『アダルトボーイズ青春白書』:2010、アメリカ

1978年、レニー・フェダー、エリック・ラモンソフ、カート・マッケンジー、マーカス・ヒギンズ、ロブ・ヒリアードの5人は、小学生バスケットボール大会の決勝に挑んだ。コーチのブザーが指示を出す中、レニーたちは見事に優勝を飾った。ブザーはアーンショーの別荘を借り、祝賀パーティーが開かれた。それぞれの家族も集まる中でブザーはレニーたちを称賛し、「これからの人生も、今日の試合のようにプレーしてほしい。そうすれば後悔しない」とスピーチした。
30年後、レニーはハリウッドのタレントエージェントとなり、ビバリーヒルズで暮らしている。息子のグレッグとキースはビデオゲームに夢中で、レニーがボードゲームに誘っても全く関心を示さない。子供たちは生意気盛りで、メイドのリタに些細なことで文句を付ける。末娘のベッキーは庭で車を運転し、ベンチに激突して壊してしまう。レニーが慌てて駆け付けると、彼女は「わざとじゃないの。ナビを使おうとしてたの」と釈明する。「電話の人が言ってたわ。フェダーのコーチが天国へ行ったって。だからナビで天国の場所を調べたら、パパも天国に行けると思ったの」という彼女の説明を聞いたレニーは、ブザーが死んだことを知った。
他の4人にも知らせが届き、彼らは葬儀に参列するためニュー・イングランドへ赴いた。レニーはファッションデザイナーをしている妻のロクサーヌと子供たち、メイドのリタを連れて、教会へ赴いた。カートは妊娠している妻のディアンと娘のシャーロット、息子のアンドレ、ディアンの母のロンゾーニを伴って現れた。ロンゾーニはレニーに挨拶し、カートについて「娘が仕事をしている間、あの男は家で掃除だけ」と不満を漏らした。
独身のマーカスは、1人でやって来た。エリックはキャデラックを運転し、妻のサリーと娘のドナ、赤ん坊のビーンと愛犬を連れてやって来た。彼はレニーたちに、「俺は会社の共同経営者だ」と自慢する。ロブはレニーたちに、母親ほど年の離れた妻のグロリアを紹介した。サリーはレニーに、自分たちのためにアーンショーの別荘を借りてくれたことへの礼を述べた。1日だけでは借りることが出来ず、レニーは1週間も借り切っていた。しかし彼はロクサーヌのファッションショーがあるので、翌日にはミラノに発つことになっていた。
レニーは牧師から指名され、ブザーの遺志で弔辞を担当した。その後にロブが下手な讃美歌を歌ったので、レニーたちは堪え切れずに笑い出した。葬儀の後、レニー、エリック、カート、マーカスはロブの妻について語り合う。ロブは3度の結婚歴があり、グロリアは4人目の妻だった。リタがコーヒーを運んで来ると、メイドがいることを知られたくないレニーは慌てて誤魔化した。一行は別荘へ赴くが、そこで一泊することさえ望まないロクサーヌはレニーに皮肉を告げた。
一行は部屋割りを決めるため、別荘の中を見て回ることにした。最も豪華な部屋を見たエリックは「ここはレニーが使うべきだ」と言い、ロクサーヌは迷わず足を踏み入れようとする。しかしレニーは、子供たちの部屋にしようと提案した。レニーたち仲間5人は、庭に出て話をする。子供たちが全く外で遊ぼうとしないので、我慢できなくなったレニーは息子2人を強引に連れ出して「これから、ここにいる間は外で遊ぶんだ」と命じた。他の4人も子供たちを連れ出し、森へ連れて行った。レニーたちはロープを見つけて興奮し、エリックが湖に向かってダイブしようとするがタイミングを誤って木に激突した。
夜は全員でレストランへ出掛け、エリックが支払いを引き受けた。レストランの調理場ではバスケ大会で対戦したチームのディッキー・ベイリーが働いており、レニーに気付くと「あの試合の審判は酷かった。最後のショットは足がラインを踏んでた。得点は無効だ」と言う。彼は今も負けたことに納得しておらず、再戦を要求した。彼は挑発的な言葉を浴びせるが、レニーは「気が乗らない」と断る。エリックは明日の散骨について話す仲間に、朝の飛行機で出発することを打ち明けた。エリックが事情を説明すると、ロクサーヌは自分が嫌な女に見られる言い方だと感じて腹を立てた。彼女はレニーに怒りをぶつけ、「ミラノでのディナーはパスしましょう。好きなだけ灰を撒いたら、日曜の朝一番で移動するわよ」と告げた。
翌朝、レニーたち5人はカヌーを漕いで湖を移動し、散骨に向かった。散骨の際、ロブは「俺の結婚は失敗続きだ。娘たちとほとんど連絡を取ってないし」と泣きながら話すが、あと20分で娘たちが来ることを明かした。散骨を終えたレニーたちが別荘に戻ると、ロブの娘であるジャスミンがやって来た。彼女がセクシーな美人なので、レニーたちは目を奪われた。レニーたちは娘と上手く接することが出来ないロブを元気にするため、弓矢ルーレットをやることにした。レニーが矢を空高くに放ち、全員が一斉に散らばった。しかしロブは一人だけ動かずに留まり、その左足に落ちて来た矢が突き刺さった。
レニーたちが慌ててロブを別荘に連れ帰ると、彼の娘であるアンバーとブリジットが来ていた。アンバーはジャスミンと同じくセクシーな美人だったが、ブリジットはロブに良く似ていて髪型も同じだった。ベッキーは歯が抜けたので、興奮してロクサーヌに報告する。しかし電話を掛けていたロクサーヌは苛立ち、「今は電話中なの、お金なら後であげるから」と言ってしまう。お金をくれるのが妖精ではないと知ったベッキーは、ショックを受けて走り去ってしまう。
ロクサーヌから相談を受けたレニーは、「どこの親でも失敗する」と慰めた。レニーが子供たちの部屋へ行くと、全員がシャーロットから教わった糸電話で遊んでいた。そこでレニーは子供たちに頼み、大人の部屋にも糸電話を取り付けてもらう。レニーはロクサーヌに糸電話を使わせ、ベッキーと喋らせた。次の朝、出発の準備をしていたロクサーヌは、息子たちが湖で石切り遊びに興じる様子を目撃した。彼女はレニーに、あと数日は別荘に留まろうと告げた。
ロクサーヌから「今日は何をするの?」と問われたレニーの提案で、一行はプールへ出掛けた。マーカスはジャスミンとアシュリーに、セクシーなビキニの水着を用意した。男性陣と子供たちは、ウォータースライダーで遊ぼうとする。しかし行列が出来ていて先に進まないため、レニーたちは秘密の抜け穴を使った。一方、妻たちはマッチョな男に気付いて、サリーが誘惑して呼び寄せようとする。マッチョ男は近付いて来たが、見た目に似合わぬ甲高い声だったので大笑いした。
レニーたちは滑車でロープで渡ってプールへダイブするアトラクションへ行くが、グレッグが「すごく高いよ」と怖がったので他の場所へ移動しようとする。そこへディッキーが仲間のマルコムやワイリーたちと現れて挑発し、彼の息子がアトラクションを余裕でこなした。それを見たグレッグは「次は僕がやるよ」と言い、背中を向けてダイブした。ディッキーから指名されたレニーは回転しながらダイブし、見ていた面々の喝采を浴びた。ワイリーは逆さまになって滑車に捕まるが、足が抜けずに向こうの部屋へ激突した。一行は別荘に戻り、それぞれの遊びに興じた。夜になるとレニーたちは子供を眠らせ、大人だけで酒を飲みながらバーベキューを楽しむ…。

