『トゥー・デイズ』:1996、アメリカ

ロサンゼルスのサン・フェルナンド・ヴァレー。殺し屋リーは、元殺し屋ダズモと組んで、オリンピックで連続4位のスキー選手ベッキー宅に侵入する。リーはベッキーを注射で眠らせ、同じベッドにいた彼女の前夫ロイを射殺した。
部屋を後にしたリーは、ダズモを狙撃して車ごと爆死させようとする。リーは車の爆発を見届け、密かに手を組んでいたロイの愛人ヘルガと共に立ち去った。しかし、防弾チョッキを着けていたダズモは生きており、美術商アランの屋敷に転がり込んだ。
腎臓結石に苦しむアランと秘書スーザンは、ダズモに拳銃で脅される。しかしダズモはスーザンと意気投合し、彼女に横柄な態度を取るアランを怒鳴り付ける。一方、家賃滞納で大家に追い出された元脚本家兼監督のテディーは自殺を図るが、アランの異母姉で看護婦オードリーと知り合い、成り行きで彼女の車に同乗することになった。
売春捜査課のウェスと同僚アルヴィンは、ロイの返り血を浴びて飛び出して来たベッキーを保護した。殺人事件の捜査に意気込むウェスに対し、さっきまで風俗店を潰すことに燃えていたアルヴィンは消極的だ。実はアルヴィンは、解雇されることが決まっていた。
ウェスはベッキーの証言に疑問を抱き、犯人の仲間ではないかと推理する。ベッキーは警察の事情聴取を終えた後、ヘルガの車で立ち去る。ベッキーもリーやヘルガとグルで、全ては保険金目当ての計画的犯行だったのだ。リーが金庫にある金を取りに行った後、女2人は仲間割れし、ベッキーがヘルガの腹を撃って逃走する。
ダズモは、アランの看病に訪れたオードリーと同行したテディーも人質にする。彼は動くことを拒むアランを気絶させた後、残る3人を連れて車で屋敷を後にした。一方、リーはベッキー邸を調べていた刑事クレイトンとカーラを射殺し、訪れたウェスも殺そうとする。ヘルガが姿を見せたため、リーはウェスを気絶させ、先に彼女を始末しようとする…。

監督&脚本はジョン・ハーツフェルド、製作はジェフ・ウォルド&ハーブ・ナナス、共同製作はジム・バーク、製作協力はミンディー・マリン&テリー・ミラー、製作総指揮はキース・サンプルズ&トニー・アマテューロ、撮影はオリヴァー・ウッド、編集はジム・ミラー&ウェイン・ワーマン、美術はキャサリン・ハードウィック、衣装はベッツィー・ヘイマン、音楽はアンソニー・マリネリ。
出演はジェームズ・スペイダー、ダニー・アイエロ、エリック・ストルツ、ポール・マザースキー、グレン・ヘドリー、マーシャ・メイソン、テリー・ハッチャー、グレッグ・クラットウェル、ジェフ・ダニエルズ、シャーリーズ・セロン、ピーター・ホートン、キース・キャラダイン、ルイーズ・フレッチャー、オースティン・ペンドルトン、キャスリーン・ルオン、マイケル・ジェイ・ホワイト、クレス・ウィリアムズ他。


『セカンド・チャンス』のジョン・ハーツフェルドが監督と脚本を務めた作品。
リーをジェームズ・スペイダー、ダズモをダニー・アイエロ、ウェスをエリック・ストルツ、テディーをポール・マザースキー、スーザンをグレン・ヘドリー、オードリーをマーシャ・メイソン、ベッキーをテリー・ハッチャー、アランをグレッグ・クラットウェルが演じている。
さらに、アルヴィンをジェフ・ダニエルズ、ヘルガをシャーリーズ・セロン(クレジットされる最初の作品)、ロイをピーター・ホートンが演じている。他に、クレイトンをキース・キャラダイン、テディーの大家をルイーズ・フレッチャー、テディーに嫌味を言う元俳優ラルフをオースティン・ペンドルトン、アランを助けるオカマをマイケル・ジェイ・ホワイトが演じている。

配役だけを並べてみると、かなり面白くなりそうな期待が持てる。しかしながら、配役を生かすだけのモノが作品に備わっていない。ジョン・ハーツフェルドのフィルモグラフィーを調べると、前述した『セカンド・チャンス』の監督&脚本の他、『タービュランス/乱気流』などがある。まあ、そういう辺りから「推して知るべし」ということだろう。
ジェームズ・スペイダーは、いい感じで不気味な雰囲気を漂わせる役者になった。リーが唯一、完全無欠の悪党である。他の奴らは、悪党でも抜けた部分があったり、それ以外では同情を誘う奴がいたり、悲哀を感じさせる奴がいたりする。

リーはシリアスで冷酷な殺人者なのだが、ダズモはズラを被っていたり、犬が嫌いだったりと、ユーモラスな面を見せる。中盤以降はともかく、ダズモがアランやスーザンと絡み始めた辺りは、ちょっとコミカルな犯罪映画の匂いさえする。
それだけでなく、ダズモの方にはアランやスーザンなど、コミカルな方向に持って行けそうな設定のキャラクターが揃っている。一方のリーのサイドは、ベッキーにしろ、ヘルガにしろ、完全にシリアスモードを守るしかないキャラクターである。

で、ダズモの物語とリーの物語を繋ぎ合わせると、一方がユーモラス、もう一方は完全にシリアスなサスペンスで、そこの収まりが悪い。わざとテイストを違うモノにして、コントラストを出す狙いでもあったのだろうか。だとしても、それは外していると思う。
自殺願望の奴がいたり、クビ宣告で荒れている奴がいたり、風俗店の女に惹かれる奴がいたり、逃亡を図る奴がいたり、金のために冷酷な行動を取り続ける奴がいたり、色んな奴がいる。映画で用いられる様々な要素を各人に持たせようとしているようにも思える。

しかし欲張りすぎたのか、群像ドラマが上手く噛み合わない。あまりに色んなことを詰め込んだ結果、肝心の「保険金狙いの殺人事件を巡る人間模様」という構造が浮かび上がらなくなる。中心に位置しているはずの保険金の事件が、太い幹にならない。
「バラバラだった人々が関わり合い、そこで新たな発見や意外な展開が待ち受けている」というのが、この映画の構成が発揮すべき面白さだろうと思う。しかし残念ながら、人々が交差したり関わり合ったりしても、そんなに話が面白くなっているとは思えない。

実は事件に絡む主要キャラクターよりも、チョイ役に面白そうな匂いを感じてしまう。序盤で路上に倒れたアランを助けるオカマのバックとか、風俗店で働く日本とベトナムのハーフ女性ミドリとか、アルヴィンに怒られる隣人の下手なゴルファーとか。
クビ宣告の後で子供にプレゼントを用意していたアルヴィンや、ウェスとミドリの恋の予感など、放り出されたまま終わっている要素が幾つかある。それはメインの物語ではないのだが、そこに印象的なモノがあるので、「それを捨てちゃうの?」と思ってしまう。


第17回ゴールデン・ラズベリー賞

ノミネート:最低助演女優賞[テリー・ハッチャー]
<*『ヘブンズ・プリズナー』『トゥー・デイズ』の2作でのノミネート>

 

*ポンコツ映画愛護協会