『ザ・ヘラクレス』:2014、アメリカ

紀元前1200年、ティリンスのアンピトリュオン王は軍勢を率いて、ギリシア南部のアルゴスへ攻め入った。彼はアルゴス王のガイルスを呼び出し、互いの土地や民など全てを賭けた一騎打ちを要求した。アンピトリュオンは要求を受諾したアルゴス王と戦い、見事に勝利を収めた。アルクメネ王妃から「アルゴスは脅威では無かった」と批判されたアンピトリュオンは、「征服したのはお前のためだ」と笑う。「財宝が欲しかったからでしょ」と指摘された彼は、「それもある。神々を盲信している奴らだ。楽な戦いだった」と述べた。
アルクメネは赤ん坊であるイピクレスの面倒を見ていた側近のケイロンを呼び寄せ、戦の方法を教えることに抗議した。アルクメネは神殿へ赴き、「幾つに勝つ度、夫は権力への渇望が強くなるばかり。この災いから解放を」と女神ヘラに祈った。するとヘラが出現し、「受け入れました」と言う。駆け付けたケイロンの忠告を無視してアルクメネが歩み寄ると、ヘラは「救世主は現れる。お前が産む次の息子だ」と告げる。「平和をもたらすために、ゼウスの子を産むか」と問われたアルクメネは、それを承諾した。するとヘラは、「名は好きに付けて良いが、私はヘラクレスと呼ぶ」と告げた。
やがてアルクメネはゼウスの息子を出産し、アンピトリュオンはアルケイデスと名付けた。しかし彼はアルケイデスが自分の子ではないと知っており、イピクレスと同等に扱うことを禁じた。20年後、青年に成長したヘラクレスは、クレタ島のヘベ姫と恋人関係になっていた。2人は川で遊び、ヘベは自分のお守りをヘラクレスに渡した。そこにイピクレスが現れ、無断で外出したヘベの捜索隊が出ていることを告げた。捜索隊にヘベを渡した後、イピクレスは「身の程を知れ。王位継承者は私だ」と言うが、ヘラクレスは軽く受け流した。
夜の森を移動する途中、ヘラクレスとイピクレスは獅子と遭遇しした。ヘラクレスは静かに退避しようと考えるが、イピクレスは「このまま突っ切るぞ」と言う。ヘラクレスは「下がっていろ」と告げて槍を構え、獅子と戦おうとする。イピクレスは指示を聞き入れず、共に槍を構えて獅子に歩み寄った。イピクレスは弾き飛ばされるが、ヘラクレスが獅子を退治した。イピクレスは獅子の毛皮を城へ持ち帰り、自分が退治したと吹聴した。
イピクレスはアンピトリュオンに、ある決定事項の発表を求めた。アンピトリュオンはクレタ王タラスに、イピクレスとヘベを4ヶ月後に結婚させると告げた。その場からヘベが走り去ったので、ヘラクレスは後を追った。アンピトリュオンはイピクレスに、「クレタ人の前で恥をかかされた。男になれ。未来の王として堂々と振る舞え」と説いた。ヘラクレスはヘベから「貴方と逃げたい」と言われて駆け落ちを図るが、捜索隊に捕まった。
アンピトリュオンはソティリスを隊長とする部隊にエジプト遠征を命じるが、いきなり兵隊の数を半分の80名に減らした。ヘラクレスが連行されると、アンピトリュオンはエジプトへ遠征して反乱を鎮める任務を命じた。アルクメネはヘラクレスに、「貴方には果たすべき大きな使命がある」と告げる。「私の使命はヘベを愛することだけ。邪魔する者は王でも許さない」とヘラクレスが声を荒らげると、アルクメネは出生の秘密を明かした。しかしゼウスの息子という事実を、ヘラクレスは信じようとしなかった。
ヘラクレスは部隊を率いて遠征するが、それはアンピトリュオンの罠だった。タラク司令官率いる部隊の待ち伏せを受けた斥候隊は全滅し、本隊も襲撃を受けた。戦いの末に生き残ったのは、ヘラクレスとソティリスだけだった。ソティリスの「隊長はお前が倒した」という嘘を信じたタラクは、部下に「王に伝えろ」と命じた。タラクはヘラクレスの強さを感じ、「生きる気があるなら奴隷として売ってやる。俺も儲かる」と持ち掛けた。ヘラクレスが「俺たちは生きたい。売ってくれ」と告げたので、彼はソティリスと共に拘束された。
宮殿にはヘラクレスの死が伝えられ、葬儀が執り行われた。ヘラクレスとソティリスは奴隷商人であるルシウスに売却され、奴隷戦士として戦わされる。ヘラクレスは弱音を吐くソティリスを励まし、戦いを続けた。アルクメネはアンピトリュオンに、「どうやって息子が死んだか教えて下さる?」と嫌味っぽく問い掛けた。アンピトリュオンが「どうって産んだのか教えるかる何人の男と体を重ねた?」と言うと、彼女は「たった1人、貴方の時代を終わらせるために」と強気な態度で言い放った。
アルクメネは隠し持っていた短剣で襲い掛かるが、あっさりとアンピトリュオンに捻じ伏せられた。「相手は誰だ?」とアンピトリュオンが尋ねると、アルクメネは強気な態度を崩さず「ゼウスよ。貴方を失脚させるため、彼が私に子種を授けた。貴方は神々の子を殺した。後に待つのは破滅だけだわ」と不敵に笑った。アンピトリュオンは激昂し、彼女を殺害した。彼は同席していたケイロンに、アルクメネは息子を失った悲しみで自害したことにするよう指示した。
ヘラクレスはルシウスに、大きく稼ぎたければギリシアへ連れて行くよう持ち掛けた。ソティリスが「年に一度の豪勢な剣闘大会がある。賭け金は想像も出来ないほど高額だ。最終試合は特に高い。6人に対して2人で戦い、勝てば自由になれる」と話すと、ルシウスは闘技場で奴隷戦士のハーフ・フェイス&フンババと戦って勝った方をギリシアへ連れて行くと告げた。ヘラクレスとソティリスは強敵を相手に苦戦を強いられるが、何とか勝利を収めた。しかしソティリスは怪我を負い、しばらく戦えない状態になった。
ヘラクレスはルシウスに、自分1人で戦うのでギリシアへ連れて行けと要求した。ソティリスを自由の身にしろという要求を、ルシウスは承諾した。ソティリスは宮殿に忍び込み、ケイロンにヘラクレスが生きていることを教えた。彼はケイロンと2人の士官を闘技場の見える場所へ案内し、今から戦うのがアルケイデスだと告げて協力を取り付けた。剣闘大会に出場したヘラクレスは、6人の猛者と戦って勝利した。ヘラクレスはケイロンたちから、王と兄が略奪を繰り返していること、母が殺されたことを知らされる。彼は村を襲う兵士たちを捕まえ、アンピトリュオンへの宣戦布告として宮殿へ送り返した…。

