『隣のリッチマン』:2004、アメリカ&オーストラリア

ティム・ディングマンは妻デビー、息子マイケル、娘ルーラの4人暮らし。向かいに住むニック・ヴァンダーパークは妻ナタリー、息子 ネイサン、娘ネリーの4人暮らし。ティムとニックは親友同士で、同じ紙ヤスリ工場に務めている。いつもティムが自分の車にニックを 乗せて工場まで通っている。その日、ニックは出勤途中で新しいスタンプ台のアイデアを思い付いた。しかしティムが冷静に欠陥部分を 指摘すると、「そうだな」と納得する。
工場に到着すると、ティムは管理職で、ニックはペーペーの工員だ。ニックはティムの部屋へ行き、人事査定表を見せて集中力のポイント が低いことについて尋ねる。ティムは「君は空想家で仕事への集中力が足りないからな」と説明した。彼はニックを自分の椅子に座らせ、 「昇進すれば座れるし、プールも買えるぞ」と告げる。ティムの査定は、ニックよりも遥かに高い。彼は「もう少し頑張れ、紙ヤスリ部で 昇進すれば世界が開ける」とアドバイスするが、ニックは椅子に座ったまま転寝してしまう。
帰る途中、犬が排便する様子を目撃したニックは、ティムに「ひらめいた。吹きかけると犬の糞が消えるスプレーだ。発明すれば死ぬまで 楽に暮らせるぞ」と興奮した様子で言う。ティムは、またバカな思い付きだと受け止め、相手にしなかった。夜になり、ティムはニック からの電話で「糞を消すスプレーに名前を付けた。ヴェイプーライズ(VAPOORIZE)だ」と言われる。ティムは「分かったよ、じゃあな」と 適当に電話を切るが、ニックは本気だった。
翌日以降も、ニックは何かに付けてスプレーのことをティムに話す。「研究室にいるディミトリオフを知ってるか。スプレーのことを 話した。大発明になるかもと言っていた」と彼は言うが、ティムは「ただの思い付きだ。商品にはならないよ」と否定的な態度を示す。 ニックが「もうディミトリオフの家で実験をした」と話すと、デビーとナタリーは「素晴らしいアイデア」と誉めるが、ティムだけは「どう やっても無理だよ」と呆れたように言う。
ニックはティムに、「ドライアイスで上手くいきそうなんだ。4000ドルが必要だから半分を出資してくれないか」と持ち掛けた。デビーは 「それぐらいの貯金はあるわ」と言うが、ティムは「現実的じゃない。今すぐに手を引いた方がい。後悔するぞ」と出資を断った。夜、 大きな物音を耳にしたティムとデビーが外に出ると、ニック、ナタリー、ディミトリオフが完成したスプレーの実験を行っていた。実際に 犬の糞が消えたので、ニックたちは大喜びした。
18ヶ月後。ヴァンダーパーク家はスプレーの大ヒットで大金持ちになっていた。ディングマン家は豪華ディナーに招待され、ナタリーは は州議会選挙に立候補することを発表した。ディナーの最後に、ニックは子供たちの大好物だというフランを出した。帰宅したティムは、 マイケルから「フラン、美味しかった、また食べたい」と言われるティム。彼に「ウチのプールは小さいの?」と訊かれ、「小さくない、 普通だ。世界中にはプールの無い家もあるんだ。その子たちはフランなんて知らない」とティムは苛立った。
翌朝、ティムたちが朝食を取っていると、ヴァンダーパーク家の飼っている白馬のコーキーが庭にやって来た。「あいつはウチの庭にクソ ばかりする」とティムが声を荒げると、デビーは無言でスプレーを差し出した。ティムは怒ってゴミ箱に投げ捨てる。ティムが文句ばかり 言うので、デビーも言い返す。そこへ呑気な様子のニックが来て、「ナタリーが気にしているんだが、コーキーは迷惑かな」と問い掛ける ティムは「全然」と答えた。
ティムはニックに誘われ、ゴルフへ出掛ける。ニックは「みんな、どうしてビバリーヒルズへ引っ越さないのかと言うんだ。でも俺は親友 のいる地元が好きなんだ」と語る。ニックはティムのために、様々な物品をプレゼントしていた。「ニック、物をくれすぎだ」と彼が口に すると、ニックは屈託の無い笑顔で「気にするな。親友を幸せにしたい」と言う。デビーはティムに「もう限界よ、離れた方がいい」と 告げ、子供たちを連れて実家に戻った。
ティムが工場へボロ車で出勤する時、いつもニックは白馬を優雅に乗りこなしている。そんなある日、ティムは所長から、査定表が急降下 していることを指摘された。特に集中力のポイントが悪くなっている。「何か問題でもあるのか」と問われたティムは、「何もありません 。ただ、僕がボロ車で出勤する時、奴は白馬に乗っています。僕が会社でやることは紙ヤスリを作るだけ。見るのは無愛想な上司の顔。 あいつの優雅な顔の後、査定表を見せられた時の気持ちが分かるか」と怒鳴ってしまう。
工場をクビになったティムは、バーへ。足を向ける。彼はバーテンダーに「家族に捨てられてクビになった」と言い、酒を注文した。店に いたJマンという男が、ティムに話し掛けて来た。ティムが無視しようとしても、彼はしつこく質問してきた。クビになった理由を質問 されたティムが「上司にキレてクビになった」と言うと、Jマンは「そりゃいい」と口にする。「経緯を全て話せ、俺が受け止めてやる」 と彼に言われ、ティムは親友が発明品で金持ちになったことを話した。
