『シティヒート』:1984、アメリカ

スピア警部と元警官の探偵マイク・マーフィーは、犬猿の仲。顔を合わせると、いつも悪口を言い合っている。マーフィーはスウィフトと共同で事務所を営んでいるが、自動車金融の連中への借金がある上、秘書のアディへの給与支払いが滞っている。
マーフィーの相棒スウィフトは、ギャングの頭領レオン・コルの税理士ストロッセルから、隠し帳簿を入手した。スウィフトは帳簿を使って、コルから5万ドル、彼と対立しているプリモ・ピットから2万5000ドルを手に入れようと企んだ。
ピットの一味はスウィフトを殺害するが、帳簿は見つからない。そこにスピアが駆け付け、現場からスウィフトの恋人ジニーは逃走した。スピアは、事件の捜査を開始した。一方、マーフィーはコルから、5万ドルで帳簿を探す仕事を引き受ける。だが、マーフィーはピットに恋人キャロラインを誘拐され、帳簿を探し出すよう脅迫される…。

監督はリチャード・ベンジャミン、原案はサム・O・ブラウン、脚本はサム・O・ブラウン&ジョセフ・C・スティンソン、製作はフリッツ・メインズ、撮影はニック・マクリーン、編集はジャクリーン・キャンバス、美術はエドワード・カーファグノ、衣装はノーマン・サリング、音楽はレニー・ニーハウス。
出演はクリント・イーストウッド、バート・レイノルズ、ジェーン・アレクサンダー、マデリーン・カーン、リップ・トーン、アイリーン・キャラ、リチャード・ラウンドトゥリー、トニー・ロー・ビアンコ、ウィリアム・サンダーソン、ニコラス・ワース、ロバート・ダヴィ、ジュード・ファレス、タブ・タッカー、ジェラルド・S・オローリン、ブルース・M・フィッシャー、アート・ラ・フラー他。


役者出身のリチャード・ベンジャミンが監督を務めた作品。スピアをクリント・イーストウッド、マーフィーをバート・レイノルズ、アディをジェーン・アレクサンダー、キャロラインをマデリーン・カーン、ピットをリップ・トーン、ジニーをアイリーン・キャラが演じている。
BGMはブギウギ・ピアノやスウィング・ピアノで、劇中歌はジョー・ウィリアムズ、アル・ジャロウ、アイリーン・キャラなどが歌っている。また、レニー・ニーハウス作曲の「Montage Blues」では、一部のピアノ演奏をイーストウッドが担当している。

当初は原案と脚本も担当したブレイク・エドワーズ監督がメガホンを執る予定だったが、途中降板した。そのため、クレジットもサム・O・ブラウンという変名になっている。
ブレイク・エドワーズが途中降板したのは、正解だったかもしれない。
ただし、たとえ彼が最後まで監督を務めても、それで面白くなったかどうかも疑問なのだが。

大きな疑問は、脚本や当初の監督がブレイク・エドワーズという時点で分かる人も多いだろうが、これがコメディー色の強い作品になっているということだ。
後半はともかく、前半などはアクションがほとんど無く、「アクション・コメディー」とすら呼べない状態だ。

クリント・イーストウッドとバート・レイノルズという、当時の人気アクション俳優の共演なのに、どうしてハードなアクション映画にしなかったのか。
『シティヒート』(原題も同じ)のタイトルが泣くぞ。もっとヒートしてくれ。
ブレイク・エドワーズの監督&脚本で2人を共演させるという企画の時点で、失敗しているのではないだろうか。

さて、コメディーとして面白いのかと問われると、これが全くダメ。
そのシーンやセリフが笑えるか笑えないかという以前に、笑わせようとしているポイントが少ない。オシャレなコメディーにしようとしたのかもしれないが、コメディーとして中途半端になっている。

大体、バート・レイノルズはコミカルな作品に色々と出演しているからまだ分かるが、イーストウッドにコメディ芝居は無理だろう。
ラジー賞候補になったのはレイノルズだが、むしろコメディーに乗り切れていないという意味では、イーストウッドの方がラジーかもしれない。レイノルズはコメディーに乗っかった分、損をしているような気もしないでもない。

奇妙なことに、レイノルズがピンのシーンではコミカルなタッチに、イーストウッドがピンのシーンではシリアスになる。
それぞれのパートが、完全に別物になっている。
だからなのか、両方を立てようとしているのだろうが、2人が噛み合っていないように見える。

いや、イーストウッドのシーンにも、コミカルなセリフなどがあって、コメディータッチにしようという意識はあるのだ。ただ、そのセリフは表情や態度が伴なってギャグとして成立するタイプのモノなので、仏頂面のイーストウッドが喋っても、笑わせようとするセリフに聞こえない。
チェヴィー・チェイスがマジ顔でヘンなことを言うのとは違うのだ。

当然のことながら、イーストウッドとレイノルズの共演が最大の売りなのだが、2人が共に行動するシーンが少ない。
せっかく共演させたのだから、そのことを生かしましょうよ。
大半が別行動では、コンビネーションの面白さが見せられないぞ。
ああ、だけど、終盤にスピアとマーフィーが2人で行動するシーンがあるけど、そんなに面白くないんだよなあ。
あと、終盤になって、アクションシーンが増えて、同時にコメディーらしさも強くなるけど、それまで寝ていたのかと思ってしまったよ。


第5回ゴールデン・ラズベリー賞

ノミネート:最低主演男優賞[バート・レイノルズ]
<*『キャノンボール2』『シティヒート』の2作でのノミネート>

 

*ポンコツ映画愛護協会