『ウォルト・ディズニーのサンタクローズ3/クリスマス大決戦!』:2006、アメリカ
サンタクロースであるスコット・カルヴィンの妻となったキャロルは、北極の学校で妖精たちの先生をしていた。生徒のトリッシュから「サンタと結婚して北極に引っ越して来た時、変じゃなかった?」と質問された彼女は、「とってもドラマチックなことが起きて、サンタも私もすっかり変わったの」と話す。キャロルが妊娠中だった頃、スコットは出産を心待ちにしていた。しかし陣痛が起きても肩透かしが続いたため、キャロルはヒスマス医師の診察を受けた。
スコットが診察に付き添っていると、妖精のカーティスが来て「オモチャ作りが大幅に遅れているので、すぐ工場に」と言う。スコットが「今は無理だ。他にも用事がある」と告げると、カーティスは苛立ちを示した。彼はサンタに、伝説の人物から緊急招集があったこと、みんながキッチンに来ていることを教えた。キャロルが「もういいわ」と診察を切り上げて散歩へ行こうとすると、スコットも同行した。工場を歩いている途中、キャロルは両親に会いたいと漏らして泣き出した。彼女は「ママの所へ帰りたいけど、貴方の傍にもいたい。両方を叶えるのは無理」と口にした。
スコットが「君の両親を呼ぼう」と提案すると、カーティスが「シークレット・オブ・サンタに反します。北極の秘密がバレたら、サンタの魔法は永遠に無くなる」と警告する。キャロルが「ウチの両親は口が軽いから」と言うと、スコットは「この状況は絶対に何とかする」と約束する。キャロルが「ウチの両親は貴方をカナダのオモチャ職人だと思ってるわ。どうするつもり?」と問い掛けると、スコットは作戦を思い付いて妖精たちに協力するよう指示した。
スコットがキッチンへ行くと、歯の妖精、マザー・ネイチャー、キューピッド、イースター・バニー、サンドマン、ファザー・タイムが集まっていた。マザー・ネイチャーはスコットに、ジャック・フロストが「フロストマス」と称した自分の看板をアメリカ北西部で多くのデパートに飾ったことを教えた。そこへジャックが現れると、マザーは彼がサンタに対する大量の妨害工作で告発されていること、他にも数多くの悪事を重ねていることを指摘した。
マザーがジャックの除名を要求すると、全員が賛同した。ジャックがサンタの前座ばかりさせられることへの不満を訴えると、スコットは「サンタの仕事も楽じゃない」と声を荒らげた。彼はオモチャ作りが大幅に遅れていること、義理の両親を北極へ呼んでバレないようにしなきゃいけないこと、再び父親になることへの不安があることを打ち明けた。ジャックはスコットがサンタを解約すれば自分が後釜に座れると気付き、仕事を手伝うので除名を撤回してほしいと持ち掛けた。ジャックは「もう一度だけチャンスを与える。何かよからぬことをしたら、すぐに除名だ」と言い渡し、ジャックの頼みを承諾した。
スコットはソリに乗り、元妻のローラと再婚相手のニール、息子のチャーリー、ニールたちの娘であるルーシーが住む家を訪れた。ローラがキャロルの出産を手伝うと申し出ると、スコットは遠慮した。ルーシーは北極へ連れて行ってほしいと頼み、ニールは「ルーシーも家族の一員だ。こんな体験を彼女にだけさせなかったら、人生に傷が残る」とスコットに話す。ルーシーから懇願されたスコットは、彼女とニールとキャロルの北極行きを承知した。
ジャックはカーティスを挑発し、スコットが秘密のスノーボールに手を乗せて「サンタになんかならなければ良かった」と口にすれば時間が巻き戻って解約できることを知った。スコットはサンドマンを伴い、キャロルの両親であるバドとシルヴィアの元へ赴いた。職人のバドは、スコットとキャロルが結婚してから全く会いに来ないので不機嫌そうな態度を示した。バドとシルヴィアが些細なことで口論を始めると、サンドマンは予定より早く眠らせた。スコットはバドとシルヴィアをソリに運び、ニールたちも乗せて北極へ戻った。