Jマンはティムに、「人生は不公平。アンタは平凡な庶民の代表だ。向かいの家族にムカつくのも分かる」と告げる。それから「向かいの 家をかき回してやれ」と、嫌がらせをするよう促した。ティムはプール工事が始まる時間だと気付き、慌てて帰宅した。すると工事が 始まっており、庭に大きな穴が開いていた。ティムは作業員に「金を払えないから工事を中止してくれ」と頼んだ。そこへ、ニックの執事 エドゥアルドがやって来た。彼は「家族がいない間の慰めに」というニックの言葉を伝え、ワインを差し出した。
深夜、ワインで泥酔するティムは、Jマンの言葉を思い出した。ヴァンダーパーク邸の庭に入った彼は、弓矢を手に取った。彼が自宅に 向けて矢を放つと、コーキーのいななきが聞こえた。慌てて行ってみると、コーキーは矢が命中して死んでいた。ティムは狼狽し、穴に 死骸を捨てて埋め直した。翌朝、Jマンが車を届けに来た。ティムは「家を狙ったのに馬を殺してしまった」と明かした。
家族が戻って来たので、ティムは慌ててJマンを隠れさせた。デビーはティムに、「妹から言われたわ、怒っている自分を愛せるのかって 。現状に満足しなきゃ」と言う。そこへJマンが出て来たので、彼女は驚いた。ティムは釈明の言葉に詰まり、「君がいない間に困った ことが起きた」と告げる。するとJマンは「自分はプール会社の人間で、オプションについて相談していた。穴は埋めた。地下にパイプが 多くてね」と述べて立ち去った。
ティムが家族とランチを食べていると、ニックが引きつった顔で現れた。「コーキーがいなくなったんだ、知らないか」と問われ、ティム は「知らない」と答えた。ナタリーは選挙運動として、個別訪問を始めた。すると、老女に「ご主人は糞を消して儲けた人でしょ。その糞 はどこかにあるはずよ。説明して」と詰め寄られた。翌朝、ティムはクビになったことをデビーに打ち明けられず、仕事を装って家を出た 。そこへニックが現れ、泣きそうな顔でどこへ行こうか「夜通し捜したが、コーキーが見つからない」と言う。ニックは「工場のみんなに 渡してくれ」と言い、発見者に賞金5万ドルを出すことを記したコーキー捜索用のチラシを渡した。
ティムはベンチで時間を潰し、バーで赴いた。彼はJマンに、ニックに全て打ち明けようと考えていることを話した。するとJマンは 「親友を地獄へ突き落とすつもりか。こうしよう。死体を移動させて俺が発見者として賞金を貰う」と持ち掛けた。ティムが「無理だよ、 掘り出せば人に見られるし、音がすれば家族が気付いてしまう」と言うと、彼は「俺が一人で夜中にやる。湖畔の別荘を貸してやるから、 家族と過ごせ」と告げた。
ティムはデビーに「同僚が別荘を貸してくれた」と嘘をつき、家族を連れて外出した。車で街に出たニックは、ナタリーの選挙事務所の前 に「糞はどこへ行った?」というプラカードを持ったデモ隊がいるのを目撃した。ティムが連れて行った場所にはマトモな道も無く、 デビーは顔をしかめる。到着したのはボロ小屋で、湖も見当たらない。その夜、ボスコという男が小屋に現れた。彼は応対に出たティムに 、「Jマンが今すぐ来いと言っている」と告げた。
ティムはデビーに「車が動かないから助けてくれと言ってる」と嘘をつき、自宅に戻った。ちょうどニックから電話が入り、「ケンカして ナタリーが出て行った」と告げられる。ティムが向かいへ行こうとすると、Jマンは「そうはいかん、付いて来い」と庭に連れ出す。彼は クランクと滑車を使って作った装置を用意し、コーキーを吊り上げていた。ティムは「僕はニックの元へ行く。アンタはロープを使って馬 をバンに乗せろ」と指示した。
ティムが豪邸へ行くと、ニックは落ち込んでベッドで寝そべっている。彼は「俺はナタリーから責められている。コーキーのことでも、糞 の行方のことでも。明日は仕事でローマへ行くと言ったら、あいつはキレて家を出て行った」と語る。Jマンの作業する音が大きいので、 ティムは「ゆっくり眠れば気が楽になる」とニックにシーツを被せる。Jマンはバンにコーキーを積み終え、ティムは彼と共に出発したる Jマンが「町から近い場所に捨てると住人に見つかるぞ」と言うので、かなり遠くへ行くことにした。
車を走らせていると、大雨による浸水で橋が壊れ、通行止めになっていた。別のルートを進んだニックが「この辺りで捨てよう」と車を 停めると、コーキーの姿が無かった。どこかで落としてしまったのだ。Jマンは「この豪雨だ、今頃は川に落ちて海へ流れてるさ」と言う 翌朝になって、ようやくティムはボロ小屋に戻った。家に帰ったティムは電話で呼ばれ、ニックの豪邸へ行く。するとニックはティムが クビになったことを知っており、「聞いたが、馬に乗ってる俺の姿が癇に障ったようだな。俺は最低だ。でも俺はローマへ行く。一緒に 来いよ。パートナーになろう。また対等な関係だ。今後、俺たちの稼ぎは半々だ」と持ち掛けた。
ティムは喜んで共同経営者の話を承知し、ニックの用意した飛行機でローマへ向かう。ティムは「動物園に売り込めばどうだ。旅行業界 にもミニサイズを作って売り込もう」と提案し、ニックは「素晴らしいアイデアだ」と称賛した。2人はイタリア各地を巡り、宣伝活動を 行う。一方、Jマンはテレビのニュースで、ティムが共同経営者になったと知る。ティムがイタリア首相と面会中、Jマンから電話が 掛かって来た。彼は「俺を裏切ったな。覚悟しろよ。5万ドルを支払わないと、馬を殺したことをバラすぞ」と脅す。しかしティムが帰国 してから再び電話を掛けて来た彼は、「俺も会社の共同経営者にしろ。話し合いのために、そっちへ行く」と言って来た…。

