『オブセッション 歪んだ愛の果て』:2009、アメリカ
資産運用会社“ゲイジ・ベンディックス社”の副社長になったデレクは、妻のシャロン、幼い息子のカイルと共に新居へ引っ越した。夫婦 の関係は円満そのもので、愛に満ち溢れている。出勤したデレクは、本社ビルのエレベーターで女性と2人になり、話し掛けられる。彼女 はリサという名前で、短期間の派遣秘書としてゲイジ・ベンディックス社に雇われたのだった。デレクは会議室へ行き、社長のジョー、 同僚のベンと仕事のことを話す。リサはデレクに強い興味を抱き、会社のサイトで彼のことを調べた。
翌日、デレクの秘書であるパトリックが風邪で休んだため、リサが代役を務めることになった。リサはデレクに、クリスマス・パーティー の予定を告げる。「どうして配偶者を招待しないんですか」と彼女が訊くと、デレクは「会社の方針だよ。配偶者がいると落ち着かないと いうことなんだろう」と答えた。デレクは3年前に結婚してから毎週、月曜日にはシャロンに花を贈っていた。それを彼が指示しようと すると、リサは「もう贈っておきました」と言う。既に彼女は、その習慣を調べてあったのだ。
オフィスに戻ったデレクは、自宅にいる妻と電話で話す。その会話を、リサは秘書用の電話で密かに盗み聞きしていた。帰宅したデレクは 、シャロンから「どうして今日、返事が無かったの?4時頃に電話したのに」と問われる。「メッセージは」と確認すると、「残したわ」 とシャロンは言う。デレクは「秘書は、電話は無かったと言ってたな」と告げ、派遣で女性秘書が来たことをシャロンに話した。
次の日、リサがカイルを連れて会社にやって来た。「サンタに会わせに、グローブへ連れて行くのよ」と、彼女はデレクに言う。リサが コーヒー持って来たので、デレクは妻を紹介した。リサは「完璧な家族ですね。雑誌の表紙になってもいいぐらいです」と褒める。リサが 美人だったので、シャロンは少し気にする様子を見せた。デレクが席を外している間に、リサは家族の写真が入った彼の写真立てを見る。 さらに彼女はデレクのCDケースもチェックし、クルードのCDが入っているのを知った。
翌日、風邪が治ったパトリックが出社してきた。ところが、もう一人の秘書であるマージがダウンしたため、リサは彼女の代役を務める ことになった。パトリックはリサが電話を盗み聞きしたことを見抜いており、それを指摘した。するとリサは悪びれずに微笑し、「貴方は しないの?上手くやったから大丈夫よ」と言う。パトリックが10年前から働いていることを知ったリサは、「貴方なら誰よりも内情に 詳しいわね。帰りにカクテルでもどう?」と誘った。パトリックは、喜んで承諾した。
昼休み、デレクはリサが休憩室で泣いているのを見つけ、「恋人と喧嘩でもしたのかい」と優しく声を掛けた。「私が悪いのかなって」と リサが口にすると、デレクは「そんなことないさ。きっと縁が無かったんだ。重要なのは前向きに考えることだ。もしも僕が独身だったら 、放っておかない」と励ました。その様子を見ていたベンは、リサが去った後で「気を付けた方がいいよ。独身女性にとって職場は狩りの 場所。狙われてるのは君だぞ」と笑いながらデレクに忠告した。
デレクが仕事に戻ると、机の上には「さっきはありがとう」と書かれたリサからの手紙とクルードの海賊版CDが置かれていた。デレクは パソコンのチャットで、彼女と会話を交わした。次の日、デレクはクリスマス・パーティーの前に、馴染みのバーへ立ち寄った。すると ドレスアップしたリサが現れたので、デレクは一緒にハンバーガーを食べる。彼女に誘われて、デレクはマティーニを飲んだ。