監督はレニー・ハーリン、脚本はショーン・フッド&ダニエル・ジアト、製作はダニー・ラーナー&レス・ウェルドン&ボアズ・デヴィッドソン&レニー・ハーリン、共同製作はジゼラ・マレンゴ&ニッキー・ストランゲッティー&ジョナサン・ユンガー、製作総指揮はアヴィ・ラーナー&トレヴァー・ショート&ジョン・トンプソン、共同製作総指揮はロニー・ラマティー、撮影はサム・マッカーディー、美術はルカ・トランキーノ、編集はヴァンサン・タベロン、衣装はソヌ・ミシュラ、音楽はトゥオマス・カンテリネン。
主演はケラン・ラッツ、共演はスコット・アドキンス、リアム・マッキンタイア、ラデ・シェルベッジア、ガイア・ワイス、リアム・ギャリガン、ジョナサン・シェック、ロクサンヌ・マッキー、ケネス・クラナム、マライア・ゲイル、ルーク・ニューベリー、サライ・ギヴァティー、ディミートル・ドイチノフ、ニコライ・ソティロフ、ラドスラフ・パルヴァノフ、スペンサー・ワイルディング、バシャール・ラハル、ウラジミール・ミハイロフ、キトダル・トドロフ、ステファン・シュテレフ他。


ギリシア神話の英雄である半神半人のヘラクレスを主人公とするファンタジー・アクション映画。
監督は『5デイズ』『ディアトロフ・インシデント』のレニー・ハーリン。
脚本は『CUBE2』『コナン・ザ・バーバリアン』のショーン・フッドと、劇場作品は初めてとなるダニエル・ジアトによる共同。
ヘラクレスをケラン・ラッツ、アンピトリュオンをスコット・アドキンス、ソティリスをリアム・マッキンタイア、ケイロンをラデ・シェルベッジア、ヘベをガイア・ワイス、イピクレスをリアム・ギャリガン、タラクをジョナサン・シェック、アルクメネをロクサンヌ・マッキーが演じている。

