『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』:2019、アメリカ

2014年、サンフランシスコ。ゴジラとムートーの戦いで街が破壊される中、マークとエマのラッセル夫妻は息子のアンドリューを必死で捜索していた。幼い娘のマディソンを抱いたエマは、咆哮するゴジラの姿を見上げた。5年後。そんな出来事を回想したエマは、家族写真を寂しげに眺めた。サンフランシスコでは2014年の犠牲者を追悼する集会が執り行われ、一部からはモナークの責任を追及する声が上がる。ゴジラを捜索するモナークの活動が、環境破壊に繋がっているという指摘も出ていた。政府が巨大生物の絶滅計画を進める中、モナークの最高幹部に対する厳しい声が高まっていた。
成長したマディソンは、離れて暮らすマークからのメールに返信しようとしていた。エマはマークとの交流を快く思っておらず、「貴方が傷付くのを見たくないの」と告げた。エマが「いいニュースがある。仕上げたわよ」と言った直後、建物が揺れた。窓の外に目をやったマディソンは、「きっと上手く行く」と呟いた。エマは無線連絡を受け、マディソンを連れて隔離エリアへ向かった。エマとマディソンは、中国の雲南省にあるモナークの第61前哨基地で暮らしていた。
エマはティム・マンチーニ博士から、巨大な卵の放射線レベルが急に上昇したことを知らされた。卵はエマたちの眼前で孵化し、モスラの幼虫が誕生した。しかし封鎖システムが動かず、ティムは「誰かが妨害している」と焦る。封鎖チームは暴れるモスラを制圧しようとするが、攻撃を受けて逃げ出す。ティムがモスラを抹殺しようとすると、エマが制止して「私が抑える」と告げた。彼女は完成させたばかりの装置「オルカ」を起動させ、モスラの動きを制御した。そこへアラン・ジョナが傭兵部隊を率いて突入し、研究者たちを射殺した。
ワシントンではモナークに関する公聴会が開かれ、委員長を務めるウィリアムズ上院議員は怪獣を抹殺しない方針を糾弾した。芹沢猪四郎は「怪獣たちを無理に目覚めさせたのは人間だ。かつて彼らは動物の王として地球を支配していた」と主張し、コジラと共生する道を探るべきだと訴えた。緊急の連絡を受けた芹沢とヴィヴィアン・グレアムは、急いで議場を去った。コロラドでマークが狼の写真を撮っていると、芹沢とヴィヴィアン、技術統括官のサム・コールマンがオスプレイで飛来した。彼らはエマとマディソンが連れ去られたことをマークに知らせ、敵の目的はオルカだと告げた。
オルカの原型を作ったのはマークで、試作品は壊したはずだった。「エマが作り直した。ずっと改良していた」とヴィヴィアンが教えると、マークは「操るためにか?」と苛立った。「オルカは鯨を沿岸から遠ざけるために開発した。もし怪獣と交信できたとして、怒らせる周波を出したらサンフランスシコが再現される」と彼が言うと、芹沢は「だからこそ取り戻したい」と述べた。協力を要請されたマークは承諾するが、エマと最後に話したのは3年前だった。
サムはエマが作り出したオルカの周波数をマークに見せ、芹沢は巨大生物が合計17体だと教えた。ゴジラ以降に巨大生物は増え続けており、大半は冬眠状態で発見されている。「なぜ殺さない?」とマークが訊くと、芹沢は「中には友好的な怪獣もいるんじゃないかと思う」と答えた。ゴジラを憎むマークは、「寝ぼけたことを」と不快感を剥き出しにした。一行はバミューダ海域の第54前哨基地に到着し、ゴジラを研究するための施設だとサムはマークに説明した。
芹沢たちは対策会議を開き、考古人類学者のアイリーン・チェンや生物物理学者のリック・スタントン博士、陸軍のダイアン・フォスター大佐やジャクソン・バーンズ海軍兵曹長たちが出席した。ヴィヴィアンはエマとマディソンを誘拐した一味のリーダーが、元イギリス陸軍大佐で環境テロリストのアラン・ジョナだと説明した。ジョナは資金作りのため、怪獣の遺伝子の闇取引に手を出していた。ダイアンはジョナたちの目的がモスラの捕獲にあると睨み、作戦を展開しようと考えていた。マークは「罠に落ちるだけだ。モスラに気を取られている隙に、奴は大物を狙う」と言い、ゴジラを始末しろと要求した。
ジョナの一味は南極の第32前哨基地を襲撃し、所員を全滅させた。基地の地下ではモンスター・ゼロが氷漬けで眠っており、ジョナたちは目覚めさせるための作業を開始した。エマはオルカを使い、モンスター・ゼロの周波数を調べ始めた。第54前哨基地ではゴジラの接近を受け、戦闘態勢に入った。マークは勝ち目のない戦闘を避けるべきだと主張し、銃を引っ込めろと要求した。ダイアンは芹沢の指示を聞き入れ、武装解除を命じた。
ゴジラは基地の周囲を旋回するが、心拍数が落ち始める。マークは「シールドを上げろ。敵じゃないと知らせる」と言い、芹沢は彼の意見を採用した。ゴジラは威嚇行動を示し、その場から去った。マークは「あいつは何かに反応した。オルカかもしれない」と言い、芹沢から予測進路を問われたリックは南極だと答えた。芹沢たちは顔を強張らせ、マークを連れて南極へ向かう。ヴィヴィアンはマークに、南極で監視下にあるモンスター・ゼロはゴジラとトップ争いをしていた巨大生物であることを話す。アイリーンは世界中の神話や伝説を調べたが、モンスター・ゼロの記録は残っていなかった。
リックはゴジラがベネズエラ沖で探知不能になったことを報告し、海底の巨大トンネルに潜り込んだのだろうと述べた。一行は専用機のアルゴで南極に到着し、攻撃部隊が基地に突入する。ジョナたちは氷塊に起爆装置を設置し、基地からの逃亡を図って部隊と戦う。マークはエマとマディソンを救出するため、勝手に基地へ乗り込んだ。彼は一味を見つけて拳銃を構え、エマとマディソンに「来るんだ」と呼び掛けた。しかしエマは拒否し、起爆装置のスイッチを押して氷塊を爆破した。
