『オールド・ドッグ』:2009、アメリカ

チャーリーとダンは幼馴染で、大人になってからも親友だ。2人はスポーツ・マーケティングの会社を設立し、共同経営者を務めている。 ダンは大事な会議で自分の個人的な話題を掴みネタにされることを嫌がっている。しかしチャーリーは営業の手段として、アメリカ進出を 目指しているニシムラ・メデイア・グループとの商談でも、そのことを話題にする。7年前、離婚で全財産を失ったダンを慰めるため、 遊び人のチャーリーはマイアミへ連れ出した。自由に生きる楽しさを教えるため、彼は胸にタトゥーを入れさせた。
マイアミで酔っ払ったダンは、ヴィッキーという理想の女性と出会った。チャーリーたちは、ヴィッキーと手タレの親友のジェナと ダブルデートをした。ダンは勢いで結婚式を挙げ、翌朝になって我に返った。だが、その結婚は無効だった。その掴みネタが受けたことも あり、チャーリーたちは今までで最も大きな契約に前進した。チャーリーは喜ぶが、心配性のダンは「まだ細かい詰めが残っている。来週 はニシムラ社長が息子とやって来る。ゴルフ接待もある。2週間後には重役たちの前でプレゼンしなきゃならない」と言う。
チャーリーは部下のクレイグを東京に派遣することを決め、ダンは日系の不動産屋を回って彼の住まいを探した。会社に戻ったダンは、 ヴィッキーから電話があったというメモを見て大喜びする。こっちに来ており、ダンと会いたいというのだ。チャーリーが「急に連絡が 来たのか?」と首を捻ると、ダンは「半年前に引っ越したら急に寂しくなった。10ページぐらいの手紙を書いた」と明かした。 チャーリーは「最大の契約を取り付けている最中だぞ。付き合う時間は無い」と注意するが、浮かれたダンは「彼女はヴァーモントに 住んでいるから遠距離恋愛には最適だ」と聞く耳を貸さない。「何を着て行こうか」と彼がソワソワするので、チャーリーは「その前に 青白い顔色を何とかしろ」と日焼けサロンへ連れて行く。しかしチャーリーが店員を口説いて長話をしたせいで、ダンの肌は異様に濃い 褐色になってしまった。
ダンはヴィッキーと会い、「7年前はタイミングが悪かった、今はゆっくりと付き合って行ける」とヨリを戻そうとする。しかし彼女は 「明日から2週間、不法侵入で刑務所に入るの」と口にした。化学薬品会社が川に廃液を流す可能性があり、ブルドーザーにしがみついて 建設を妨害したのだという。そんなことをした理由について、ヴィッキーは「双子のザックとエミリーが川で遊ぶので」と説明する。彼女 はシングルマザーだという。
ヴィッキーはダンに、「子供たちには健康施設へ行くと説明し、ジェナに預かってもらう予定なの」と語る。そこへジェナに連れられた 子供たちが現れ、ダンを見て「パパ」と呼び掛けた。ダンは激しく動揺する。ヴィッキーはジェナに、子供たちを連れて行ってもらう。 ヴィッキーはが「あの子たちは7歳だし、そろそろ父親に紹介してもいい頃かなって」と言うので、ダンは「ずっと子供の相手が下手 だったけど、自分の子供なら違うよね」と語る。ヴィッキーが「それならジェナがオーディションを受けている間、一緒に過ごして様子を 見ましょうよ」と持ち掛けるので、ダンは笑顔で「そうだね」と答えた。
ダンはヴィッキーと子供たちに付き合い、遊園地へ出掛ける。男子トイレへ行くザックに付き合ったダンは、「子供はどこから来るの?」 と質問されて狼狽した。ダンやヴィッキーたちは、ジェナの家へ赴いた。しかしダンの不注意でジェナが車のトランクに手を挟んでしまい 、さらに首も激しく打ち付けて入院するハメになった。ジェナに子供を預けることが出来なくなって困るヴィッキーに、ダンは「僕が面倒 を見るよ」と告げた。
チャーリーはダンから話を聞いて呆れるが、「そもそも君が撒いた種だ。君にも手伝ってもらうよ」と言われる。ヴィッキーは刑務所に 入る日、ダンに注意事項を告げ、「エミリーは貴方のことをスーパーヒーローだと思っているみたい。それで、どこかへ行っていたと解釈 しているみたいよ」と述べた。チャーリーがレストランでチョコチップクッキーを注文しようとすると、ダンは「朝からチョコチップ クッキーはダメだ、健康的なメニューにしよう」と反対し、エミリーとザックは渋い顔になった。