監督はバリー・レヴィンソン、脚本はスティーヴ・アダムス、製作はバリー・レヴィンソン&ポーラ・ワインスタイン、製作協力は ジョッシュ・マクラグレン、製作総指揮はメアリー・マクラグレン、撮影はティム・モーリス・ジョーンズ、編集は スチュ・リンダー&ブレアー・デイリー、美術はヴィクター・ケンプスター、衣装はグロリア・グレシャム、音楽はマーク・マザースボウ 、音楽監修はアラン・メイソン。
出演はベン・スティラー、ジャック・ブラック、レイチェル・ワイズ、エイミー・ポーラー、クリストファー・ウォーケン、 アリエル・ゲイド、サム・ラーナー、リリー・ジャクソン、コナー・マテウス、ヘクター・イライアス、マニー・クレインマンツ、 ブライアン・レディー、イーディス・ジェファーソン、トム・マックレイスター、タンブルウィード、オファー・サムラ、ダニエル・ルゴ 、フランク・ローマン、エイミー・D・ヒギンズ、マリセラ・オチョア、テッド・ルーニー、ダグラス・ロバーツ他。


『スフィア』『バンディッツ』のバリー・レヴィンソンが監督を務めた作品。
ティムをベン・スティラー、ニックをジャック・ブラック、 デビーをレイチェル・ワイズ、ナタリーをエイミー・ポーラー、Jマンをクリストファー・ウォーケンが演じている。
ベン・スティラーとジャック・ブラックがちゃんとした形で共演した映画は、これが初めて。2人とも『オレンジ・カウンティ』という 映画に出ているが、ジャック・ブラックが主要キャストだったのに対して、ベン・スティラーはアンクレジットでのカメオ出演だった。

