『追撃者』:2000、アメリカ

ラスベガス。ジャック・カーターは、ギャングの頭領フレッチャーの下で借金を回収する取り立て屋として働いている。ジャックはフレッチャーの愛人オードリーと密かに逢瀬を重ねており、そのことは噂になりつつある。ある日、ジャックは長く会っていなかった弟リチーが、飲酒運転で事故死したことを知る。フレッチャーはジャックにラスベガスから離れるなと告げており、相棒のコンも警告する。しかしジャックは聞く耳を貸さず、久しぶりに故郷シアトルへと戻った。
ジャックは葬儀に参列するが、リチーの妻グロリアは冷たい態度を示した。葬儀には、リチーが共同経営するバーの店長エディや、リチーの浮気相手らしき女ジェラルディンも参列していた。ジャックはリチーの娘ドリーから、弟が飲酒運転などする人間ではなかったと聞かされる。ジャックはリチーの共同経営者ブルンビーに会うが、めぼしい情報は得られない。
ジャックは、ジェラルディンと一緒にいた男サイラスに声を掛けた。サイラスは、かつてジャックの仕事仲間だった男だ。サイラスはソフトウェア会社の経営者キニアーと手を組み、インターネット上のポルノ・ビジネスで稼いでいた。ジャックはジェラルディンから、リチーが家族を捨てて街を出たがっていたことを聞かされた。
ジャックはブルンビーの弟ソーピーから、街を出ていくよう脅しを掛けられた。ブルンビーはジャックは、サイラスの差し金だと告げた。やがてジャックは、リチーがジェラルディンから一枚のディスクを受け取っていたことを突き止めた。ジャックが探し当てたディスクには、ドリーンがエディによってレイプされる映像が録画されていた…。

監督はスティーヴン・ケイ、原作はテッド・ルイス、脚本はデヴィッド・マッケンナ、製作はマーク・カントン&エリー・サマハ&ニール・カントン、共同製作はダウン・ミラー&ジェームズ・ホルト&ジョン・ゴールドストーン、製作総指揮はビル・ガーバー&アショク・アムリトラジ&アーサー・シルヴァー&アンドリュー・スティーヴンス&ドン・カーモディー&スティーヴ・ビング、撮影はマウロ・フィオーレ、編集はジェリー・グリーンバーグ、美術はチャールズ・J・H・ウッド、衣装はジュリー・ワイズ、音楽はタイラー・ベイツ、エグゼクティヴ・ミュージック・スーパーバイザーはジェリービーン・ベニテス。
主演はシルヴェスター・スタローン、共演はミランダ・リチャードソン、レイチェル・リー・クック、マイケル・ケイン、アラン・カミング、ミッキー・ローク、ジョン・C・マッギンリー、ローナ・ミトラ、ジョニー・ストロング、ジョン・カッシーニ、ガーウィン・サンフォード、マーク・ブーンJr.、ダリル・シーラー、クリスタル・ロウ、ローレン・スミス他。


1971年のイギリス映画『狙撃者』をハリウッドでリメイクした作品。
ジャックをシルヴェスター・スタローン、グロリアをミランダ・リチャードソン、ドリーンをレイチェル・リー・クック、ブルンビーをオリジナル版でジャック役だったマイケル・ケイン、キニアーをアラン・カミング、サイラスをミッキー・ローク、コンをジョン・C・マッギンリー、ジェラルディンをローナ・ミトラ、エディをジョニー・ストロング、アンクレジットだがオードリーをグレッチェン・モルが演じている。

ジャックは、最初からリチーの死に何か裏があると考えている。
不審な点が幾つか見つかってから、調査を始めるわけではない。
なんせボスの命令を無視してまでシアトルに留まるのだから、余程のことである。
きっと、彼は弟に対する負い目を感じているのだろう。だから「何かある」と考えないと、自分の中で弟の死に対して納得できないのだろう。

しかし、そんな彼の心の内は、映画を見ているだけでは良く理解できない。
なぜ最初から何かあると睨んで探りを入れるのか、映画を見ているだけでは良く分からない。
ただ相当に思い込みの激しい男のようだ、という印象を受けるだけだ。
観客を「事件の裏に何かある」という部分でシンクロさせず、置き去りにしたままでジャックは勝手に暴走する。

ジャックは会う人に対して、ぶしつけで失礼な質問を繰り返す。
それを「ぶしつけで失礼だ」と感じるのは、観客がジャックほどはリチーの死に疑問を持てないからだ。
ジャックが暴力的だったり高圧的だったりすることが問題なのではない。ジャックを突き動かす原動力の正体が曖昧だから、無闇にカッカしてる傍若無人男にしか見えないのだ。

映画開始から30分ほど経過して、ようやくジャックがオードリーと電話で話すシーンが出てくる。
だが、ジャックのオードリーに対する気持ち、一緒に逃げようと思っていた気持ち、そういった感情の表現は乏しい。
フレッチャーが刺客を送り込むことでジャックを追い込みたいのは分かるが、「なぜ刺客を差し向けるのか」という部分の追い込みが弱い。
だから刺客として送り込まれたコンが絡むアクションは、線の上に位置せずにポツンとした点になってしまう。

ミランダ・リチャードソンやらマイケル・ケインやらアラン・カミングやらミッキー・ロークやらジョン・C・マッギンリーやらと、かなり役者の顔触れは豪華だ。
しかし、スライ以外は見事なぐらい顔がボンヤリした扱いに終始する。
仮に全て無名役者に入れ替えたとして、公開前の訴求力は極端に下がるだろうが、観賞後の印象は大して変わらないだろう。

「スライ以外は」と記述したが、では主人公のキャラが強いのかというと、そうではない。
雨の中で傘を差さずに突っ立っているのがイケてるとか、とりあえず頑固で偉そうな態度に徹していればハードボイルドに見えるとか、そういう思い込みが強いのだろう。
ニヒリズムの復讐者にしておけば何とかなったかもしれないが、どうも人間味のある奴としての心情描写をやろうという意識も中途半端にあったりして、それがますます、場当たり的反応という感じを強くしている。


第21回ゴールデン・ラズベリー賞

ノミネート:最低リメイク・続編賞
ノミネート:最低主演男優賞[シルヴェスター・スタローン]


第23回スティンカーズ最悪映画賞

ノミネート:【最悪の作品】部門
ノミネート:【最悪の演出センス】部門[スティーヴン・T・ケイ]
ノミネート:【最悪の主演男優】部門[シルヴェスター・スタローン]
ノミネート:【最悪のリメイク・続編】部門

 

*ポンコツ映画愛護協会