『12人のパパ2』:2005、アメリカ&カナダ

ロレインが高校の卒業式を迎え、両親のトムとケイトと子供たちは全員で出席した。トムはパーティーを開き、ロレインがファッション誌の編集部に仮採用されたことを語る。しかし彼はシカゴに残ってほしいと思っているため、ニューヨーク行きに反対する気持ちが言葉に滲み出た。妊娠中のノーラと共に出席した夫のバドは、新しい広告会社の副社長に迎えられてヒューストンー行くことを発表した。トムはベイカー家の恒例となっているタッチフットボールを楽しみにしていたが、チャーリーはカーショップの仕事へ行き、ロレインはベスの家で週末を過ごすために出発した。他の子供たちも興味を示さず、乗り気になったのはサラだけだった。
その夜、トムはロレインの前で、子供たちが変化したことへの寂しさを漏らした。ロレインが残して行ったアルバムを見た夫妻は、かつてウィスコンシン州で夏を過ごすのが毎年の恒例だったことについて話す。ベイカー家は7人の子供がいるマータフ家と労働記念日カップを争ったが、一度も勝ったことは無かった。トムはマータフ家の父であるジミーについて、「昔から勝つことが全てだった。そのためなら手段は選ばなかった」と忌々しげに語った。
トムはケイトに、「家族みんなで、また湖へ行こう」と提案する。ケイトは「ノーラは妊娠中だし、子供たちはサマーキャンプがある」と難色を示すが、トムは「これで最後かもしれないんだ」と訴える。翌朝、トムは子供たちを集め、レイク・ウィネトカの別荘で労働記念日を迎えようと告げる。子供たちは賛成し、ロレインも「ニューヨーク行きについてゴチャゴチャ言わないこと」という条件付きでOKした。用のあるロレインとチャーリーは後から合流することになり、他の面々は車でレイク・ウィネトカへ向かった。
一家がレイク・ウィネトカに到着すると、子供たちは別荘が小さくてボロボロになっていることにガッカリした。向こう岸にはコテージがあり、それとは雲泥の差だった。管理人のマイクが訪ねて来ると、トムは「この辺りも変わった」と言う。マイクは「ジミー・マータフのおかげさ。彼が周辺の土地を買い占めてる。あれが彼の別荘だ」と告げ、向こう岸のコテージを指差した。別荘にはモリネズミが住んでおり、トムは捕まえようとするが逃げられた。
ベイカー家はマイクからバーベキューに誘われ、彼が支配人を務める会員制クラブへ出掛けた。クラブには大勢の会員が来ており、トムはジミーに気付いて顔を背けた。しかし見つかってしまったため、愛想笑いで挨拶する。ジミーは若い元女優のサリーナと半年前に再婚しており、アン、カルヴィン、ダニエル、ベッキー、エリオット、ケネス、リサ&ロビンという7人の子供たちもクラブに来ていた。ジェイクとサラはエリオットと遭遇し、スケボーで一緒に遊ぶ。サラはエリオットに好意を抱き、嬉しそうな様子を見せた。
ジミーはトムから子供たちについて問われ、下の3人は私立の名門学校へ通っていること、カルヴィンはイェール大学へ行っていること、エリオットはスノボーのジュニア大会で優勝したこと、ハーバード大へ通うアンには事業を継いでもらう予定があることを語った。マークはケネスの悪戯に協力させられ、リュックに入れておいた花火に引火した。マークは慌ててリュックを投げるが、ゴムボートに落ちて爆発騒ぎになってしまった。
サリーナはベイカー家をコテージに誘い、ジミーは贅沢な設備が整っていることを子供たちに話す。子供たちは目を輝かせるが、トムは「家族の時間を大切にしたいから」と断った。翌朝、ロレインとチャーリーが到着し、一家は朝食を取る。トムが家族のレクリエーションを提案すると、ジェイクとサラは「エリオットとウェイクボートをする」と言う。他の子供たちも興味を示さなかったため、仕方なくトムは「じゃあレクリエーションは明日にしよう」と口にした。
ウェイクボードを楽しむ子供たちを見たトムはジミーへの対抗心を燃やし、別荘を修繕したり遊び道具を作ったりする。彼はテントを用意し、子供たちが嫌がるとケイトが「1日だけパパに付き合ってあげて」と説得した。ケネスはキャンプを羨ましがるが、ジミーが「こっちは豪華なフォンデュ・パーティーだ」と告げた。夜、トムは子供たちから「あっちは楽しそうだよ」と言われ、皆で歌うよう指示した。ジミーはベイカー家の歌声を聴くと、自分の子供たちに歌うよう促した。トムとジミーは互いに対抗心を燃やして子供たちに指示し、歌声はどんどん大きくなっていった。
次の朝、トムが痛む腰を押さえながらテントを出ると、子供たちは別荘に戻って一夜を過ごしていた。そこへジミーがウェイクボードで現れてコテージの食事会に誘うと、子供たちは大喜びした。ウェイクボードで去るジミーを見たサラが「かっこいい」と口にすると、トムは眉をしかめた。一家は豪華なコテージへ赴き、サラはエリオットから「ジェイクと一緒に、食事の前に水上ボートで遊ぼう」と誘われて喜んだ。ジミーは子供たちのトロフィーやメダルをトムに自慢し、「手綱を締めるべきだ」と子育てについて述べた。
チャーリーはアンの腰にあるタトゥーを見ており、そのことを指摘した。アンは動揺し、ジミーには内緒にしてほしいと頼んだ。トムはサラに、例の悪戯をジミーに仕掛けてほしいと頼んだ。サラはナイジェル&カイルと共に準備するが、ジミーが座るはずだった席にトムが座ってしまう。そのせいで愛犬はトムの股間に噛み付き、食事の席はメチャクチャになった。トムとジミーは犬に飛び掛かられ、湖へと転落してしまった。
別荘へ戻ったトムは、サラがエリオット&カルヴィンとウェイクボードで遊ぼうとすると「パパもやるぞ」と張り切る。しかし、いざ挑戦するとボードから落ち、ボートに引きずられて疲労困憊になった。チャーリーはアンと2人きりになり、互いの親や将来について語り合う。チャーリーはダウンタウンに住んでおり、シカゴ大学に通いながら奨学金を返すためにカーショップでアルバイトしていた。アンは自分がビジネスに向いていないと感じており、絵を描いていた。彼女はハーバードから地元の美大へ移りたいと考えていること、チャーリーは地元でカーショップを開きたいと思っていることを語った。
トムとケイト、ジミーとサリーナは、テニスコートで試合をする。女性陣は軽い遊びのつもりだったが、トムとジミーは妻を無視して本気で争った。ケネスはマークをゴルフカートに乗せて運転し、テニスコートに突っ込んだ。サラはギフトショッップでメイク道具を万引きし、従業員に発見された。ジミーはトムに、「君の子供たちは出来損ないだ。君が甘やかすからだ」と告げる。トムは「君の子供から悪影響を受けてる」と反論し、ジミーの子育ては間違っていると主張した。
ジミーは腹を立て、「私の子育てが間違っているかどうか試そう。労働記念カップで勝負しよう」と持ち掛けた。トムはケイトから彼と張り合わないよう注意されていたが、そんなことは完全に忘れて勝負を受けた。彼は別荘へ戻り、子供たちの特訓を開始する。子供たちが嫌がっても、鬼コーチと化したトムは容赦なく鍛える。そんな彼にケイトは、「子供たちの気持ちが離れていってる。特にサラのことを考えてあげて。あの子の初恋なのよ」と告げる…。

