『グロリア』:1999、アメリカ

仮出所したグロリアは、ルビー率いるギャングの一員ケヴィンに会うため、ニューヨークへ向かった。彼女は恋人ケヴィンの身代わりとして、刑務所に入っていたのだ。そのケヴィンの一味は、ギャングの重要機密が入ったフロッピーを持ち出した会計士ジャックと家族を殺害した。ジャックは息子のニッキーを逃がしていたが、すぐに捕まった。
グロリアはケヴィンに再会するが、彼に利用されていたと気付く。彼女は銃でケヴィン一味を脅し、ニッキーを連れて逃亡した。ニッキーの家族が殺されたと知ったグロリアは、彼をマニー叔父の元へ連れて行く。だが、マニーは既に殺害されていた。
グロリアは絶縁状態にある姉ブレンダの元を訪れるが追い払われてしまい、安モーテルに潜伏する。保護観察中のため、グロリアは月曜にはマイアミに行かねばならない。彼女は教会に出向き、神父にニッキーのことを頼む。だが、ニッキーがケヴィン達に捕まってしまう。グロリアは親友ダイアンの協力を得て、ルビーに取引を持ち掛ける…。

監督はシドニー・ルメット、脚本はスティーヴ・アンティン、製作はゲイリー・フォスター&リー・リッチ、共同製作はジョシー・ローゼン、製作協力はアンバーレン・ブリスキー=コーエン&ドナルド・J・リーJr.、製作総指揮はG・マック・ブラウン&チャック・ビンダー、撮影はデヴィッド・ワトキン、編集はトム・スウォータウト、美術はメル・ボーン、衣装はドナ・グラナタ、音楽はハワード・ショア。
主演はシャロン・ストーン、共演はジェレミー・ノーサム、ジョージ・C・スコット、キャシー・モリアーティー、ジーン=ルーク・フィゲロア、マイク・スター、サリタ・チョードハリー、ミリアム・コロン、ボビー・カナヴェイル、ボニー・ベデリア、バリー・マカヴォイ、ドン・エリオット、ジェリー・ディーン、トニー・ディベネデット、テディ・アトラス、デシリー・カサド、ダヴェニア・マクファッデン他。


ジョン・カサヴェテスが撮った1980年の同名映画をリメイクした作品。グロリアをシャロン・ストーン、ケヴィンをジェレミー・ノーサム、ルビーをジョージ・C・スコット、ダイアンをキャシー・モリアーティー、ニッキーをジーン=ルーク・フィゲロアが演じている。

序盤の家族殺害シーン、妻や老婆が射殺された後、奥の部屋にいる幼い娘も殺される。だが、「残酷だから」という配慮なのか、射殺シーンは画面に写さない。中途半端に、観客に優しい映画にしているわけだ。
それが効果的に作用しているならともかく、ただヤワなだけ。
この段階で演出にヌルさを感じてしまうのは、いけないことだろうか。

オリジナル版はリュック・ベッソン監督作品『レオン』の元ネタのような作品で、主演は「いかにもオバサン」なジーナ・ローランズだった。
それに対してリメイク版の主演はシャロン・ストーン。
彼女はセクシーさを売りにして成り上がって来た女優だ。少なくとも、「ダサいオバサン」というイメージは皆無だ(年齢的にはオバサンでもおかしくないのだが)。

この映画でも、シャロン・ストーンはセクシーさをアピールする。
のっけから、「入所した時と同じ服で出なければいけない」ということで、胸の部分が開き、大きくスリットの入った衣装を着用する。最初からセクシーに決めているのだから、「最初は冴えなかったヒロインが次第に魅力的になっていく」という変身の面白さは期待できない。

ケヴィンに会いに行ったグロリアは、2人きりになった途端、「一度も会いに来なかった」と怒りをぶちまけ、感情的になる。
この段階で、既にグロリアがカッコ良くない。
不敵に笑みでも浮かべ、静かに相手をコキ下ろした方が、怖いし、凄みも出るだろう。

この映画、ヒロインがカッコ良く見えるかどうかが生命線だと思う。それを考えると、ケヴィンとの関係の設定や、見せ方からして上手くないと思う。まず、悪党としてはチンケにしか見えないケヴィンの恋人だったという段階で、かなりのマイナスだ。
さらには、ケヴィンに怒鳴り付けるシーンで、やたらキーキーと怒鳴りまくったり、「約束したんだから金をちょうだい」と急に泣き出したりする。序盤の描写によって、“パワフルでタフな女”というより、“ヒステリックなバカ女”というイメージを与えてしまう。

グロリアがニッキーを連れ出すシーンでも、ちっとも強そうに見えない。そうではなく、ケヴィンに裏切られてトチ狂ってしまった、という印象を受ける。では、「逃避行の中で強くなっていく」という変身を見せるのかというと、そういうわけでもない。
どうやら、グロリアの人間的な弱さとか、ニッキーに向ける母性とか、心理的なドラマを肉厚にしようという意識が見え隠れする。しかし、やたらと感情表現を出すことが、ヒロインの強さやタフさを打ち消すことに繋がっている。

そもそも、製作サイドは主演がシャロン・ストーンだということを忘れてはいないだろうか。シャロン・ストーンは残念ながら、芝居の上手さで高く評価されてきた女優ではない。だったら、それを逆手に取って、芝居を極力させないようにすればいい。
つまり、ほとんど表情を変えず、無機質な姿を示すのだ。そして、それを「クールな人物」として見せるのだ。シュワルツェネッガーが『ターミネーター』で見せたのと同じようなやり方だ。ただし、それで映画が傑作になるのかと問われると、正直に言って自信は無い。

さて、全く可愛らしさの無い子役俳優を連れて逃げ出したグロリアだが、なぜかジャック達が殺されたアパート近くで呑気にピザを食わせている。しかも、ケヴィンの一味を目撃したのに、すぐに遠くへ逃げず、近くにある公衆電話を使っている。
とりあえず、マニーがいるというダウンタウンまで行ってから、電話を掛ければいいんじゃねえの。

一方のケヴィン達も、かなりノンビリしている。マンションに留まって、何やらウダウダと喋っているのである。そんな暇があったら、さっさとグロリアを探しに行けばいいのに。さらには、マニーの部屋でグロリア達を待ち伏せすることは無いというバカっぷり。
ケヴィン達がチンタラしているから、グロリア達が追われているという緊張感が生まれない。クライマックスになるべき辺りでも、アクションがあるわけでもなく、これっぽっちも盛り上がらない。悪党どもは、のうのうと生き残ってるし。ショボショボのままでエンド。


第20回ゴールデン・ラズベリー賞

ノミネート:最低主演女優賞[シャロン・ストーン]


第22回スティンカーズ最悪映画賞

ノミネート:【最悪の主演女優】部門[シャロン・ストーン]
<*『グロリア』『ハリウッド・ミューズ』の2作での受賞>
ノミネート:【最悪の子役】部門[ジーン=ルーク・フィゲロア]
ノミネート:【最悪のリメイク】部門
ノミネート:【誰も要求していなかったリメイク・続編・前編】部門
ノミネート:【最悪のインチキな言葉づかい】部門[シャロン・ストーン]
ノミネート:【最悪のヘアスタイル(女性)】部門[シャロン・ストーン]
<*『グロリア』『ハリウッド・ミューズ』の2作での受賞>

 

*ポンコツ映画愛護協会