『ウエディング宣言』:2005、アメリカ&ドイツ

派遣の仕事をしているチャーリーは、犬の散歩を任されてビーチへ出掛けた。理想の相手との出会いを求めていた彼女は、ランニングを している男性と目が合って心を惹かれた。買い物に行った店でも、チャーリーは再び彼と遭遇した。チャーリーは友人のレミーとモーガン に、「同じ日に二度も彼と会った。何か意味があるのよ」と言う。その夜、チャーリーはモーガンに頼まれ、ケータリングの手伝いに 赴いた。パーティー会場へ料理を運ぼうとすると、そこには彼の姿があった。
モーガンはチャーリーに、その男性がケヴィン・フィールズという外科医で、パーティーの主催者であることを教えた。チャーリーは彼が 友人のキットたちと話しているテーブルの周囲をうろつき、その様子を窺う。ケヴィンはチャーリーに気付き、下がろうとする彼女を 追ってて声を掛ける。ケヴィンのテーブルにいたフィオナは2人が親しげに話しているのを見て嫉妬心を抱く。彼女は密かにケヴィンを 狙っていたのだ。
フィオナはチャーリーと2人になった時、「彼はゲイよ。隣にいるキットが恋人。クリスマスに結婚するらしいわ」と嘘を吹き込んだ。 後日、ケヴィンと再会したチャーリーは、フィオナの嘘を知った。連れていた犬がケヴィンの足に噛み付いたので、チャーリーは手当て するために自分の部屋へ彼を連れ帰った。また君と会いたい」と言われたチャーリーは、「ええ、喜んで」と答えた。ケヴィンは電話が 掛かって来ると、「母からだ。毎日掛かって来るんだ」と辟易した表情を浮かべた。
ケヴィンの母ヴァイオラは、テレビ番組の大物司会者だった。しかし番組プロデューサーは高齢であることを理由に彼女を降板させ、若い 女性を後任に据えることを決定した。プロデューサーの前では平静を装ったヴァイオラだが、楽屋に戻って激しく荒れた。番組収録に 臨んだ彼女は、17歳の人気歌手ターニャ・マーフィーのインタビューで彼女に嫌味を飛ばし、ついには掴み掛かってしまった。
クリニックで数ヶ月に渡るカウンセリングを受けたヴァイオラは、ストレスを溜めないようアドバイスされた。ヴァイオラは「休暇を取り 、息子と約束していたアフリカへ旅行するわ」と言う。彼女は付き人のルビーに「人生をやり直すわ。大事なのは家族との絆よ」と笑顔で 告げる。しかし「ケヴィンに彼女が出来たことを教えられたヴァイオラは、顔を強張らせた。ケヴィンはチャーリーを車に乗せて実家へ 向かいながら、家族のことを語る。ケヴィンは2歳の頃に父を亡くし、母は2番目の夫であったテレビ局の取締役に抜擢されて番組司会者 になった。3番目の夫は俳優のアレック・リグリーだが、彼がゲイだったので離婚した。
ヴァイオラは4度の結婚をしているが、常に仕事とケヴィンを優先してきた。仕事を失った現在では、ケヴィンが彼女の生き甲斐だった。 ケヴィンが邸宅に到着すると、ルビーが出迎えた。ルビーは「彼女を紹介するの?まだ退院したばかりよ。もう少し待ちなさい」と忠告 する。ヴァイオラはケヴィンからチャーリーを紹介されると、笑顔で優しく振る舞った。そんな様子を見ていたケヴィンは、母の眼前で チャーリーにプロポーズした。チャーリーは喜んでOKし、ケヴィンと抱き合う。ヴァイオラはショックを押し殺し、祝福している態度を 取った。チャーリーへの激しい憎しみを抱いたヴァイオラは、彼女の身元を徹底的に調査することにした。さらにヴァイオラは、別荘で 婚約パーティーを開き、そこで恥をかかせてやろうと考える。