ギリシア神話に詳しい人なら、粗筋を読んで違和感を覚えたかもしれない。
それもそのはずで、ギリシア神話に登場するヘラクレスとは似ても似つかぬキャラクターが主人公だからだ。同姓同名の別人なのかと思ってしまうぐらい、良く知られているヘラクレスの物語とは大きく異なっている。
しかし残念ながら、これはギリシア神話に登場する半神半人のヘラクレスが主人公なのである。
グラフィック・ノベルの原作でもあるのかと思ってしまったが、完全オリジナル脚本のようだ。

導入部で描かれるヘラクレス誕生の出来事に関しては、ギリシア神話をベースにした上で、それとは全く違う内容に仕上げている。
本来であれば、アルクメネはゼウスに言い寄られ、アンピトリュオンと結婚の約束を交わしていたので拒否する。
ゼウスはアンピトリュオンの不在を見計らい、彼に化けてアルクメネと肉体関係を持つ。
その後、アルクメネはヘラクレスとイピクレスを双子として出産する。
ゼウスがヘラクレスを特別扱いしたので、ヘラは憤慨する。
彼女はヘラクレスを抹殺しようとするぐらい、強い憎しみを抱く。

この映画では、「アンピトリュオンの暴政を不安視したアルクメネが助けを求め、ヘラがゼウスと関係を持って救世主を生むよう促す」という形でヘラクレスが誕生しているので、ギリシア神話とは全く違う。
ギリシア神話のエピソードを使った場合、ゼウスは卑劣な女好きだし、ヘラも赤ん坊を暗殺しようとする怖い女になってしまう。神々を「いい人キャラ」にするには、そこを変更するのは理解できなくもない。
ただし、「ヘラがアルクメネにゼウスとのセックスを勧める」ってのは、無理があり過ぎるでしょ。
テメエの旦那と不倫するよう持ち掛けるってのは、いい人キャラっていうよりも「ちょっと変な奴」になっちゃうよ。

誕生のエピソードや人間関係の初期設定だけはギリシア神話をベースにしているが、それ以降のストーリーは全くの別物だ。
そもそも導入部からして引っ掛かる部分はあるが、それでも「ギリシア神話をベースにした上で改変する」ということなら、「こういう内容が基本の形だけど、こんな風に改変したのね」という味わい方も出来る。
しかし、ここまでギリシア神話を無視した内容にしてしまうと、もはや主人公がヘラクレスである意味は皆無に等しくなってしまう。
これが例えば『アーノルド・シュワルツェネッガーのSF超人ヘラクレス』のように、「ヘラクレスが現代の地球に来て人間と交流する」という内容であれば、ギリシア神話に登場するようなエピソードを全く扱わないのは一向に構わない(だからと言って、決して『SF超人ヘラクレス』が優れた映画ということではないのよ)。
しかし、ギリシア神話の世界観を使っているにも関わらず、広く知られているエピソードを全く使わないってことになると、「コレジャナイ感」が強いだけの映画になってしまう。

ギリシア神話の中でも、ヘラクレスは人気の高いキャラクターと言っていいだろう。これまで数多くの作品で登場している。
そんな彼には有名なエピソードが色々とあって、例えば幾つもの頭部を持つ蛇のヒドラを退治している。クレタ島の牡牛や地獄の番犬ケルベロスを生け捕りにしている。
そういった有名なエピソードを、この映画は全く活用しようとしない。
何かに何まで完全オリジナルの物語ってわけではなくて、例えばヘラクレスが獅子を殺す出来事はギリシア神話に描かれている。
ただしギリシア神話の場合、それは「12の功業」の1つとして登場する出来事だ。それを本作品では、「森でイピクレスと一緒にいた時に遭遇し、退治する」という内容に変えている。
そんな形で使うぐらいなら、むしろ無理して使わなくてもいいと思ってしまう。