会社のクリスマス・パーティーに参加したデレクは、マージに誘われて一緒に踊った。それを見ていたリサが歩み寄り、「代わって」と マージに告げる。デレクはリサと一緒に踊り、テキーラを飲んで心地良く酔っ払う。リサが冗談めかしてキスするよう誘うと、デレクは 「機会があったらね」と軽く受け流した。彼がトイレに行くと、リサが現れて個室に押し込み、抱き付いて服を脱がそうとする。デレクは 「やめるんだ」と諌めるが、リサは股間をまさぐる。デレクは「何のつもりだ」と鋭く告げ、険しい顔でトイレから出て行った。
次の日、デレクが出社すると、リサは何事も無かったかのように挨拶してきた。夕方、仕事を終えたデレクが駐車場へ行くと、車の助手席 にリサが乗り込んで来る。「パーティーのことを謝らないと」と彼女が言うので、デレクは「2人とも酔っ払っていた。忘れよう」と口に した。リサが「出来なかったら?」と問い掛けると、デレクは「何も無かったんだ」と告げる。リサが妖艶な笑みを浮かべて着ていた コートをはだけると、彼女は下着姿だった。
デレクは「ここから出るんだ」と指示するが、リサは従おうとしない。彼女が「貴方のことを考えると、仕事が手に付かなかったわ」と 誘惑するので、デレクは「いい加減にしろ。仕事を危険には晒せない。ここから出ろ」と怒鳴った。リサは彼を睨み付け、車から降りた。 デレクが帰宅すると、シャロンが暗い顔をしていた。彼女は「さっきまで姉と話してた。ティムが1年半の間、色んな女と浮気してたん ですって。3人の子供がいるのに」と言う。デレクは「僕は君を騙したりしないよ」と、柔和な表情で告げる。彼はリサのことをシャロン に話そうと思っていたのだが、そのタイミングを失った。
次の日、デレクはベンにリサのことを話した。「人事部に相談するよ」とデレクが述べると、ベンは「クビにするのか。慎重にやれよ。 彼女が逆の証言をしたらどうなる?みんなが君を疑うぞ」と忠告した。デレクは人事部のハンクに会い、「リサのことで、ちょっと厄介事 があってね」と切り出した。するとハンクは「彼女なら、もう来ないよ。辞めたんだ。別の人間を送って来た」と言う。「理由は?」と 尋ねると、「さあな」という答えだった。ともかくデレクは、もうリサと会わずに済むので安堵した。
帰宅したデレクは、家族と一緒にクリスマスを祝った。新年を迎えたデレクがシャロンと一緒に夫婦で帰宅すると、深夜にも関わらず、 パソコンにメールが届いていた。デレクがメールを開くと、リサの写真が何枚も表示された。彼はシャロンに気付かれないように、慌てて 消去した。出社したデレクは、会社のパソコンで「付きまとうな」とリサにメールを送る。するとスマイルマークが送られて来た。
ゲイジ・ベンディックス社は、ホテルに泊まって仕事をすることにした。デレクがベンやジョーと一緒にプールサイドで飲んでいると、 ウェイトレスが「あのバーの女性から」とマティーニを運んできた。デレクがバーのカウンターに目をやるが、誰もいない。席を外した彼 は、自宅に電話を入れた。妻と話していると、そこにリサが現れた。デレクが電話を切ると、リサは「私に会えたのに嬉しくないの」と 笑顔を浮かべる。「ここで何してるんだ」とデレクが訊くと、彼女は「仕事を危険には晒せないって言ったわ。だから仕事を辞めて一緒に なる」と言う。デレクが「私には家族がある」と述べても、リサは「ジョーとベンの考えが心配なのね」と意に介さない。
リサはデレクの目を盗み、彼のカクテルに薬を混入した。「610号室に来て」と彼女が言うので、デレクは「行かない。君は病気だ。私に 近寄るな」と厳しい口調で告げた。リサは微笑を浮かべて立ち去った。デレクは何も知らず、カクテルを飲み干した。フラフラになって 部屋に戻った彼は、ベッドに倒れ込んだ。部屋にリサが入って来るのが見えたが、意識が朦朧としているデレクは全く動けなかった。リサ が上に乗って来たのは分かったが、やがてデレクは意識を失った。
