『鉄板英雄伝説』:2007、アメリカ

これは運命によって結ばれた4人の孤児の物語である。1人目の孤児は、美術館の館長に育てられたルーシーだ。ある夜、ルーシーは館長が美術館で瀕死の状態になっているのを発見した。館長は床にパンツ一丁にされ、犯人の暗号が残されていた。殺し屋のシラスが近付いて来たため、ルーシーは館長に人文字で「ダヴィンチ」というヒントを貰う。暗号を解読した彼女は、自動販売機で板チョコを購入する。包み紙を開くと、中には冒険のチャンスを得られる黄金のチケットが入っていた。
2人目のエドワードは、メキシコの修道院で暮らしていた。彼が食事を嫌がると、料理を運んできたナチョ・リブレはプロレスラーの格好になった。エドワードが「もうウンザリだ。俺はルチャ・リブレのレスラーになってやる」と言い放つと、ナチョは孤児のチャンチートに「謙虚さを教えてやりなさい」と指示する。覆面を被ったチャンチートの攻撃を浴びたエドワードは、神父が持っていた板チョコに入っていた黄金のチケットを掴んだ。
3人目のスーザンは、新しい養う父母に会うためナミビア行きの飛行機に乗っていた。すると機内に無数の蛇が出現し、乗客を襲い始めた。そこへ俳優のサミュエル・ジャクソンが現れ、「クソ蛇どもを叩き出してやる」と言う。しかし彼が同じ台詞を何度も繰り返すので、スーザンは腹を立てた。サミュエルはスーザンに罵られると、彼女を飛行機から放り出した。買い物を終えたパリス・ヒルトンを下敷きにして着地したスーザンは、彼女の鞄に入っていた板チョコに入っていた黄金のチケットを見つけた。
4人目のピーターはミュータントで、アカデミーの中でも特に浮いた存在だった。彼は片想いしているミスティークをダンス・パーティーに誘うが、「有り得ない」と冷たく断られた。そこへウルヴァリンが仲間のストームたちと現れ、「俺の女をナンパしたのか」とピーターに凄んだ。挑発されたピーターは特殊能力を使おうとするが、背中の小さな翼が出ただけだった。そこへ学長のマグニートーがやって来て喧嘩を仲裁し、ピーターを馬鹿にした。ピーターはロッカーの扉に頭をぶつけて転倒し、落ちて来た板チョコに入っていた黄金のチケットを発見した。
4人がチョコレート工場へ行くと、工場長のウィリー・ウォンカが出迎えた。工場を案内された4人は喜ぶが、「ここで作るチョコレートが美味しいのは人間の体の一部が入っているからだ」と説明されて顔をしかめる。ウィリーに捕まった4人は、同じ部屋に閉じ込められた。部屋を抜け出したルーシーは、別の部屋で大きな衣装箪笥を発見した。ルーシーが扉を開けると、大量の荷物が振って来た。ルーシーが荷物に埋もれている間に、箪笥から全裸の美女が飛び出して走り去った。
箪笥に入ったルーシーは、雪に覆われた森に放り出された。フォーンのタムナスと出会った彼女は、そこがナルニア国だと教えられる。タムナスはルーシーを自宅に案内し、仲間を紹介した。ルーシーが別れを告げて帰ろうとすると、タムナスは「危険が迫ってる」と言う。彼はカメラを渡し、「これを見れば全て分かる」と告げて家から立ち去らせた。ルーシーがカメラを除くと動画が再生されてタムナスが現れ、「ナルニアを支配する白い悪女が、人間を見つけたら引き渡すよう命じている君を引き渡すつもりだったけど、それが出来なかった。見つからない内に逃げて」と警告した。
ルーシーを捜していたエドワードは衣装箪笥に入り、ナルニア国へ迷い込んだ。白い悪女が家来のブリンクを伴って現れると、エドワードは一目惚れした。悪女はエドワードを含む4人が孤児だと聞き、予言通りだと確信した。悪女は「私の力で貴方を王にしてあげる」と言い、他の3人に会わせてほしいと持ち掛けた。「3人を連れて来たら王にする」と約束し、悪女はその場を後にした。エドワードはルーシーと遭遇し、そこへピーターとスーザンもやって来た。
エドワードはナルニアに留まるよう説くが、ルーシーは「危険だから早く逃げないと」と訴える。彼女は3人をタムナスに会わせようとするが、家に戻ると無人になっていた。そこへ人間の言葉を話すビーバーのハリー・ビーバーが現れ、タムナスの人生の伴侶だと自己紹介する。彼はタムナスが悪女に連行されたことを話し、ナルニアの本当の王であるアスロに会ってほしいと頼む。ハリーは「予言では君たちがアスロと協力して白い悪女を倒すことになってる」と語り、「特にピーター、君だ」と口にする。
「ここへ来たのが偶然だと思ってるの?周りにヒントがあるでしょ」とハリーに言われたルーシーは、壁に飾られた『最後の晩餐』の絵画に描かれている自分たちの姿に気付いた。彼女は4人の出生証明書を発見し、自分たちが同じ両親から生まれた4つ子だと知った。ハリーは白い悪女が予言を阻止するため、両親を殺して4人を引き離したことを教えた。エドワードは隙を見て家を抜け出し、白い悪女の元へ赴いた。悪女は他の3人がタムナスの家にいることを聞き出し、シラスを呼んで始末するよう命じた。エドワードは慌てて止めようとするが、ブリンクに連行された。
解放されたタムナスはルーシーたちの所へ戻り、エドワードが城に捕まっていることを教えた。ハリーはレジスタンスからの連絡で、白い悪女が大量破壊兵器を完成させたことを知る。タムナスはルーシーたちに、「解決できるのはアスロだけだ。会う前に特訓しなければ」と言う。シラスが迫って来たため、彼は特訓の場所を教えて急ぐようルーシーたちに指示した。タムナスは追っ手の相手を引き受け、3人を逃がした。シラスはタムナスに拳銃で何発も発砲し、ルーシーたちは魔法学校へ向かった。
ルーシーたちは魔法学校に到着し、ハリー&ロン&ハーマイオニーの下で特訓を積む。白い悪女はクリスタルを手に入れ、立て続けに地震を起こして新大陸を作ろうと目論んでいた。シラスからのメールでルーシーたちが逃げたと知り、悪女は激昂した。監禁されたエドワードの前には海賊のジャック・スワローズが現れ、「力になるぞ」と告げる。彼はエドワードをナイフで刺し、「男が刺された。助けないと死ぬぞ」と叫ぶ。ジャックは駆け付けた男たちを退治し、エドワードを連れて脱走した。
ジャックはエドワードを船へ案内し、「家族はどこにいる?」と尋ねる。エドワードがアスロの元へ向かっていることを教えると、白い悪女が来て彼を捕まえた。悪女はジャックに報酬の金を渡すが、すぐに始末した。エドワードはクリスタルを奪おうとするが、誤って海に落としてしまった。ルーシーたちはキャンプに辿り着き、半獅子半人のアスロに会った。協力を要請されたアスロは、それと引き換えにルーシーたちと肉体関係を持った。
アスロは白い悪女の城へ乗り込み、シラスと戦って撃退した。ルーシーたちはエドワードを救出して城から逃亡するが、アスロは白い悪女に殺された。キャンプに戻ったエドワードたちは、ハリーからアスロが殺されたことを聞く。もう終わりだと落胆するエドワードたちに、ハリーは戦うよう促した。彼は協力を申し入れ、キャンプにいた面々も「一緒に戦う」と声を上げた。ピーターは戦うことを宣言し、夜にパーティーを開いた…。

