『ジャスト・マリッジ』:2003、アメリカ&ドイツ

ヨーロッパへの新婚旅行を終えて、トム・リーザックとサラ・マクナニーがロサンゼルス空港に戻ってきた。だが、2人は互いに相手を突き飛ばしたり、ガムを髪に投げ付けたりと、険悪な関係を露骨に表した。サラはタクシーの順番待ちが多いため、仕方なくトムの車で家まで送ってもらう。豪邸に到着したサラを、姉ローレンが出迎えた。トムは車で庭を破壊し、走り去った。
トムが自宅に戻ると、友人カイルが眠っていた。留守番電話のメッセージにサラの元恋人ピーターの声が入っていたため、トムは怒って破壊した。勤務するラジオ局に赴いたトムは、同僚フレッドに「全て上手く行っていたのに、新婚旅行でブチ壊しだ」と愚痴った。トムはビーチで仲間とアメフトをしていた時、犬を散歩させていたサラと出会った。トムはラジオ局で深夜の交通情報を担当する代理DJで、サラは大物実業家ダン・マクナニーの娘だ。トムとサラは、出会って1ヶ月後に同棲生活を開始した。
ある日、サラが外出している時、スポーツ誌を読んでいたトムは彼女の飼い犬に邪魔をされた。トムがボールを投げると、犬はそれを追い掛けて窓から転落死した。トムはサラに、犬は鳩を追い掛けて死んだと嘘をついた。サラはトムを家族に紹介した。その場には、ダンのビジネス・パートナーであるピーターも同席した。母プッシーを除いて、サラの家族はトムとの結婚に反対していた。ダンは友人のロバート神父に愚痴をこぼし、サラの兄達はトムに嫌がらせをした。
出会いから9ヶ月で、トムとサラは結婚を向かえた。結婚式の日、トムはサラとピーターの過去が気になっているが、確かめられずにいる。実は、サラはトムと付き合い始めた頃、ピーターと寝たことがあった。だが、それを彼女はトムに打ち明けられずにいた。式を終えた2人は初夜を迎えようとするが、トラブルで上手く行かなかった。それでも、2人は幸せ一杯の気持ちだった。
ヨーロッパ行きの飛行機に乗り込んだトムとサラは、トイレでセックスしようとする。だが、トムの足が便器から抜けなくなったこともあり、未遂に終わった。スイスに到着した2人は、トムの運転する車でホテルへ向かう。途中、ささいなことで口ゲンカになるが、すぐに和解した。2人は豪華なジュネーヴ・ホテルに到着し、支配人アンリと会ってチェック・インした。
2人が部屋に入ると、カイルからのプレゼントとしてバイブレーターが届いていた。トムは「ここではコンセントが使えない」というサラの言葉を無視し、バイブレーターのプラグを差し込んだ。その途端、コンセントがショートして火災が発生する。トムとサラは慌てて外に逃げ出し、消防隊によって火は消された。アンリから弁償を要求されたトムは逆ギレして罵り、ホテルを追い出された。
トムは不機嫌になっているサラを車に乗せて雪道を走り、別のホテルを探すが、なかなか見つからない。路肩の小山に激突して車が動かなくなり、トムとサラは口ゲンカを始めるが、すぐに仲直りした。サラは、父に頼んで金を出してもらい、ジャンナ・ホテルに宿泊しようと持ち掛ける。トムは「ヴェニスに父の薦めるペンショーネがある」と譲らず、また口ゲンカになり、すぐに和解した。2人が到着したペンショーネは安普請のオンボロだったが、サラは「こんなのも楽しい」と上機嫌だった。
結局、2人はダンに金を出してもらい、ジャンナ・ホテルに宿泊した。2人は観光に出掛けるが、サラの希望で美術巡りをする。だが、スポーツバーを見つけたトムは、ドジャースの中継が見たいと言い出した。そこでサラは美術巡り、トムはスポーツバーと別行動を取ることにした。ホテルに戻ったサラは、ピーターに声を掛けられた。仕事で来ていると言うピーターだが、それは嘘だった。彼はフロント係のフレドに金を渡し、サラの行動を伝えるよう頼んだ。
サラはホテルに戻ってきたトムに、嘘をついていることは無いか尋ねた。問い詰められたトムは、犬の死に関する嘘を打ち明けた。サラは「嘘だけは許せない」と激怒し、部屋を出て行こうとする。トムは彼女を引き止め、「そっちにも嘘があるはず」と言う。サラがピーターと寝たことを打ち明けたため、トムは激怒した。2人は激しく言い争い、部屋を出た。スポーツバーに行ったトムは、ウェンディーという女性と親しくなる。一方、サラはピーターに声を掛けられ、彼が購入予定の豪邸へ一緒に赴いた…。

監督はショーン・レヴィー、脚本はサム・ハーパー、製作はロバート・シモンズ、共同製作はアイラ・シューマン、製作総指揮はトレイシー・トレンチ&ジョシー・ローゼン&ローレン・シュラー=ドナー、撮影はジョナサン・ブラウン、編集はドン・ジマーマン&スコット・ヒル、美術はニーナ・ラスシオ、衣装はデブラ・マクガイア、音楽はクリストフ・ベック。
出演はアシュトン・カッチャー、ブリタニー・マーフィー、クリスチャン・ケイン、モネット・メイザー、レイモンド・J・バリー、ジョージ・ゲインズ、デヴィッド・モスコー、デヴィッド・ラッシュ、ヴァレリア、サド・ラッキンビル、デヴィッド・アグラノフ、タラン・キラム、トシ・トダ、マッシモ・シナ、アレックス・トーマス、ローレン・アレクサンドレ他。