ギリシア神話に記されたヘラクレスの物語を使った場合、実は残酷な殺人を犯したり、発狂して暴れたり、ゼウスの血を引いたせいか妻とは別の女に入れ込んだりもしているので、いわゆる「英雄」として全面的に魅力的なキャラクターというわけでもない。
ただし、そこは「イケてる英雄」に見えるように、キッチリと改変すれば何の問題も無く成立するわけで。
有名なエピソードが幾つもあるのに、それを使わないのは勿体無いと感じるのよね。
メリットとデメリットを比較すると、明らかにデメリットの方が大きいんじゃないかと。

全くのオリジナル・ストーリーであっても、それが面白ければ、不満を覆い隠してしまったかもしれない。
しかし、これが面白くないのよ。
まずキャスティングからして失敗だわ。
スコット・アドキンスは格闘の出来る俳優だから、彼を起用するのは悪くない。
ただし、どこに配置するかってのは重要なポイントで、アンピトリュオンを演じさせたのはマズかった。
スコット・アドキンスってケラン・ラッツよりサイズが小さいので、「ラスボス」としての存在感が弱くなっているのよね。

やっぱりヘラクレスが最後にタイマンを張る相手は、彼より強大に見えないと困るわけで。
「小さくても強いんです」というキャラもいるだろうけど、やっぱり見た目って大事よ。
そこまでの展開でアンピトリュオンの強さは示しているけど、ヘラクレスだってアピールしているわけで。
だから2人が対峙した時に、サイズでヘラクレスが勝っているのを見ると、「負けることは無いな」と感じてしまうのよね。
これは大きな痛手でしょ。

それと、アンピトリュオンのキャラクター描写にも大きな問題がある。
アルクメネが不安視してヘラクレスを生むのだし、最終的には「ヘラクレスが倒すべきラスボス」のポジションに座るわけだから、当然のことながら「悪党」であるべきだろう。
だったら冒頭シーンは、それを最初にアピールする絶好の機会だ。
でも、アンピトリュオンは卑劣な手段を使うわけでもなく、必要以上に残虐な行動を取るわけでもない。一騎打ちを持ち掛け、真正面から正々堂々と戦ってアルゴス王に勝利している。
だから兵隊からは喝采を浴びているし、それも当然だと思える。
そこには、「悪い奴」としてのイメージが皆無なのよ。

アルクメネとの会話シーンでは、「権力への欲望が強い」「神々を崇拝していない」というアンピトリュオンの性格が垣間見える。
ただ、決して善人でも英雄でもないが、だからといってアルクメネが女神に助けを求めるほどの人物でもないように思えるのだ。
当時は「戦で領地を広げる」ってのは当たり前っちゃあ当たり前だったわけで、むしろ「戦は災いを生むだけ」ってことで権力への渇望を全否定するアルクメネの方が「過剰に反応しすぎじゃねえか」と思ったりもするのよね。
そもそも、その時点では、アンピトリュオンの行動が災いをもたらすような気配は全く感じられないわけだし。
「民をお救い下さい」と言っているけど、「戦いが好きじゃないので、夫を何とか自分好みのタイプに変えてもらいたい」というエゴでしかないように思えるぞ。

設定としては「アンピトリュオンを止めるためにアルクメネがゼウスと関係を持ち、救世主のヘラクレスを産んだ」ってことなんだけど、むしろ「アルクメネが裏切ってゼウスと関係を持ち、ヘラクレスを産んだせいで、アンピトリュオンは道を外れて凶暴化した」ってな感じに見えるのよね。
アルクメネがアンピトリュオンに殺されるのも、強気な態度で「ゼウスの子を殺したから破滅するわよ」と挑発するかのように笑ったからで。
そりゃあ、アンピトリュオンが激昂するのも無理は無いと思ってしまう。
アルクメネが殺されたと知ってヘラクレスが復讐を誓うんだから、彼女は同情を誘うようなキャラにしておくべきだろうに。

ヘラクレスの誕生から20年後へワープすると、いきなり彼はヘベという女と付き合っている。
普通、こういう話だと「女と出会って、恋に落ちて」という手順を踏むことが多いのだが、そこをバッサリと省略している。幼い頃に出会っていたというわけでもなく、「既に女と惚れ合っている」という形で入るのは、なかなか思い切った構成だ。
ただし、それがプラスかと問われれば、答えはノー。
ここの恋愛関係が弱いもんだから、「ヘベのためなら王にも逆らう」というヘラクレスのモチベーションにも乗り切れない。
そもそも、ヘベって誰だよ。メガラでもデイアネイラでもないのかよ。