脚本&監督はジェイソン・フリードバーグ&アーロン・セルツァー、製作はポール・シフ、製作総指揮はアーノン・ミルチャン&ジェイソン・フリードバーグ&アーロン・セルツァー&ロドニー・ライバー、製作協力はハル・オロフソン、撮影はショーン・マウラー、美術はウィリアム・エリオット、編集はペック・プライアー、衣装はフランク・ヘルマー、音楽はエドワード・シェアマー、音楽監修はデイヴ・ジョーダン&ジョジョ・ヴィラヌエヴァ。
出演はカル・ペン、アダム・キャンベル、ジェニファー・クーリッジ、ジェイマ・メイズ、フレッド・ウィラード、フォーン・チェンバース、クリスピン・グローヴァー、トニー・コックス、エクトル・ヒメネス、ダレル・ハモンド、カーメン・エレクトラ、ジム・ピドック、デヴィッド・キャラダイン、ケヴィン・マクドナルド、ジョージ・アルヴァレス、クリスタ・フラナガン、デイナ・セルツァー、デイン・ファーフェル、タッド・ヒルゲンブリンク、グルーヴィー(ヴィンス・ヴィーラフ)、カーシャンナ・エヴァンス、リンジー・クラフト、ジャレブ・ドープレイズ、リコ・ロドリゲス他。


