『スペースインベーダー』:1986、アメリカ

カンザス・シティーに住む11歳のデヴィッド・ガードナーは、父のジョージと母のエレンの3人で暮らしている。NASAの研究者である父の影響もあって、デヴィッドは星や宇宙に強い興味を持っている。ある日の深夜、デヴィッドは雷雨の音で目を覚ました。窓の外を見た彼は、家の裏にあるコッパー丘へ巨大な宇宙船が着陸する様子を目撃した。彼は慌てて両親の寝室へ行き、宇宙船の存在を知らせる。しかし部屋に戻ると、宇宙船の姿は無かった。ジョージはデヴィッドに、「朝になったら見に行くよ」と告げた。
翌朝、デヴィッドがエリンと話していると、ジョージが丘から戻って来た。彼は虚ろな目で、片方しかスリッパを履いていなかった。様子が変だと感じたデヴィッドは、「丘には何も無かった?」と質問する。ジョージは「ああ。悪い夢を見ただけだ」と言うが、デヴィッドは父のうなじに奇妙な傷跡を発見する。彼が傷跡について尋ねると、ジョージは答えをはぐらかした。デヴィッドが学校へ行こうとすると、ジョージは「実はな、丘には何かあったんだ。一緒に見に行こう」と持ち掛ける。不審を抱いたデヴィッドは「学校に遅れるから」と断り、スクールバスへ乗り込んだ。
理科教師のマッケルチは生徒たちに、標本としてコッパー丘でカエルを捕獲してきたことを話す。クラスメイトのケヴィンとダグが隣席のヘザーにカエルを投げ付けたので、デヴィッドは投げ返した。マッケルチはデヴィッドが投げ返す様子を目撃したため、彼だけを叱った。デヴィッドがハサミで指先を切ったので、マッケルチは保健室へ連れて行って校医のリンダに手当てを頼んだ。デヴィッドが帰宅すると、ジョージの車が停まっていた。しかし家に入ると、父の姿は無かった。
デヴィッドはエレンに、ジョージの様子が変だと告げる。エレンは「いつものことでしょ」と軽く告げるが、夜になってもジョージが帰宅しないので警察署長に連絡する。署長はケニー巡査を伴ってガードナー家を訪れ、ジョージの行き先について心当たりを訊く。デヴィッドは「コッパー丘だ」と言い、署長とケニーが向かうのを見送る。その直後、ジョージがヘザーの父であるエドと共に茂みから現れた。エドは電話会社の社員であり、「娘を迎えに行かないと」と言って立ち去った。彼の様子が変だと、デヴィッドは感じた。
ジョージは帰宅が遅くなった理由について、「エドと仕事の打ち合わせだった。基地に新しい回線を引く」と説明した。署長とケニーが丘から戻り、ジョージに挨拶して立ち去った。彼らの様子も変だと、デヴィッドは感じた。ジョージはエレンに、「景色が綺麗だから、丘へ散歩に行こう」と誘った。エレンは困惑しながらも、「食器洗いが終わってから」と告げた。ベッドに入ったデヴィッドは、ジョージとエレンが丘へ向かうのを目撃した。デヴィッドは不安になり、「ママ」と叫んだ。
翌朝、デヴィッドが食堂へ行くと、エレンの様子も変になっていた。「家族で丘へピクニックへ行きましょう」と言われたデヴィッドは、「行きたくない」と断って学校へ向かった。学校に着いた彼は、署長がマッケルチに「失敗は許されない。夜中の12時だ」と話すのを盗み聞きした。マッケルチは「ジョージ・ガードナーに任せるわ」と言い、署長と別れた。マッケルチを追ったデヴィッドは、彼女がカエルを丸呑みする様子を目撃した。そこにヘザーが現れ、「何してるの?」とデヴィッドに問い掛けた。デヴィッドはヘザーを突き飛ばし、その場から逃走した。
マッケルチに追い掛けられたデヴィッドは、リンダに助けを求めた。リンダは「私に話をさせて」とマッケルチに告げ、彼女を追い払った。デヴィッドはリンダに、宇宙船が丘へ着陸したこと、両親や警官、マッケルチやヘザーが首に何かを埋め込まれて支配されていることを語る。リンダはマッケルチと会い、うなじに絆創膏が貼ってあるのを目にした。マッケルチが腫れ物だと言うので、リンダは見せてほしいと告げる。しかしマッケルチは荒っぽい態度で拒絶し、リンダは保健室へ戻った。
