『ディザスター・ムービー!おバカは地球を救う』:2008、アメリカ

紀元前1万年の世界で、ウィルは一人の女から「ワタシらは絶滅する。アンタも死ぬ」と言われる。「残り時間はどれぐらいだ」とウィル が尋ねると、彼女は「2008年の8月29日だ。アンタの運命は、これに懸かっている」と言い、クリスタル・スカルを見せた。ウィルが悲鳴 を上げると、目が覚めた。それは全て夢だった。ふとウィルがカレンダーに目をやると、その日が2008年の8月29日だった。
ウィルは隣に寝ていた恋人のエイミーと些細なことで言い争いになり、彼女は部屋を去った。ウィルはパーティーを開き、大勢の人々が 会場にやって来た。エイミーと別れて落ち込んでいるウィルを、親友のカルヴィンが元気付けた。そこへエイミーもやって来るが、彼女は 他の男と一緒だった。みんなで騒いでいると、大地震が発生した。ラジオからは緊急災害速報が流れた。エイミーが出て行こうとするので 、ウィルは追い掛けた。しかし素直になれず、嫌味を口にしてしまう。
小惑星が落下したというラジオのニュースが流れ、会場の人々は慌てて逃げ出した。ウィル、カルヴィン、彼の恋人リサ、妊娠中の少女 ジュネイは、一緒に会場の外へ出た。街には隕石が降り注ぎ、人々はパニックに陥っていた。ブリザードをやり過ごすため、4人は近くの 建物に避難して一夜を過ごした。翌朝、ウィルの携帯にエイミーから連絡が入った。彼女は勤務している自然史博物館にいた。ウィルは 「伝えたいことがある。君を愛してる」と言うが、エイミーの声が聞こえなくなり、そのまま電話は切れてしまった。
ウィルはエイミーを救うため、博物館へ行くことにした。するとカルヴィンとジュネイは、一緒に行くことを申し出た。リサが「悪い予感 がする」と言っていると、彼女は隕石の下敷きになって死亡した。その場を離れたウィルたちの前に、下水道からプリンセスが現れた。 しかし彼女はプリンセスの格好をしているだけで、実際には下水道に住んでるホームレスの娼婦だった。彼女を連れて博物館へ行こうと すると、王子様の格好をした客引きが下水道から現れた。彼はプリンセスを連れ戻しに来たのだ。
ウィルたちが王子と対決していると、竜巻が襲来した。王子は「姫はくれてやる」と下水道に避難した。ウィルがエイミーに電話すると 「さっきの地震でエジプトの彫像が倒れて来て動けない」と助けを求められた。ウィルたちは竜巻を避けるため、近くの建物へ逃げ込んだ 。ウィルはカルヴィンたちに、「この災害にはクリスタル・スカルが関わっているんだ」と告げる。彼らは狂ったシマリスに襲われ、 ジュネイが犠牲となった。
ウィルたちが外に出ると、避難勧告によって人々が街を出ようとしていた。しかしウィルたちはエイミーを助けるため、車を奪って博物館 へ向かった。博物館に到着したウィルたちは、エイミーを助け出した。するとエイミーは股間からクリスタル・スカルを取り出し、「この クリスタルを祭壇に戻さなきゃ」と言う。クリスタルが祭壇から離れると、大惨事が起きるという言い伝えがあるのだという…。