『最‘愛’絶叫計画』のジェイソン・フリードバーグ&アーロン・セルツァーが脚本&監督を務めた作品(『最‘愛’絶叫計画』では2人で脚本を手掛け、セルツァーは監督も兼任、フリードバーグはアンクレジットで共同監督も兼任)。
エドワードをカル・ペン、ピーターをアダム・キャンベル、白い悪女をジェニファー・クーリッジ、ルーシーをジェイマ・メイズ、アスロをフレッド・ウィラード、スーザンをフォーン・チェンバース、ウィリーをクリスピン・グローヴァー、ブリンクをトニー・コックス、タムナスをエクトル・ヒメネス、ジャックをダレル・ハモンド、ミスティークをカーメン・エレクトラ、マグニートーをジム・ピドックが演じている。
他に、美術館の館長役でデヴィッド・キャラダイン、本人役でリアリティー番組『ラグナビーチ』『ザ・ヒルズ』出演者のローレン・コンラッド、レッチリのドラマーのチャド・スミスが出演している。
アンクレジットだが、シラス役でケヴィン・ハートが出演している。

パロディー映画なので、元ネタが分からないと全く楽しめない。
そんなネタにされている作品のジャンルを、原題が示している。
原題の「Epic Movie」は、直訳すると「叙事詩的な映画」とか「英雄的な映画」といった意味になる。ただ、ネタにされている作品を見てみると、それよりは「大作映画」とでも訳した方がいいかもしれない。
ただ、それでも該当しないんじゃないかという作品もあるんだよね。
まあ、その辺りは「ちっちゃいことは気にするな、ワカチコワカチコ」ってことだわな。所詮はジェイソン・フリードバーグ&アーロン・セルツァーの作品だからね。そこは割り切らないと。

ベースになっているのは『ナルニア国物語/第1章:ライオンと魔女』で、本家のストーリーを大まかになぞる形で進行する。
とは言え、もちろん他の映画のパロディーを幾つも盛り込まなきゃいけないので、寄り道や脱線を繰り返して蛇行しまくる。
そもそも冒頭のルーシーのシーンからして、既に『ナルニア国物語/第1章:ライオンと魔女』じゃなくて『ダ・ヴィンチ・コード』だ。
続くエドワードのシーンは、『ナチョ・リブレ/覆面の神様』ね。

スーザンのシーンは『スネーク・フライト』で、この時点で「それはEpic Movieなのかな」と疑問を抱いてしまう。
ちなみに説明不要だと思うけど、もちろんサミュエル・L・ジャクソンはソックリさんで、ちゃんと本人っぽい格好をしている。
その次のピーターのシーンは、『X-MEN:ファイナル ディシジョン』だ。ミスティーク、マグニートー、ウルヴァリン、サイクロップス、ストーム、ローグっぽい姿をした面々が登場するが、能力を掘り下げて笑いを取りに行くことは無い。
ちなみにウルヴァリンを演じているグルーヴィー(ヴィンス・ヴィーラフ)は狼男の映画『ファングルフ/月と心臓』に出演していたけど、たぶん関係ないだろうね。

チョコレート工場のシーンは、『チャーリーとチョコレート工場』。本家と同じように、工場では小人のウンパ・ルンパが働いている。
では本家と同じようにミュージカル・シーンになるのかと思ったが、一応は歌が流れてウィリーがダンスを披露しているものの、そこまでの作り込みは無かった。
あと、そこではウィリーがエドワードの睾丸を抜き取ったり、スーザンの頭部を回し蹴りで落としたりしているんだけど、シーンが切り替わると全員がピンピンしているのよね。それはどう受け止めりゃいいのよ。
睾丸や歯を取られただけならともかく、スーザンが首チョンパになったのに元の状態に戻っているのは無理があるでしょ。

雪に覆われた森に放り出されたルーシーはタムナスから「ここはナルニア国」と教わるが、本家とは違って綴りは「Gnarnia」。タムナスの渡したカメラでメッセージが再生されると、ラッパーのカニエ・ウエスト(もちろん偽者ね)が少しだけ現れる。
メッセージが終わると自動的に爆発するのは、薄いけど『ミッション・インポッシブル』だね。
その後にはハリー・ビーバーというビーバーが登場するが、これは既存のキャラクターらしい。
そんなハリーから「ヒーローになる。特に君だ」と言われたピーターは、自分がスーパーマンになった妄想を膨らませる。
そこは『X-MEN』関連のネタでいいでしょ。