リンダはデヴィッドに自宅の鍵を渡し、「窓から逃げて。後から行くから待ってて」と指示した。窓から脱出したデヴィッドは、捜索に来たマッケルチとヘザーに見つからないよう車に隠れた。リンダはジョージとエレンの訪問を受け、目を離した隙にデヴィッドが逃げたと釈明した。デヴィッドが何を話したのか質問された彼女は、「先生に目を付けられていると言ってました」と嘘をついた。マッケルチはデヴィッドが隠れていると知らず、車で移動した。
デヴィッドは車を降りたマッケルチを尾行し、洞窟に足を踏み入れた。奥へ進むと、マッケルチは巨大な頭の怪物たちと会っていた。洞窟の壁からは不気味なエイリアンも出現し、マッケルチは自分にデヴィッドを殺させてほしいと持ち掛けた。デヴィッドはマッケルチたちに気付かれ、慌てて逃げ出した。彼がリンダの家へ向かうと、パトカーが停まっていた。そこへリンダが現れ、「静かに。見つかるわ。貴方を誘拐したと思われてる」と告げた。
デヴィッドはリンダに、「頭の大きな怪物に殺され掛けた」と言う。彼は洞窟へ案内するが、入り口は無くなっていた。デヴィッドは「穴を塞いだんだ」と告げるが、リンダには信じてもらえない。そこでデヴィッドは、リンダを連れてコッパー丘へ行く。しかし宇宙船は無く、何かが着陸した形跡も残っていなかった。リンダは帰宅するよう促すが、デヴィッドは「見て」と自宅を指差す。ジョージは調査員のホリスとジョンソンを呼び、探知器を用意させていた。
ホリスとジョンソンがコッパー丘へ来たので、デヴィッドとリンダは身を隠した。ホリスたちは探知器で何かを探すが、砂に飲み込まれて姿を消した。デヴィッドはリンダに車へ乗り込むよう指示し、その場を離れる。するとマッケルチがスクールバスに生徒たちを乗せ、丘へ向かっていた。デヴィッドは「みんなを遠足で丘へ連れて行く気だ」と言い、リンダはガソリンスタンドへ立ち寄る。リンダが警察に電話を掛けていると、マッケルチがデヴィッドを連れ去ろうとした。デヴィッドは抵抗して逃走し、リンダが車に乗せた。
リンダは警察が通話中だったことをデヴィッドに告げ、「いい隠れ家がある。そこからFBIに連絡するわ」と言う。彼女はデヴィッドを連れて、夜の学校へ忍び込んだ。しかし電話回線は切られており、デヴィッドは「ヘザーのパパの仕業だ」と口にした。署長とケニーが来たので、デヴィッドとリンダは地下室へ隠れた。そこへ署長たちが現れ、拳銃を向けた。その直後、激しい揺れが発生し、地中から巨大な掘削装置が出現する。署長たちが倒れている隙に、デヴィッドとリンダは学校から脱出した。
デヴィッドが「トンネルを掘ってる。止めないと」と訴えると、リンダは「私たちだけでは無理。助けが必要よ」と言う。デヴィッドはNASAに常駐するウィルソン将軍に助けてもらおうと考え、海兵隊基地へ赴いた。基地に入ったデヴィッドとリンダは、ホリスとジョンソンが何かの作業をしている様子を目撃する。ジョージは既に支配されている職員と接触し、アタッシェケースに入れている起爆装置を見せる。彼は装置のスイッチを入れ、「急がないと計画が台無しになるぞ」と告げた。
デヴィッドとリンダはウィルソンとリナルディー曹長に会い、事情を説明して協力を要請した。ウィルソンは2人を会議室で待機させ、ホリスとジョンソンを呼んだ。ウィルソンがコッパー丘の調査について尋ねると、ホリスたちはいきなり拳銃を構えた。リナルディーが彼らを倒し、ウィルソンは駆け付けた部下たちに拘束させる。改めてウィルソンが説明を求めると、ホリスたちの体が激しく震えた。2人は倒れ込み、息を引き取った。すると首の傷跡が開き、中から針のような物が出て来た。
ウィルソンは部下たちに、基地を封鎖して厳戒態勢を取るよう命じた。彼はNASAの研究主幹を務めるスタウト博士とSETIの責任者であるマーク・ワインスタイン博士を呼び、デヴィッドとリンダに会わせた。エイリアンが火星探査のロケット打ち上げ計画を阻止しようとしているのではないかと推測したウィルソンは、発射の一時停止を指示した。しかし支配された職員たちは液体酸素のタンクローリーに爆弾を取り付け、発射台へ突っ込んだ。ロケットが爆破されるのを見たウィルソンは、部隊を率いてコッパー丘へ向かう…。