監督はデニス・デューガン、脚本はアダム・サンドラー&フレッド・ウルフ、製作はアダム・サンドラー&ジャック・ジャラプト、製作総指揮はバリー・ベルナルディー&ティム・ハーリヒー&アレン・コヴァート&スティーヴ・コーレン、共同製作はケヴィン・グレイディー、製作協力はダリル・キャス、撮影はテオ・ヴァン・デ・サンデ、美術はペリー・アンデリン・ブレイク、編集はトム・コステイン、衣装はエレン・ラッター、音楽はルパート・グレッグソン=ウィリアムズ、音楽監修はマイケル・ディルベック&ブルックス・アーサー。
出演はアダム・サンドラー、ケヴィン・ジェームズ、クリス・ロック、デヴィッド・スペード、ロブ・シュナイダー、サルマ・ハエック・ピノー(サルマ・ハエック)、マリア・ベロ、マーヤ・ルドルフ、コリン・クイン、ティム・メドウス、ジョイス・ヴァン・パタン、エボニー・ジョー=アン、ジェイミー・チャン、ダイ・クオン、スティーヴ・ブシェミ、マディソン・ライリー、アシュリー・ローレン、ジェイク・ゴールドバーグ、キャメロン・ボイス、アレクシス・ニコール・サンチェス、エイダ=ニコール・サンガー、フランク・ギンガーリッチ、モーガン・ギンガーリッチ、ナジ・ジェター、チャイナ・アン・マクレイン、ダン・パトリック、ティム・ハーリヒー、ブレイク・クラーク、ノーム・マクドナルド他。


