイド、バーブをジュディー・グリア、マットをジェームズ・タッパー、ルイスをノア・ロマックスが演じている。

「主人公はサッカーのスター選手だった男で、サッカーを通じて家族との関係を修復する」という話が2012年のアメリカ映画として製作されている辺りに、時代の変化を感じる。
これが1980年代の映画なら、主人公は「元MLB」や「元NFL」などアメリカの4大スポーツの選手だった設定になっていただろう。
当時のサッカーは、アメリカではマイナー・スポーツだった。
2012年の時点でも、まだ4大スポーツには圧倒的な差を付けられていたが、それでも映画の題材に出来るぐらいのランクには達していたわけだ。

とは言え、まだまだアメリカではマイナースポーツ、そんなに人気が無いスポーツという扱いらしい。
その証拠に、序盤でグッズを売りに行った時、リバプールの選手としてチャンピオンズ・リーグでも活躍したぐらいの選手なのに、全部で300ドルしか付かない。そして店主から、「バスケットのユニフォームがあれば」と言われている。
相変わらず、4大スポーツとは大きな差があるってことなのね。
ただし、これって物語にも利用できる要素なんだよね。
つまり「ヨーロッパだったら今でも大人気のスターなのに、アメリカでは全く扱いが違う」ってのは、この映画を面白くするための要素として大いに使えるはずなのだ。

ところが、そういう「使い勝手のいい要素」「絶対に使うべき要素」を、この映画は全く活用していない。
主要キャラの内、ジョージのサッカー選手としての凄さを知っているのは、チップを除けばカールぐらいだ。つまり保護者の大半は、彼を「サッカー界の大スター」として認識していない。
だから前述したように「ヨーロッパでは大スターなのにアメリカでは無名」というトコを使える状況は整っている。
しかし実際のところ、ジョージは一部の保護者から大人気だ。
ただし、それは「子供たちのコーチとして有能だから」という理由ではない。「いい男だから」ということで、一部の母親たちからモテモテになるのだ。

この「女性たちからモテモテ」ってのが物語の軸になろうとは、全く予想もしていなかった。
でも、その裏切りは全く歓迎できるモノではない。「なんでそうなるの?」と言いたくなる。
きっと多くの人が導入部で予想するのは、「すっかり落ちぶれていた元スーパースターが第二の人生をやり直す」ってな感じのドラマじゃないかと思うのよ。あるいは「家族関係を修復する」というドラマを期待する人もいるだろう。
その予想は、完全に裏切られるわけではない。2つとも、それなりには描かれている。
しかし、それよりも「ジョージが女性たちからモテモテ」という部分の扱いが圧倒的に上なのだ。

初めてジョージが子供たちにシュートを教えた時、ルイスは「パパ、上手いね」と言っている。
つまりルイスはジョージの現役時代を全く知らないし、どれぐらいサッカーが上手いのかも知らなかったわけだ。
これもドラマを盛り上げるのに利用できるよね。「今までは父親の経歴を全く知らなかったルイスが、サッカー選手としての凄さを知って見直す」という形で使えるよね。そして、そういう出来事が、父子の関係を変化させていくという流れに出来るよね。
でも、そういう使い方はしていない。

ジョージが初めて子供たちに指導した時、何人かの保護者も現場に来ている。だけど、保護者のリアクションは描かれていない。
推測するしかないが、たぶん「誰もジョージがサッカー界のスーパースターだったことを知らない」ということなんだろう。
ところが夜になると、ステイシーが「少年チームの親たちからコーチの要請が」と電話を掛けている。
だったらジョージが指導している時点で、もうちょっと何かあった方が良くないか。保護者の誰かが、「あれはジョージ・ドライヤーだ」と気付くとかさ。

保護者がジョージにコーチを要請するのは、「あのジョージ・ドライヤーだから」ってことではなく、子供たちに大人気だからってのが理由だ。
ジョージがコーチになるってことは、前任者は職を追われる形になる。しかしジェイコブは全く腹を立てず、アシスタントに回る。
だけど電話を掛けながら適当に指導していたぐらいだから、そんなにサッカー熱は高くないんでしょ。子供たちにサッカーを教える仕事に、そんなに興味は無いんでしょ。
だったら、その機会に辞めるという流れでも良くないか。
こいつをアシスタントとして残す意味が全く見えない。残したからには有効活用するのかと思ったら、そうでもないし。

