『ゴーストライダー2』:2011、アメリカ

東ヨーロッパ。僧侶のモローは修道院を訪れ、ベネディクト修道士に「奴らが気付いたといううのは本当か」と確認した。修道院は要塞のようにハイテク設備が備わっており、ベネディクトは警備体制に自信を見せる。モローは「悪魔が彼を狙っている。聖域に行けば安全だ。ゴーストライダーに任せよう」と提案するが、ベネディクトは軽く聞き流した。その直後、修道院は武装した部隊の襲撃を受けた。
モローはダニー少年と母親のナディアを見つけ、「助けに来た」と叫ぶ。しかしナディアは無視し、ダニーを車に乗せて逃亡する。すぐにモローはバイクで後を追い、敵のレイ・キャリガンも車で追跡する。モローはバイクを撃たれるが、反撃してキャリガンの車を横転させた。彼はゴーストライダーであるジョニー・ブレイズの元へ行き、助けを求めた。拒絶する態度を示すジョニーにダニーの写真を見せたモローは、「この少年が危険なんだ。君に呪いを掛けた男が、彼と君を繋ぐ。我々の教会は、君の望みを叶えられる。少年を見つけ出せば、呪いを解く」と告げた。
ナディアはダニーと協力し、中年男性の財布を盗み取った。2人は車に戻るが、キャリガンたちに尾行されていることには気付かなかった。襲撃を受けたナディアは、追っ手が元恋人のキャリガンだと知った。キャリガンがナディアを殺そうとしたところへ、ゴーストライダーが駆け付けた。しかしキャリガンはゴーストライダーに発砲して吹き飛ばし、ダニーを連れて逃亡した。病院で目を覚ましたジョニーは警察が来ていることを知り、怪我の痛みに耐えながら病室を抜け出した。ナディアを発見したジョニーは、後を追った。
キャリガンはロアークに電話を掛け、報酬の上乗せを要求した。キャリガンの報告でゴーストライダーの出現を知ったロアークは、ダニーを電話に出すよう要求した。ダニーが電話に出ると、ロアークは謎の呪文を囁いた。途端にダニーが絶叫し、気を失って倒れた。「何をしたんだ?」と尋ねるキャリガンに、ロアークは「その子は一種のコンピュータだ。あるプログラムを入れた。ファイヤーウォールだよ。バイク男は、もう彼を感知できない」と告げた。
ナディアはジョニーの尾行に気付き、拳銃を突き付けて「誰の指示?」と尋問する。ジョニーがダニーを見つけようとしていることを告げると、ナディアは「昨晩は私たちを追跡してきた。同じことが出来る?」と訊く。ジョニーは「今は感知できなくなった。死んではいないが、ブロックされている」と話す。2人はレッカー車を盗み、ダニーの行方を捜す。ナディアはジョニーに、キャリガンが武器や麻薬を密売していること、彼から逃げ出そうとしていたことを語った。
ナディアはキャリガンと揉めた時、3階から飛び降りた。瀕死の状態に陥った時、ロアークが現れて取り引きを持ち掛けた命を救う見返りとして、彼は息子を差し出すよう要求した。ナディアは取り引きを了承し、契約を交わした。その話を聞いたジョニーは、モローがダニーを捜していた理由を理解した。そのダニーはキャリガンたちに抵抗し、車を横転させた。ダニーは逃亡を図るが、すぐに捕まった。一味は近くにいたカップルを殺害し、車を奪った。
ジョニーはゴーストライダーの出現を予感し、ナディアに「急ごう。ゴーストライダーかが現れたら、どんな相手も破壊する。君だって例外じゃない」と告げた。2人はキャリガンが仕切っている地下闘技場へ潜入し、一味が武器の取り引きで採石場へ行ったという情報を得た。ナディアは倉庫に繋がれていたダニーを救出し、ゴーストライダーはキャリガン一味を襲った。ゴーストライダーが敵を圧倒している間に、ナディアはダニーを車に乗せて逃亡する。ゴーストライダーはナディアを追い掛けて殺そうとするが、ダニーが別人のような声で「もう充分だ。彼女を放せ」と命じると、ジョニーの姿に戻った。
ジョニーはモローと連絡を取った後、ナディアとダニーを連れて聖域へ向かう。ロアークは瀕死のキャリガンを見つけ、触れた物を全て腐敗させる能力を与えた。キャリガンは闇の力を持つ怪人「ブラックアウト」として復活し、救急車を奪ってダニーを追う。ジョニーたちはモローと合流して聖域を目指すが、その後をキャリガンが追っていた。ジョニーたちは聖域に到着し、神徒のメソディウスたちに会う。モローはナディアとダニーを神徒たちに任せ、ジョニーを洞窟へ案内した。
ジョニーはモローから、自分の体内に潜む悪魔のことを聞かされる。それはザラゾスという名の悪魔で、元々は天使だった。ザラドスは罠に陥れられて堕天使となり、地獄に落ちた。狂気にかられたザラゾスは、「人間を救う」という使命を「罪人を全て処刑する」という欲望に変貌させて復讐の精霊になったのだとモローは説明した。ジョニーはモローに、「俺は父のためでなく、自分のために契約した。父を失いたくなかったんだ」と告白した。
ジョニーは洞窟の一室に入り、意識を失った。目を覚ました彼は、呪いが解けていることを感じ取った。モローを呼びながら外へ出た彼は、神徒たちがダニーを殺そうとしていることを知った。止めようとしたモローとナディアは取り押さえられ、駆け付けたジョニーも捕まるモローが「危機が去るまでと言ったはずだ」と訴えると、メソディウスは「その子がいる限り、危機は去らない。彼の中に力が宿っている。彼を抹殺しなければならない」と冷徹に告げた。
メソディウスはジョニーたちを閉じ込め、ダニーを殺害しようとする。そこへキャリガンが現れて神徒たちを軽く始末し、ダニーを拉致して逃亡した。脱出したジョニーたちは、腐敗した神徒たちの遺体を発見した。モローはジョニーに「ロアークは何を計画している?」と訊かれ、「ロアークはダニーが自分の器だと気付いた。自分の力を彼に転移するのだ」と語る。その予言が冬至の夜明けに起きることを聞いたジョニーは「まだ時間はある」と言い、ダニーを救出するためにロアークのいるトルコへ向かう…。