チャーリーは美人ウェイトレスを口説くが、子供たちの祖父に間違えられる。そこは祖父母の会が集まる店だったため、チャーリーは歓迎 の歌を店員たちに歌われた。さらにザックがズボンにこぼしたコップの水を、老人のお漏らしと間違えられる。チャーリーとダンは、 子供たちを会社へ連れて行く。ニシムラとの商談中に子供たちが暴れるので、チャーリーはダンに「あれを何とかしてくれ」と指示した。 止めに行ったダンは携帯を取られ、チャーリーは商談を中断する。その間にチャーリーは、通訳担当のアマンダを口説いた。
夜、ダンは利用している大人専用のコンドミニアムへ、子供たちを連れ帰る。しかし女性に見つかったため、チャーリーのアパートへ 連れて行く。チャーリーは「ここは俺の城なんだ。子供の来る場所じゃない」と苛立つが、ダンから「僕にとって家族に最も近いのは君 なんだ」と情に訴えられ、「今回だけだぞ」と承諾した。翌朝、安全対策チームのニックやゲイリーたちが来て、部屋の改装を始めた。 ダンがチャーリーに無断で頼んだからだ。
チャーリーとダンは子供たちから、「キャンプへ連れてって」とせがまれる。第25回パイオニア・ウィークエンドに参加したチャーリーと ダンはボーイスカウト隊長のバリーが喋っている間もパソコンや携帯を使って仕事をこなす。ニックはアダムという男から、「アンタは俺 の女を奪った奴に似てる」と言い掛かりを付けられる。チャーリーたちはフリスビー競技に参加するが、相手チームが激しいラフプレーに 走って痛め付けられる。続いて射撃に参加するが、ダンが誤ってバリーの祖父の彫像を壊してしまう。さらに夜になって、ダンは彫像に火 を付けてしまった。
体がガタガタになったチャーリーとダンは、アパートに戻って薬を飲んだ。子供たちは誤って、洗面台に置いてあった薬の錠剤をこぼして しまう。元の場所に戻そうとするが、どれがどれか分からなくなってしまった。チャーリーとダンは何も知らず、間違った錠剤を服用した チャーリーは子供たちを連れ、アマンダに誘われた死別の会のパーティーへ出掛けた、ダンはニシムラとの接待ゴルフへ赴いた。
チャーリーは猛烈な食欲に襲われた上、顔が引きつってしまう。ダンは距離の感覚がおかしくなった上、舌が腫れ上がる。チャーリーは 2日前に家族を亡くしたばかりの参加者マーサが話している間、用意された料理にむさぼり付く。2人とも薬の副作用のせいで、大きな 失態をやらかしてしまう。ダンは子供たちから「少しぐらい遊んで」とせがまれるが、「仕事があるんだ」と断る。ファックスの電源を 抜いてゲーム機の充電してあるのを見た彼は、チャーリーに「だから子供は嫌だったんだ」と愚痴るのをザックに聞かれてしまう。ダンは 慌てて「君のことじゃないよ」と取り繕うが、ザックの心は傷付いた。
ダンが「僕は子供たちをガッカリさせてばかりだ」と落ち込むので、チャーリーは「子供たちはお前に守ってもらいたいだけなんだ。子供 と心を通わせたいなら、助けを捜すよ」と言う。彼は人形ショーのスターであるジミー・ランチボックスと会い、彼が開発した人間を操る 装置を使って協力してほしいと持ち掛けた。ジミーの手助けを得て、チャーリーが特殊なスーツで遊ぶと、王様の衣装を着用したダンを 操ることが出来るようになった。
ダンは王女の格好のエミリーとお茶会を開き、お姫様ごっこに付き合った。チャーリーとジミーがダンを操縦し、エミリーを笑わせた。 その頃、ザックはチャーリーのパソコンを勝手に使ってゲームを楽しんでいた。そこにニシムラから重役会議の知らせが届いた。ザックは 勘違いしたままネット会議に参加し、相手を挑発するような発言を繰り返す。だが、ロボットに関する意見を受け取ったニシムラたちは、 次のステップへ移ることを決定した。
ダンは装置を濡らして故障させてしまうが、心からの言葉でエミリーの笑顔を手に入れた。ダンはザックの自転車練習に付き合い、彼と チャーリーは子供たちをメジャーリーグ観戦に連れて行く。チャーリーとダンは次の会議に向けて、クレイグを日本へ派遣した。ところが 重要なテレビ会議の時間になっても、クレイグはプレゼンに現れなかった。クレイグは日本でカラオケにハマり、仕事を放り出したのだ。 ニシムラは契約を進める条件として、チャーリーとダンに東京への駐在を求めて来た…。