監督はアダム・シャンクマン、原作はフランク・バンカー・ギルブレスJr.&アーネスティン・ギルブレス・ケイリー、キャラクター創作はクレイグ・ティトリー、脚本はサム・ハーパー、製作はショーン・レヴィー&ベン・マイロン、製作総指揮はジェニファー・ギブゴット&アダム・シャンクマン&ギャレット・グラント、撮影はピーター・ジェームズ、美術はケーリー・ホワイト、編集はクリストファー・グリーンバリー&マシュー・カッセル、衣装はジョセフ・G・オーリシ、音楽はジョン・デブニー、音楽監修はバック・デイモン。
主演はスティーヴ・マーティン、共演はユージン・レヴィー、ボニー・ハント、ヒラリー・ダフ、トム・ウェリング、パイパー・ペラーボ、カーメン・エレクトラ、ジェイミー・キング、テイラー・ロートナー、アリソン・ストーナー、ジョナサン・ベネット、ジェイコブ・スミス、リリアナ・マミー、モーガン・ヨーク、ケヴィン・G・シュミット、フォレスト・ランディス、ブレント・キンズマン、シェーン・キンズマン、ブレイク・ウッドラフ、アレクサンダー・コンティー、メラニー・トネロ、ロビー・アメル、コートニー・フィッツパトリック、マディソン・フィッツパトリック、ショーン・ロバーツ、ウィリアム・コープランド、ピーター・ケレハン他。