エマはマディソンを連れてジョナたちと共に脱出し、オルカを使ってモンスター・ゼロを蘇らせた。マークやモナークの面々はモンスター・ゼロに襲われ、窮地に陥った。そこへゴジラが出現し、モンスター・ゼロと戦い始める。ヴィヴィアンが命を落とした直後、モナークの救援機が駆け付けた。爆風に吹き飛ばされたマークは、モンスター・ゼロが飛び去るのを見ながら意識を失った。ゴジラはアルゼンチン沖で潜水艦に確認され、モンスター・ゼロはブラジルのハリケーンに飛び込んで姿を消した。
アルゴで目を覚ましたマークは、エマが自らの意思でモンスター・ゼロを目覚めさせたのだと芹沢たちに話す。ジョナたちが全ての怪獣を目覚めさせようとしていることは明白であり、マークは「誰も今まで気付かなかったのか」とモナークの対応を批判した。モナークの面々は、ゴジラがメキシコのイスラ・デ・マーラにある第56前哨基地へ向かっていることを掴んでいた。そこへエマから通信が入り、「世界を救いたい」と告げた。彼女の身勝手な言葉に、マークは激怒した。
エマはマークたちに対し、「アンドリューの死を無駄にしないために、私は答えを探し続けた。人類が支配者になってから、地球の破滅は始まっている。私たちが病原菌なの。でも地球にも怪獣という免疫力がある。怪獣たちに地球を破壊させれば環境は再生できる。彼らを解放しなければいけない。秩序を取り戻す」と語る。彼女はシェルターへの避難を勧めて、通信を終えた。リックはエマが第56前哨基地にいないこと、どこかのシェルターに潜んでいることを突き止めるが、具体的な場所は分からなかった。
アランは第56前哨基地の隔離システムをシャットダウンし、エマはマディソンの説得を聞かずにオルカを起動させた。モナークはGチームを派遣してイスラ・デ・マーラを避難させていたが、火山が爆発してラドンが出現した。モンスター・ゼロがハリケーンと共に向かっていることを知ったマークは、芹沢に「ラドンの鳴き声に応じているんだ」と告げた。モナークの飛行中隊はラドンを攻撃するが、たちまち全滅した。アルゴはラドンを引き付けてハリケーンに向かい、モンスター・ゼロと戦わせた。
アルゴが避難民を収容しようとする中、モンスター・ゼロはラドンを撃退した。ウィリアム・ステンツ提督からアルゴに通信が入り、戦闘を停止して退避するよう芹沢たちに命じた。開発中のオキシジェン・デストロイヤーが完成し、半径3.6キロ以内の生物を全て破壊できると彼は説明した。芹沢は「ゴジラを殺すべきではありません」と訴えるが、ステンツは「もう遅い。ミサイルは発射された」と述べた。アルゴは何とか避難民を収容するが、モンスター・ゼロが迫って来た。
そこへゴジラが現れ、モンスター・ゼロに襲い掛かる。2体が争っていると、ミサイルが飛来した。海中で大爆発が起きるがモンスター・ゼロは飛び去り、ゴジラの生体反応は消えた。アリゾナやミュンヘンなど各地の前哨基地から次々に巨大生物が出現して暴れ始め、ジョナは「順番に目覚めさせる予定だっただろう?」とエマに尋ねる。エマが「私はやってない」と否定すると、ジョナは「王が目覚めた」と口にした。マディソンは「ママこそ怪物」とエマを批判し、その場を離れた。
雲南省でモスラを調査するヒューストン・ブルックス博士は、モンスター・ゼロが全ての巨大生物を呼んでいると確信した。ブルックスやアイリーンの双子の妹であるリンたちは、滝の中で蛹になっていたモスラが羽化して飛び立つのを目にした。マディソンはエマから「他に方法は無かった」と言われ、「アンドリューが喜ぶと思うの?」と声を荒らげた。アイリーンは芹沢たちに、「モンスター・ゼロは自然界の秩序に属していない」と告げる。神話から手掛かりを得た彼女はモンスター・ゼロが宇宙生物だと断言し、キングギドラと呼ばれていたことを話した。
第54前哨基地に戻ったマークたちは、ステンツから世界各地で巨大生物による甚大な被害が出ていることを知らされる。マークは全ての巨大生物がボスのキングギドラに従っているのだと説明し、「ギドラを倒せば他の生物も止まる」と言う。しかしギドラに対抗できるのはゴジラだけであり、モナークには打つ手が無かった。エマはジュナに、「モンスター・ゼロがやろうとしているのは地球の破壊よ。巨大生物との共存どころか待っているのは破滅しか無い」と語った。
ジュナが「我々は、人間が救いようのない生き物だと知った。既にパンドラの箱は開かれた。閉じることは出来ない」と言うと、エマは「出来るかも」と口にする。彼女は「フェンウェイ・パークに部下を送ってオルカか大きな音を出せば奴らを止められるかも。その間に、モンスター・ゼロの弱点を見つけ出す」と話すが、ジュナは「世界は怪獣の物だと君は言っていたはずだ」と賛同しなかった。そんな2人の会話を、マディソンがスピーカーを通じて聞いていた。
マークは基地を離れ、マディソンの捜索に向かおうとする。その上空をモスラが飛んで行き、芹沢は「この歌を理解できるのはゴジラしかいない」と呟く。モスラの呼び掛けに応じたゴジラの生存が判明するが信号が微弱で場所までは特定できなかった。するとマークは芹沢に核が何発残っているのか尋ね、「ゴジラを救う」と告げた。米軍はキングギドラを本部から引き離し、マークや芹沢たちは潜水艦で基地を出た。一方、マディソンはオルカを盗み、基地を抜け出してボストンのフェンウェイ・パークへ向かった…。