『ビッグ・ダディ』『ナショナル・セキュリティ』のデニス・デューガンが監督を務めた作品。
脚本は主演&製作のアダム・サンドラーと『ダーティ・ワーク』『ディッキー・ロバーツ 俺は元子役スター』のフレッド・ウルフによる共同。
レニーをアダム・サンドラー、エリックをケヴィン・ジェームズ、カートをクリス・ロック、マーカスをデヴィッド・スペード、ロブをロブ・シュナイダーが演じているる。
他に、ロクサーヌをサルマ・ハエック・ピノー(サルマ・ハエック)、サリーをマリア・ベロ、ディアンをマーヤ・ルドルフ、ディッキーをコリン・クイン、マルコムをティム・メドウス、グロリアをジョイス・ヴァン・パタン、ロンゾーニをエボニー・ジョー=アン、アンバーをジェイミー・チャン、リタをダイ・クオンが演じている。

最初のシーンで5人が登場するが、その時点では誰の名前も出て来ない。
そのくせ、1人が観客席の女子にウインクしたり、1人が同級生の母親に色目を使ったりと、成長後のキャラに繋がる個性を微妙に示している。
だけど、全員の特徴を充分にアピールしているわけでもないんだし、ほぼ無意味と言ってもいい。
どのみち、そこは「小学校時代にバスケチームで優勝した」ということを示すことだけに意味があるのであって、それ以上の情報伝達能力は皆無に等しいのだ。

30年後のシーンに入ると、ベッキーが「電話の人が言ってたわ。フェダーのコーチが天国へ行ったって」と語る。
しかし、レニーがブザーの死を知る手順として、何故そんな方法を採用したのか理解に苦しむ。普通に「電話で知らされる」という形じゃダメなのか。
っていうか根本的な問題として、「コーチの死」という要素を持ち込むことに対する疑問があるんだよね。
この映画って、ようするに「昔の仲間が久々に故郷で集まる」という状況さえ作れば事足りるわけで。「コーチが死んだ」という出来事には、ほとんど意味が無いのよね。
実際、葬儀と散骨シーン以外はブザーの死なんて何の関係も無く進行するし、彼の言葉が5人に影響を与えている様子も無いし。

この映画、メインの5人と家族が登場するのだが、その紹介や整理が上手く出来ていない。
例えば、ロクサーヌはファッションデザイナーなのだが、出来ることなら早い段階で明確にしておきたいところだ。
しかし、彼女の職業についてハッキリとした形で言及するシーンは、なかなか訪れない。
グロリアが挨拶した時、ようやく「貴方のデザイン、好きよ」と口にする。だが、これはヒント程度の台詞に過ぎず、それだけでは「ファッションデザイナー」という職業が確定しない。

その直後、レニーがサリーに「明日、ロクサーヌのファッションショーがある」と言うので、ここでロクサーヌがファッションデザイナーだと確定する。
しかし少し遡って考えると、そもそもブザーの死が伝えられる前の段階でロクサーヌが登場しておらず、葬儀へ赴くシーンが初登場という時点でキャラの出し入れに難があると言える。
他の面々にしても、レニーの息子たちの生意気キャラの表現も充分とは言えない。カートが主夫なのも、「カートが家で料理を作っているが下手なので家族に不評」という描写だけでは分かりにくい。
単純な問題として、キャラが多すぎるのだ。それぞれの家族はオマケ程度に留めておいて、「元仲間の5人が久々に集まって旧交を温める」という部分に絞り込めば良かったのだ。