2003年の映画『12人のパパ』の続編。
監督は前作のショーン・レヴィーから『ウォーク・トゥ・リメンバー』『女神が家(ウチ)にやってきた』のアダム・シャンクマンに交代。
前作では他の2人と共同で脚本を担当していたサム・ハーパーが、今回は単独で執筆している。
トム役のスティーヴ・マーティン、ケイト役のボニー・ハント、ロレイン役のヒラリー・ダフ、チャーリー役のトム・ウェリング、ノーラ役のパイパー・ペラーボなど、ベイカー家の面々は前作から続投。他に、ジミーをユージーン・レヴィー、サリーナをカーメン・エレクトラ、アンをジェイミー・キング、エリオットをテイラー・ロートナー、バドをジョナサン・ベネットが演じている。

1作目のオリジナル版である『一ダースなら安くなる』や原作小説にも続編があるが、それとは全く関係が無い。オリジナル版の続編である『続 一ダースなら安くなる』や原作の続編では父親が死んだ後の物語が展開されるが、このリメイク版はオリジナルの内容となっている。
前作を見ていると最初に困惑するのが、ノーラがバドと結婚して妊娠していること。
前作では新人俳優のハンクと交際していたが、終盤に愛想を尽かしていた。だからハンクが出て来ないのは当然なのだが、ノーラは他の男と結婚して妊娠している設定で、しかもバドは当たり前のように登場するのよね。
まるで「前作から登場していましたけど」みたいな感じなのよ。
「広告会社の副社長に迎えられて」と彼は言うけど、そもそも今までの仕事を知らないっての。

バドの存在よりも遥かに違和感が強いのは、ベイカー家の面々のキャラクター造形だ。
前作を無かったことにしたいのか、それとも前作の内容を完全に忘れているのかと思うぐらい、まるで別人のようになっている。
トムはやたらと文句の多い、身勝手な父親になっている。序盤からロレインのニューヨーク行きに対し、分かりやすい嫌味を口にする。タッチフットボールのことでも、露骨に不満を示している。
だけど前作のトムは、子供たちが身勝手な行動を取ったり指示に従わなかったりしても、簡単には文句を言ったり不満を漏らしたりしていなかった。余程のことが無い限り、穏やかで寛容に受け入れていたのだ。ハンクの存在は快く思っていなかったようだが、それでも本人の前で態度に出すことは無かった。

また、前作のトムは、自分のエゴを押し通そうとはしなかった。常に家族を優先しようと努めており、そのために自分を犠牲にすることも平気だった。
母校のヘッドコーチを引き受けて子供たちと共にイリノイへ引っ越すのも、「それが昔からの夢だったから」という理由があった。それまで子供たちを優先していた彼が、初めて主張した自分のための要求だったのだ。
それが今回は、「自分が寂しいから」というだけの理由で、勝手に別荘行きを決めている。
ノーラの妊娠や子供たちのサマースクールがあっても、お構い無しだ。

トムのジミーに対する嫉妬心や競争心も、「そんなキャラじゃなかったはずでしょ」と言いたくなる。
そういう類の対抗心や嫌悪感を抱くような性格は、前作だと全く感じられなかった。上品ぶっている向かいの夫人と接した時も、まるで気にする様子など無かった。金持ちや成功者に対する嫉妬心とか、張り合おうとして子供たちまで巻き込む横暴さとか、そんなのは全く無かった。
今回のトムは、後半に入ると鬼コーチに変貌し、嫌がる子供たちに特訓を強いる傲慢さを見せる。
もう完全に前作とは別人じゃねえか。

前作では、トムに何の落ち度も無いため、「子供たちがワガママばかり言ってトムの夢を邪魔する」という状態にしか見えず、子供たちに全く同情できないという問題が生じていた。
今回の話ではトムが身勝手なので、子供たちは可哀想だと言える。
だけど今回の話だと、トムの身勝手さなんて全く要らないのよ。
前作で持ち込んだ方が良かったんじゃないかという要素を、今さら入れてどうすんのよ。前作のトムが「寛容で優しいパパ」だったんだから、そのままでいいでしょ。