バーベキューと聞かされて別荘に出向いたチャーリーは、招待客が正装しているのを見て動揺する。ヴァイオラはチャーリーを呼び寄せ、 各国から集まった著名人に「彼女は派遣社員よ」と紹介した。チャーリーはヴァイオラが用意したというドレスに着替えるが、まるで サイズが合っていなかった。無理に着ようとすると、ドレスは破れてしまった。その間にフィオナがケヴィンの元へ行き、たぶらかそうと する。ケヴィンの部屋を覗いたチャーリーは、彼がフィオナにキスされているのを目撃する。「貴方とは住む世界が違うわ」と泣いて 帰ろうとするチャーリーだが、ケヴィンから「僕には君しかいない」とキスされて元気を取り戻した。
ヴァイオラはルビーにチャーリーを調査させるが、攻撃するための材料は何も無かった。「何か見つけて」と要求されたルビーは、「毛髪 のサンプルでもあればFBIに持って行くわ」と言う。それは本気ではなかったが、ヴァイオラは「それよ」と口にする。ルビーから説得 されたヴァイオラだが聞く耳を貸さず、「姑と合わなければ結婚を考え直すかも」と考え、徹底的にいびってやろうと決意した。
彼女はチャーリーをランチに誘い出し、毛髪を入手する。ヴァイオラは「私が結婚式を仕切るわ」と言い、思い描いたプランを詳しく話す 。チャーリーが「嬉しいけど、自分たちで決めたいの」と断ると、ヴァイオラは心臓発作を起こした。バッグの中に薬が見つからず、彼女 は倒れてしまった。ヴァイオラが担ぎ込まれた病院にやって来たケヴィンは、チャーリーに「結婚式のことで母と揉めたそうだね」と言う 。「口答えはしたけど、そうでもしないと聞いてくれないんだもの」とチャーリーが反論すると、「母は寂しいんだよ。2人で支えて やらないと」と告げた。
ケヴィンは担当医のチェンバレンから、「お母様は重症です。このままでは精神に異常をきたす可能性があります。少なくとも週に2回は 通院して下さい。出来れば回復するまでは、ご家族が同居して看護してほしい」と告げられる。ケヴィンが「出張するんだ」と困っている と、チャーリーは「私が一緒に住むわ」と述べた。退院したヴァイオラは、チャーリーとケヴィンが同棲している家にやって来た。ルビー はチャーリーに、「家に銃はある?欲しくなるわよ」と言う。
ケヴィンが出張した後、ヴァイオラは精神が弱っているフリをして、チャーリーに「薬を持って来て」「水を持って来て」「一緒に寝て」 と注文する。次の夜、チャーリーがソファーに座ってテレビを見ているとヴァイオラが来て、ずっと喋り続けた。ヴァイオラの相手をして 疲れ果てたチャーリーは、モーガンに弱音を吐く。レミーはヴァイオラが隠していた調査書類を発見し、それをチャーリーに見せた。
チャーリーはレミーとモーガンに手伝ってもらい、ヴァイオラの部屋を徹底的に探る。ヴァイオラの服用している精神安定剤の瓶を発見 したレミーは、「これは精神安定剤じゃない」と指摘する。チャーリーは勤務している診療所の看護婦に調べてもらい、それがビタミン剤 だと知る。ヴァイオラが「病院へ行く」とルビーを伴って外出したので、チャーリーは尾行した。ヴァイオラはカフェに入るが、そこで 給仕をしていたのはチェンバレンだった。チェンバレンはニセ医者だったのだ。
ヴァイオラの嘘を知ったチャーリーは、反撃を開始した。まず家の中で犬を放し、帰宅したヴァイオラを脅かした。さらに別の犬たちを ヴァイオラの部屋に入れ、自由に遊ばせて室内をメチャクチャにした。ビタミン剤を睡眠薬と摩り替えてヴァイオラを眠らせ、自分の時間 を邪魔されないようにした。翌日、ついにチャーリーとヴァイオラは、互いに憎しみを抱いていることを明らかにする。主導権を握ろうと するチャーリーは、試食会の場にチェンバレンを呼んだ。しかしヴァイオラも負けておらず、フィオナを呼ぶ。さらにヴァイオラは、 チャーリーがアレルギーを持っているナッツをソースに混入し、彼女に食べさせようとする…。

