『逃亡者』:1990、アメリカ
凶悪犯のマイケル・ボズワースは裁判の途中で、女弁護士のナンシーの協力を得て法廷から逃亡する。弟のウォーリー、仲間のアルバートと共に郊外の高級住宅地にやってきたマイケルは、コーネル家の家族4人を人質に取り、彼らの住む家に立てこもる。
手はずが整えばナンシーが迎えにやって来ることになっていた。だがマイケルとナンシーの共謀をFBIのチャンドラー捜査官は見破っていた。マイケルの元へ向かうナンシーを追跡するFBI。その頃、ナンシーがなかなか来ないことで、マイケル達は次第にイライラを募らせていた…。監督はマイケル・チミノ、原作はジョゼフ・ヘイズ、脚本はジョゼフ・ヘイズ&ローレンス・コナー&マーク・ローゼンタール、製作はディノ・デ・ラウレンティス&マイケル・チミノ、製作総指揮はマーサ・シュマッカー、撮影はダグラス・ミルサム、音楽はデヴィッド・マンスフィールド。
出演はミッキー・ローク、アンソニー・ホプキンス、ミミ・ロジャース、リンゼイ・クローズ、ケリー・リンチ他。
1955年のハンフリー・ボガート主演作『必死の逃亡者』を、新解釈でリメイクした。序盤から次第に盛り上げていく展開は上手いし、なかなか良く出来たサスペンスだ。
ただし、途中までは。張り詰めた緊張感や閉じられた環境での閉塞感がサスペンスを盛り上げる。アルマーニのスーツをパリッと着こなすロークも、マイケルという激情を秘めたクールガイをキッチリと演じる。彼がラジー賞候補になったのは、同年に主演した『蘭の女』での芝居が問題だったんだろうな、と思わせる。
ところが、利口なワルだったはずのマイケルがバカな行動を連発し、訪れた不動産業者をあっさり殺してから一気にパワーダウン。人を殺さないことで保ってきた緊張感が無くなる。さらにアルバートが1人で外へ逃亡しちゃうもんだから、密室の緊張感も無くなる。
そんでアルバートがFBIに銃で蜂の巣状態にされて、これまでの緊張感が全て台無し。こうして傑作サスペンスの座から見事に転げ落ちたのでありました。
ま、所詮はディノ・デ・ラウレンティスの製作だし、所詮はマイケル・チミノ監督作品だしね。
第11回ゴールデン・ラズベリー賞
ノミネート:最低主演男優賞[ミッキー・ローク]
<*『逃亡者』『蘭の女』の2作でのノミネート>