『がんばれ!ルーキー』のサム・ハーパーが脚本を執筆した恋愛コメディー映画。
トムをアシュトン・カッチャー、サラをブリタニー・マーフィー、ピーターをクリスチャン・ケイン、ローレンをモネット・メイザー、トムの父をレイモンド・J・バリー、ロバート神父をジョージ・ゲインズ、カイルをデヴィッド・モスコー、ダンをデヴィッド・ラッシュ、ウェンディーをヴァレリアが演じている。また、アンクレジットだが、プッシー役でヴェロニカ・カートライトが出演している。

そもそもトムとサラは、結婚したのが間違いじゃないのかと思える。軽はずみな気持ちで深く考えずに結婚しており、あらかじめ破綻が約束されていたと言ってもいい。
ただし、結婚の時点でそれが失敗だったとしても、そこからの歩みによって精神的に成長し、互いに相手を深く理解しようとする気持ちが高まったりすれば、それはそれで恋愛劇として成立するだろう。
しかし、トムとサラの場合、最初に空港でのケンカが描かれた後、回想に入って「言い争いになって、すぐに仲直り」ということが、延々と繰り返されるだけだ。言い争いや喜劇を繰り返しつつ、その中で自分の態度を改めようとしたり、相手の良さを知って見直したり、そういったことは全く無い。最初の段階が人間的に未成熟でも、そこから成長があればいいんだが、全く無いのだ。

このカップルにおいて問題があるのは、明らかにトムだ。
サラの方は、嘘をついていたという引け目はあるものの、それ以外に大きなマイナスは見られない。
トムという男はヒドくて、注意を無視してコンセントを使ったせいで火災が発生したのに、支配人に注意されると逆ギレして罵倒する始末。その後も、結婚するには早すぎるだろうと思えるような、クソガキっぽい行動が続く。

トムとサラの関係は、互いの嘘を打ち明けたところで大きな亀裂が入る。そこに、それまでの2人のやり取り、旅行中の出来事は、まるで影響を与えていない。
今までのことが積もり積もって、我慢できなくなって怒り爆発で大ゲンカということではなく、互いの嘘という1つのポイントだけによる関係の破綻なのだ。
じゃあ今までの時間は何だったのかと。
しかも、そこで大きな亀裂が生じて、帰国シーンへ移行するのかと思いきや、違うんだよな。その後も、ヨーロッパで話を進めて行くのだ。
だったら、なんで帰国シーンから始めたんだよ。
回想形式にしておきながら、その後のストーリー展開が、それとフィットしていない。その後の展開を見た限り、普通に時系列順でエピソードを並べた方がいいんじゃないの。そうしたところで傑作になる可能性はゼロだけど、少なくとも、現状より少しはマシになったはず。

冒頭にケンカで始まり、そこから回想形式に入るのだが、回想の中でトムとサラが険悪になるまでに時間が掛かりすぎる。
「幸せ一杯だったのに新婚旅行で一変する」という展開なのだが、この映画において、幸せだった頃の2人の様子なんて、そんなに時間を多く割いて描く必要は無い。ラブラブだったという事実さえ伝わればいいのであって、回想に入ってから新婚旅行に出掛けるまでの経緯にしても、せいぜい10分もあれば充分だ。

ヨーロッパへ出掛けて、そこで大ゲンカしてすぐに帰国するのかと思いきや、前述したように、言い争っては仲直りの繰り返し。
前半戦をラブラブな2人のままで終えるなんて、正気の沙汰とは思えない。
何しろ上映時間の大半が回想で占められており、だから帰国してから愚かだったカップルが改心したり成長したりするための時間は、ほとんど残されていないのだ。
コンセントの一件でサラが不機嫌になるのだから、そのまま大ケンカに突入し、後半は帰国から復縁へのドラマを描けばいいだろうに。

回想シーンから戻って来ると、もうラストシーンは目の前に迫っている。
ということは、トムが人間的に成長したり、心を入れ替えたりするための時間は全く残されていない。
では、どうやって復縁に持ち込むのかというと、「車で屋敷への突入を図る」という、相変わらずクソガキ満開な行動を取り、「愛があれば大丈夫」的なことを言うのだ。

トムがサラを思いやる気持ちに目覚めたり、自分の至らなさを反省したり、相手に歩み寄ったりすることは一切無く、一方的に自分の気持ちをぶつけただけで、なぜかハッピーエンドになってしまう。
んなアホな。

愛だけじゃ上手く行かないから、ケンカ別れしたんだろ。
それに気付いていないんだから、こいつら間違いなく、またトムのアホな行動が原因でケンカになるぞ。
で、また今回と同じようなことの繰り返しになるぞ。
結局、バカップルの、薄っぺらい痴話ゲンカを見せられただけだったな。


第24回ゴールデン・ラズベリー賞

ノミネート:最低主演男優賞[アシュトン・カッチャー]
<*『12人のパパ』『ジャスト・マリッジ』『My Boss's Daughter』の3作でのノミネート>
ノミネート:最低助演女優賞[ブリタニー・マーフィー]
ノミネート:最低スクリーンカップル賞[アシュトン・カッチャー&ヒラリー・ダフかブリタニー・マーフィーかタラ・リードの誰か]
<*『12人のパパ』『ジャスト・マリッジ』『My Boss's Daughter』の3作でのノミネート>

 

*ポンコツ映画愛護協会