『ジェニファーズ・ボディ』:2009、アメリカ

精神病犯罪者収容所に収監されているニーディーは、職員から「手に負えない患者」と判断されていた。食堂で栄養士から「菓子パン一つ じゃ足りないでしょ?」と話し掛けられたニーディーは、いきなり蹴り飛ばして「うるせえんだよ」と怒鳴る。取り押さえられた彼女は 激しく抵抗するが、独房に放り込まれて喚いた。昔の彼女は、そんな風ではなかった。少し不健全なだけの、10代の少女だった。しかし 殺人事件の勃発と共に、不安定になってしまった。始まりはデヴィルズ・ケトルという町だ。
2ヶ月前まで、ニーディーと親友のジェニファー、恋人のチップは、ごく普通の学生だった。美人のジェニファーとダサいニーディーは 不釣り合いだったが、幼馴染の2人は仲が良かった。ある日、ニーディーはジェニファーから、ロウ・ショルダーというインディーズ・ バンドのライヴに誘われた。ニーディーはチップと約束があったが、「8時半に迎えに行く」という彼女の誘いをOKした。
ニーディーはジェニファーと共に、バー「メロディー・レーン」へ出掛ける。ジェニファーはアメフト部員のクレイグから「今日もキレイ だね」と声を掛けられ、軽く受け流す。店にはインドからの留学生アーメットの姿もあった。警察学校を出たばかりのローマンが2人の所 へ来て、知り合いのジェニファーに話し掛けた。ロウ・ショルダーがステージで準備を始めたので、ジェニファーはヴォーカルのニコライ に話し掛けた。ジェニファーは「お酒をおごるわ」と言い、色仕掛けでバーテンダーから酒を買いに行く。
ニコライがバンド仲間に「あの子はどうだ?処女に違いない」と言っているのを耳にしたニーディーは不愉快になり、「彼女は私の親友よ 。確かに処女だけど、貴方にはやらせない」と告げる。しかし本当は、ジェニファーは処女ではなく、ローマンとはアナルでも関係を 持っていた。ロウ・ショルダーが演奏している最中に家事が発生し、ニーディーは放心状態のジェニファーを連れて外へ出た。そこに 落ち着き払ったニコライが近付き、ジェニファーを車に誘う。ジェニファーはニーディーを置いて、バンドの車で去った。
帰宅したニーディーがチップと電話で話した後、服がボロボロで血まみれになっているジェニファーがやって来た。ニーディーが「何が あったの?」と心配そうに尋ねると、ジェニファーは不気味に笑う。それから彼女は冷蔵庫を開け、入っていた食料に貪り付いた。だが、 彼女はすぐに吐き出してしまう。ジェニファーが黒いドロドロの液体を口から勢い良く放出したので、ニーディーは唖然とした。
翌日、ニーディーが登校すると、ジェニファーは昨夜のことなど全く忘れたように、元気そうな様子で現れた。ニーディーが「あの火事で 大勢が死んだのよ。ニュースになってる」と言うと、ジェニファーは全く興味が無さそうに「じゃあ気の毒ね」と告げた。化学の教師 ウルブレフスキーが「生徒が8人亡くなった。教師や、生徒の両親も」と沈痛な表情で語るが、ジェニファーは楽しそうだった。
授業の後、ニーディーはチップに昨晩のジェニファーの様子を語り、「彼女は変だった。まるで悪魔みたいで」と話す。しかしチップは 信じようとせず、「カウンセラーと話した方がいい」と述べた。ジェニファーは死んだクレイグの親友ジョナスを誘惑し、森に連れ込んだ 彼女は「すぐ親友に会えるわ」と言って大きく口を開き、牙を剥き出してジョナスに襲い掛かった。しばらく経ってから森にやって来た ウルブレフスキーは、腹部を貪られたジョナスの無残な死体を発見した。翌日、ジョナスの死を知らされた生徒たちが沈んだ様子を見せる 中、ジェニファーだけは楽しそうだった。