監督はウォルト・ベッカー、脚本はデヴィッド・ダイアモンド&デヴィッド・ウェイスマン、製作はアンドリュー・パネイ&ロバート・L ・レヴィー&ピーター・エイブラムス、製作協力はアンソン・ダウンズ&リンダ・ファヴィラ、製作総指揮はギャレット・グラント、撮影はジェフリー・L・ キンボール、編集はトム・ルイス&ライアン・フォルシー、美術はデヴィッド・グロップマン、衣装はジョセフ・G・オーリシ、音楽は ジョン・デブニー、音楽監修はデイヴ・ジョーダン。
出演はジョン・トラヴォルタ、ロビン・ウィリアムズ、マット・ディロン、ケリー・プレストン、セス・グリーン、エラ・ブルー・ トラヴォルタ、ロリ・ローリン、コナー・レイバーン、 バーニー・マック、アン=マーグレット、リタ・ウィルソン、エイミー・セダリス、レジデンテ、サブロー・シモノ、ケヴィン・W・ ヤマダ、ケヴィン・ディーン=ハケット、ローラ・アレン、サム・トラヴォルタ、マーガレット・トラヴォルタ他。


『団塊ボーイズ』のウォルト・ベッカーが監督を務めた作品。WOWOWで放送された時は『オールド・ドッグ オレたちイクメン?!』という タイトルだった。
チャーリーをジョン・トラヴォルタ、ダンをロビン・ウィリアムズ、バリーをマット・ディロン、ヴィッキーをケリー・ プレストンが演じている。エミリーを演じたエラ・ブルー・トラヴォルタは、名前で分かるかもしれないが、トラヴォルタとプレストンの 娘だ。さらに、チャーリーを双子の祖父と誤解して歌うメンバーの中には、トラヴォルタの弟サムと妹マーガレットもいる。
他に、クレイグをセス・グリーン、アマンダをロリ・ローリン、ザックをコナー・レイバーン、ジミーをバーニー・マック、マーサをアン =マーグレット、ジェナをリタ・ウィルソン、コンドミニアムの女性をエイミー・セダリスが演じている。バーニー・マックは、これが 遺作となった。アンクレジットだが、ニック役でルイス・ガスマン、ゲイリー役でダックス・シェパード、アダム役でジャスティン・ ロングが出演している。

序盤、チャーリーが商談で楽しそうに7年前の出来事を喋っている途中で、ニシムラたちが険しい顔をしているのを見せてしまう。
そこは全て話し終わってから初めて相手のリアクションを見せた方がいいんじゃないか、途中でオチを見せちゃマズいんじゃないかと 思ったら、ダンがヴィッキーと結婚したことを聞いた途端、ニシムラたちは笑い出している。
どこに笑いのツボがあるのか、サッパリ分からないぞ。
「笑うようなトコじゃないのにバカ受けしてしまう」ということを、笑いにしているわけでもない感じだし。

っていうかさ、チャーリーのナレーションベースで7年前のことを喋ってしまうけど、それは不恰好だし、弾けたダンの姿を見せるのは、 まだ早いと思う。もう少し「普段のダン」「普段のチャーリー」を紹介してから、「普段とは違い、酔っ払って珍しく浮かれたダン」の姿 を見せる流れにした方がいいのではないかと。
で、そういうことも考えると、商談の席で7年前の出来事を説明するよりも、ヴィッキーから連絡があった時に、過去の回想シーンを 挟んだ方が良かったんじゃないかなと。
あと、ダンがヴィッキーからの連絡に浮かれているってことは、勢いで結婚したことは、翌朝になっても後悔しなかったのか。その話を されて嫌がる態度からすると、弾みで女と結婚した行動を後悔しているのかと思ったが、そうじゃないのね。
だったら、そのことは先に説明しておくべきだ。まさかヴィッキーと再会したがっていたとは思わなかった。
後になって、半年前に手紙を書いていたことが明らかにされるけど、そのタイミングも、ヴィッキーから連絡が来る前にした方がいいん じゃないかなあ。で、それをチャーリーに明かして、その直後にヴィッキーから連絡が入るという流れにした方が、テンポが出るような気が。