翌朝、デレクが目を覚ますと、リサの姿は無かった。彼が会議に出ていると、ホテルの従業員が近付いて「奥様が来ています」と告げる。 デレクがロビーへ行くと、待っていたのはリサだった。「逃げ出す口実が必要だと思って。お昼の予約を取っておいたわ。昨夜は素敵な夜 だった」とリサが言うので、デレクは腹を立てる。リサが「どうして他人のフリをするの」と訊くので、彼は「最初から他人だ」と告げる 。するとリサは怒って「最初から縁があったのよ。エレベーターでも、マティーニも、パーティーでも。独身だったら放っておかないって 言ったじゃない」と喚いた。
リサが「みんなの前で真実を話すわ。話してもいいの」とジョーたちの元へ行こうとするので、デレクは制止して「お前が何を言おうが、 2人には何も起きない」と冷たく告げた。しかしデレクが会議を終えて部屋に戻ると、リサがベッドにいた。デレクが「起きるんだ」と 言って連れ出そうとするが、リサは全く動かない。彼女は薬を飲んで自殺を図っていたのだ。慌ててデレクは、医者を呼んだ。
ベンの元に、シャロンから電話が掛かって来た。「デレクに連絡が取れないのよ。だから貴方に」とシャロンが言うので、ベンは言葉に 困って「ちょっとトラブルがあってね。自分の口から話すと思う」と告げる。しかし心配になったシャロンが「何があったの」と言うので 、ベンは簡単に事情を教えた。デレクが病院にいると、シャロンがやって来た。そこに刑事のモニカ・リースが現れ、ベンに事情を聞こう とする。デレクはシャロンを同席させて、事情聴取を受けることにした。
デレクはリサとの不倫関係について問われ、彼女が付きまとっていたので拒絶したことを話す。しかしシャロンは、まるで信じようとせず に激怒した。どれだけデレクが「彼女とは何の関係も無い」と説明しても、シャロンは耳を傾けようとしない。彼女はデレクがリサと不倫 したと決め付け、家から追い出した。デレクはリースから、リサが姉に連れられてサンフランシスコへ去ったことを知らされた。
デレクは何とかシャロンとの関係を修復しようと考え、彼女と2人でディナーに出掛けた。2人が外出している間に、リサが夫婦の家を 訪れた。彼女はベビーシッターのサマンサに「シャロンの友達のケイトよ」と言い、勝手に家へ上がり込む。そしてサマンサの目を盗み、 カイルを連れ出してしまった。仲直りして戻って来たデレクは、リサがカイルを連れ出したと知り、慌てて捜しに出る。車に乗り込むと、 後部座席にカイルの姿があった。カイルに異常は無く、デレクとシャロンは安堵する。だが、それで終わったわけではなかった…。監督はスティーヴ・シル、脚本はデヴィッド・ローヘリー、製作はウィル・パッカー、共同製作はニコラス・スターン、製作協力は ジョージ・フリン、製作総指揮はグレン・S・ゲイナー&マシュー・ノウルズ&ビヨンセ・ノウルズ&アーヴィン・“マジック”・ ジョンソン&デヴィッド・ローヘリー&デイモン・リー&ジェフ・グラウプ、撮影はケン・セング、編集はポール・セイダー、美術は ジョン・ゲイリー・スティール、衣装はマヤ・リーバーマン、音楽はジム・ドゥーリー。
出演はイドリス・エルバ、ビヨンセ・ノウルズ、アリ・ラーター、クリスティーン・ラーチ、ジェリー・オコンネル、ブルース・マッギル 、マシュー・ハンフリーズ、スカウト・テイラー=コンプトン、 ボニー・パールマン、ネイサン・マイヤーズ、ニコラス・マイヤーズ、リチャード・ルッコロ、ブライアン・ロス、ネルソン・マシタ、 ロン・ロッジ、ジョージ・ケツィオス、メレディス・ロバーツ、キャサリン・ジョージス、ダナ・クオモ、ジョン・ローランド、 ジャノーラ・マクダフィー他。
歌手のビヨンセが主演と製作総指揮を務めた作品。
脚本は『パッセンジャー57』『マネートレイン』のデヴィッド・ローヘリー。
監督のスティーヴ・シルはTVドラマのディレクターで、映画を手掛けるのは本作品が初めて。
デレクをイドリス・エルバ、シャロンをビヨンセ ・ノウルズ、リサをアリ・ラーター、リースをクリスティーン・ラーチ、ベンをジェリー・オコンネル、ジョーをブルース・マッギル、 パトリックをマシュー・ハンフリーズ、サマンサをスカウト・テイラー=コンプトンが演じている。音楽の使い方が上手くない。