監督はマイケル・ドハティー、原案はマックス・ボレンスタイン&マイケル・ドハティー&ザック・シールズ、脚本はマイケル・ドハティー&ザック・シールズ、製作はメアリー・ペアレント&アレックス・ガルシア&トーマス・タル&ジョン・ジャシュニ&ブライアン・ロジャーズ、製作総指揮はザック・シールズ&バリー・ウォルドマン&松岡宏泰&大田圭二&ダン・リン&ロイ・リー&坂野義光&奥平謙二、共同製作はマリセル・パグラヤン&クリフ・ラニング&アリ・メンデス&ジェイ・エイシェンフェルター&マット・オールソップ、製作協力はリチャード・ミリッシュ&シリット・ブラッドリー、撮影はローレンス・シャー、編集はロジャー・バートン&リチャード・ピアソン&ボブ・ダクセイ、美術はスコット・シャンブリス、衣装はルイーズ・ミンゲンバック、視覚効果監修はギヨーム・ロシュロン、視覚効果プロデューサーはマリセル・パグラヤン、音楽はベアー・マクレアリー。
出演はカイル・チャンドラー、ヴェラ・ファーミガ、ミリー・ボビー・ブラウン、チャン・ツィイー、渡辺謙、ブラッドリー・ウィットフォード、サリー・ホーキンス、チャールズ・ダンス、トーマス・ミドルディッチ、アイシャ・ハインズ、オシェア・ジャクソンJr.、デヴィッド・ストラザーン、アンソニー・ラモス、エリザベス・ラドロー、ジョナサン・ハワード、CCH・パウンダー、ジョー・モートン、ランドール・P・ヘイヴンズ、ライル・ブロカトー、ジミー・ゴンザレス、TC・マサーン、ケネス・イズラエル、ジャスティス・リーク、アル・ヴィセンテ、ローズ・ビアンコ、ガブリエル・シルヴァ、スカイラー・デニー、ケリー・ガーナー他。