バーの火事から1ヶ月が経った。ウルブレフスキーは生徒たちに、町の人々が結束のシンボルとして歌っているロウ・ショルダーの曲が CD発売され、遺族に利益の3パーセントが寄付されることを話す。ニーディーは「たった3パーセントなんて、あくどいわ」と批判的な 意見を述べる。ロウ・ショルダーはバーで火事が起きた時に人々を助けたことになっていたが、それに関しても彼女は「私は現場で見てた 。彼らは誰も助けなかった。無名のバンドが事件を利用してる」と手厳しく批判した。
ニーディーとジェニファーか゜学校の廊下を歩いていると、同級生のコリンが話し掛けて来た。ジェニファーはコリンから映画に誘われ、 あっさりと断った。しかしニーディーが「彼、いい人よ。あのネイルも私は大好きよ」と褒めると彼女は含んだ笑みを浮かべ、コリンを デートに誘った。一方、ニーディーはチップから「今夜、家に来ないか。ゴムも用意してる」と誘われ、喜んで承諾した。
その夜、コリンはジェニファーから指定された住所へ行くが、家には人の気配が無い。割れた窓から侵入すると、中は真っ暗で廃屋のよう だった。しかし2階へ上がると火を灯した蝋燭の並んだ部屋があり、背後からジェニファーが現れた。彼女は「ここは2人だけの部屋よ」 と言って上着を脱ぎ、コリンにキスをする。ジェニファーはコリンの両腕を怪力でへし折り、倒れ込んだ彼の腹部に貪り付いた。
一方、ニーディーはチップの家で、彼とセックスをしていた。その最中、ニーディーは血まみれのジョナスとジェニファーの幻影を目撃し 、さらにジェニファーの不気味な言葉を耳にする。怖くなったニーディーが車で自宅へ戻ろうとすると、口の周りを血だらけにしている ジェニファーが道路へ飛び出してきた。ジェニファーがボンネットに飛び乗ったので、ニーディーは振り落として逃走した。
帰宅したニーディーがベッドに入ると、そこにはジェニファーの姿があった。ニーディーが悲鳴を上げて飛び退くと、ジェニファーは微笑 を浮かべて「事情を説明したいの。あのバンドは悪魔よ。ボーカルはサタンの手先」と言う。ニコライは悪魔崇拝者で、ロウ・ショルダー を人気バンドにするために処女の生贄を求めていた。彼らはジェニファーが処女だと思い込み、拘束して儀式を執り行った。そして彼らは ナイフで何度も突き刺して殺害し、死体を滝壺に投げ捨てた。つまり、ジェニファーは殺されたはずだった。
しかしジェニファーは、気が付くとニーディーの家の前にいた。黒い液体を吐いて外へ出た彼女は、空腹を覚えた。バーから脱出していた アーメットを見つけた彼女は、声を掛けた。そこまで話したジェニファーは、「満腹の時は不死身よ。見て」とニーディーに告げて腕を 切り裂いた。その腕から血が出るが、あっという間に傷口は塞がった。彼女は2階の窓から飛び降り、瞬時に姿を消した。
ニーディーは図書館でオカルト関係の書物を調べ、「悪魔は心臓に刃を突き立てれば必ず死ぬ」という文章を見つける。彼女はチップから 春のダンス・パーティーに誘われるが、「行けないわ。貴方も行かないで」と頼む。ニーディーは「ジェニファーは悪魔よ」と言い、儀式 の生贄が処女でない場合は悪魔の転移が起きること、ジェニファーの魂に悪魔が宿って人肉を食べるようになったことを説明した。
ニーディーは「男の肉を食べて彼女は輝きを増すの。でも空腹になると醜くなる。ダンス・パーティーは彼女に取ってビュッフェなの」と 、チップに訴えた。しかしチップは全く信じようとせず、「病院に行け」と告げる。チップがダンス・パーティーに強くこだわるので、 「やっぱり行くわ。ジェニファーを見張る」とニーディーは言う。そしてバーティーの当日、ニーディーは強い気持ちで会場に入った。 チップも会場へ向かうが、その途中でジェニファーが現れ、彼を誘惑した…。