もう1つの問題として、「20年後に飛んで、最初のシーンがそれなのかよ」と言いたくなる。
ヘラクレスが誕生した時、アンピトリュオンは「イピクレスと同等の扱いを禁じる」と言っている。そこから20年後に飛ぶんだから、「ヘラクレスがイピクレスとは全く違う扱いを受けている」ってのを最初に見せるべきじゃないのかと。
なんで最初のシーンが、「ヘラクレスには恋人がいて楽しく過ごしています」という幸せ満点の光景なのかと。
それに、ヘラクレスが差別されている描写なんて全く見当たらないのよ。王位継承権が無いのは、弟だから当たり前だし。
結局、イビクレスとの差って「兄と弟」という以上のモノが著しく弱いのよね。

しかも、ヘラクレスはイピクレスから何を言われても、勝ち誇ったような余裕の笑みで返している。「身の程を知れ」とヘベとの関係について忠告されても、「そうかい」とニヤニヤ笑いで軽く告げている。
「差別されている男の悲哀」なんてモノは全く無い。それどころか、イピクレスより強い立場にあるかのような様子だ。
どっちが主役なのかと。
もちろん陰湿な性格丸出しのイピクレスに主役っぽさなんて皆無だけど、じゃあヘラクレスが主役っぽいかと言われると、それも薄いんだよね。

アントリュピオンに対してもヘラクレスは生意気な態度を取っているけど、それで処罰されていないのが不思議なぐらいだわ。
駆け落ちを図って捕まっても、ヘラクレスは「婚姻の取り決めは満月までに無効になる」と偉そうに言い放っているけど、なんで王様に対して平気でそんな態度が取れるのかと。
どういう世界観なんだよ、この映画は。
とにかく、こいつがアントリュピオンやイピクレスに対して強気な態度ばかり取り続けるのが、ちっとも魅力に繋がっていないのよ。
むしろ不快感さえ漂うわ。

イピクレスは確かに陰険な性格だけど、彼が捻じ曲がったのもヘラクレスのせいじゃないかと思えるんだよね。
自分が正当な王位継承者であり、周囲の人間はヘラクレスは同等の扱いを禁じられている。しかし、そんなに大きな違いなんて無い。
おまけに、母はヘラクレスだけを可愛がり、自分には冷淡な態度を取る。一応は味方であるはずのアンピトリュオンも、叱責ばかりを繰り返す。
そりゃあ、イピクレスがグレるのも無理は無いぞ。
「性格に問題があるから周囲がヘラクレスに付いた」ってことじゃなく、「ママンがヘラクレスばかりチヤホヤするので性格が捻じ曲がった」という風にしか思えないのよ。

終盤、ソティリスは妻を殺され、息子を人質に取られてヘラクレスの居場所を白状する。
ケイロンは父の命令を受けたイピクレスによって、ヘラクレスの眼前で殺害される。
そこで初めてヘラクレスが「父よ、貴方を信じます。私に力を」とゼウスに呼び掛けると、スーパーパワーが宿る。彼は部隊を率いて反乱を起こし、ゼウスの力が敵の軍勢を倒す。
でも、そこまで多くの犠牲を払わなきゃゼウスが助けてくれないってのは、どうにもスッキリしないわ。

っていうかさ、ヘラクレスはゼウスが力を貸してくれるまで、自分じゃ何もやっていないんだよな。
「全てはゼウスのおかげ」なので、ちっともイケてない奴になっている。
しかも、戦う相手は普通の人間であるアンピトリュオンや兵士たちなので、そりゃあ神の力を得たヘラクレスが勝つに決まってるだろうと。
つまり、ヘラクレスの戦う相手を人間だけに限定しているのが大きな間違いなのよ。
半神半人なんだから、そこは怪物と戦わせないとパワーバランスが悪いでしょうに。

(観賞日:2016年2月6日)


第35回ゴールデン・ラズベリー賞(2014年)

ノミネート:最低作品賞
ノミネート:最低監督賞[レニー・ハーリン]
ノミネート:最低主演男優賞[ケラン・ラッツ]
ノミネート:最低主演女優賞[ゲイア・ウェイス]
ノミネート:最低リメイク&盗作&続編賞
ノミネート:最低スクリーン・コンボ賞[ケラン・ラッツ&彼の腹筋or胸筋or尻の筋肉]

 

*ポンコツ映画愛護協会