『ウィロー』:1988、アメリカ

悪の女王バヴモルダは、体に印を持つ特別な赤ん坊に殺されるという予言を恐れていた。彼女は誕生したダイキニ族の赤ん坊を殺そうとするが、乳母によって川に流された。赤ん坊は、魔法使いを目指すネルウィン族のウィローによって拾われた。村の魔術師オールドウィンはウィローに対し、その特別な赤ん坊をダイキニ族に探すための旅に出掛けるよう告げた。
ウィローは妻カーヤと子供達を残し、友人ミゴッシュ、屈強なヴォンカーや意地悪なバーグルカット達と共に村を出た。オールドウィンは彼らに、最初に出会ったダイキニ族に赤ん坊を渡すよう指示していた。森を抜けたところで、一行は宙吊りの檻に入れられたダイキニ族のマッドマーティガンに出会った。彼は、檻から出してくれれば赤ん坊を引き取ると告げた。
バーグルカットはマッドマーティガンに赤ん坊を渡すよう告げるが、ウィローは同意できなかった。結局、ウィローとミゴッシュを残して、他の面々は立ち去ってしまった。ウィローは通り掛ったギャラドーン王国の戦士エアクに赤ん坊を渡そうとするが、戦地に赴く途中だったため拒否された。仕方なく、ウィローは赤ん坊をマッドマーティガンに預けることにした。
ウィローとミゴッシュはマッドマーティガンと別れて村へ戻ろうとするが、ブラウニー族が赤ん坊を連れ去る様子を目撃してしまう。さらには、ウィローとミゴッシュも捕まってしまった。そこへ妖精の女王シャーリンドリアが現われ、特別な赤ん坊の名前がエローラであること、ウィローが彼女を守るために選ばれた存在であることを告げた。
シャーリンドリアはウィローに、魔女フィン・ラゼルに会って協力を求め、エローラを安全な場所であるティル・アスリーンへ連れて行くよう告げた。ウィローはミゴッシュと別れ、ブラウニー族のフランジーンとルールの案内で、フィン・ラゼルがバヴモルダに追放された湖へと向かうことにした。一方、バヴモルダは娘ソーシャとケイル将軍に、エローラ捜索を命じていた。
宿に立ち寄ったウィロー達は、そこでマッドマーティガンと再会した。そこへソーシャの軍隊が現れたため、ウィロー達は宿から逃亡する。一行は湖に到着し、そこでマッドマーディガンは立ち去った。ウィローは、フクロネズミに姿を変えられたフィン・ラゼルに会った。そこへマッドマーディガンを捕虜にしたケイル将軍が現れ、ウィロー達は捕まってしまう。
ウィロー達は雪山へ連行されるが、隙を見て逃亡を図る。ブラウニー族の惚れ薬を吸ったマッドマーティガンがソーシャに熱烈なアタックをするというトラブルはあったが、一行は何とか脱出に成功した。やがて彼らはティル・アスリーンに到着するが、トロールによって荒らされた後だった。そこへソーシャやケイルの軍勢が現れ、ウィロー達はエローラを奪われてしまう…。

監督はロン・ハワード、原案&製作総指揮はジョージ・ルーカス、脚本はボブ・ドルマン、製作はナイジェル・ウール、製作協力はジョー・ジョンストン、撮影はエイドリアン・ビドル、編集はダニエル・ハンリー&マイケル・ヒル、美術はアラン・キャメロン、衣装はバーバラ・レイン、視覚効果はマイケル・マカリスター&デニス・ミューレン&フィル・ティペット、特殊効果監修はジョン・リチャードソン、音楽はジェームズ・ホーナー。
出演はヴァル・キルマー、ジョアンヌ・ウォーリー、ワーウィック・デイヴィス、ジーン・マーシュ、ビリー・バーティー、パトリシア・ヘイズ、ギャヴァン・オハーリヒー、フィル・フォンダカロ、パット・ローチ、リック・オーヴァートン、ケヴィン・ポラック、デヴィッド・スタインバーグ、トニー・コックス、ロバート・ギリブランド、マーク・ノースオーヴァー、マリア・ホルヴォー、ジュリー・ピータース、マーク・ヴァンデ・ブレイク、ドーン・ダウニング、マイケル・コッターヒル他。


ジョージ・ルーカスが原案と製作総指揮を担当した作品。
マッドマーティガンをヴァル・キルマー、ソーシャをジョアンヌ・ウォーリー、ウィローをワーウィック・デイヴィス、バヴモルダをジーン・マーシュ、オールドウィンをビリー・バーティー、フィン・ラゼルをパトリシア・ヘイズ、エアクをギャヴァン・オハーリヒー、ケイルをパット・ローチが演じている。

クレジットされる順番は最初がヴァル・キルマー、次がジョアンヌ・ウォーリーだが、タイトルが示す通り、主役はウィロー、つまりワーウィック・デイヴィスだ。
つまり、これはビッグ・バジェットのメジャー映画としては(インディーズを含めてもそうだろうが)非常に珍しい、小人俳優を主役に据えた映画なのだ。