バドとシルヴィアが目を覚ますと、妖精たちはカナダの住人を装って歓迎した。スノーボールの殿堂を探していたジャックは、ルーシーと遭遇した。素性を問われたジャックは自己紹介するが、ルーシーは彼を知らなかった。ジャックは作業中の妖精たちに、「サンタが休憩するよう言ってる。美味しいココアを用意してある」と嘘を吹き込み、工場から移動させた。彼は機械を暴走させたり、凍結させたりして作業を妨害した。カーティスから知らせを受けたスコットはバドたちの案内役を切り上げ、慌てて工場の対処に赴いた。
工場では火事まで発生するが、スコットは全く挫けず妖精たちに作業を急ぐよう指示した。彼はルーシーからスノーボールのコレクションを見たいとせがまれ、殿堂へ連れて行く。その会話を盗み聞きしたジャックは、密かに後を追った。スコットは秘密のパスワードを登録し、殿堂の部屋に入った。彼はルーシーにスノーボールをプレゼントし、部屋を出た。入れ違いでジャックが侵入したことに、スコットは全く気付いていなかった。
ジャックが秘密のスノーボールを盗み出すと、気付いたルーシーは急いで両親を呼んだ。するとジャックはニールとローラを凍結させ、クローゼットに入れた。ルーシーは彼から黙ってクローゼットに入っているよう脅され、仕方なく従った。彼はツリーが倒れるように細工を施し、キャロルに「サンタに星を付けるよう頼めば」と促した。スコットが頂上に星を付けると、ジャックの作戦通りにツリーは倒れた。壊れた星を拾い上げたキャロルは泣き出し、スコットはバドから責められた。
スコットが腹を立てて反論すると、バドとシルヴィアは「来なければ良かった」と不満を漏らした。スコットが言葉を返すと、キャロルも彼を非難した。ジャックは頭を冷やすようスコットに声を掛け、外へ連れ出した。彼は「プレゼントだ」と言い、秘密のスノーボールが入った箱を差し出した。ジャックはスコットを巧妙に誘導し、「サンタになんかならなければ良かった」と言わせる。その時にスコットがスノーボールを触ったため、彼はジャックと共に12年前のクリスマス・イヴへタイムスリップした…。監督はマイケル・レンベック、キャラクター創作はレオ・ベンヴェヌーティー&スティーヴ・ルドニック、脚本はエド・デクター&ジョン・J・ストラウス、製作はブライアン・ライリー&ボビー・ニューマイヤー&ジェフリー・シルヴァー、製作総指揮はウィリアム・W・ウィルソン三世&ジェームズ・ミラー、撮影はロビー・グリーンバーグ、美術はリチャード・J・ホランド、編集はデヴィッド・フィンファー、衣装はイングリッド・フェリン、特殊キャラクター効果デザイン&創作はアレック・ギリス&トム・ウッドラフJr.、音楽はジョージ・S・クリントン。
出演はティム・アレン、エリザベス・ミッチェル、ジャッジ・ラインホルド、マーティン・ショート、アラン・アーキン、ウェンディー・クルーソン、アン=マーグレット、エリック・ロイド、スペンサー・ブレスリン、リリアナ・マミー、アビゲイル・ブレスリン、アート・ラフルー、アイシャ・タイラー、ケヴィン・ポラック、ジェイ・トーマス、マイケル・ドーン、ピーター・ボイル、サミー・ハンラティー、リッジ・キャナイプ、ケイト・エメリック、マデリーン・キャロル、チャーリー・スチュワート、アレック・プロトキン、シャンテル・ヴァルディヴィエソ、ザック・ミルズ他。
『サンタクローズ』『サンタクロース・リターンズ! クリスマス危機一髪』に続くシリーズ第3作。
『サンタクローズ3/クリスマス大決戦!』の邦題でテレビ放送されたこともある。
監督は前作に引き続き、マイケル・レンベックが担当。脚本も前作のエド・デクター&ジョン・J・ストラウスが続投している。