ダンが日サロでこんがり肌になってしまうエピソードが、ヴィッキーと会う直前に入っているけど、それって構成として上手く ないなあ。
通り掛かった人に異国人と間違えられるギャグはあるけど、その直後にヴィッキーと会うので、つまり「次の展開」へ行っちゃうんだよね 。ヴィッキーも見た瞬間は驚くけど、すぐに普通の調子で話し始めるから、そうなると「焼きすぎ」というネタが、ちょっとスベっている ような感じになってしまう。
あと、「ダンがヴィッキーと会う前に努力したら、トラブルやヘマのせいで残念な結果に」というのをやるなら、1つじゃなくて幾つか 連チャンでやった方がいいし。
日焼けネタだけってのは、中途半端に感じる。

ダンはヴィッキーに「ずっと子供の相手が苦手だった」と言うけど、それは最初の内に描いておくべきだ。
冒頭、転がって来たサッカーボールを蹴ったら少年の顔面に思い切り当ててしまい、チャーリーに「お前は本当の子供の相手が下手だなあ 」と言われているけど、そこは違和感しか感じないし。
だって、それは子供の相手が下手なんじゃなくて、単に運動が下手なだけでしょ。
子供の相手が下手ってのは、「子供と話し掛けられて顔が引きつってしまう」とか、「子供と接する時に相手に嫌われるようなことを 言ってしまう」とか、そういう「コミュニケーションの取り方が下手」というのを見せないと。

なんか、色々とヌルいというか、優しいんだよね。
例えばダンは、子供が苦手だったはずなのに、自分から積極的に子供の面倒を見ると言い出している。それは勢いで言って後悔するという 感じでもなくて、普通に責任感を持って取り組もうとしている。チャーリーは協力を依頼されて嫌がるが、特に弱みを握られたとか、取引 したとかでもないのに、あっさりと引き受けただけでなく、最初から子供たちと仲良くやっている。
子供たちも、ダンやチャーリーと距離を取ろうとしたり、やんちゃだったりということは無い。最初からそれなりに懐いているし、会社で 暴れるシーンもあるものの、基本的には素直な子供たちだ。
で、そうなると、弾けた喜劇にするための要素が、なかなか見当たらない。
一応、ヴィッキーが中毒事故管理センターの連絡先を渡したり、ホラー映画を見せないようにしていたりという描写はあるが、それは ムショに入る前に触れるだけで、それ以降は、ダンがいちいち子供たちの行動をチェックしたり、危険だと感じたことに反対したりという ことがあるわけじゃないからね。

チャーリーが子供たちの祖父に間違えられ、ザックがこぼしたコップの水をお漏らしと間違えられるシーンがある。
つまりチャーリーが笑われる役になっているんだけど、それは役割分担がボンヤリしているなあ。なんでダンに回さないで、チャーリーが 誤解される役回りにしちゃうんだろうか。
ダンが振り回されたり翻弄されたり誤解されたりヘマをやらかしたりする役回りで、チャーリーは自由気ままに振る舞う役回りに徹底した 方がいいでしょ。
で、チャーリーが遊び人として子供たちと接して自由気ままに振る舞い、それを心配性のダンが教育パパ的に軌道修正しようとして、そこ で喜劇が発生するという形を膨らませれば良かったんじゃないの。

チャーリーが会社で暴れる子供たちを迷惑がっている様子もあるけど、そこも中途半端なんだよなあ。迷惑だと感じるのなら、徹底して 迷惑そうにすべきで、その前に子供たちと仲良くやっている様子があるのは半端でしょ。
どっちに限定した方が話が面白くなりそうかというと、そりゃあ「子供たちと仲良くする」という方だな。チャーリーが迷惑がって子供を 遠ざけようとすると、子供たちとの関係で笑いを取りに行くことが難しくなる。
チャーリーを嫌なキャラにして、子供たちが自分たちを煙たがる彼にイタズラを仕掛けるととか、そういう展開を用意すれば笑いも 生まれるだろうが、別にチャーリーは子供たちを排除しようとする悪玉キャラってわけではないしね。
で、それを考えると、オフィスに子供たちを連れて来るべきではないよな。オフィスで自由気ままに動き回ったら、そりゃチャーリーが 迷惑に感じるのも仕方がないからね。
それよりも、子供たちの世話で苦労するのはダンだけにしておいた方がいい。チャーリーはたまに会うだけで、子供の世話の大変な部分 には全く関与しない形にしておけばいい。

