『DOOM ドゥーム』:2005、アメリカ&ドイツ&イギリス&チェコ
2026年、ネバダ州の砂漠で、ある古代学者が火星の古代都市への入り口を発見した。それは「アーク」と名付けられた。それから20年が 経過しても、アークが何のために作られ、火星の住民たちがどうなったのかは解明されていない。その火星にあるユニオン宇宙社(UAC) のオルドゥヴァイ研究所で異常事態が発生し、研究員たちは次々に襲われる。カーマック博士は仲間を見捨てて自分の研究室へ避難し、 本社に連絡して緊急隔離措置の実行を要請した。その直後、敵によって研究室の扉は破壊された。
カリフォルニア海兵隊特殊作戦本部RRTS(緊急対応戦略部隊)の隊長であるサージは、レベル5の脱走が発生したために救援要請が届いた ことを知らされる。施設に6人の研究員が閉じ込められており、それ以外の社員は79名。危険レベルは最高レベルを示すコード・レッド だという。任務内容は会社の所有財産を保護し、アーク両側の保護区域を死守することだ。ボスはサージに「手段は選ぶな、必要なら 見つけ出して抹殺しろ」と指示した。
RRTSのリーパー、デストロイヤー、ゴート、デューク、ポートマン、ザ・キッド、マックは休暇に入る予定だったが、サージは出動命令が 入ったことを伝える。しかしサージはリーパーを呼び止め、「お前は残れ。行き先はオルドゥヴァイだ。休暇を取れ」と促す。しかし リーパーは勧告に従わず、サージたちに同行する。ヘリコプターで出動した後、サージは任務の内容について隊員たちに説明した。彼は 通信が途絶える前に贈られてきたカーマックの映像を見せ、「まず研究員を保護して危険を排除し、施設を守る」と告げた。
サージから「何年になる?」と訊かれたリーパーは、「10年です」と答えた。「まだ彼女は向こうにいるのか」と質問を受け、リーパーは 「ええ。いずれは向き合わなきゃいけません」と告げた。彼らはUACの施設に到着し、広報担当のクロスビーに案内されてアークに入る。 サージは「我々が行ったら表のエレベーターを閉鎖し、6時間の隔離を確実に守れ」とクロスビーに指示した。火星と転送された彼らを、 UACのピンキーが出迎えた。彼はアーク・トラベルの事故により、下半身を失っていた。
封鎖区域以外の職員がアトリウムにいることを聞いたサージは、「この部屋はコード・レッドだ。我々の許可無しに誰も立ち入らせるな」 と隊員たちに告げる。彼はマックを見張りとして残し、残りの隊員を引き連れて移動した。そこへ科学担当官のサマンサ・グリムが来ると 、ジョンは「部外者は足手まといです」とサージに告げる。サマンサは「私は研究データの回収を指示されているの。指揮官に今回の任務 を確認してみれば?」と反抗的な態度を取る。サージが任務内容を改めて語ると、サマンサは「仕事に掛かりましょう」と告げた。彼女は リーパーの姉だった。
案内図を確認したサージは、ゴートとポートマンに遺伝学部門の棟、デストロイヤーとザ・キッドにはカーマックが救助を求めた研究室へ 向かうよう指示した。彼はリーパーにサマンサと行動するよう指示し、自分とデュークは兵器研究室の安全確認に向かうことを告げる。 兵器研究室に入ったサージは、BFG(Big Force Gun)があるのを知る。デュークからサマンサのことを訊かれた彼は、「リーパーの両親は 初めてオルドゥヴァイに来た考古学者だったが、事故で亡くなった。彼女だけが後を継いだ」と話す。
リーパーとサマンサが入った研究室には火星で初めて発見された人類であるルーシー親子のミイラが保管されていた。サマンサはリーパー に、ルーシーのデータを見せる。人間の染色体は23組だが、その親子は24組の染色体を持っていた。24組目の染色体は、体力や知力など 様々な面で超人的な能力を発揮させる役割を担っていた。細胞は50倍の速さで分裂し、怪我をしてもすぐに傷口が元に戻る。しかし出土 した最初の骨には23組の染色体しか発見されなかったため、サマンサは24組目が人工合成ではないかと疑っていた。
