『デモリションマン』:1993、アメリカ

1996年、ロサンゼルス。凶悪犯サイモン・フェニックスが人質にとってビルに籠城していた。そこに駆け付けたのは“デモリションマン”の異名を持つ破天荒な刑事ジョン・スパルタン。彼はフェニックスのを逮捕するが、フェニックスの仕掛けた爆薬が爆発してビルは全壊し、人質は全て死亡する。
人質が死亡したのはスパルタンの責任だというフェニックスの主張が通り、スパルタンは70年の冷凍刑に処されることになる。フェニックスも同じ刑に処されることになり、2人は水槽の中で凍りづけにされ、長い眠りに就くことになった。
2032年、サンアンゼルス。アメリカ西海岸を襲った大地震で街は崩壊し、新たに立て直された。全てはコンピューターにより管理され、市長レイモンド・コクトーの厳しい取り締まりによって犯罪は姿を消し、人々は平和に生活していた。
フェニックスの仮釈放を審議するための聴聞会が開かれることになり、彼は36年ぶりに解凍された。だが、彼は看守を殺して刑務所から脱走する。彼を追いかけるはずの警察は犯罪者への対応能力を失っており、どうすることもできない。
女性警官のレニーナ・ハックスリーは、デモリションマンと呼ばれる伝説の刑事が冷凍されていることを知った。スパルタンは解凍され、レニーナ達と共にフェニックスを追う。しかし、フェニックスは以前よりも凶暴性を増していた。それには指導者コクトー博士の企む殺人計画が関係していた…。

監督はマルコ・ブランビヤ、原案はピーター・M・レンコブ&ロバート・レノウ、脚本はダニエル・ウォーターズ&ロバート・レノウ&ピーター・M・レンコフ、製作はジョエル・シルヴァー&マイケル・レヴィー&ハワード・カザンジアン、共同製作はジェームズ・ハーバート&ジャクリーン・ジョージ&スティーヴン・フェイズカス、製作協力はトニー・ムナフォ、製作総指揮はフェイ・シュワブ&アーロン・シュワブ&スティーヴン・ブラッター&クレイグ・シェファー、撮影はアレックス・トムソン、編集はスチュアート・ベアード、美術はデヴィッド・L・スナイダー、衣装はボブ・リングウッド、音楽はエリオット・ゴールデンサール。
出演はシルヴェスター・スタローン、ウェズリー・スナイプス、サンドラ・ブロック、ナイジェル・ホーソーン、ベンジャミン・ブラット、ボブ・ガントン、グレン・シャディックス、デニス・レアリー、ビル・コブス、トロイ・エヴァンス、アンドレ・グレゴリー、ジェシー・ヴェンチュラ、グランド・L・ブッシュ、スティーヴ・カーハン、チャールズ・グラス、ベン・ジュランド、ビリー・D・ルーカス、ライノ・マイケルズ、トシロー・オバタ、マーク・コルソン、パット・スキッパー、ドン・チャールズ・マクガヴァーン、ポール・ボーレン、ジョン・イーノス三世、ポール・ペリ他。


軽妙なSFアクションなのだが、それならスタローンはミスキャストだろう。
軽いアメリカン・ジョークとスタローンの組み合わせはあまりハマっているとは思えない。
だが、フェニックス役のウェズリー・スナイプスが動ける悪役としての魅力を持っているし、作品のノリは悪くない。

未来世界の設定や美術は、なかなか良く出来ていると思う。
「クソッ」とか「畜生」といった言葉を発すると罰金刑になる。壁に落書きをしただけでも凶悪犯罪とされるような世界。しかも、その落書きは機械によって瞬時に消去される。
警察の仕事といえば、汚い言葉を話した者を取り締まることぐらい。犯人を逮捕するのにも、コンピュータの指示に従わないと方法が分からない。
犯罪が無くなったことで対抗する能力を失い、凶悪犯罪を止めることができないというアイロニー。

カフェインも肉もチョコレートも、体に悪いということで禁止される。
挨拶で体を触れ合うことも無い。
キスやセックスも不潔な体液交換とされているので禁止。
完全にクリーンな世界を作り出したことで、人間が無機質になってしまうというアイロニー。

デニス・フレンドリーを中心とした、体に悪いとされることをやりたい人々は地下に潜って生活している。
彼らが望むことは普通のことだ。行き過ぎた浄化活動は、ほんの少し外れた人々を自分達の世界から追い払ってしまう。
シニカルなメッセージがそこにある。
そんなに深くはないけれど。

トイレットペーパーの代わりに貝殻を使用するなど、カルチャーショックによって引き起こされるギャグが散りばめられている。警察署に「リーサル・ウェポン」のポスターが貼ってあるなど、細かい部分でもユーモアが多く見られる。
自分の暴れっぷりを見て興奮したレニーナにセックスしようと言われ、嬉しそうにOKするスパルタン。
でも未来世界でのセックスは専用ヘルメットを装着して頭の中だけで行うというモノなので、期待が外れてドッチラケのスパルタン。
冷凍刑に処されている犯罪者には更正プログラムが埋め込まれ、釈放された時に役立つように最適の能力が備わるようになっている。
で、スパルタンに最適の能力は編み物と裁縫。
このようにマヌケなギャグが多いのだが、なんせスパルタン役がスタローンなので、イマイチの印象。

コクトーの行動がデタラメ。
自分の意図する世界に反抗的なデニスを殺すため、フェニックスにデニス殺害のプログラムを仕掛けるのだが、そんなことをしなくても殺害用の機械を作れば済むことだと思うが。わざわざフェニックスを利用しようとする意味が分からない。
そもそも、フェニックスが釈放されるかどうかは分からなかったわけで、もっと確実にデニスを殺せる方法を考えるのが普通。
しかも、フェニックスを自由にすれば、世界の秩序は大きく乱れる。それはコクトーが最も嫌うことのはず。
どうもコクトーの思想と行動が矛盾している。

スパルタンたちの生きていた時代と未来世界のギャップが、多く描かれる。
せっかくだから、クライマックスでもそのギャップを生かして欲しかった。
コクトーを最後まで生かしておいて、古い道具や不健康とされる物品が、彼を倒すために大きな役割を果たすような演出があっても良かったのでは。


第14回ゴールデン・ラズベリー賞(1993年)

ノミネート:最低助演女優賞[サンドラ・ブロック]

 

*ポンコツ映画愛護協会