監督はカリン・クサマ、脚本はディアブロ・コーディー、製作はメイソン・ノヴィック&ダニエル・ダビッキ&ジェイソン・ライトマン、 共同製作はブラッド・ヴァン・アラゴン、製作総指揮はディアブロ・コーディー、撮影はM・デヴィッド・ミューレン、編集はプラミー・ タッカー、美術はアーヴ・グレイウォル、衣装はカチア・スターノ、音楽はセオドア・シャピロ&スティーヴン・バートン、音楽監修 はランドール・ポスター。
出演はミーガン・フォックス、アマンダ・サイフリッド、アダム・ブロディー、ジョニー・シモンズ、J・K・シモンズ、エイミー・ セダリス、カイル・ガルナー、クリス・プラット、シンシア・スティーヴンソン、 サル・コルテス、ライアン・レヴィン、ファン・リーディンガー、コリン・アスキー、ジュノ・ラッデル、ジョシュア・エマーソン、 ニコール・ルデュック、アマン・ジョハル、ダン・ジョフレ、キャンダス・チャーチル、キャリー・ゲンゼル、エマ・ギャレロ、ミーガン ・チャーペンティア、ジェレミー・シュッツェ、ヴァレリー・ティアン他。


『ガールファイト』『イーオン・フラックス』のカリン・クサマ監督が映画化した作品。
脚本は『JUNO/ジュノ』のディアブロ・コーディー。
ジェニファーをミーガン・フォックス、ニーディーをアマンダ・サイフリッド、ニコライをアダム・ブロディー、チップ をジョニー・シモンズ、ウルブレフスキーをJ・K・シモンズ、ニーディーの母をエイミー・セダリス、コリンをカイル・ガルナー、 ローマンをクリス・プラット、チップの母をシンシア・スティーヴンソンが演じている。

ジェニファーはチアリーダーだし、ニーディーのモノローグで「美人の彼女とダサい私は不釣り合い」と言っているし、さぞモテモテの 設定なんだろうと思ったら、バーでクレイグが話し掛けるまで、「男子から大人気」という描写は全く無い。
それ以降も、学校のシーンが何度も出て来るが、他の男子生徒が彼女に目を向けるような様子は無い。
っていうか、「美人でモテモテで人気者」という感じじゃなくて、単に尻軽で簡単に男と寝るビッチっぽいんだよな。
つまり安っぽさが出まくっているんだが、それは狙い通りなのかな。

そんなジェニファーから逆ナンされたニコライは「あれは処女に違いない」と言うのだが、なぜ処女だと思うのか理解に苦しむ。
どっからどう見ても、処女っぽさはゼロだろ。
ニーディーの方を見て、「イモっぽいメガネ女子だから処女に違いない」と思うのなら、分からんでもないが。
っていうか、ニコライが目を付ける相手は、むしろイモっぽい女にしておいた方が、何かと都合がいいんじゃないのか。
その方が「処女だと思い込む」というのも納得しやすいし、「悪魔に憑依されたことで、冴えなかった女が変貌し、魔性を撒き散らして 男たちを魅了するようになる」という変化も付けやすいし。

ジェニファーは悪魔に憑依されてから男たちを手当たり次第に誘惑して肉を貪り食うようになるんだけど、彼女って最初からビッチっぽい 雰囲気が強いから、そこでの「変貌ぶり」が見えにくいんだよね。
肉を貪り食うのはともかくとして、最初から色んな男に声を掛けて関係を持っていたような女じゃないのかと、そう思えてしまう。
あと、彼女は悪魔に憑依されてからも、外見上の変化が特に見えないんだよな。悪魔に憑依されてから妖艶な魅力を振り撒くようになり、 男たちの目を引き付けるとか、そういうことは無いのよね。相変わらず、学校の男たちは彼女に全く関心を示さないのだ。
いいのか、そんなシナリオで。

ともかく、ジェニファーが最初から尻軽ビッチっぽく見えちゃうのは、得策とは思えない。
それは最初から「美人でモテモテ」ということであっても同様だ。
色っぽい美人女優であっても、悪魔に憑依される前は、メイクや衣装でイモっぽく見せておいた方がいいんじゃないか。
ただしミーガン・フォックスの場合、既にパーソナル・イメージがビッチな感じなので、キャスティングのミスじゃないかな。

ただ、ミスキャストだとは思うけど、でも製作サイドはミーガン・フォックスが「セクシーな女優」として人気が高いからこそ、起用した はずだよね。
それにしては、まるでセクシーなサービスをさせてないんだよね。
いきなり服を脱ぐとか、全裸でプールで泳ぐとか、そんなシーンもあるんだけど、肌の露出は全く無いのよ。
お色気サービスの腑抜けっぷりは、大きなマイナスでしょ。
まるで脱がないのなら、こんな役を引き受けちゃダメだよ。
もしも監督がそういう演出にしたのなら、それは考え方が間違っている。
この映画は、ジェニファーが『スピーシーズ 種の起源』のナターシャ・ヘンストリッジみたいにお色気サービスをしなきゃダメよ。

悪魔に憑依されたジェニファーの残忍な暴走も、なんかヌルいんだよなあ。
まず被害者の数が少ないし、男を襲う残酷描写もおとなしい。
ジェニファーが恐ろしい姿に変貌するという描写も、「口を大きく開いて牙を剥き出しにする」というのが数秒あるぐらいだ。
製作サイドがレーティングを下げようとしたのかと思いきや、R指定になってるんだよな。
だったら、中途半端に暴力描写や残酷描写を抑えたり隠したりしなけりゃいいのに。
ロウ・ショルダーの連中だって、彼女が始末すべきでしょ。
っていうか、ロウ・ショルダーが序盤でジェニファーを車に連れ込んだ後、ストーリー展開にほとんど絡んで来ないってのも、どうなのよ。

(観賞日:2013年1月14日)


第30回ゴールデン・ラズベリー賞

ノミネート:最低主演女優賞[ミーガン・フォックス]
<*『ジェニファーズ・ボディ』『トランスフォーマー/リベンジ』の2作でのノミネート>

 

*ポンコツ映画愛護協会