脚本&監督はジェイソン・フリードバーグ&アーロン・セルツァー、製作はピーター・サフラン&ジェイソン・フリードバーグ&アーロン ・セルツァー、共同製作はジェリー・P・ジェイコズ、製作協力はケニー・イェーツ、製作総指揮はハル・オロフソン、撮影はショーン・ マウラー、編集はペック・プライアー、美術はウィリアム・エリオット、衣装はフランク・ヘルマー、音楽は クリストファー・レナーツ、音楽監修はデイヴ・ジョーダン&ジョジョ・ビリャヌエヴァ。
出演はマット・ランター、ヴァネッサ・ミニーロ、ゲイリー・“G−シング”・ジョンソン、ニコール・パーカー、トニー・コックス、 カーメン・エレクトラ、クリスタ・フラナガン、キム・カーダシアン、アイク・バリンホルツ、タッド・ヒルゲンブリンク、ジェイソン・ ボー、ニック・スティール、ジョン・ディ・ドメニコ、ヴァレリー・ワイルドマン、エイブ・スピグナー、ノア・ハープスター、オースティン・ スコット、デヴィン・クリッテンデン、デイナ・セルツァー、ミシェル・ラング、ジョナス・ニール他。


パロディー映画を専門に作り続けているジェイソン・フリードバーグ&アーロン・セルツァーのコンビによる作品。
DVDのタイトルは『ディザスター・ムービー! 最'難'絶叫計画』と変更されている。
ウィルをマット・ランター、エイミーをヴァネッサ・ミニーロ、 カルヴィンをゲイリー・“G−シング”・ジョンソン、プリンセスをニコール・パーカー、女殺し屋をカーメン・エレクトラ、ジュネイを クリスタ・フラナガン、リサをキム・カーダシアンが演じている。

パロディー映画には、全体の物語を有名作品の風刺にするケース、複数作品のネタを盛り込むケース、その2つを組み合わせるケースが ある。
この映画は、複数作品のネタを盛り込んで作られている。
全体を通してのパロディーは無い。
また、『Disaster Movie』という題名だが、災害映画のパロディーばかりを盛り込んでいるわけではない。
元ネタとする映画の年代も最近の物だけではなくバラバラだし、そこに何らかの統一感を持たせようとはしていない。

まず冒頭、ウィルは『紀元前1万年』の夢を見ている。そこにエイミー・ワインハウス(もちろん偽者)が現れると、ヤクが 切れてイライラしている。彼女が見せるクリスタル・スカルは、もちろん『インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国』の アイテム。
ウィルは25歳だが、MTVのリアリティー・ショー『My Super Sweet 16』のように16歳の誕生日パーティーを開く。その会場には、 TVショーの司会者で心理学者のフィル・マッグロー(やっぱり偽者)もやって来る。
カルヴィンが寝ている青年を見て「こいつにイタズラしてやろうぜ」と誘いを掛ける相手は、『ノー・カントリー』のハビエル・バルデム の格好をしている。
カルヴィンがリサに「あいつら、酒を盗もうとしている」と言われて見ると、『スーパーバッド 童貞ウォーズ』のジョナ・ヒルと クリストファー・ミンツ=プラッセみたいな男が「酒を女に飲ませてベロベロにすればヤレる」と話している。

カルヴィンはリサに渡された銃で泥棒2人を撃とうとするが、人が多すぎて標的が見えない。すると『ウォンテッド』のアンジェリーナ・ ジョリーみたいな女殺し屋が現れ、「銃弾を曲げればいい」とアドバイスを送る。するとリサが「私の彼にちょっかい出さないで」と腹を 立てて、リングに移動して女子プロレスを始める(つまりカーメン・エレクトラとキム・カーダシアンがプロレスをやる)。
戦いは途中でツイスターゲームになるが、それは全てカルヴィンの妄想。
会場の別の場所では、妊娠した『JUNO/ジュノ』のジュノならぬジュネイが、マイケル・セラっぽい男と一緒にいる。男がギターを演奏 しながら歌で堕胎を促すと、ジュネイは歌で批判し、「赤ん坊はオークションで買い手が付いてる」と言う。
エイミーが連れて来るカルバン・クラインの下着モデルも何かのパロディーなんだろうけど、これは分からなかった。カルバン・クライン の下着モデルと言うと、マーク・ウォルバーグぐらいしか思い付かない。