冒頭シーンで歌われる「隣の芝生はいつも青く見えるものだけど、隣人を羨んだり境遇を愚痴ったりするな。そんなことをすれば人生を 虚しくする。それが嫉妬というものだ」という歌詞が、全てを言い表していると言ってもいいだろう。
っていうか、そこまで明確に作品の内容やメッセージを示してしまう歌詞ってのも、どうなのかと。
その後も折に触れて、歌が話の内容を説明しているのよね。

これは「ベン・スティラーの映画」でも「ジャック・ブラックの映画」でもなく、完全にバリー・レヴィンソンの支配下にある 映画だ。
もちろん監督が映画をコントロールするのは当たり前ではあるのだが、ベン・スティラーやジャック・ブラックはアクの強い役やクドい キャラがハマる役者なのに(特にジャック・ブラックは)、それが型に押し込められているように感じる。
この映画だと、「彼らじゃなくても良くねえか」と思ってしまうんだよな。
もっと彼らのアクの強さを活用して、ドタバタ喜劇のテイストを構築した方が良かったのではないかと思ってしまった。

ニックがティムに発明品のことを話す間に、少年野球の観戦があったり、庭でのランチがあったり、お遊戯会の見学があったりする。で、 それに何の意味があるのか良く分からない。そこには何の笑いも無いんだよな。
スプレーが完成するシーンまでの運び方にも、面白さが無い。実験成功を見た時のティムの反応も、ただ険しい顔をしているだけ。なんか 妙に空気が重いんだよね。
例えばさ、「無理だよ」とティムが出資を断ったトコでシーンを切り替えたら、完成したスプレーで糞が消えるシーンに移ってティムが 「マジかよ」的な顔になるとか、そういう省略技法を使ってもいいんじゃないかと
っていうか、実験成功のシーンから18ヶ月後へワープするんだったら、いっそのことティムが出資を断ったところから、スプレーが発売 されて大ヒットしたシーンへ切り替えた方が笑いになるんじゃないかと。
それと、その18ヶ月後に最初に描かれるのが、ニックがテレビの通販番組で宣伝している様子というのでは、そこへ飛んだ意味が無い。 18ヶ月後へ飛んだのなら、既にスプレーが発売されてヒットしていることを描くべきだよ。

その後、ニックが豪華なディナーにティムたちを招待し、きらびやかな服のナタリーが選挙に出ることを発表するというシーンがあるけど 、そういう描写だと「ニックが金持ちになった」と示すには中途半端。
それで金持ちになったことが伝わらないわけじゃないけど、その前に「商品が売れまくり」ということを、ダイジェスト映像やニュース 映像などの処理でいいから見せるべき。
出来ることなら、ニックが少しずつリッチになっていく様子もダイジェストで描いてほしい。
そうじゃないと、ディナーのシーンだけでは「ニックがたくさんの財産を築きました」というのがイマイチ伝わって来ない。薄っぺらい 描写としか感じ取れない。

ディナーのシーンの締めくくりが「ニックがフランを出して、彼の子供たちが浮かれる」という様子なんだけど、どういうつもりなのかと 。
なんかオチ的なモノが必要でしょ、そこは。
フランが出て来て、だから何なのかと。そのフランを巡って何かネタが描かれるのかと思ったら、そうじゃねえし。
シーンを切り替えてから、ティムが息子に「フラン、美味しかった」と言われているが、それじゃダメなのよ。実際に息子がフランを 初めて食べて感激して、その場でティムに「美味しかった、また食べたい」と言って、ニックは無邪気に喜んで「また御馳走するよ」と 告げ、ティムが苛立つという見せ方をすべきでしょ。
とにかく、ティムが息子への苛立ちを示すまでの、「ニックがリッチになって、立場が逆転するどころか大きな差が付く」というところの 描写が薄すぎる。
ティムは最初から激しくイライラしているけど、ダイジェスト的な処理でもいいから、「平静を装っていたけど、ニックがどんどん金持ち になっていくので次第にイライラを募らせていく」という経緯が欲しい。ニックが金持ちになって会社を辞めるシーンだって、あった方が いいだろうし。

いきなり白馬が登場しているけど、ってことはニックが飼っているってことなんでしょ。
だったら、それを入手するシーンも必要でしょ。そこは省略すべきではない。
ティムがコーヒーメイカーをプレゼントされたのも、既に家に置かれていて、ニックが「優れモノだろ」と言う形じゃなくて、プレゼント した時のシーンを、ダイジェスト映像の中でいいから描いておいた方がいい。
ゴルフへ出掛けるシーンで空撮が入り、初めてニックの大豪邸が写し出されるけど、そのタイミングも違うだろ。