監督はトビー・フーパー、原案はリチャード・ブレイク、脚本はダン・オバノン&ジョン・ジャコビー、製作はメナハム・ゴーラン&ヨーラン・グローバス、製作協力はエドワード・L・アルパーソンJr.&ウェイド・H・ウィリアムズ三世、撮影はダニエル・パール、美術はレスリー・ディリー、編集はアラン・ジャクボヴィッツ、衣装はカリン・フーパー、特殊視覚効果はジョン・ダイクストラ、宇宙人デザインはスタン・ウィンストン、音楽はクリストファー・ヤング。
出演はカレン・ブラック、ハンター・カーソン、ルイーズ・フレッチャー、ティモシー・ボトムズ、ラレイン・ニューマン、ジェームズ・カレン、バッド・コート、エリック・ピアポイント、クリストファー・オールポート、ドナルド・ホットン、ケネス・キミンズ、チャーリー・デル、ジミー・ハント、ウィリアム・バセット、ヴァージニア・キーン、クリス・ヘバート、メイソン・ヌプフ、ウィリアム・フランクファザー、ジョセフ・ブラッツマン、エリック・ノリス、デブラ・バーガー、エディー・ドノ、マーク・ジャルディーノ他。


1953年の低予算SF映画『惑星アドベンチャー スペースモンスター襲来!』のリメイク。
監督のトビー・フーパー、脚本のダン・オバノン&ジョン・ジャコビー、製作のメナハム・ゴーラン&ヨーラン・グローバス、特殊視覚効果のジョン・ダイクストラという『スペースバンパイア』のスタッフが再集結している。
リンダをカレン・ブラック、デヴィッドをハンター・カーソン、マッケルッチをルイーズ・フレッチャー、ジョージをティモシー・ボトムズ、エレンをラレイン・ニューマン、ウィルソンをジェームズ・カレン、マークをバッド・コートが演じている。
警察署長役のジミー・ハントは、『惑星アドベンチャー スペースモンスター襲来!』でデヴィッドを演じていた俳優だ。

デヴィッドは宇宙船の着陸を目撃した翌朝、父親が変だと感じている。
それなのに、なぜコッパー丘へ行って宇宙船の存在を確かめようとしないのか。
「パパが変だ」と感じた時点では、まだ「コッパー丘へ近付くことも避けたい」というほどの恐怖は感じていないはずでしょ。
っていうか、マッケルチを追い掛けて洞窟へ入るとか、リンダを連れコッパー丘へ行くとか、そういう行動は平気で取っているんだから、翌日の段階でコッパー丘を調べに行かないのは不自然だ。

デヴィッドは夜になってもジョージが戻らないと、署長に「コッパー丘だ」と言う。
だが、そう思っているのなら、なぜエレンが警察を呼ぶ前に「きっとコッパー丘だ」と告げて一緒に捜しに行こうとしないのか。署長に丘の場所を教える時も、なぜ同行しようとしないのか。
ジョージがエレンを連れて丘へ向かうのを目撃した時、「ママ」と叫ぶ。
そんなに不安を覚えたのなら、なぜ2人の後を追わないのか。
リンダを案内するシーンまでデヴィッドを丘へ行かせないための仕掛けを何も用意しておらず、腑に落ちる理由も見当たらず、不細工な御都合主義だけに頼っている。

基本的には子供向けの映画だから仕方が無い部分もあるんだろうけど、エイリアンのデヴィッドに対する行動がヌルすぎる。
デヴィッドが早い段階で怪しんでいるのは分かっているのに、ジョージもエレンも「一緒に丘へ行こう」と誘うだけ。
その気になれば、強引に連行するとか、何らかの方法で眠らせて連れて行くとか、そういう方法も取れるはず。
っていうか、もうデヴィッドが不審を抱いていると分かっているのに、「丘へピクニックへ行きましょう」と誘うなんて、すんげえボンクラでしょ。

デヴィッドはジョージが支配された段階で怪しんでいるんだし、何しろ宇宙船の着陸を目撃しているんだから、放置しておいたらベラベラと余計なことを言い回る危険性が高い。だからエイリアンからすれば、デヴィッドの口を封じる必要があるはずだ。
そのためには、あまり悠長なことは言っていられないはず。いっそ始末を目論んでもいいはずだ。
でも、マッケルチは洞窟でデヴィッドを殺すと言っていたのに、ガソリンスタンドに現れた時は丘へ連行しようとするだけ。
エイリアンがデヴィッドの殺害を目指すのか、丘に連行して支配することを目指すのか、その辺りも中途半端になっている。

そもそも、エイリアンの目的がボンヤリしている。
次々に人間を支配しているが、それは手段であって目的ではないはず。その先にある目的が、良く分からない。
トンネルを掘っているのは目的に直結しているんだろうけど、それは人間を支配しなくても出来る行動だし。
っていうか、トンネルを掘って何をしたいのかもボンヤリしている。
どうやら設定としては「地下に帝国を築く」ってのが狙いのようだが、じゃあ人間は支配しなくても始末すれば良くねえか。