子供たちが別荘行きに喜んで賛成するのも、前作で引っ越しを嫌がっていたことを考えると違和感を拭えない。自分たちの予定もあっただろうに、それは別にいいのかと。
それに、恒例のタッチフットは断っているので、この映画だけを取っても、そこは安易な御都合主義というか、整合性の問題を感じるぞ。
そのくせ別荘に到着してからは「小さくてボロボロ」と文句を言ったり、マータフ家のコテージや遊びに浮かれてベイカー家に不満を漏らすとか、そういう描写が続くんだよね。
だったら「別荘に来ること自体を嫌がっていた」という設定にしておけば良かったんじゃないかと。

前作が良く出来ていたとか、面白い内容だったとか、そんなことは全く思わない。
だけど、キャラをここまで大きく変えちゃうのはダメでしょ。
っていうか、ワシの評価はともかく、前作はアメリカで大ヒットを記録しているのよ。だったら、前作のテイストは引き継いだ方がいいはずでしょ。
前作では「自由奔放な子供たちに苦労しながらも仕事と家庭を両立しようと奮闘するパパ」ってのを描いていたわけで、なんで今回は「成功した男へのライバル心を激しく燃やして張り合うパパ」という全くベクトルの違う話にしちゃったのか。

トムの身勝手な特訓が続く中、サラはエリオットから映画に誘われる。サラが思い切って「今夜、エリオットと映画に行ってもいい?」と訊くと、トムは少し考えてから笑顔で「行ってもいいぞ」と告げる。サラはロレインにメイクしてもらい、いつもと全く違う女の子っぽい格好に変身する。
家族が出掛ける彼女を温かく見送る辺りまでは、穏やかで心地良い雰囲気になる。
だが、それも長くは続かない。
トムが映画館へ密かに様子を見に行き、同じことを考えていたジミーと遭遇して喧嘩が勃発する。

トムに腹を立てた子供たちはナイジェルとカイルを除き、労働記念カップへの参加を拒む。トムはサラに謝っていないし、それは当然の判断だろう。
今回のトムは、まるで同情の余地が無い。いっそのこと、労働記念カップをやらずに「トムが子供たちに謝罪して」という形で話をまとめてもいいんじゃないかと思うぐらいだ。
ところがケイトが以前に労働記念カップで使ったチームフラッグを発見し、子供たちに「パパはこの思い出の中にいたいのね。だからムキになってる。だけど1つだけ確かなのは、パパが何を言おうと、パパのチームは貴方たちよ」と告げると、子供たちは労働記念カップへの参加を決めるのだ。
いやいや、そんなケイトの言葉だけで、トムの自己中心的な行動を正当化しちゃったらダメだろ。

労働記念カップのシーンに入ると、他にも複数の家族が参加していることが初めて明らかになる。で、決勝のカヌーレースは全員参加が義務付けられていると分かり、トムはノーラが臨月なので何とかしてほしいと訴える。
ジミーは「棄権するしかないようだな」とニヤニヤしながら言い、トムが棄権を決めると勝ち誇った態度を取る。
だけど、そこまでジミーをクズな奴にするのは賛同しかねる。
最終的に彼を善玉へターンさせるなら、その辺りでもう少し人間味を出させた方がいい。

参加を決めたノーラがレース中に産気付いてベイカー家が慌て始めても、ジミーはカヌーを漕いで勝利を目指そうとする。子供たちは幻滅してベイカー家の手伝いに向かい、サリーナに説教されたジミーはようやく態度を改める。
でも、それだとタイミングが遅すぎるのよね。
「カヌーレースの途中で産気付く」という展開を用意したかったんだろうけど、そんなに盛り上がるわけでもないぞ。
そもそも労働記念カップってダイジェストで簡単に処理されているし、クライマックスとして配置するほどの価値を見出せないよ。

(観賞日:2018年1月5日)


第26回ゴールデン・ラズベリー賞(2005年)

ノミネート:最低主演女優賞[ヒラリー・ダフ]
<*『12人のパパ2』『パーフェクト・マン ウソからはじまる運命の恋』の2作でのノミネート>
ノミネート:最低助演男優賞[ユージーン・レヴィー]
<*『12人のパパ2』『デトロイト・コップ・シティ』の2作でのノミネート>


第28回スティンカーズ最悪映画賞(2005年)

ノミネート:【最悪な子供の集団】部門

 

*ポンコツ映画愛護協会