キャスト陣ではスコット役のティム・アレン、キャロル役のエリザベス・ミッチェル、ニール役のジャッジ・ラインホルド、ローラ役のウェンディー・クルーソン、チャーリー役のエリック・ロイド、カーティス役のスペンサー・ブレスリン、ルーシー役のリリアナ・マミーらが前作から続投。
他に、ジャックをマーティン・ショート、バドをアラン・アーキン、シルヴィアをアン=マーグレットが演じている。冒頭、キャロルが北極の学校で妖精たちに授業をしているシーンが描かれるが、これは全く必要が無い。
いきなり「陣痛のキャロルが移送される」というシーンから始めればいい。授業のシーンから入る意味なんて、全く無いのよね。
なんで「質問を受けたキャロルが、自分とスコットが大きく変化したきっかけを話し始める」ってことで回想シーンに入る構成にしているのか。
もちろん最後は「そんな話を終えたキャロル」というトコへ戻って来るが、だから何なのかと。スコットがキャロルの診察に付き添っている時、カーティスはオモチャ作りが大幅に遅れていることと、伝説の人物会議が招集されたことを教える。
だが、緊急招集されたことに関しては、後回しにすればいい。
スコットが「キャロルの両親を北極へ呼ぼう」と決めた後で、カーティスから「伝説の人物たちがキッチンに来ている」と報告を受ける手順にすればいい。
細かいことかもしれないけど、そっちの方が絶対にスムーズだ。診察を受けていたキャロルが急に立ち上がって「散歩に行く」と言い出すのは、「そのままだとスコットが仕事に戻らないから」という理由だと、その時には感じた。
でも、工場に入ると「ママに会いたい」と泣き出すので、流れとして違和感がある。
また、オモチャ作りの作業よりキャロルのことを気にしている様子だったスコットが、彼女と一緒に工場を歩き始めると完成したオモチャの方を気にする様子を見せるってのも、これまた違和感がある。キャロルが「ママに会いたい」と泣き出すのは、気持ちとしては分からんでもない。
ただ、ちょっと身勝手にも思える。
そこはスコットがキャロルの心情を思いやって、彼女が何も言わずとも「両親に会わせてあげよう」ってことで行動する形にした方がいいんじゃないかな。
あと、スコットが妖精たちを見回して「家族なら、ここにいる」と言った時、キャロルが「本物の家族じゃなきゃダメ。人間じゃないと癒やされない」と口にするのは、妖精たちは全く気にしちゃいない設定だからスルーされているけど、かなり残酷な台詞だぞ。スコットはキャロルの両親を北極へ連れて来ると決めるが、秘密がバレないようカナダだと偽装することに決める。その一方、彼はニール、ローラ、ルーシーを北極へ連れてくることを承諾する。
既にニールたちはスコットの正体を知っているが、だからって工場へ連れて来る必要は無いでしょ。
無闇に秘密を知る人間を増やすのが、バカにしか思えんぞ。
段取りとしては理解できるし、コメディーだから甘受しておくべきなのかもしれないけど、ちょっとキツいわ。ニールたちがカーティスの指示に従わず勝手に動き回るのも、コメディーとしての描写ではあるんだけど、やはりキツいなと。
ルーシーにせがまれると、簡単にスノーボールの殿堂へ案内しちゃうし。
一方では「バドとシルヴィアに秘密がバレないように」ってことで芝居を打っているのに、スコットの正体を知っている連中に関してはルール無用で放置状態になっているのは、筋が通らないように感じるのだ。
秘密を守ることに対するスコットの意識がユルユルなので、バドたちにバレないよう芝居をする筋書きに乗れないのよ。1作目ではスコットとチャーリーの親子関係を扱い、2作目ではスコットが結婚相手を探す話を描いていた。
その流れからすると、3作目でも「家族関係」を描くのは自然な流れだ。今回はキャロルの両親を登場させて、ファミリーの輪を広げている。