キャラクターとして小人が主役というのなら、『ロード・オブ・ザ・リング』のイライジャ・ウッドもそうだ。しかし、彼自身は小人ではない。小人(ホビット)を演じたというだけだ。
それに対して、この映画ではネルウィン族(明らかにホビットを意識した種族だ)が小人というだけでなく、それを演じるワーウィック・デイヴィスも実際に小人なのだ。
そして、出演している小人俳優はワーウィック・デイヴィスだけではない。ネルウィン族の面々は、全て本物の小人が演じている(その中には『スター・ウォーズ』でR2−D2を演じたケニー・ベイカーもいる)。正確な数字は分からないが、100人ぐらいいるんじゃないだろうか。
「フリークスを描く」というテーマを持たない作品で、ここまで多くの小人が登場する映画というのは他に無いかもしれない。

さて、物語について書いていこう。
序盤、オールドウィンはエローラの処置を決めるに際して「骨で占う」と言うが、骨を投げた後で「何も出ない」と告げる。ウィロー達が旅に出る時には石を投げて鳥に変え、「あの鳥に付いていけ」と言うが、鳥は村に戻ってしまい、仕方なく「川を下っていけ」と言う。
偉い魔術師らしいが、映画を見る限りは単なる役立たずのジジイである。

オールドウィンは「それは特別な赤ん坊だ」と言うのだが、ウィローに出す指示は「最初に会ったダイキニに渡せ」というもの。最初に会ったダイキニに渡して、それでどうなるのかは全く教えてくれない。
結局、オールドウィンの指示というのは、バーグルカットの「厄介だから返してしまえ」という意見と大して変わらないようにも思えるが、気のせいだろうか。

フランジーンとルールは、無駄口を叩いたり、ケンカを始めたり、惚れ薬を吸って猫に惚れたり、ビール樽に入って酔っ払ったりと、完全にコメディー・リリーフに徹しており、最後まで何の役にも立たない。
お笑い担当は、彼らだけではない。マッドマーティガンも、赤ん坊を奪われた後に探そうともせず人妻と浮気していたり、女に化けてオカマ芝居をしたり、とにかく映画全体として、必要以上にコミカル路線に走ろうとする。
理由は不明だが、どうしてもマジなヒロイック・ファンタジーにしたくないらしい。

ソーシャに見つかって宿から逃亡した後、マッドマーティガンは「湖までは同行する」と言う。しかし、湖までの道中で何かあるのかというと、特に何も無いまま湖に到着してしまう。。そして湖に到着すると、彼はウィローと別れて立ち去る。
だったら、宿から逃亡した後、すぐにウィローと別れても大して変わらないようにも思えるが、気のせいだろうか。

惚れ薬を吸ったマッドマーティガンは、その直後に目にしたウィローやフランジーン達には惚れず、しばらく経ってから会ったソーシャに惚れる。
確かルールが惚れ薬を吸った時は、その直後に見た猫に惚れていたはずなのだが。
ひょっとすると、マッドマーティガンは体が大きいので効果が出るのが遅かったのだろうか。
その辺りは、劇中での説明が無いので良く分からないが。

で、その逃亡シークエンスでも、マッドマーティガンがソーシャにアタックし、なぜかソーシャも簡単に受け入れそうになるというユルいコメディー路線を選ぶ。
その後の激しい戦闘シーンでさえ、「マッドマーティガンと敵の兵士達が、一緒になってモンスターから逃げ出し、しばらく経って並んでいることに気付く」という、やはりコミカルなところを見せている。

ウィローは魔法の修行など全く積んでいないのに、魔法の杖を用いて幾つかの魔術を披露する。しまいには、フィン・ラゼルを人間の姿に変える魔法まで使う(そんな凄い魔法が使えるのなら、バヴモルダはともかく、他の連中は倒せるような気もするが)。
ソーシャは、さしたる恋愛ドラマがあったわけでもないのに簡単にマッドマーティガンに惚れて、さっきまで敵だったのに急に寝返る。

マッドマーティガン達は、そんな時間があったとは思えないが、トンネルを掘って奇襲を掛けることが出来ている。
みんな簡単な奴らだ。
小人はアクションにおいては難があるため、戦闘シーンでは大して活躍しない。クライマックスでさえ、バヴモルダと戦うのはフィン・ラゼルだ。
しかし、どちらも魔術師なのに、なぜか途中から殴り合い、掴み合いという「年甲斐の無いババアのケンカ」になる。
しかも、最後は雷が落ちてバヴモルダが死亡するという、最も有り得ないような形の他力本願が待ち受けている。


第9回ゴールデン・ラズベリー賞

ノミネート:最低脚本賞
ノミネート:最低助演男優賞[ビリー・バーティー]

 

*ポンコツ映画愛護協会