あざといし、わざとらしい。
まず冒頭、音楽を流すことが目的なのかと思うぐらい、2曲もタイトルロールで使っている。1曲目はビヨンセの歌で、その間はデレクと シャロン夫婦が新居を移動しながらラブラブぶりを見せ付ける。
まあ最初に2人がラブラブなのを見せておくのは悪いことじゃないから、それはそれでいいけど、だったらタイトルロールはそれで 終わればいいのに、その後に2曲目があるのよね。ただ、その冒頭シーンは、それほど問題ではない。
深刻なのは、それ以降に待っている、サスペンスの根幹に関わる部分だ。
まずデレクがリサとエレベーターで2人になった途端、急に不安を煽るようなBGMが流れて、「この女との間で今から不吉なことが 起きますよ」というのを予告してしまう。
そのシーンは、そうじゃなくて、ごく普通に淡々と見せるべきでしょ。
なんで「この女、危険人物」というのをアピールしちゃうのか。それと、BGMから外れるけど、そのシーンのデレクの表情やカメラワークは、まるでリサにちょっとエロいものを感じたとか、そんな風 に見えてしまう(しゃがんだパンチラ寸前のアングルからカメラが写すとか)。
でも実際は、そうじゃないんだから、カメラワークにしろ彼の表情にしろ、「ただ単にエレベーターで女性と軽く会話を交わしました」と いう風に見せるべきでしょうに。
そこから『危険な情事』になっていくならともかく、そうじゃなくて女が一方的にストーカー化していくんだから、出会いの段階では、 そんな兆しは皆無にしておいた方がいいのよ。オフィスに入ってからも、そのBGMは流れ続けるし、ベンとジョーがリサの脚を見て「魅力的だな」と言うのが軽妙な雰囲気ではなく 不安を煽るような雰囲気の中で示される。
それは「これからデレクとリサが不倫関係に陥りますよ」という予兆としてのネタ振りであれば一向に構わないのだが、そうでない場合、 間違った演出と言わざるを得ない。その段階では、まだデレク夫婦に何の危機の予兆も与える必要は無い。
むしろ、危機が待ち受けている予兆なんて、観客に与えない方が得策だ。不安を煽らず、まだ「夫婦は円満で幸せいっぱいの生活をして います」ということで進めるべき。
リサは「ただの新しく来た秘書」という扱いでいい。他の連中がリサに色っぽさを感じたとしても、それは軽妙なテイストの中で触れる べき。
この映画の場合、最初から、やたらと雰囲気がシリアスに傾きすぎているんだよな。パトリックから盗み聞きを指摘されたリサが微笑して「貴方はしないの?上手くやったから大丈夫よ」と言ったり、彼を酒に誘ったりする 会話のシーンも、軽いノリでやっているんだから、BGMを変更するか、あるいはBGMを流さなければ、そんなに引っ掛かりは無く スルッと行くはずだ。
ところが、やはり不安を煽るようなBGMを流すので、リサがヤバいことを企んでいて、デレクが巻き込まれるんだということが分かり 過ぎてしまう。
BGMや演出が、先走りすぎているのだ。
とにかく、最初から延々と不安を煽る音楽を流し続けたのは大失敗で、サスペンスとしては逆効果になっている。リサの出勤2日目の時点で、デレクは彼女に対して何かしらの不信感を抱いているような素振りを見せるが、それも早すぎるでしょ。
最初は単なる有能な秘書、テキパキと仕事をこなす秘書と思い込んでいればいい。
リサが電話を盗み聞きしているのを観客に見せるのも、彼女がヤバい人物だというのをバラしちゃうのが早いと思うんだよな。
そこもやっぱり不安を煽るようなBGMを流しているので、どうやら意図的に早くからバラしているようだけど。そんな風にやっている から、シャロンが「電話したのに返事が無かった」と言い、デレクが「秘書は電話は無かったと言ってた」と述べた時点で、リサが報告 しなかったんだってのもバレバレになってしまうし。BGMと並ぶ大きな問題が、もう一つある。
