『ダーティ・ボーイズ』:1996、アメリカ

ロック・キーツは、チンピラのアーチー・モーゼスとコンビを組んで車の窃盗に精を出している。ロックが金に困っていることを知ったアーチーは、自分が麻薬組織の大物フランク・コルトンの仕事を請け負っていることを話し、仲間に加わるよう誘った。アーチーはロックを信用し、他の誰にも言わない秘密も彼になら打ち明けていた。
ところが、ロックはジャック・カーターという名の潜入捜査官だった。彼はコルトンを逮捕するため、1年前からアーチーに近付き、チャンスを待っていたのだ。ジャックはアーチーと共に麻薬取引現場へ出向くが、盗聴器が見つかってしまい、待機していたジェンセン署長らが慌てて突入する。アーチーは誤ってジャックを撃ってしまい、その場から逃走する。
頭を撃たれたジャックは、医学療法士トレイシーの協力でリハビリに励み、現場に復帰した。一方、コルトンに命を狙われたアーチーは行方不明になっていたが、アリゾナで泥酔して車に寝ていたところを逮捕された。ジャックはジェンセンと麻薬取締局のフィンチから、アーチーが検察側の証人になることを聞かされた。
アーチーはロサンゼルスまでの護送役として、ジャックを指名した。しかしジャックはアーチーが故意に自分を撃ったと思い込んでおり、敵対心を露にする。一方、アーチーも信用していたジャックに裏切られ、腹立たしさを感じていた。言い争いながらもロサンゼルス行きの専用機に乗り込もうとする2人だが、飛行場にコルトンの手下達がやって来る。
襲撃を受けたジャックとアーチーは飛行機で脱出するがタンクを撃たれて不時着し、歩いてロサンゼルスまで向かうことになる。チャールズのロッジに到着したジャックは、ジェンセンとフィンチに連絡を入れる。だが、ロッジにコルトンの手下達が現れたため、慌てて脱出する。ジャックはFBIのジェントリーとコールに連絡するが、彼らもコルトンの仲間だった…。

監督はアーネスト・ディッカーソン、原案はジョー・ゲイトン、脚本はジョー・ゲイトン&ルイス・コリック、製作はロバート・シモンズ、製作協力はアイラ・シューマン&ジャック・ジアラプト、製作協力はジャニーン・シャーマン、製作総指揮はバーニー・ブリルスタイン&サンディ・ワーウィック&エリック・L・ゴールド、撮影はスティーヴン・バーンスタイン、編集はジョージ・フォルシーJr.、美術はペリー・アンデリン・ブレイク&ウィリアム・F・マシューズ、衣装はマリー・フランス、音楽はエルマー・バーンスタイン、音楽監修はマイケル・ディルベック。
出演はデイモン・ウェイアンズ、アダム・サンドラー、ジェームズ・カーン、ジェームズ・ファレンティノ、クリステン・ウィルソン、ビル・ナン、ラリー・マッコイ、ザンダー・バークレイ、サル・ランディー、ジープ・スウェンソン、アレン・コヴァート、マーク・ロバーツ、モニカ・ポッター、デヴィッド・ラビオサ、マーク・カセラ、アンドリュー・シェイファー、ジョナサン・ラフラン、スティーヴ・ホワイト、グウェン・マッギー他。


撮影監督出身のアーネスト・ディッカーソンがメガホンを執った作品。
ジャックをデイモン・ウェイアンズ、アーチーをアダム・サンドラー、コルトンをジェームズ・カーン、ジェンセンをジェームズ・ファレンティノ、トレイシーをクリステン・ウィルソン、フィンチをビル・ナン、ジェントリーをザンダー・バークレイ、コールをサル・ランディーが演じている。また、バイカーの女役で、モニカ・ポッターが映画初出演を果たしている。
『ダーティ・ボーイズ/コップと泥棒』という別タイトルもある。

強面でイカついデイモン・ウェイアンズが刑事役、おとぼけフェイスのアダム・サンドラーがチンピラ役なのだが、これは逆の方が良かったように思う。腕っ節の強い男が似合うのも、実際に劇中で腕っ節の強い役を演じるのもデイモン・ウェイアンズであり、そちらが悪党サイドを演じた方(つまり主人公は弱い方が)、コメディーとしてはフィットしたと思うのだ。
しかしながら、この映画、実はアクション色が非常に強い作品なので、そういう意味では配役としては適していると言える。ただし『イン・リヴィング・カラー』出身のデイモン・ウェイアンズと『サタデーナイト・ライヴ』出身のアダム・サンドラーを共演させておきながら、なぜアクション色の強い映画を作ってしまうのか、それが良く分からない。

一応は「アクション・コメディー」になるのだろうが、笑いは薄い。
例えば取引現場で、アーチーが取引相手リゴに「こいつは刑事じゃない」と言ってジャックのシャツをめくると、盗聴器が仕掛けてあるというシーン。これ、コメディーとして考えれば、完全に「使える」ポイントである。しかし、そこにギャグ演出は見られない。

全くコメディーとしての体裁を放棄しているわけではなくて、例えばアーチーが犬を人質(ではなく犬質か)にして逃亡を図るなど、ギャグもあることはある。ただし、その直後には、すぐにアクション映画のテイストに戻る。特にデイモン・ウェイアンズの芝居は、完全に普通のアクション俳優としてのそれである。
つまり、この映画はコメディアン2人の共演ではなく、アクション俳優とコメディー俳優の組み合わせのような作りになっているのだ。

さらにメイン2人の掛け合いからも、笑いが生み出される気配は無い。そもそもケンケンガクガク、敵対心たっぷりで言い争うという関係性からして、どうも笑いが生まれそうにない。例えばアーチーを天然でヘマを繰り返すキャラや能天気でお調子者キャラにするなど、少なくとも両方が攻撃的ってのは避けた方が良かったように思うが。

コメディーとしては頼みの綱であるアダム・サンドラーが、たまにギャグをカマそうとするのだが、その大半はデイモン・ウェイアンズではなく、チョイ役のサブキャラに向けられたモノ。オドオドした根暗キャラからクレイジーに豹変するチャールズとか、酔っ払って仰向けに気絶するブサイク犬とか、そういうチョイ役の方がコメディーとしては完全に勝っている。


第17回ゴールデン・ラズベリー賞

ノミネート:最低主演男優賞[アダム・サンドラー]
<*『ダーティ・ボーイズ』『俺は飛ばし屋プロゴルファー・ギル』の2作でのノミネート>


第19回スティンカーズ最悪映画賞

ノミネート:【最悪の助演男優】部門[ジェームズ・カーン]

 

*ポンコツ映画愛護協会