タイミングと言えば、デビーが子どもたちを連れて家を出るのも、そのタイミングでいいのかと。
それだと、夫に耐え切れなくなったから家を出たのか、向かいの家がリッチになっていくのを見るのが耐えられなくなって家を出たのか、 ちょっとボンヤリしているし。
しかも、あっさりと戻って来るんだぜ、何のきっかけも無いのに。
そんなに簡単に戻って来るのなら、実家に戻る手順なんて要らないよ。

喜劇のはずなのに、まるで笑えないってのがツラいなあ。
例えばティムが上司に怒鳴り散らすシーンも、単純に「愚かだな」と感じるだけになっている。
喜劇として弾けない要因の一つは、テンポの悪さだろう。主題歌のノンビリした曲調からすると、意図的にノンビリした流れにして あるのかもしれないけど、それは効果的だとは思えない。もっと小気味よいテンポで進めた方がいいと思うんだよなあ。
ティムがデビーに「君がいない間に困ったことが起きた」と言うシーンも、咄嗟にデタラメを並べて誤魔化す流れにした方がテンポが いいのに、そこで言葉に詰まるって、どういうつもりなのかと。

ナタリーの選挙運動で反対が起きるとか、ティムが家族を連れてボロ小屋へ出掛けるとか、そういう展開になると、どんどん脇道へ外れて いっているようにしか感じられない。
「ティムの嫉妬心から色々とトラブルが」という流れを予想していたのに、ナタリーの選挙はティムと無関係だし、ボロ小屋でのドタバタ もジェラシーからは遠く離れている。
「コーキーを捨てに行く」という展開も、もはやティムは別のことでイライラしちゃってるし。

共同経営者に誘われたティムが何の迷いも無く喜んで応じるのは、すげえ不愉快だ。
コーキーを殺してしまったことへの罪悪感は無いのか。もう死体を処理したら、それで無かったことになっているのかよ。
もう少し、ためらいを示せよ。なんで嬉々としてアイデアを提案しているのかと。
っていうか、そもそも共同経営者になって一緒にローマへ行くという展開自体、ますますルートを外れているんじゃないかと。なぜ海外へ 出てしまうのか。

閉じ篭もってしまったナタリーをデビーが説得するとか、回転木馬が故障してニックが振り落とされるとか、ティムが矢を放ったら侵入 しようとしていたJマンに命中してしまうとか、色々なエピソードが、ことごとく物語を散漫にしているようにしか思えない。
あと、ティムが「僕は何でもするぞ、家には矢がたくさんある」と虚勢を張ると、Jマンが「良く分かった、金は人の心を汚す」と言って 脅迫を中止するのは安易すぎると思うし、その言葉を受けてティムがニックに全てを白状して謝罪するのも、ヌルい予定調和だなあと 感じる。
それと、ティムが自分の感情を吐露するセリフが長すぎるよ。
もう少しコンパクトにまとめてくれ。

スプレーの薬物が糞と混じると猛毒物質に変化することが判明して販売中止に追い込まれるというのは意外な展開ではあったが、それは まるで望んでいない意外性だ。
「金持ちになったけど不幸になった。だから販売中止で貧しくなったけどハッピー」という着地点なら、それでもいいよ。
でも、ティムとニックは、金を手に入れた代償として不幸になっているわけではない。
友情も壊れなかったし、全ては上手くいっていた。
で、ラスト直前になって一気に不幸へ突き落として、直後にティムの思い付きでチューブ式のフランを売り出してヒットさせるとか、 そんなの要らないって。

(観賞日:2012年5月25日)


第25回ゴールデン・ラズベリー賞

ノミネート:最低主演男優賞[ベン・スティラー]
<*『ポリーmy love』『ドッジボール』『隣のリッチマン』『ミート・ザ・ペアレンツ2』『スタスキー&ハッチ』の5作でノミネート>


第27回スティンカーズ最悪映画賞

ノミネート:【最悪の主演男優】部門[ベン・スティラー]
<*『ポリーmy love』『ドッジボール』『隣のリッチマン』『ミート・ザ・ペアレンツ2』『スタスキー&ハッチ』の5作でノミネート>
ノミネート:【最もでしゃばりな音楽】部門

 

*ポンコツ映画愛護協会