ジョージは解説の仕事も無く、家賃の支払いにも困窮している。しかし、彼は酒に溺れたとか、ギャンブルに狂ったとか、そういう経緯があるわけではない。スポーツ・バーは不景気で潰れたようだが、一攫千金を当て込んで失敗したわけでもなさそうだ。
なので、「かつての人気スターが落ちぶれてしまった」という状況になった事情がハッキリと見えて来ない。
何か問題があって落ちぶれたのなら、それを克服したり改善したりすることが「主人公の成長ドラマ」に繋がる。しかし、そういうモノは見えない。
ここも「アメリカでは無名で経歴が役に立たない」という風に使えるんじゃないかとも思ったりしたんだけど、ただチップが解説者になっているんだよね。ってことはジョージぐらいの選手なら、何か仕事はあるんじゃないかと。
そう思えてしまうので、ますます「なぜジョージは無職で生活に困窮するほどの状況になっているのか」と疑問が湧いちゃうわ。

ジョージはステイシーに未練たっぷりで、ヨリを戻そうとしている。夜中に思い出の車であるフェラーリで彼女の元へ行くのも、そういう狙いがあるからだ。
だが、そんな行動を取った直後、ジョージは訪ねて来たバーブを家に招き入れて関係を持っている。バーブが積極的な行動を取った結果ではあるが、ジョージも受け入れている。さらにデニースにも誘惑され、すぐにセックスする。
そのように「ジョージが複数の女性と関係を持つ」という様子を描くことが、「ジョージが家族関係を修復しようとする」という部分の真剣さを邪魔している。
コメディーとして描いているつもりかもしれないけど、ただジョージの印象を悪化させているだけだ。

ジョージはヨーロッパに残っていれば、きっとコーチなり解説なりでサッカー関連の仕事が何かあっただろう。スコットランドに住んでいれば、その人気や知名度を利用してビジネスでも成功したかもしれない。
それでも彼がアメリカのヴゥージニア州で暮らしているのは、「息子との時間を増やす」ってのが理由のはず。
ところが彼は序盤、「2週間も放っておいた」と言っている。
ってことは、ジョージは何も変わっちゃいないことになる。それはダメでしょ。

その後は1週間に1度のペースでルイスと会っているようだし、一緒に食事を取ったり家に泊めたりしている。なので表面的には「父親として息子との時間を大切にしている」という風に見える。
しかし前述のように、彼は女とのセックスばかりに気を取られている。本質的な部分は、何も変わっちゃいないのだ。
彼は家族を後回しにしていた今までの生活を反省したからこそ、「息子の近くにいたい」ってことでヴァージニア州に来たんじゃないのかよ。
そうやって「変わろう」と決意したのなら、ちゃんと変化した姿になっているべきでしょ。何も変わっていないのなら、「息子の近くにいたいからヴァージニア州に来た」という設定は無しにしなきゃマズいでしょ。

ジョージは試合で退場になったルイスに話し掛けて拒絶されるが、その理由を明確には分かっていない。
だけど、自分が電話で喋っていて、ルイスのゴールシーンを見ていなかったことぐらいは認識しているでしょ。
ところが、ルイスが退場になった時、それが理由だとは全く思っていないのだ。実際はそれだけが理由じゃないけど、それもルイスの苛立ちには含まれている。
そういうことにさえ気が付かないんだから、どんだけ鈍いのかと。

さらに問題なのは、そんなことがあった後にジョージがステイシーを飲みに誘っていることだ。
「親の心得を教えてくれ」と言っているが、息子をダシにしてデートに誘い、ヨリを戻そうと目論んでいるようにしか思えない。
だって息子のことを相談するだけなら、コーヒーでも充分なはずだからね。実際、ジョージはステイシーのルイスに関する助言なんて全く聞いておらず、すぐに「愛した女は君だけだ」と言い出す始末だ。
ねっ、やっぱり息子のことはダシに使っているだけなのよ。ステイシーから静かにダメ出しを受けてルイスと話しているけど、根っ子の部分は父親失格のままなのよ。

この映画で最も不愉快なのは、「ステイシーは今もジョージに未練があり、この2人がヨリを戻す」という結末だ。
それをハッピーエンドとして受け取ることは、私には出来ない。そこまで無神経で大雑把な人間になることは出来ない。
その2人がヨリを戻すということは、マットがステイシーに捨てられるということだ。
これが「マットは嫌な奴、不愉快な奴、身勝手な奴」ってことなら、何の問題も無いよ。でもマットは優しくて人の良さそうな男なのだ。
そんな彼の幸せを、ジョージが自分の身勝手な行動でブチ壊したってことになる。
彼はステイシー&ルイスとの生活をブチ壊した過去があるが、今度はマットの幸せを平気でブチ壊すわけだ。

(観賞日:2020年5月20日)


第33回ゴールデン・ラズベリー賞(2012年)

ノミネート:最低助演女優賞[ジェシカ・ビール]
<*『スマイル、アゲイン』『トータル・リコール』の2作でのノミネート>

 

*ポンコツ映画愛護協会