エドワードはタムナスの家を抜け出して白い悪女の元へ行き、「君のタトゥーまで入れた」と背中を見せる。
しかし50セントのタトゥーが入っており、「店員が間違えた」と悔しがる。
白い悪女がエドワードから他の3人の居場所を聞き出すと、騒がしい男が撮影クルーと共に現れて「やったね、ドッキリ大成功」とノリノリで饒舌に喋りまくる。
この元ネタはアメリカで人気だったMTVのドッキリ番組『Punk'd』で、ノリノリの男は司会を務めていたアシュトン・カッチャーの真似をしている。

タムナスとハリーがアスロの所で再会することを約束して「フォースと共にあれ」と別れるが、この台詞は『スター・ウォーズ』シリーズから。
魔法学校のシーンは、もちろん『ハリー・ポッター』シリーズだ。
そこには中年オヤジのハリー・ポッター、頭の禿げ上がったロン、やさぐれて煙草を吹かしているオバサンのハーマイオニーがいる。
ルーシーたちが特訓を始めると、『ロッキー3』の主題歌であるサバイバーの『Eye of the Tiger』が流れる。

エドワードはジャックと会った時に「キャプテン・モルガン?」と言っているが、これは有名なラム酒の名前。
ルーシーたちがアスロの元へ向かう途中には、標識に「アスロのキャンプ」の他に「ゴッサム・シティー」「ラグナ・ビーチ」の文字がある。
ゴッサム・シティーは『バットマン』の舞台で、ラグナ・ビーチはリアリティー番組『ラグナ・ビーチ』の舞台だった。
エドワードが海賊船へ案内されると、ヒップホップ・グループ「パブリック・エナミー」のフレイヴァー・フレイヴ(偽者)たちがノリノリでラップする。

アスロのキャンプには、ジェームズ・ボンドを演じているダニエル・クレイグっぽい男や、『スター・ウォーズ』のチューバッカっぽいキャラや、『ボラット』の主人公であるボラットを名乗る男がいる。
再び監禁されたエドワードは酔っ払い運転で捕まったメル・ギブソンと一緒になる。
アスロが死んだ後、キャンプに戻ったルーシーたちは、『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズのオーランド・ブルームっぽい奴から「喜んで一緒に戦う」と言われる。
最終決戦のシーンでは、白い悪女軍のメンバーとして『パイレーツ・オブ・カリビアン』シリーズのデイヴィー・ジョーンズや『スター・ウォーズ』シリーズのストーム・トルーパーが登場する。

ちなみに書き忘れていたけど、シラスは特殊な言語で喋っているので字幕が出るのだが、「K-Fedみたいにお前を落としてやろうか」とか「俺はリック・ジェームスだぜ」などと言っている。
K-Fedってのはケヴィン・フェダーラインのことで、かつてブリトニー・スピアーズのヒモ旦那として有名になった人物。
リック・ジェームスはファンクの世界で活躍していたミュージシャンで、ドラッグ中毒など私生活で多くの問題を起こした人物だ。
シラスがアスロと戦う時にはジャッキー・チェンの名前を出しているが、これは「今からアクションをやるので出してみた」という程度で、特に何かを茶化しているわけではない。

基本的に登場する有名人は偽者だが、リアリティー番組『ラグナ・ビーチ』『ザ・ヒルズ』出演者のローレン・コンラッドは本人役で出演している。ピーターがミスティークをダンス・パーティーに誘う時、一緒にいるミスティークの友人が彼女だ。
また、レッド・ホット・チリ・ペッパーズのドラマーであるチャド・スミスも、「マッド・チャド」という役名で出演している。白い悪女軍の1人で、戦闘前に皆がノリノリで踊るシーンで、その姿を確認することが出来る。
その他にも取りこぼしたネタ、気付かなかったネタが幾つもあるのは承知しているけど、その辺りは気が向いたら自分で確認してもらうってことで。

(観賞日:2019年9月12日)


第28回ゴールデン・ラズベリー賞(2007年)

ノミネート:最低脚本賞
ノミネート:最低リメイク&盗作賞
ノミネート:最低助演女優賞[カーメン・エレクトラ]

 

*ポンコツ映画愛護協会