動きがあったと知らせを受けたリーパーは、サマンサを残して研究室を出て行く。カーマックの研究室に入ったゴートとポートマンは、 何者かが逃げ出すのに気付いて後を追う。他の隊員たちも合流して追い掛けると、それはカーマックだった。駆け付けたサマンサが声を 掛けると、彼は異様に怯えた様子を見せた。サマンサが歩み寄ろうとすると、カーマックは自分の耳を引き千切った。サージはデュークに 、カーマックを医務室へ連れて行くよう命じた。ポートマンとザ・キッドには、エアロックの防御を固めるよう指示した。
更衣室に入ったポートマンとザ・キッドは、背中を向けている全裸の女性を見つけた。しかし、振り返った女がいきなり襲い掛かろうと したので、すぐに撃ち殺す。それはカーマックが見捨てた研究員のヒラリーだった。サマンサは同僚のジェナと共に、医務室でカーマック の治療に当たる。ジェナの夫であるウィリッツも、隔離区域に取り残されたままだった。カーマックは震えながら、「封鎖しろ。あれは中 にいる」と告げた。
遺伝学研究室に入ったリーパーとゴートは、実験用の動物たちが全滅しているのを目にした。部屋には男性研究者のオルセンがいたが、 正気を失って動物の肉を貪り食っていた。オルセンが襲い掛かって来たので、リーパーたちは銃殺した。サージとデストロイヤーは、排気 ダクトで何かが動く物音に気付いた。デストロイヤーが中を覗くと猿が襲い掛かって来たので、慌てて発砲する。排気ダクトから落ちて 来た血には、不純物が混じっていた。カーマックの血液を採取したサマンサとジェナは、何かが混じっているのに気付いた。
リーパーとゴートは何か大きな生物が逃亡するのを発見し、後を追う。下水溝へ逃げた痕跡を見つけた彼は、全員を集合させる。サマンサ はジェナに、「一人で出来るから行って。娘さんが待ってるでしょ」と告げた。サマンサがカーマックの血液をコンピュータで調べると、 「適合無し」という結果が出た。驚いたサマンサがカーマックの元へ戻ると、彼はベッドから姿を消していた。サージは隊員を率いて 下水道に入り、デストロイヤーに出口の見張りを指示した。
下水道を進んたサージたちは、ウィリッツの研究服を発見した。手分けして下水道を調べていると、リーパーが何者かの動きを目撃した。 その生物は、ゴートの元へ向かう。ゴートは懐中電灯の電池が切れてしまい、周囲が見えなくなった。そこへ怪物が襲い掛かり、ゴートは 瀕死の重傷を負う。急いで駆け付けたリーパーは怪物と遭遇し、発砲して始末した。リーパーたちはゴートを医務室へ運ぶが、助けること は出来なかった。
サージは回収した怪物の死体をサマンサに見せ、「ここでは何を研究していたんだ?」と詰め寄った。しかしサマンサも知らない生物で あり、彼女は「この惑星の大気では生物は生きられない」と外部からの侵入を否定した。リーパーは「俺たちが最初に見た奴とは別物だ」 と口にした。北通路の突き当たりに外部への出口があることを知ったサージは、デストロイヤー、ホートマン、ザ・キッドの3人に偵察を 命じた。彼はマックに連絡し、「ピンキーに手榴弾を持たせて、アーク・ルームを守れ」と指示した。
サマンサはデュークに手伝ってもらい、怪物の死体を解剖する。彼女はデュークに、骨切り鋸をナノウォールの向こうにある処置室から 取って来るよう頼んだ。サージは研究員たちを避難させてアークを封鎖し、怪物退治に戻ろうとする。ポートマンは「規定に基づいて応援 を要請すべきだ」と意見を述べるが、サージは「我々がその応援だ」と強い口調で告げた。サマンサは不安を感じてデュークを捜しに行く が、彼は骨切り鋸を持って現れる。2人は怪物に襲われるが、医務室に飛び込んで難を逃れた。
リーパーやサージたちは出口のある発掘現場に到着し、研究者のクレイとサーマンが死んでいるのを発見した。サージは「彼らは侵入者を 防ごうとしたんじゃない。逃げ出そうとしたんだ」と述べた。デストロイヤーはサージから現状報告を求められ、エアロック北出口に異常 が無いことを告げた。見張りに立っていたマックが怪物に殺され、サージとリーパーは逃げ出す敵を銃撃しながら追う。怪物は異常な スピードで研究棟へ向かった。
敵を見失ったサージは、リーパーとザ・キッドに「通路を手当たり次第に捜せ」と命じ、デストロイヤーとポートマンにはエアロックを 閉じて防御するよう指示した。サージは破壊力の高い武器を入手するため、武器庫へ向かう。サマンサが怪物の死体から内臓を取り出して いると、収容されていたゴートが立ち上がった。彼は壁のガラスに激突し、そして倒れた。サマンサは「変身すると分かったのよ」と言い 、解剖した怪物に視線を向けて「これは化け物じゃない。ウィリッツ博士よ」と口にした。