それは、リサがエレベーターでデレクに会った時点から、既に特別な興味を抱いているように見えるってことだ。見えるだけじゃなくて、 どうやら本当に、その時点から狙いを定めていたようだ。
何か一方的に好意を抱くような、特別なきっかけがあったわけではない。何度か親切にされて、どんどん惚れて行き、感情がエスカレート したというわけでもない。
で、最初からそうであるなら、「実は過去に彼と会っていて、彼目当てで就職した」とか、そういう「実は」が設定されているなら ともかく、そういうわけでもない。
そこは何かしらのネタを用意しておくべきだろう。そんなに時間的余裕が無いわけでもないんだし(尺が短かったとしても、それは何の 言い訳にもならんけど)。
例えば「その会社でデレクと出会い、親切にされたことを恋愛感情と勘違いし、妻帯者と知らずに惚れて、後から妻帯者と知るけど、自分 の方がふさわしいと思い込んで常軌を逸した行動に出るように」という流れを描くことぐらい、やろうと思えば出来たはずなのだ。ビヨンセが主演ってことになっているんだけど、どう考えても脇役でしょ。
主役はイドリス・エルバとアリ・ラーターの2人だよな。
ビヨンセのポジションってぶっちゃけ、終盤に入るまでは、無名女優がやってもいいんじゃないかという程度の役柄だ。
ストーカーの恐怖に見舞われるのはデレクで、後半に入るまで、その危害がシャロンには及ばない。それどころか、シャロンは終盤に入る まで、リサがストーカー化していることさえ知らない。序盤で1度だけ会って、それだけの接点しか無い。
それでビヨンセが主役ってのは無いでしょ。
出番だって当然のことながら、そんなに多くないし。シャロンは病院で刑事からリサのことを知らされると、夫を全く信用せず、話を聞こうともせず、ハナっから不倫だと決め付けて激怒する 。
なんだよ、そのキャラ設定は。
こいつをヒロインとして配置しているのなら、もう少し夫を信じなきゃダメだろ。
「信じたいけど、リサが狡猾な手口でネタを撒いて来るので、疑念が深まり、夫婦関係がギクシャク」ということなら分かるのよ。
だけどリサは、シャロンに疑いを持たせるような罠を仕掛けたわけではない。単純に、デレクにアプローチして自殺を図っただけだ。「ホントに夫婦円満だったのか」と思うぐらい、シャロンは最初から夫を全面的に信用していない。
そのキャラ造形は大失敗でしょ。
冒頭で「夫婦はラブラブ」ってのを示したはずなんだから、そこの設定はキッチリと使おうよ。
そんな感じだから、ホントは「夫婦関係を壊すほど追いつめるリサの恐ろしさ」というのが伝わらなきゃいけないはずなのに、それが全く 伝わらない。
単にシャロンが嫉妬深くて夫を信用していない浅はかな女だとしか見えないのだ。その一方、リースという刑事が登場し、彼女は最初からリサの証言に疑念を抱いている。
つまり、言ってみりゃデレクの味方なのだ。
それは明らかに、シャロンと役割が逆だろ。
刑事までデレクのことを疑う中で、シャロンだけは夫を信じ、夫婦関係を守ろうとするという形にしておくべきじゃないのか。
残り20分ぐらいになって、シャロンが急に主役の位置に座ってリサと対峙し、「戦うヒロイン」になるが、まあバランスの悪いことと言 ったら。そこまでの流れからすると、クライマックスでリサと対峙するのは、どう考えたってシャロンじゃなくてデレクでしょ。なんで 肝心な時になって、そこまで主役だったデレクがカヤの外に置かれているんだよ。
こんな冴えないシナリオで、冴えないキャラを演じる企画なのに、なぜビヨンセは製作総指揮まで担当して出演しようと思ったんだろうか 。この映画のどこに魅力を感じたのか、サッパリ分からない。(観賞日:2012年12月31日)
第30回ゴールデン・ラズベリー賞
ノミネート:最低主演女優賞[ビヨンセ・ノウルズ]
ノミネート:最低助演女優賞[アリ・ラーター]