『チェーン・リアクション』:1996、アメリカ

シカゴ大学のバークレー教授はプロジェクトを立ち上げ、水素を使ったクリーンな新エネルギーの開発を進めていた。エンジニアのエディ・カサノヴィッチも、そのプロジェクトに参加している。しかし、水素エネルギーの発生装置はなかなか安定しない。
しかし、ついにエディが水素の分解を安定させる周波数を突き止める。スポンサーであるムーア財団のポール・シャノンも見守る中で、プロジェクトチームは水素エネルギーの開発に成功した。打ち上げパーティーが行われた後、エディは同僚の物理学者リリー・シンクレアを自宅まで送り届ける。
再び研究所に戻ったエディは、バークレー教授の他殺体を発見する。その直後、研究所は爆破される。捜査に乗り出したFBIは、行方不明の共同研究者ドクター・チェンに容疑の目を向ける。リリーの自宅にはチェンからのFAXが届くが、彼女は送信者がチェンではないことに気付く。
FBIの捜査官フォードとドイルはエディの自宅を捜索し、衛星を使った送信機や25万ドルを発見。CIAはチェンがスパイだと考えており、エディとリリーは彼と結び付いた事件の容疑者とされてしまう。エディはリリーと共に逃亡する中で、信頼していたシャノンが犯人の一味だと知る…。

監督はアンドリュー・デイヴィス、原案はアーン・L・シュミット&リック・シューマン&ジョシュ・フリードマン、脚本はJ・F・ロートン&マイケル・ボートマン、製作はアーン・L・シュミット&アンドリュー・デイヴィス、製作総指揮はリチャード・D・ザナック&アーウィン・ストッフ、撮影はフランク・タイディ、編集はドン・ブロチュー&ドヴ・ホーニッグ&マーク・シュミット&アーサー・シュミット、美術はメイハー・アーマッド、衣装はジョディ・ティレン、音楽はジェリー・ゴールドスミス。
出演はキアヌ・リーヴス、モーガン・フリーマン、レイチェル・ワイズ、フレッド・ウォード、ケヴィン・ダン、ブライアン・コックス、ジョアンナ・キャシディ、チェルシー・ロス、ニコラス・ラダル、マ・ツィー、クリストフ・ピエチェンスキー、ジュリー・R・パール、ゴッドフレイ・ダンチマー、ジーン・バージ、ネイサン・デイヴィス、アーロン・ウィリアムズ、ダニエル・H・フリードマン、ジョニー・リー・ダヴェンポート他。


キアヌ・リーヴスが『スピード2』のオファーを蹴って出演したアクション映画。『スピード2』を蹴ったのは正解かもしれないが、この作品に出演したのは失敗だろう。
シャノンをモーガン・フリーマン、リリーをレイチェル・ワイズ、フォードをフレッド・ウォードが演じている。

ちょっぴり太めのキアヌ・リーヴスは、モッサりした衣装でさらに着膨れしてしまい、長く伸びた髪の毛も手伝って不潔で愚鈍な印象を観客に与える。
そんなキアヌがドタドタと走り、バタバタと逃げる。
主人公のドタバタした動きが、アクションの迫力を減少させる効果を生んでいる。

エディはシャノンが味方だと考えて連絡を取るが、その時点で既に、観客はシャノンが犯人の一味だということを知らされている。
だから、エディが考えの足りないバカにしか見えない。
いや、実際に彼はバカなのだ。
思慮深さに欠ける行動を繰り返し、自らピンチを招くのだ。

FBIのポジションは曖昧だ。
エディを容疑者として追い掛けているのだが、一方で犯人グループにも疑いの目を向けている。そして、どちらの味方というわけでもない。
FBIは終盤になって急に、「エディは無実だ」と言い出す。しかし、だからといってエディを助けるような動きを見せるわけでもない。何がしたいんだ、お前らは。

シャノンのポジションも曖昧だ。
彼は犯人グループの一味(しかもボス格)だが、相棒のコリアと対立したりする。
エディの味方というわけでもなく、しかし抹殺しようとはしない。
最初から最後まで、彼はグレーなポジションを貫き通す。
そして、中途半端なポジションのまま、逃げ延びてしまう。

リリーは終盤にコリア達に連れ去られるぐらいしか存在価値が無く、「主人公のロマンスの相手」という薄っぺらいポジションから抜け出せない。
シャノンの相棒コリアは衝動的な行動で話をややこしくするが、決して面白くすることは無いし、エディとの対決という図式もボンヤリしている。

この作品はたぶん、「国家クラスの陰謀が渦巻く、スケールの大きいアクション映画」として作られているのだろう。
しかし実際は、まるでジェリー・マリガンによるビッグ・バンドのアレンジのように、この映画はスケール感を抑えようとしているかのように見える。


第17回ゴールデン・ラズベリー賞

ノミネート:最低主演男優賞[キアヌ・リーヴス]

 

*ポンコツ映画愛護協会