それぞれの家族を登場させて、「別荘で大所帯による生活が繰り広げられる」ということに大きな意味を持たせた物語が描かれるのなら、「まるで整理できていない」という問題はあるものの、一応の存在意義は認められるかもしれない。
しかし、家族の存在なんて、ほとんど意味が無いのだ。
何しろ、この映画にはストーリーらしきストーリー、ドラマらしきドラマなど存在しない。
この作品で描かれているのは、「昔の仲間5人が久々に集まって、故郷で一緒に過ごす数日間」という様子なのだ。だから、そこに家族などいなくても全く問題は無い。
それどころか、むしろ家族なんて邪魔なだけなのである。

一応、それぞれの家族には、それぞれの事情が用意されている。
例えばレニーの場合、贅沢な生活に慣れ切った生意気な息子たちがいる。そこを使って、「そんな息子たちに外での遊びを覚えてほしいレニー」という様子を描いている。
他の家族にも、それぞれの問題が用意されている。
しかし、それらの要素を充分に膨らませてドラマを描き、丁寧に処理できているとは到底言い難い。
何か問題が起きても簡単に解決するし、いつの間にか変化が起きていたりする。

例えばレニーは、息子2人がビデオゲームばかりに夢中で、全く外で遊ばないことを気にしている。
しかし、彼らは他の子供たちと同様、シャーロットから教わった糸電話で楽しそうに遊んでいる。そんなアナログで貧乏臭い遊びなど嫌がりそうだが、なぜか普通に受け入れている。
そして翌日になると、彼らは自然の中での遊びを満喫するようになる。
そういう変化に説得力を持たせるためのドラマなど無いし、心情に変化を生じさせるための出来事も見当たらない。

糸電話ではベッキーも楽しそうに遊んでいるが、その直前にロクサーヌの言葉でショックを受けたことなど微塵も感じさせない。すっかり忘れているような様子なので、その後でロクサーヌが話して謝らなくても何の問題も無さそうに思える。
そのように、全ての問題は雑に片付けられている。
終盤に入ると、それぞれの家族が抱えていた本音を次々に吐露するが、そこへ向けた流れを上手く作ることが出来ていないので、「時間が押し迫って来たので、慌てて片付けに入っている」としか感じない。
そして、それらの問題は提示された直後に、あっさりと解決される。

ではコメディーとしてはどうなのかと言うと、笑いを作ろうとしている部分はヌルくて全く弾けておらず、ことごとく不発に終わっている。
例えば、エリックがターザンロープで誤って木に激突しても、これといったオチは無い。
「エリックが骨折したように見せ掛けて、すぐに嘘だとバラす」という描写があるが、消化不良のような状態で次のシーンへ進む。
湖を渡る途中でエリックが立ち小便をすると女性たちのボートが通り掛かるが、それを見送るだけで終わる。特に笑いを取ろうという意識も見えない。

っていうか、もはやコメディーと言うよりも、「オッサンたちが久々に集まり、楽しい気分になって浮かれている」という印象の方が遥かに強い。
それでも、これが例えば演技だけじゃなく実際に「久々に再会した面々」で、彼らに思い入れがあれば、そんなメンツの楽しそうな様子を見ているだけで、こっちも嬉しくなれるだろう。
でも、「久々に再会した」ってのは映画としての設定に過ぎない。
なので、それだけで満足するってのは、かなり難しいことだ。

この映画って、ようするに「アダム・サンドラー、ケヴィン・ジェームズ、クリス・ロック、デヴィッド・スペード、ロブ・シュナイダーが勢揃いしました」ってことだけが売りであって、それ以上でも、それ以下でもないんだよね。
日本だと、お世辞にも知名度が高いとは言えない面々だけど、アメリカでは大人気のメンツなわけで。そんな5人が共演しているというだけでも、充分なセールスポイントになるわけだ。
だからこそ繰り返しになるが、「元仲間の5人が久々に集まって旧交を温める」という部分に絞り込めば良かったのだ。
ちなみに最後は「バスケの試合の再戦」が行われるが、そんなの誰も期待しちゃいないし、もはや蛇足でしかない。

(観賞日:2018年9月21日)


第31回ゴールデン・ラズベリー賞(2010年)

ノミネート:最低助演男優賞[ロブ・シュナイダー]

 

*ポンコツ映画愛護協会