『ウェディング・プランナー』:2001、アメリカ

メアリー・フィオーレは、サンフランシスコで働く一流のウェディング・プランナー。アシスタントのペニー達と共に、数多くの結婚式をプロデュースしてきた。だが、彼女は以前に付き合った男に冷たく振られた経験もあって、自分は独身を貫いている。
いつまでも結婚しようとしないメアリーを心配して、父親サルヴァトーレは故郷のイタリアからメアリーの幼馴染みマッシモを連れて来た。サルヴァトーレはメアリーに見合い結婚を勧め、マッシモもその気になるが、メアリーは全く気乗りしない。
メアリーは、大手食品会社の社長令嬢フランの結婚式をプロデュースすることになった。3ヶ月後の結婚式に向けて忙しく仕事に打ち込む中、メアリーは医師のスティーヴと出会った。メアリーはスティーヴとデートをして、彼と恋に落ちてしまう。しかし数日後、フランから婚約者として紹介されたのは、そのスティーヴだった…。

監督はアダム・シャンクマン、脚本はパメラ・フォーク&マイケル・エリス、製作はピーター・エイブラムス&デボラ・デル・プレト&ジェニファー・ギブゴット&ロバート・L・レヴィー&ジジ・プリッツカー、共同製作はマーク・モーガン&キャリー・モロウ、製作協力はアン・フレッチャー、製作総指揮はモリッツ・ボーマン&ガイ・イースト&メグ・ライアン&ニーナ・R・サドウキー&クリス・ジーヴァニッヒ&ナイジェル・シンクレア、撮影はジュリオ・マカット、編集はリサ・ジーノ・チャーギン、美術はボブ・ジーンビッキー、衣装はパメラ・ウィザース、音楽はマーヴィン・ウォーレン。
出演はジェニファー・ロペス、マシュー・マコノヒー、ブリジット・ウィルソン=サンプラス、ジャスティン・チェンバース、ジュディ・グリア、アレックス・ロッコ、ジョアンナ・グリーソン、チャールズ・キンブロー、ケヴィン・ポラック、フレッド・ウィラード、ルー・マイヤーズ、フランシス・ベイ、キャシー・ナジミー、コートニー・ショウニア、フィリップ・パヴェル他。


振付師として多くの映画に携わってきたアダム・シャンクマンがメガホンを執った作品。脚本を書いたパメラ・フォークとマイケル・エリスは、恋人同士だそうだ。
メアリーをジェニファー・ロペス、スティーヴをマシュー・マコノヒー、フランをブリジット・ウィルソン=サンプラス、マッシモをジャスティン・チェンバースが演じている。

普通のロマンティック・コメディーとして見た場合、この作品で面白いのはヒロインが結婚式を仕切って忙しく動き回る最初の5分だけだ。
つまり、本格的に恋愛劇が始まると、ジュディ・グリアが孤軍奮闘しているものの、バカバカしさの極致が弛み切ったままダラダラと続くだけ。
しかしながら、これはロマンティック・コメディーではない。

これは、「ジェニファー・ロペスが実生活ではスタッフのクビを切りまくるなど、女王様気取りの冷徹な女である」という事実を頭に入れて観賞すると、良く分かる映画だ。
これはロマンティック・コメディーに見せ掛けて、実はシニカルなコメディーなのだ。

表面的なストーリーは、「ヒロインがウェディング・プランナーのくせにクライアントの婚約者と恋に落ちてしまい、悩んだ挙げ句に身を引いて父が決めた婚約者と一緒になろうとするが、最後は愛する人と結ばれる」という内容。
そう、表面的にはね。
しかし、そこにはヒロインの巧みな計算が張り巡らされている。
彼女は、これまでに数多くのカップルを見てきたプロ中のプロだ。
これは、「ウェディング・プランナーのくせに」という話ではない。
「ウェディング・プランナーだからこそ」という話なのである。

メアリーは自信に満ち溢れ、野心に燃えている。経営者を脅迫して約束を取り付け、共同経営者になるために大物クライアントを引っ張ってくるほどの女性だ。時にはハッタリをかまして相手を信用させたり、相手を騙したりることも平気だ。
そんな凄腕プランナーの手に掛かれば、巧みに男女を操作するぐらい簡単だ。