カルヴィンはウィルを元気付けるため、『ハイスクール・ミュージカル』の出演者のような連中を呼んでミュージカルを披露してもらう。 そこにジャスティン・ティンバーレイク(偽者)が現れて歌うと、Tシャツには「アイ・ラブ・ランス・バス」と書いてある(ランス・ バスはジャスティンの参加していたポップ・グループ「イン・シンク」のメンバーで、ゲイを公表している)。
さらにジェシカ・シンプソン(偽者)も来て歌い、「私の彼はアメフト選手」と自慢するが(当時、彼女はダラス・カウボーイズのトニー ・ロモと交際していた)、バカなのでアメフトのルールは全く分からず、NFLファンから罵られる。

緊急災害速報が入るとジュネイが早口で語るが、若者言葉を羅列するので何を言っているのかサッパリ理解できない。ウィルたちが会場の 外に出ると、『クローバーフィールド』みたいな状況になっている。巨大な隕石が落下し、ハンナ・モンタナ(偽者)が下敷きになる。 彼女は、自分が販売しているグッズのPRをしまくってから死ぬ。
リサが「どこかにスーパーヒーローはいないの?」と言うと、別の場所にあるベンチで寝ていた『ハンコック』のハンコックに少年が 「僕らを助けて」と呼び掛けるが、ハンコックは殴り飛ばす。『デイ・アフター・トゥモロー』みたいなブリザードが来たので、ウィル たちは建物に入る。すると『セックス・アンド・ザ・シティ』の4人組みたいな面々がやって来るが、キャリーはオカマで、かなり顔が 長い(本家でキャリーを演じているサラ・ジェシカ・パーカーも顔が長い)。
その建物で眠ったウィルは、自分が『ジャンパー』の主人公よろしくジャンパーになった夢を見る。瞬間移動していると、『ナルニア国 物語/第2章:カスピアン王子の角笛』のカスピアン王子(偽者)が持っている剣に突き刺さる。ウィルはカスピアン王子に「お前は 『スター・ウォーズ』をダメにした奴だな」と言われて、目を覚ます(マット・ランターはアニメ『スター・ウォーズ/クローン・ ウォーズ』でアナキンの声優を担当している)。

自然史博物館へ行こうとしていると、『魔法にかけられて』のプリンセスみたいな女がマンホールから現れる。王子が追い掛けて来ると、 プレンセスはカルヴィンに「決闘してくれる?それで勝った方が私をゲットするってのはどう?」と持ち掛ける。そこでカルヴィンは、 『ステップ・アップ』のようなストリート・ダンス対決を挑む。対決していると、『ツイスター』みたいに竜巻がやって来る。
プリンセスが「こんな時にヒーローがいてくれたら」と漏らすと、『アイアンマン』のアイアンマン(偽者)が現れる。だが、 『ツイスター』みたいに牛が降って来て下敷きになる。次に『ヘルボーイ』のヘルボーイ(偽者)が来るが、牛の下敷きになったことで腹 を立てて立ち去る。その次に『インクレディブル・ハルク』のブルース・バナー(偽者)が来て怒りのパワーでハルクに変身するが、 そこにも牛が激突する。

ウィルたちが竜巻を避けるために近くの建物へ逃げ込むと、『アルビン/歌うシマリス3兄弟』のシマリスみたいな3匹が現れる。最初は 『We Wish You a Merry Christmas』、続いてヒップホップを歌うが、最後にスラッシュメタルを歌って目が怖くなり、ウィルたちを襲撃 する。
ジュネイが犠牲になった後、外に出たウィルたちは、『ダークナイト』のバットマン(偽者)から避難勧告のことを教えて もらう。
プリンセスは『スピード・レーサー』のマッハ号(偽者)を強奪し、ドライバーを銃殺する。トランクを開けると、マイケル・ジャクソン (偽者)が猿&少年と一緒に隠れている。博物館に到着したウィルは、エイミーと共にクリスタルを祭壇へ戻そうとする。
一方、カルヴィンとプリンセスは去ろうとするが、『ナイト ミュージアム』みたいに展示物が動き出す。ウィルたちは『ベオウルフ/ 呪われし勇者』のベオウルフを称する全裸男に襲撃され、カルヴィンたちは『カンフー・パンダ』のカンフー・パンダみたいな奴に 襲われる。