サージは武器庫へ行き、BFGを手に入れた。ポートマンはトイレに行き、本部に連絡を入れて応援を要請した。デストロイヤーは怪物に 襲われ、必死に反撃するが命を落とした。ポートマンも怪物の襲撃を受けて死んだ。駆け付けたサージはBFGを発砲し、そのパワーに驚愕 した。リーパーやサージたちは、デストロイヤーとホートマンの死体を医務室に運ぶ。するとサマンサは生きている怪物を拘束して調べて いた。それはカーマックの変わり果てた姿だった。彼女はサージに、遺伝子の突然変異が起きたのだろうと話す。リーパーが彼女の回収 していたデータを確認すると、それは染色体の変異を調べるための人体実験を記録した映像だった…。監督はアンジェイ・バートコウィアク、原案はデヴィッド・キャラハム、脚本はデヴィッド・キャラハム&ウェズリー・ストリック、製作 はロレンツォ・ディボナヴェンチュラ&ジョン・ウェルズ、共同製作はマシュー・スティルマン&デヴィッド・ミンコウスキー、製作協力 はヘニング・モルフェンター&ティエリー・ポトク、製作総指揮はジョン・D・スコフィールド、共同製作総指揮はローラ・ホルスタイン &ジェレミー・ステックラー、撮影はトニー・ピアース=ロバーツ、編集はデレク・G・ブレッシン、美術はスティーヴン・スコット、 衣装はカルロ・ポッジオリ、視覚効果監修はジョン・ファーハット、音楽はクリント・マンセル。 出演はカール・アーバン、ザ・ロック、ロザムンド・パイク、デオビア・オパレイ、ベン・ダニエルズ、ラズ・アドティー、リチャード・ ブレイク、デクスター・フレッチャー、アル・ウィーヴァー、ブライアン・スティール、ダグ・ジョーンズ、 ヤオ・チン、ロバート・ラッセル、ダニエル・ヨーク、イアン・ヒューズ、サラ・ホートン、ブランカ・ヤロソワ、ヴラスラフ・ ディンテラ、ピョートル・ネコフスキー、ヤロスラフ・ピシェニチカ、マレク・モトリセク他。
id Softwareのコンピュータゲーム『DOOM』を基にした作品。
シリーズの中の『DOOM3』をベースにしている。
監督は『DENGEKI 電撃』『ブラック・ダイヤモンド』のアンジェイ・バートコウィアク。
リーパーをカール・アーバン、サージをザ・ロック(ドウェイン・ジョンソン)、サマンサを ロザムンド・パイク、デストロイヤーをデオビア・オパレイ、ゴートをベン・ダニエルズ、デュークをラズ・アドティー、ポートマンを リチャード・ブレイク、ピンキーをデクスター・フレッチャー、ザ・キッドをアル・ウィーヴァーが演じている。『DOOM』はファーストパーソン・シューター(FPS)を1つのジャンルとして確立させた金字塔的な作品であり、後に発売された同じ ジャンルのゲームに大きな影響を与えている。
FPSとは、主人公の一人称視点で進行し、武器や素手によって戦うシューティングゲームを意味する言葉だ。「DOOM系シューティング ゲーム」という呼称があるほど、『DOOM』はそのジャンルにおいて重要な作品だった。
ただ、FPSとしては元祖だが、映画版としては、その『DOOM』より遥か後になってから作られたゲームを基にした『バイオハザード』 なんかの二番煎じみたいに見えてしまうってのが厳しい。
何しろ相手がゾンビなのでねえ。
それと、ゲームをベースにした映画じゃないけど、『エイリアン2』や『スターゲイト』、『イベント・ホライゾン』など、これまでに公開 された幾つかの映画を連想させる部分もある。
ようするに、既視感を強く感じさせる内容になっているのだ。隊員たちには「ポートマンはチャラ男」「ザ・キッドは新人でビビってる」などのキャラクター設定が用意されているが、それは誰が誰か を見分けるための特徴付けであって、そういうのを利用した人間ドラマが充実しているわけではない。
何となく予想できる人もいるだろうけど、この手の映画で「主人公と一緒に行動するメンバー」として登場する連中の大半は、敵に 殺されるための要員であり、数合わせのような存在に過ぎない。
最初から「どうせ大半のメンバーは殺されるために出て来たんでしょ」と割り切って観賞しているので、それぞれの登場人物の見分けさえ 付いてしまえば、キャラが薄いとか、人間ドラマが薄いとか、そんなことは大して気にならない。
