『ジェネレーションズ/STAR TREK』:1994、アメリカ

2294年、新型宇宙船エンタープライズBの出航式が行われようとしていた。式にはエンタープライズの乗組員だったジェームズ・T・カーク提督、モンゴメリー・スコット、パヴェル・チェコフも招かれていた。ハリマン艦長が指揮するエンタープライズBには、カーク達の仲間だったスールーの娘デモーラも操舵手として乗り込んでいる。
テスト航海の途中、エンタープライズBに難民輸送船ラクールから救助を要請する連絡が入る。エンタープライズBは設備の整っていない状態で現場に向かい、エネルギー波のリボンに捕まっている輸送船から乗っていたソランやガイナン達を救出する。だが、なぜかソランはエネルギー波の中に戻ろうとする。
エンタープライズBがエネルギー波に捕まってしまい、カークは船を脱出させるためにデフレクターを改造しようと第15デッキへ降りる。エンタープライズBはエネルギー波からの脱出に成功するが、リボンとの接触によって第15デッキは消滅してしまう。
78年後、エンタープライズDが宇宙を航行していた。クルーは艦長のピカード大佐、ライカー副長、アンドロイドのデータ、機関士のジョーディ、クリンゴン人のウォーフなど。ピカードは兄ロベールと甥ルネが死んだことを知り、大きなショックを受ける。
エンタープライズDは救難信号を受けてアマゴサ観測基地へ向かい、唯一の生存者ソランを救出するが、彼は今すぐに観測基地に戻りたいと言い出す。やがて彼はジョーディを襲撃して転送し、自らも逃亡する。ソランはクリンゴン人のルーサ&ペトール姉妹と手を結び、トリリシウムを使った新兵器の開発に協力していた。
ソランには、時の概念が無い理想の世界“ネクサス”に戻るという野望があった。そのネクサスの入口こそが、エネルギー波のリボンだった。ソランはリボンの軌道を変更してネクサスに戻るために、ベリディアン星系の恒星を破壊しようと企んでいた。
ピカードはジョーディと交換でルーサ達の人質となり、ベリディアン第3惑星に転送される。彼はソランの野望を悔い止めよとするが、ミサイルによって恒星が爆破されてしまう。ネクサスに入り込んだピカードは、78年前に死んだはずのカークと出会う…。

監督はデヴィッド・カーソン、創作はジーン・ロッデンベリー、原案はリック・バーマン&ロナルド・D・ムーア&ブラノン・ブラガ、脚本はロナルド・D・ムーア&ブラノン・ブラガ、製作はリック・バーマン、共同製作はピーター・ローリットソン、製作総指揮はバーニー・ウィリアムズ、撮影はジョン・A・アロンゾ、編集はピーター・E・バーガー、美術はハーマン・ジマーマン、衣装はロバート・ブラックマン、音楽はデニス・マッカーシー。
出演はパトリック・スチュワート、ウィリアム・シャトナー、ジョナサン・フレイクス、ブレント・スピナー、レヴァー・バートン、マイケル・ドーン、ゲイツ・マクファッデン、マリナ・サーティス、マルコム・マクダウェル、ジェームズ・ドゥーハン、ウォルター・コーニッグ、アラン・ラック、ジャクリーン・キム、バーバラ・マーチ、グウィニス・ウォルシュ、キム・ブレイデン、ティム・ラス他。


TVシリーズ『新スター・トレック(ネクスト・ジェネレーション)』の劇場版第1作。ピカード役のパトリック・スチュワート、ライカー役のジョナサン・フレイクス、データ役のブレント・スピナーなど、TVシリーズのレギュラーが当然のことながら出演している。アンクレジットだが、ガイナン役でウーピー・ゴールドバーグが出演している。
他にソラン役でマルコム・マクダウェル、ハリマン役でアラン・ラック、デモーラ役でジャクリーン・キムが出演している。さらに旧シリーズのキャストだったウィリアム・シャトナー、ジェームズ・ドゥーハン、ウォルター・コーニッグも出演している。

このシリーズの大きな特徴であるが、相変わらずTVシリーズを見ていない人間は置いてけぼりを食らう。新しいクルーが登場してもキャラクターの説明はほとんど無いし、ピカードとルーサ&ペトールとの関係はTVシリーズを見ていなければ分からない。
この作品の最大のテーマは、旧シリーズとの決別である。旧シリーズから観賞を続けている人々、旧シリーズに思い入れのある人々に、なるべく拒否反応を示されないように、ネクスト・ジェネレーションに慣れてもらうことが、何よりも大事なことだ。

やはりキャストが完全に入れ替わるという部分に最も拒否反応が起きやすいので、特にカーク艦長からピカード艦長へのスムーズなバトンタッチが重要となる。
そのための配慮として、まずピカードではなくカークを登場させる。
さらにはスコット&チェコフという旧シリーズの面々やスールーの娘を登場させて、旧シリーズのファンの御機嫌を覗う。

まず、カークには船を救うために命を犠牲にするという見せ場を用意する。
しかし、この時点ではピカードが登場していないので、スムーズなバトンタッチとは言い難い。やはり、ピカードとカークが直接、顔を合わせるというシーンが欲しい。

その話はひとまず置いておくとして、新しいキャストの描写について少し触れておこう。
今回の主人公はピカードでなければならないはずだが、前半はウジウジしてるだけで冴えない。ピカードよりも、むしろデータやジョーディの方が目立っている。新シリーズの1作目なのに、艦長よりも他のクルーにスポットが当たっている時間が多い。
後半に入ると、ピカードだけが他のクルーと別行動を取ることになり、メインキャラクターらしい動きを見せられる環境が整う。しかし、素手でソランと殴り合うシーンなどを見せられても、あまりにもモッチャリしていて、やっぱり冴えないのである。

さて、前述のようにピカードとカークが顔を合わせるシーンが欲しいということで、後半に入ってカークが再登場する。それにしても、序盤で引退したのに現場での仕事に熱心だったカークが、ネクサスでカントリー・ライフを“理想の世界”としていることには引っ掛かる。すぐに気持ちが変わるとはいえ、やや無理があるような気もするが。
それはともかく、やはりピカードとカークが出会ったからには、2人が協力して悪を駆逐するという展開を見たくなるのが自然だろう。しかし、一応はピカードとカークがタッグを組んでソランと戦う流れはあるのだが、どうにもカッコ悪い。
というのも、そのシーンというのが、地上でピカードとカークがソランと素手で戦うというシロモノなのだ。
クライマックスがオッサン3人のモタモタした格闘アクションってのは、SF映画としてどうなんだろうか。
そこは宇宙船を使ったSFウォーズにすべきでは?

さて、カークは最終的に死亡するのだが、やはり旧シリーズとスッキリと決別するためにも、彼には華々しく散ってもらう必要がある。
ところがだ、なんと彼は爆発に巻き込まれて惨めに死んでしまう。
一応はピカードに協力して死ぬという形になっているが、カッコ悪いぞ、カーク提督。
そんな死に様では、ちっともスッキリしないぞ。


第15回ゴールデン・ラズベリー賞

ノミネート:最低助演男優賞[ウィリアム・シャトナー]

 

*ポンコツ映画愛護協会