監督はロバート・ルケティック、脚本はアーニャ・コショフ、製作はポーラ・ワインスタイン&クリス・ベンダー&JC・スピンク、 製作協力はマグナス・キム、製作総指揮はマイケル・フリン&トビー・エメリッヒ&リチャード・ブレナー、撮影は ラッセル・カーペンター、編集はスコット・ヒル&ケヴィン・テント、美術はミッシー・スチュワート、衣装はキム・バレット、音楽は デヴィッド・ニューマン。
出演はジェニファー・ロペス、ジェーン・フォンダ、エレイン・ストリッチ、マイケル・ヴァルタン、ワンダ・サイクス、アダム・ スコット、モネ・メイザー、アニー・パリッセ、ウィル・アーネット、 スティーヴン・ダンハム、ランディー・ヘラー、マーク・モーゼス、トミコ・フレイザー、ロシェル・フレクサー、ウェイン・ニッケル、 ジェニー・ウェイド、ブルース・グレイ、ザック・マクラーティー、ステファニー・ターナー、ハリエット・ハリス、ジミー・ジャン= ルイ、クリストファー・スコット他。


『キューティ・ブロンド』『アイドルとデートする方法』のロバート・ルケティックが監督を務めた作品。
原題の「Monster-in-Law」は、姑を意味する「Mother-in-Law」のもじり。
チャーリーをジェニファー・ロペス、ヴァイオラをジェーン・フォンダ、ヴァイオラの義母 ガートルードをエレイン・ストリッチ、ケヴィンをマイケル・ヴァルタン、ルビーをワンダ・サイクス、レミーをアダム・スコット、 フィオナをモネ・メイザー、モーガンをアニー・パリッセ、キットをウィル・アーネットが演じている。
ジェーン・フォンダは2001年にテッド・ターナーと離婚し、それと共に女優引退を宣言していたが、この映画で1989年の『アイリスへの 手紙』以来となる劇映画への復帰を果たしている(2002年のドキュメンタリー映画『デブラ・ウィンガーを探して』には本人役で出演して いる)。

ジェニファー・ロペスは明らかにミスキャスト。
彼女は見た目からしてゴツいし、いかにも強そうに見える。
っていうか実際、強い人だ。
もちろん、陰険な姑と真っ向から勝負するヒロインだから、強さは必要だ。でも、最初から強さが見えすぎちゃってるのは困る。最初の 段階では、ジェーン・フォンダと対等ではなく、「陰険な姑」として、弱者の立場でなくては困る。
それがジェニファー・ロペスだと、もう登場した段階から、対等どころか姑よりも強そうに見えちゃうんだよな。
ピュアで素直で穏やかで優しい淑女を演じているけど、まあ似合わないこと。

何しろJ.Loなので、相手がジェーン・フォンダであろうと全くビビらないだろうし、肉体的にも精神的にもタフな女にしか見えない。 日本人で例えるなら、ヒロインを江角マキ子にやらせているような感じなのよ。
それで何となく分かってもらえるんじゃないかな。
ねっ、この映画のヒロインには似合わないでしょ。
それこそ『キューティ・ブロンド』のリース・ウィザースプーンみたいに、「見た目は可愛いけど、強気な女性」が似合うような女優が 適役だったんじゃないかと。

邦題は「ウエディング宣言」だが、実際はチャーリーとヴァイオラの関係がメインであり、ケヴィンはオマケみたいなモンだ。だから、 チャーリーとヴァイオラが出会い、ヴァイオラが憎しみを抱くまでの話は、そんなに必要じゃない。
チャーリーが理想の相手を求めているとか、ケヴィンと一日に3度も出会って運命を感じるとか、ケヴィンに好意を抱いているフィオナ から嘘を吹き込まれるとか、口下手なチャーリーが電話で上手くアプローチできないとか、そんなところでゴチャゴチャと余計な手順を 踏んでいる意味が無い。
チャーリーがケヴィンと出会い、恋に落ち、結婚を決めるまでの経緯なんて、もっとサクサクと進めてしまえばいい。そこまでの経過で、 障害とか足踏みなんて何の必要性も無い。ナレーション・ベースで、ダイジェストに近いぐらいの処理でもいいぐらいだ。
っていうか、いっそのこと、最初から2人が交際している設定でも構わない。
出会いからの経緯を描いていることに何か効果があるのかというと、特に何も無い。その後に2人の恋愛劇が描かれていくのであれば話は 別だが、そうじゃないんだから。

そんな暇があったら、ヴァイオラが息子を溺愛していること、子離れ出来ていないことを描くために、もっと時間を割いた方がいい。その 部分が、ものすごく薄いんだよな。
っていうか、ヴァイオラを紹介する手順で描くのは「仕事をクビになって精神を病んでしまい、治療を受ける」という内容であり、息子 への溺愛ぶりを描こうという意識は見られない。
ぶっちゃけ、仕事をクビになるとか、それで精神をやられるとか、そういうのって、別に無くても構わないぐらいなんだよね。
そんなことより、息子を溺愛していることを描くべきなんじゃないかと。例えヴァイオラがクビになっていなくても、クリニックに入院 していなくても、ケヴィンの結婚に反対したり、チャーリーに攻撃的な姿勢を示したりしていただろうと推測できるし。
「クビになって治療を受けて」ってのは、マトモな精神状態じゃないってことをアピールしたいんだろうけど、それって必要かなあと。
むしろ、そういうのが無くても同じような行動を取る母親にしておいた方が、その異常性が際立って良かったんじゃないかと思うんだけど。