ダンとチャーリーって、一応は「まるで性格の違う2人」という設定なんだけど、2人とも同じように子供たちに振り回されたり困ったり するという形にしてあると、その対照的な性格設定にしてあることの意味さえ薄くなってしまう。
ダンが子供嫌いだったという設定だけど、チャーリーも子供をアパートに置くことを嫌がっているなど、子供が好きってわけじゃない ようだし。
チャーリーが子供を嫌がるのなら、ダンは子供が大好きで、子供と接するのも上手という設定にした方がいいでしょ。

っていうか、ダンって子供たちを預かってからは、上手く接することが出来ずに困り果てるとか、苦手にしているという感じは、ほとんど 感じられなくなっちゃうし。最初に困惑したり嫌がったりするのはダンだけど、そこから「ダンが子供たちのために行動し、チャーリーが 迷惑を被ってイライラする」という形に移っていくのよね。物語の中で立ち位置が変化しているのだ。
それは意図的であれ、意図しないものであれ、どっちにしても失敗だ。
ベタかもしれんけど、バディー・ムーピーにおいては、2人のキャラを対照的にして、ボケとツッコミなど、キッチリと役割を分けるっ てのがセオリーじゃないの。
しかも、じゃあダンは全て子供たちのために喜んで行動するのかというと、キャンプへ連れて行くことには難色を示すし。

あと、後半に入って、ダンがエミリーの就寝時に握手して「僕は父親らしくない」と漏らすシーンもあったりするけど(つまりホントなら 「おやすみのキス」をすべきってことね)、そういう「子供への接し方が下手」とか「そのせいで、なかなか懐いてもらえない」という 描写が弱い。やっぱり煮え切らない話になっちゃってるよなあ。
それと、子供たちとの関係で話を構築していくべきなのに、そこが薄い。
キャンプでの出来事は、子供たちは何も関与しておらず、ただ見ているだけだ。チャーリーが猛烈な食欲に襲われるとか、ダンの距離感が 変になるとか、そういうのは子供たちが関与しているとは言え、「子供たちとの関係」を使ってエピソードを作っているわけでは ない。
全体を通して、子供たちの存在価値が薄いんだよね。

ダンがエミリーの気持ちを掴むために頑張るシーンはあるけど、ザックの気持ちを掴むためのシーンはダイジェスト的な処理 なんだよね。
むしろ、ダンはザックを傷付けてしまい、そこから落ち込んだ彼をチャーリーが励ます展開に入ったんだから、ザックの気持ちを掴むため のシーン方が重要なんじゃないの。
っていうか、そもそも「ダンが子供たちと上手くいっていない」「子供たちがダンに懐いていない」という描写もボンヤリだし、そこから 「ダンが2人の心を掴むために頑張る」という展開も弱い。

終盤にはチャーリーとダンが日本駐在を要求されるので、こりゃ「ダンが悩んだ末に、契約より家族と一緒にいることを選ぶ」という、 ベタだけどセオリーに忠実な展開になるのかと思いきや、なんと東京へ行ってしまうのだ。
いやいや、東京でのシーンとか要らないっての。
東京での会議で、家族と行ったカーニバルの映像を見たり、子供たちのためのリストを見たりするという展開になるけど、そういうのを 東京へ行く前にやればいいでしょ。
わざわざ東京へ行く意味が全く無いんだよね。東京へ行く前に「東京へ行くことを決めるが、家族との映像や子供たちのためのリストを 見て考え直す」という展開にすれば、同じことでしょ。

わざとプレゼンをしくじって契約をパーにしたダンにチャーリーが怒ってケンカになるという展開も、もう子供は全く関係が無くなって いる。
終盤には「仲違いしたダンとチャーリーが和解する」という展開があるんだけど、そこに子供たちが全く関与しないエピソードを 配置してどうすんのよ。
「親友が近くにいることの大切さ」というテーマで着地しているんだけど、そうなると、「やっぱり子供たちって要らないじゃねえか」と 言いたくなってしまう。
結局、これってチャーリーとダンが友情を確かめ合うバディー・ムービーと、ダンが家族関係を構築しようとするドラマと、両方をやろう としたことが失敗なんだよな。
典型的な「虻蜂取らず」だ。

(観賞日:2012年6月5日)


第30回ゴールデン・ラズベリー賞

ノミネート:最低作品賞
ノミネート:最低主演男優賞[ジョン・トラヴォルタ]
ノミネート:最低助演女優賞[ケリー・プレストン]
ノミネート:最低監督賞[ウォルト・ベッカー]

 

*ポンコツ映画愛護協会