ただ、それならバド&シルヴィアとの関係を使って「2人に秘密がバレないように芝居する」というドタバタ喜劇に集中すればいいものを、それだけでは不足だと思ったのか、「ジャックがサンタになろうと目論む」という要素を持ち込んでいる。
でも、それは「虻蜂取らず」であり、どちらか片方にしておいた方が良かったんじゃないかと。そこを欲張ったせいで、導入部で提示した「キャロルが妊娠して出産間近」という要素が有効活用されなくなっている。
もちろん、バドとシルヴィアを北極へ連れて来る話と、ジャックが悪巧みしている話は絡ませており、分離したまま進むわけではない。
ただ、ジャックの作戦が成功してタイムスリップすると、もはやバドとシルヴィアなんて全く要らないキャラになるのよね。キャロルさえいれば、それで充分に事足りるのだ。「スコットが多忙なので寂しさを感じるキャロルをジャックが狡猾に利用して」という話にでもしておけばいい。キャロルの出産にしても、家族関係を描く要素ではあるんだし。
それに、実は「バドとシルヴィアにバレないよう芝居をする」ってのも、そんなに使われるわけではないのよね。あと、実はキャロルが両親に会いに行けば、それで済む問題なんだよね。彼女は「ママの所へ帰りたいけど、貴方の傍にもいたい。両方を叶えるのは無理」と言うけど、ちょっと帰郷するぐらいなら別にいいでしょ。
スコットは普通にローラやチャーリーと会っているし、バドとシルヴィアを北極へ連れて来るのは許されるんだから、「サンタの妻になったら二度と帰郷できない」というルールでもなさそうだし。
クリスマスに限らず、たまに里帰りすれば、それでホームシックは無くなるはずで。
「スコットの傍にいたいから帰郷しない」ってのは、理解不能だわ。12年前のクリスマス・イヴへタイムスリップすると、ジャックがサンタの服を奪う。そして現在に戻り、スコットは企業の社長として仕事をしている。
サンタとなったジャックは北極をテーマパークに改装し、金を儲けている。テーマパークでは妖精たちが働き、大勢の客が押し寄せている。ジャックはプレゼントを配らず、親は高い金を支払って我が子を良い子リストに掲載してもらっている。
だけど、それを妖精たちが普通に受け入れているのも、伝説の人物会議がジャックの行動を許しているのも不可解だ。大勢の人間が、そんなサンタに文句を言ったり不満を漏らしたりしないのも不可解だ。
12年前までのサンタやクリスマスとは全く違うことになってしまったんだし、サンタがトナカイのソリでプレゼントを届けに来ることも無くなったのに。それを喜んでいるのは変だろ。(観賞日:2017年12月30日)
第27回ゴールデン・ラズベリー賞(2006年)
ノミネート:最低主演男優賞[ティム・アレン]
<*『ウォルト・ディズニーのサンタクローズ3/クリスマス大決戦!』『シャギー・ドッグ』『キャプテン・ズーム』の3作でのノミネート>
ノミネート:最低助演男優賞[マーティン・ショート]
ノミネート:最低スクリーン・カップル賞[ティム・アレン&マーティン・ショート]
ノミネート:最低序章&続編賞
ノミネート:ファミリー映画というには申し訳程度の最低のシロモノ賞
第29回スティンカーズ最悪映画賞(2006年)
受賞:【最悪の主演男優】部門[ティム・アレン]
ノミネート:【最悪の助演男優】部門[マーティン・ショート]
<*『ウォルト・ディズニーのサンタクローズ3/クリスマス大決戦!』『シャギー・ドッグ』『キャプテン・ズーム』の3作でのノミネート>
受賞:【ザ・スペンサー・ブレスリン・アワード(子役の最悪な芝居)】部門[スペンサー・ブレスリン]
<*『ウォルト・ディズニーのサンタクローズ3/クリスマス大決戦!』『シャギー・ドッグ』『キャプテン・ズーム』の3作でのノミネート>
受賞:【最悪の続編】部門
ノミネート:【最悪のクリスマス映画】部門