最初はチャーリーの物語として進行していくが、ヴァイオラが登場すると、そこからは彼女が主役の座を奪い取っていく。
彼女の様子が描かれている時だけでなく、チャーリーとケヴィンが合流しても、しばらくの間はヴァイオラが主役だ。
2人の行動に対するヴァイオラの反応、心情、態度、そういった諸々が描かれている。
チャーリーはすっかり脇役だ。
まあ能動的に行動するのがヴァイオラで、チャーリーは受け身の立場という時間帯が続くので、仕方が無いっちゃあ仕方が無いんだが。

ただ、ヴァイオラの嫌がらせが、全体的に地味なんだよな。
結婚式のプランを勝手に語るとか、それって何なのかと。
どうせ結婚式を挙げさせるつもりなんか無いんだから、そのプランってのは嘘だよね。で、それを喋って何の意味があるのかと。
結果的には「チャーリーが拒否し、ヴァイオラが倒れ、同居することになり、ヴァイオラがチャーリーに色々と世話を焼かせる」という 展開になったので、嫌がらせには繋がっているけど、結婚式のプランを語ったのは、そこまで考えてのことなのか。
だとしたら、すごく無駄に手間を掛けているとしか思えないぞ。

コメディーのはずなのに、なかなか弾けないんだよな。普通に恋愛劇としての描写になっている。
ヴァイオラが最初に仕掛けたケヴィン救出作戦のシーンで、もう呆れてしまった。ヴァイオラが罠を仕掛け、チャーリーがドレスを 破いたり、ケヴィンとフィオナのキスを目撃したりするのに、喜劇としての盛り上がりは皆無。
で、「落ち込んで帰ろうとするチャーリーがケヴィンの言葉とキスで元気を回復する」という、ただの恋愛劇としての着地になっている。
そしてヴァイオラの反応は描かないまま、そのエピソードを終わらせている。
いやいや、何をやってんのよ。
キスで元気回復ってのは別にいいさ。だけど、「罠を仕掛けて、それが成功しそうでほくそ笑むが、失敗に終わって歯ぎしりする」とか、 とにかくヴァイオラの反応は見せるべきでしょうに。
ただ恋愛劇だけを描いて終わらせるのなら、そこまで特異なヴァイオラのキャラクター設定なんて要らないでしょうに。

2人の対立劇が全く弾けないのは、それはヴァイオラ側だけの問題じゃなくて、受け手であるチャーリーのリアクションにも大いに問題は ある。 チャーリーは最初の内は攻撃を受けているだけで、前述した婚約パーティーでもそうだが、リアクションで笑いを取るわけではない 。退院したヴァイオラとの夕食シーンで「慰謝料について決めましょう」と言われ、フライパンで殴り付ける妄想をするという描写がある が、そこで初めて「反撃の姿勢」が見える程度。
結婚式のプランについて拒否した時も、そんなに敵対する感じは無かった。
ようするに、「チャーリーとヴァイオラが互いに相手への反感を抱き、笑顔で振る舞いつつ裏では攻撃作戦を展開する」という構図に到達 するのが遅いんだな。チャーリーは殴り付ける妄想を膨らませて以降、すぐに反撃を開始するのかというと、そうでもないし。
その後、幾つかの嫌がらせがあって、レミーが発見した調査書類や写真を見せられて、ヴァイオラの部屋を探って精神安定剤の嘘を知り、 それでようやく反撃が開始される。
遅いんだよな。

そんで、ようやくチャーリーとヴァイオラの本格的なバトルが始まったと思ったら、すぐに結婚式当日になってしまう。
で、ヴァイオラは急に物分かりが良くなり、チャーリーの方も急に優しくなり、2人のバトルは終了する。
その前にガートルードが来てヴァイオラを叱責しているので、それがきっかけで2人が和解するのかというと、そうではない。その叱責 とは無関係で、ヴァイオラは物分かりが良くなる。
だったら、ガートルードって何のために登場したんだよ。
せめて、彼女をキーパーソンにすべきでしょうに。

(観賞日:2013年7月27日)


第26回ゴールデン・ラズベリー賞(2005年)

ノミネート:最低主演女優賞[ジェニファー・ロペス]

 

*ポンコツ映画愛護協会