ウィルが祭壇へ行くとインディアナ・ジョーンズの格好をした奴がいるが、黒人の小人で、それはウィルの父親。
全てが終わった後、ウィルとエイミーの結婚式で神父を務めるのは、『愛の伝道師 ラブ・グル』のラブ・グル(偽者)。
他にも、ハンナ・モンタナがネットに流出したセクシー写真に触れて「あれは嫌がらせ。でも、あの下着は販売中」と言ったり、 「『ハニーVS.ダーリン 2年目の駆け引き』のヴィンス・ボーンみたいにデブってる」とか、「ロイがホワイト・タイガーに噛まれた時 のジークフリードみたい」とか「クリスタルが祭壇から離れると大惨事が起きるの。スパイズ・ガールズを再結成とか」というセリフが あったりする。
他にも、私が気付かなかったネタは色々とあるんだろう。

当たり前のことだが、パロディー映画というのは、元ネタを知らなければ全く楽しめない。
パロディー以外のネタも色々と用意されている場合は、そっちで楽しむことも出来るだろう。しかし本作品の場合、パロディー以外のネタ は、かなり少ない。しかも、向こうのセレブのゴシップをネタにしていたりする。
たぶんアメリカでも一部の人間にしか楽しめないようなタイプのパロディー映画だと思うし、日本人だったら、なおさら厳しい。
これを楽しめる「一部の人間」に入れる日本人って、ほとんどいないんじゃないだろうか。

パロディーの元ネタが理解できたら面白いのかと言われたら、そういうわけでもないってのが、この映画の抱えている最大の問題 だろう。
まず味付けや調理の方法が上手くないので、パロディーっていうか、ただ他の映画のキャラを無造作に登場させただけという箇所も少なく ない。笑いのネタを物語の流れに上手く乗せるとか、テンポ良く進めるとか、そういうことよりも「思い付いたパロディーのネタを全て やり切る」ということが常に優先されているので、そのせいでモタついたり、テンポが悪くなったりしている。
例えば『ハイスクール・ミュージカル』のダンスとか、ハンナ・モンタナが喋りまくるネタとか、ジュネイとキャリーのアクションとか、 『ステップ・アップ』みたいなダンス対決とか、その辺りは、もっと短くスパッと切ってしまった方がテンポがいい。
流れやテンポを無視してでも、とにかくパロディーをやろうとしている。目的に向かって行動する中で、色々なネタを盛り込むという形 にはなっていない。その大半は、「もう少し流れに沿った形でも消化できるんじゃないか」と思うんだよな。

(観賞日:2012年3月8日)


第29回ゴールデン・ラズベリー賞

ノミネート:最低作品賞
<*『ディザスター・ムービー!おバカは地球を救う』&『ほぼ300 <スリーハンドレッド>』の2作まとめて>
ノミネート:最低助演女優賞[カーメン・エレクトラ]
<*『ディザスター・ムービー!おバカは地球を救う』『ほぼ300 <スリーハンドレッド>』の2作でのノミネート>
ノミネート:最低助演女優賞[キム・カーダシアン]
ノミネート:最低序章・リメイク・盗作・続編賞
<*『ディザスター・ムービー!おバカは地球を救う』&『ほぼ300 <スリーハンドレッド>』の2作まとめて>
ノミネート:最低監督賞[ジェイソン・フリードバーグ&アーロン・セルツァー]
<*『ディザスター・ムービー!おバカは地球を救う』『ほぼ300 <スリーハンドレッド>』の2作でのノミネート>
ノミネート:最低脚本賞
<*『ディザスター・ムービー!おバカは地球を救う』&『ほぼ300 <スリーハンドレッド>』の2作まとめて>

 

*ポンコツ映画愛護協会