2014年の映画『GODZILLA ゴジラ』の続編で、ワーナー・ブラザースとレジェンダリー・ピクチャーズの「モンスターバース」シリーズ第3作。
監督は『クランプス 魔物の儀式』のマイケル・ドハティー。脚本も同じく『クランプス 魔物の儀式』のマイケル・ドハティー&ザック・シールズ。
芹沢役の渡辺謙、ヴィヴィアン役のサリー・ホーキンス、ステンツ役のデヴィッド・ストラザーンが前作からの続投。
マークをカイル・チャンドラー、エマをヴェラ・ファーミガ、マディソンをミリー・ボビー・ブラウン、アイリーン&リンをチャン・ツィイー、リックをブラッドリー・ウィットフォード、アランをチャールズ・ダンス、サムをトーマス・ミドルディッチ、ダイアンをアイシャ・ハインズ、ジャクソンをオシェア・ジャクソンJr.が演じている。

レジェンダリー・ピクチャーズは本作品に向けて、東宝からゴジラに加えてキングギドラ、モスラ、ラドンの権利を購入した。
その理由は簡単で、怪獣プロレスをやるためだ。『三大怪獣 地上最大の決戦』とか『怪獣大戦争』みたいなことをやりたかったのだ。
だったら他の怪獣も買えばいいじゃないかと思うかもしれないが、どうやら値段が高かったようで、キングギドラ&モスラ&ラドンに絞り込んでいる。
しかし数と種類は欲しいので、他には前作のムートー、さらにはベヒモス&スキュラ&メトシェラという「いや誰だよ」と言いたくなる新たなモンスターも登場している。

いっそ開き直って怪獣プロレスに特化しちゃってもいいんじゃないかと思うが、ラッセル一家の家族ドラマを大きく扱っている。
怪獣映画だけど人間ドラマを充実させようってのは昔から良くあることだし、それが絶対にダメだとは思わない。ただ、この映画に関しては、完全に失敗だったと断言できる。
その理由は、持ち込んだドラマがクソだからだ。
怪獣を憎む理由は分かるが、「ゴジラを殺せば全て解決」としか言わずに視野がものすごく狭くなっているマークも、環境テロリストになっているエマも、どっちも不快感たっぷりのキャラでしかない。
マディソンが唯一の救いではあるのだが、それを簡単に打ち消すほどの嫌悪感を両親が放ってしまう。

特にエマの嫌悪感は強烈で、狼のオシッコぐらいの悪臭だ。
何しろ彼女は、目的を達成するためなら夫を殺そうとするような女性なのだ。
起爆装置を押す時に「ごめんなさい、逃げて」とは言うけど、爆破やモンスター・ゼロの攻撃でマークが死ぬ恐れは充分にあるわけで。
つまり彼女はマークを犠牲にしてでも、自分の目的を遂行することを優先したわけだ。
逃げる時に「申し訳ないと思っています」みたいな顔をされても、それで許されることなんて何も無い。

エマの「人類は地球にとって害悪であり、破壊と再生が必要」という確信犯のキャラは、映画の世界では何度も使われてきたパターンだ。
だから新鮮味は皆無だし、「またかよ」と思ってしまう。
。同じような環境テロリストでも、先輩たちとの差異やエマならではの特徴が何かあるのかというと、特に見当たらない。ハッキリ言って、環境テロリストとしては凡庸極まりないキャラ設定となっている。
グリーン・ピースやシー・シェパードのような環境テロリストを、痛烈に皮肉る描写になっているわけでもない。