ウィルソンがスタウトとマークを呼んだ辺りで、どうやらエイリアンの正体が火星人らしいってことが判明する。
それに伴い、「火星探査のロケットを打ち上げを阻止する」というエイリアンの目的が急に出て来る。
そのために支配した人間が使われているけど、マッケルチやヘザーは全く関わってないんだよな。
あと、「ロケットの大爆発」という派手なシーンを入れたかったのかもしれないけど、そういう展開を用意することによってエイリアンの狙いがボケちゃうわ。

ホリスとジョンソンはウィルソンに呼ばれてコッパー丘の調査について問われた時、いきなり拳銃を構えて始末しようとする。
だけど、そこは「特に異常はありませんでした」と報告すれば済む話でしょ。なんで「いきなり相手を殺そうとする」というボンクラな行動に出ているのかと。
ジョージとエレンだって、いきなりデヴィッドを始末しようとはしなかったでしょうに。そこは不自然さを感じるぞ。
まあ、そういうことを言い出したら、他にも色々と不自然さはあるんだけどさ。

デヴィッドは「トンネルを掘ってる。止めないと」と言うんだけど、「止めるのって、そっちなのかよ」とツッコミを入れたくなる。その前に、エイリアンが人間に何かを埋め込んで次々に支配している行動を止めた方が良くないか。
あと、デヴィッドは両親を心配する様子が全く無いんだよね。
終盤に入り、ウィルソンの部隊が丘で攻撃準備を整えると、ようやく思い出したように「パパとママを見つけないと」と言い出す。
だけど、それは「デヴィッドがエイリアンに捕まる」という展開へ持ち込むために、慌てて「両親を救おうとする」という行動理由を付けたようにしか思えないのよ。

冷静に考えてみれば、わざわざ田舎町へ来て、1人ずつ人間を丘へ誘い込んで何かを埋め込んで支配するって、すんげえ手間と時間を必要とするボンクラな計画だよな。
せめて、もっと都会でやった方がいいでしょ。
ただ、「地球の支配や地球人の制圧を目論むエイリアンが、田舎町でセコい計画を進める」ってのは、昔から映画の世界では良くあるパターンだ。
なので、そこに関しては、そんなに否定的な意見は持っていないのよ。その向こうにあるディティールの粗さに引っ掛かるのよ。

デヴィッドは学校の地下室に隠れた時、不安を吐露するリンダに「僕もだよ」と言い、優しく抱き寄せる。署長たちが近付く中、彼は自分の頭が上になるポジションでリンダを抱き締めている。
普通に考えれば、そこは大人であるリンダの方がデヴィッドを元気付け、守ってやろうという態度を示すべきだろう。
でも立場が逆というか、まるでデヴィッドとリンダの間に「いけない恋愛関係」があるかのような匂いさえ漂うのだ。
そこも含めて、デヴィッドとリンダの関係描写は、何となく「普通じゃない」と思わせる状態になっている。

ただし、じゃあ実際に2人を「よからぬ関係」として描こうとしているのかというと、それは絶対に無いと断言できる。そうじゃなくて、たぶん「疑似親子」ってのをイメージしていたんじゃないかと思うのだ。
何しろデヴィッドを演じているハンター・カーソンは、リンダを演じているカレン・ブラックと3度目の夫であるL・M・キット・カーソンとの間に産まれた息子だから。つまり、実の親子なのよ。
それを知っていれば、そこの引っ掛かりは解消されるかもしれない。
ただ、どっちにしろ無意味な違和感を抱かせることは事実なので、単純に「演出を間違えている」ってことになるわな。

完全ネタバレだが、ウィルソンの部隊が洞窟に爆弾を仕掛けて脱出すると、デヴィッドは両親に捕まりそうになる。相手が両親なのに、デヴィッドは爆殺することに対して何の迷いも見せない。
で、デヴィッドが洞窟から逃げ出すと、両親が追い掛けて来る。そして捕まったデヴィッドが抵抗していると、ベッドで目が覚める。
つまり、「全ては夢でした」というオチなのだ。
オリジナル版がそういう内容だから仕方が無いのかもしれんけど、夢オチはキツいぞ。
しかも、「何も無くて良かったね」じゃなくて、「宇宙船の飛来を見たデヴィッドが慌てて両親の部屋に駆け込み、何かを見て絶叫する」というホラー的な終わり方なのよね。
ホントにいいのか、それで。

(観賞日:2017年5月24日)


第28回ゴールデン・ラズベリー賞(2007年)

ノミネート:最低助演女優賞[ニコレット・シェリダン]

 

*ポンコツ映画愛護協会