婚約者がいるのに「彼女より魅力的な女性が現れたらどうする?」などと平気で言えてしまうスティーヴはヒロインの王子様としてどうなのかと思うが、そんな軽薄男に惹かれてしまったんだから、仕方が無い。
メアリーは、着々と作戦を進めていく。

メアリーはスティーヴに事故から救われた時、最初は意識がハッキリしていたのに、「いい匂い」と言った後で、彼の腕に抱かれたまま気を失う。
それは、きっとスティーヴをゲットするために、わざと気を失ったのだ。
それは彼女の作戦なのだ。

病院にペニーが来た時、彼女はメアリー&自分と映画観賞に行こうとスティーヴを誘う。メアリーがダンスに誘ってスティーヴが断った時、上手いタイミングでメアリーの知人バートが登場してスティーヴに踊るよう勧める。
これらは、偶然ではない。
劇中では描かれていないが、きっとメアリーがペニーに連絡を入れて、スティーヴを誘うよう頼んだのだ。バートにしても、同じことだ。
そうに違いない。
有り得ないようなタイミングで雨が振り出すが、それだって劇中では描かれていないだけで、メアリーが何か作戦を仕掛けた結果に違いない。

スティーヴがフランの婚約者だと分かっても、メアリーは諦めたりしない。
狙った獲物は必ず落とす。
それだけのテクニックを彼女は持っている。
諦めるようなフリをしておいて、巧妙にステーィヴとフランを別れさせる。
そして男を奪い取る計画を実行する。

まず、スティーヴとフランの前で「好きになった男が顧客の婚約者だった」と言わなくてもいいことを言って、彼に罪悪感を抱かせる。
そして、出来すぎた偶然に見せ掛けて馬を暴走させ、スティーヴに助けさせる。
フランの計画は最低だと言う一方、自分はスティーヴと同じ趣味だとそれとなく伝え、フランより自分の方が向いていると思わせる。

メアリーはフランが出張している隙に、立場を利用してスティーヴと何度も会う。
ずっと強がった様子を見せつつ、たまに弱さもアピールする。
自分の不幸な失恋話を聞かせて、同情を誘う。
昔の婚約者キースに偶然に会ったように見せ掛けているが、あれは彼が来るのを調べておいて、鉢合わせするようセッティングしたに違いない。

さて、これでスティーヴの心は完全にコントロールに成功した。
後は、フランとマッシモだ。
まずフランだが、彼女は不自然なぐらい急にスティーヴとの結婚中止を口にする。
これも劇中ではカットされているが、きっとメアリーが何か罠を仕掛けたのだろう。
一度は思い留まるよう説得する辺りが、メアリーの狡猾な所である。

結婚式の直前になって、急にスティーヴがフランに唐突に「僕のことを本当に愛しているのか?僕のどこが好きなんだ?」と今さらの質問をする。
これも、劇中では全く描かれていないが、たぶんメアリーが「そんな風にフランに尋ねてみなさい」と彼に吹き込んだのだろう。そうに違いない。

さて、最後の問題はマッシモだ。
こいつの登場は計算外だったが、しかしメアリーは利口だ。
彼から結婚を申し込まれた時は、OKする。
大勢の人がいる前なので、自分が断ると悪者になってしまう。
それを分かっていて、それを避けたのだ。

メアリーは、いよいよ結婚式を挙げることになっても、余裕の態度を崩さない。
彼女は、マッシモが自分から中止にすることを分かっているのだ。
メアリーは、自分から断らなくても、相手に身を退かせるという巧みな作戦を仕掛けており、それが必ず成功すると分かっているのだ。
なぜなら、彼女は超一流のウェディング・プランナーだからである。


第22回ゴールデン・ラズベリー賞

ノミネート:最低主演女優賞[ジェニファー・ロペス]
<*『エンジェル・アイズ』『ウェディング・プランナー』の2作でのノミネート>


第24回スティンカーズ最悪映画賞

ノミネート:【最悪の主演女優】部門[ジェニファー・ロペス]
<*『エンジェル・アイズ』『ウェディング・プランナー』の2作でのノミネート>
ノミネート:【最も苛立たしいインチキな言葉づかい(男性)】部門[ジャスティン・チェンバース]

 

*ポンコツ映画愛護協会