後半に入るとエマはジョナと決別し、完全ネタバレだが、最終的には命を落とす。
だけどエマが死んでも、彼女が犯した醜悪で卑劣な重罪からすると、それでケジメを付けたことには全くなっていないからね。
むしろ「苦悩してします」ってのを申し訳程度に見せたり、終盤で善玉に寝返ったりするのも含めて、すんげえ不愉快だからね。
いっそのこと、最後までイカれた確信犯のままで無様に死んでくれた方が、まだ少しはマシだわ。

そもそもエマが死ぬのも「自分の考えは間違っていた」と完全に気付いたからじゃないしね。贖罪の気持ちになっているわけじゃなくて、ただ娘を助けるためにジョナと決別しただけだからね。
だから死の間際も、彼女はキングギドラに向かって「目覚めよ、王よ」と口にしている。
つまり性根の部分は、「怪獣至上主義の環境テロリスト」のままだからね。
仮にキャラとしての収支が合っているとしても(実際は大赤字だけど)、計算式はデタラメだからね。

ヴィヴィアンの淡白すぎる死に様には、すっかり呆れ果ててしまう。
前作から続投している数少ない主要キャラクターを、そんなに簡単に殺すかね。
そこに「どんな人間も怪獣の脅威の前では無力に等しい」というメッセージ性でもあればともかく、そんなの皆無だからね。ただ何も考えず、無雑作に殺しているだけだからね。
この後もモンスター・バースは続いて行くんだし、「ゴジラ」シリーズが続いて行く可能性だってあるはずなんだから、1人ぐらいは最初から続投しているキャラを残しておいてもいいだろうに。

それを言い出したら、ホントは芹沢を生き残らせるのがベストじゃないかとは思うのよ。前回も今回も、ヴィヴィアンより彼の方が役割は大きいしね。でもネタバレになるけど、その芹沢も殺している。
彼の場合はヴィヴィアンと違って、見せ場としての死に様が用意されている。
だけど、こっちはこっちで「それは絶対に間違っているぞ」と強く抗議したくなるような内容になっているのよね。
なんと芹沢は、オキシジェン・デストロイヤーを使ってゴジラを蘇らせるのだ。

そもそも芹沢は前作から「怪獣を抹殺すべきではない。共生の道を探るべきだ」と主張していたし、ゴジラに対して「動物の王」としての敬意を持っていたキャラだ。
だから、そんな流れを考えれば、彼が「ゴジラを復活させてモンスター・ゼロと戦わせよう」と考えるのは、ちゃんと筋が通っている。
ただ、そのために「オキシジェン・デストロイヤーを使って自分は死ぬ」という1954年の『ゴジラ』における芹沢博士と同じ行動を取らせるのは、ゴジラに対する冒涜でしかないだろうに。

ハリウッド映画が放射能汚染の影響を軽視し、核兵器を安易に使うのは今に始まったことじゃないので、「そういう体質」ってことで無視しておくとしよう(ホンマはアカンねんで)。
しかし芹沢に「核兵器を使ってゴジラを復活させる」という行動を取らせるのは、さすがに受け入れ難い蛮行だ。
マイケル・ドハティー監督がホントに「ゴジラ」シリーズを愛しているのなら、リスペクトがあるのなら、そんな展開は絶対に許容できないはず。
どうやら彼はホントに「ゴジラ」シリーズの大ファンらしいのだが、そんなシーンを平気で用意している時点で、幾ら「熱烈なファン」と公言されても信用できなくなる。

マイケル・ドハティー監督のコメントを知って、「やっぱり彼は間違っている」と確信できた。
彼は1954年版『ゴジラ』の芹沢について「我々自身の神を殺した」と捉え、今回の芹沢に「かつての芹沢の失敗を正すために行動している」という設定を持ち込んだのだ。
だけど、1954年版『ゴジラ』の芹沢は地球を救うため、人類を救うために、オキシジェン・デストロイヤーを使って命懸けでゴジラを倒したのだ。
それを「失敗」として全否定してしまうのは、『ゴジラ』という作品を全否定しているのと同じだぞ。

(観賞日:2021年5月6日)


第40回ゴールデン・ラズベリー賞(2019年)

ノミネート:最低序章&リメイク&盗作&続編賞


2019年度 HIHOはくさいアワード:第1位

 

*ポンコツ映画愛護協会