「デュークやザ・キッドは扱いが他の連中より大きいみたいだから、たぶん後の方まで生き残るんじゃないか」とか、そういう歪んだ意識 を持ちながら見ていたのでね。RRTSは特殊な訓練を積んだ腕の立つ連中のはずなのに無力に近い状態で死んでいくけど、「まあ、そういうモンだし」と受け止めて置こう 。
最初に自分イメージする基準値を、かなり低いトコロに置いておけばいい。ゲームが原作の映画という時点で、期待値を低くしておこう。
そうすれば、「予想よりはマシかな」と好意的に受け止めることが出来るかもしれない。
テンポはノロいし、メリハリの付け方も上手くないし、退屈だけどね(それを言っちゃダメだろ)。ただ、意外なことに、なかなか死なないんだよな、こいつら。
前半で死ぬのはゴートだけ。
別に「人が死ななきゃ緊迫感が出ない」とか、そういうわけではない。ただ、この映画では、なかなか人が死なない中でも上手く緊迫感を 煽ることが出来ているのかというと、出来ていないのでね。
さすがに「そもそも緊迫感を出そうともしていない」とか、「むしろ喜劇に近い」とか、そこまで酷い状況に陥っているわけではないが、 緊迫感がまるで足りていないことは確かだ。
そして、なかなかスリルが高まらない中で、「ポートマンが敵に襲われて下水道に沈められたと思ったら穴に落ちただけ」とか、「異変を 感じたサマンサが急いでデュークを捜しに行くが、普通に彼が現れる」とか、TPOを考えないような肩透かしだけはやらかしている。
そんなの要らんわ。
せめて「肩透かしで安堵させた直後に敵が襲って来る」というための仕掛けならともかく、敵が襲って来るまでにはタイムラグがあるし。他の連中はともかく、主人公であるリーパーに関しては、最初に用意したキャラクター設定をちゃんと活用すべきでしょ。
姉との確執が、どんな風に物語の中で使われるのかと思ったら、まるで意味の無いモノになっているんだけど、それはダメでしょ。
事故現場に近付いたリーパーの脳内で家族が楽しそうに喋っている記憶の中の声が再生されるというシーンがあったりするけど、だから 何だって話だしね。
大体さ、どれほど深い事情があるのかと思ったら、「考古学者の才能があるのにリーパーが両親の後を継がずに海兵隊へ入ったから、 サマンサが邪険な態度を取っている」という、それだけなんだぜ。
くだらねえよ。残り40分を過ぎた辺りでポートマンが殺されるが、そこからは怪物が登場しない時間帯が続く。
そして、「完全にイカれたサージ」が悪玉のポジションを奪い取る。
サマンサの分析によって、施設にいる全員が感染しているとは限らないし、感染の可能性が無い人もいることが判明しても、サージは 「掃討作戦だ」と言い、怪物に襲われていないピンキーを射殺しようとする。隠れていた生存者たちの始末をザ・キッドに命令し、拒否 した彼を銃殺する。
いやいや、完全に対決の構図がズレてるじゃねえか。
そこへ怪物が現れて暴れ始め、何とか元の図式に引き戻すけど、サージの変貌が余計なのは確かだ。せめて怪物に襲われてから敵になって くれよ。その後、怪物に襲われたサージにサマンサがC24(24組の染色体を持つ遺伝子)を注射すると、アンジェイ・バートコウィアクはゲームの 『DOOM』が好きだったのか、あるいは単純に演出としてやってみたかっただけなのか、FPSの映像をそのまんま映画の世界に 持ち込む。
どういうことかと言うと、リーパーの一人称視点で進行する形になるのだ。
一人称視点なので、カメラに写るのは腕の一部や持っている武器だけだ(リーパーの全身が見える場合、それは三人称視点のサード パーソン・シューターってことになる)。
FPSの映像に突入すると、ベースになったゲームを楽しんでいた人は「おおっ、ゲームと同じだ」と喜べるかもしれないし、FPSに 馴染んでいない人は新鮮な映像だと思うかもしれない。
ただ、1本の長編映画として考えると、終盤の5分程度だけ、唐突にFPSの映像になるってのは、バランスが良いとは言い難い。
あと、それが映画として面白い効果になっているのかってのも、ちょっと疑問だし。(観賞日:2013年11月23日)
第26回ゴールデン・ラズベリー賞(2005年)
ノミネート:最低主演男優賞[ザ・ロック]