『ジョーズ3』:1983、アメリカ

カルヴィン・ブーシャール会長は、フロリダ州のリゾート地に、人工ラグーンに設置された世界一の海の公園“シーワールド”を誕生させた。従業員のマイク・ブロディと同僚シェルビー・オーヴァーマン、イルカの主任研究員キャサリン・モーガン、水上スキーチームのケリー・アン・ブロウスキーらは、オープンの日に向けて準備を進めている。
ブーシャール会長は記録映画監督のフィリップ・フィッツロイスを招いて、シーワールドの記録映画を撮影してもらうことにした。一方、マイクはシーワールドにやって来た弟ショーンを出迎え、キャサリンやケリーと共に夜の施設で遊ぶ。幼少の頃にサメに襲われたショーンは水を恐れていたが、ケリーに誘われて海に入った。
オーヴァーマンが連絡もせずに、行方をくらましてしまった。マイクとキャサリンは潜水艇に乗り込み、ラグーンを捜索する。潜水艇を出た2人は、体長3メートルのホワイトシャークを発見する。マイクとキャサリンは、急いで陸に上がった。
知らせを受けたブーシャール会長とフィリップは、ホワイトシャークを殺害してフィルムに収めようと考える。だが、キャサリンは生け捕りにすることを提案した。結局、キャサリンの意見が採用され、マイク達はホワイトシャークを捕獲した。
オープンの日、会長はキャサリンに内緒でホワイトシャークを公開するが、衰弱して死亡する。やがてオーヴァーマンの死体が発見されるが、その体には巨大なサメに襲われた形跡があった。マイクとキャサリンは、捕獲したサメの母ザメが施設内にいると確信する…。

監督はジョー・アルヴェス、原案はガードン・トゥルーブラッド、脚本はリチャード・マシスン&カール・ゴットリーブ、製作はルパート・ヒッツィグ、製作協力はデヴィッド・キャップス、製作総指揮はアラン・ランズバーグ&ハワード・リップストーン、撮影はジェームズ・A・コントナー、編集はランディ・ロバーツ、美術はウッズ・マッキントッシュ、衣装はドレスデン・アークハート、音楽はアラン・パーカー。
出演はデニス・クエイド、ベス・アームストロング、サイモン・マッコーキンデイル、ルイス・ゴセットJr.、ジョン・パッチ、リー・トンプソン、P・H・モリアーティ、ダン・ブラスコ、リズ・モリス、リサ・モーラー、ハリー・グラント、アンディ・ハンセン、P・T・ホーン、ジョン・エドソン、ケイ・スティーヴンス、アーチー・ヴァリエール、アロンゾ・ウォード、キャシー・サーヴェンカ他。


人食い鮫がリゾート地の人々を襲うという動物パニック映画のシリーズ第3弾。
マイクをデニス・クエイド、キャサリンをベス・アームストロング、フィリップをサイモン・マッコーキンデイル、ブーシャールをルイス・ゴセットJr.、ショーンをジョン・パッチが演じている。
ケリー役のリー・トンプソンは、これが映画デヴュー作である。

この作品の最大の特徴は、3D映画だということだ。
パート3だから3Dにするという、とっても分かりやすい考えである。
3Dというのは、つまり映像が飛び出して見えるということだ。ただし、全編が3Dになっているわけではなく、一部分だけである。また、テレビ放送やビデオで観ても3Dにはならず、普通の映像として見えるだけである。

劇場公開時には、観客に専用のメガネが用意された。そのメガネを掛けることによって、映像が迫ってくるように見えるという3Dの効果が得られるのだ。
ただし、そこには「正面から見ないと上手く浮き上がってくれない」という大きな欠陥があった。だから、広い劇場の隅っこなんぞで観賞すると、3Dをちっとも体感できずに終わるわけだ。

普通にシーワールドで過ごしている人や施設を、3Dで見せてもしょうがない。
3Dで見せるのは、やはりサメだ。
しかし、それだけでは物足りないと思ったのか、潜水艇とかイルカも3Dで見せたりする。それだけじゃなく、海中トンネルの作り物やアトラクションの人間も飛び出すぞ。
ただし、全くストーリーとは無関係だし不必要だけど。

キャラクターは総じて冴えない。
キャサリンは善玉に成り切れず、ブーシャールやフィリップは悪玉に成り切れていない。スリルとサスペンスの不在、興奮の欠如、3Dのためのワザとらしい構図など、幾つもの問題を抱えている。
話はチンタラしていて、肩透かしのオンパレード。
水を恐れていたショーンが海に入ったところでサメに襲われるかと思ったら、何も無い。サメを捕獲する時になかなか船に上げてもらえない男が襲われるかと思ったら、やっぱり何も無い。

ギミックを見せるために、何かと理由を付けて舞台は海へ。
そして海を映す、休む、海を映す、休むの繰り返し。
どんどんエスカレートしていくとか、テンポ良く進んでいくとか、そんなことは知らぬ存ぜぬ状態。ダラダラした中身の空っぽな話が続き、たまに飛び出す映像のサービスを提供し、観客の御機嫌を覗う。

3D映像の提示を優先するため、無理を承知で強引に話を進めていく。
例えばオーヴァーマンが行方不明になった時、なぜか警察に連絡したり近くを探したりせず、いきなり潜水艇でラグーンを捜索。
そしてホワイトシャークを登場させると、最初の目的だったオーヴァーマンの捜索は忘れ去られ、サメの捕獲に話が移ってしまう。

サメが人々を襲い始めたら最後まで一気に突っ走るのかと思いきや、なぜかマイクとキャサリンがノンビリと、ベネズエラでクジラを飼う話を始めたりする。
この2人、最後はイルカのシンディとサンディの生存を確認して大喜び。
サメに襲われた他の人々の安否が不明だってのに、勝手にハッピーエンドで映画を終わらせてしまう。

問題は多いが、3D映像のためには他の要素は犠牲になっても仕方が無いのである。
とにかく、まず“飛び出す映像”というギミックありきの作品なのだ。
ただし、たまに出てくるギミックだけで他のマイナスを全て取り戻し、最後まで観客の興味を引っ張ることは非常に困難だということを、製作サイドがどれほど考えていたかは不明である。


第4回ゴールデン・ラズベリー賞

ノミネート:最低作品賞
ノミネート:最低監督賞[ジョー・アルヴェス]
ノミネート:最低脚本賞
ノミネート:最低助演男優賞[ルイス・ゴセットJr.]
ノミネート:最低新人賞[シンディーとサンディー(金切り声のイルカ達)]

 

*ポンコツ映画愛護協会