監督はネヴェルダイン&テイラー、原案はデヴィッド・S・ゴイヤー、脚本はスコット・M・ギンプル&セス・ホフマン&デヴィッド・S・ゴイヤー、製作はスティーヴン・ポール&アショク・アムリトラジ&マイケル・デ・ルーカ&アヴィ・アラッド&アリ・アラッド、共同製作はマヌー・ガルジ、製作協力はトム・コーエン、製作総指揮はE・ベネット・ウォルシュ&デヴィッド・S・ゴイヤー&スタン・リー&マーク・スティーヴン・ジョンソン、撮影はブランドン・トロスト、編集はブライアン・バーダン、美術はケヴィン・フィップス、衣装はボヤナ・ニキトヴィッチ、視覚効果監修はエリック・ダースト、音楽はデヴィッド・サーディー。
出演はニコラス・ケイジ、キアラン・ハインズ、イドリス・エルバ、ヴィオランテ・プラシド、ファーガス・リオーダン、ジョニー・ホイットワース、クリストファー・ランバート、クリスチャン・イアコブ、ジェイ・ステファン、イオヌット・クリスチャン・レフター、ウィル・アッシュクロフト、サブリナ・ブランデュース、トビアス・オジャーフォーク、アディナ・ガルーパ、エイリン・パンク他。


マーベル・コミックの人気キャラを映画化した2007年の映画『ゴーストライダー』の続編。
前作では製作総指揮だけだったデヴィッド・S・ゴイヤーが、今回は原案と共同脚本にも携わっている。
監督は『アドレナリン』『GAMER』のネヴェルダイン&テイラー。
前作から続投しているキャストは、ジョニー役のニコラス・ケイジのみ。ロアークをキアラン・ハインズ、モローをイドリス・エルバ、ナディアをヴィオランテ・プラシド、ダニーをファーガス・リオーダン、キャリガンをジョニー・ホイットワース、メソディウスをクリストファー・ランバートが演じている。

続編ではあるのだが、物語としては「繋がっているような、繋がっていないような」という微妙な中身になっている。
例えば、ジョニーが悪魔と契約を交わした時の状況も微妙に異なる。
前作ではメフィストが書類を用意してジョニーの指から血を垂らさせ、それが署名になるという形だった。ジョニーは「父親の病気を治すために何でもする」と言っただけで、「魂を貰う」という契約を承諾した上で能動的に署名したわけではない。
しかし本作品では、ジョニーが自ら契約書に血を垂らして署名したことになっている。
後半、ジョニーは「俺は父のためでなく、自分のために契約した。父を失いたくなかったんだ」と告白しており、父親と一緒にいたいから悪魔と契約を交わしたのだと言っている。
だけど、前作でジョニーは恋人のロクサーヌと駆け落ちの約束を交わしており、父親との仲もそんなに良くなかった。
そこも設定を変更したってことなんだろう。ロクサーヌの存在も、完全に無かったことにされているし。

ジョニーが契約を交わした相手がメフィストから「ロアーク」なる相手になっているのも、大きな変更点だ。
悪魔は幾つもの名前を持つということが劇中でも説明されているけど、前作でメフィストと契約を交わしたジョニー本人が、今回は契約を交わした相手を「ロアーク」と言っているんだよな。
しかも演じている役者がピーター・フォンダからキアラン・ハインズに交代しているし。
ロアークとメフィストが同一人物(人じゃないけど)ってことは、言われなきゃ分からない。

配役変更に関しては「悪魔は地上で行動する時に人間の体を借りている」という設定だから、借りる体を取り替えたと解釈すれば成立する。
とは言え、それは先に配役変更があって、それに合わせるために持ち込んだ設定だろうし、やはりピーター・フォンダを続投させた方が良かったんじゃないかとは思うけどね。
前作はジョニーが「メフィストを倒す」と決意したまま終わっているのに、倒す相手の見た目が変わるってのは、どう考えたって得策ではないわけで。
それと、その配役変更を受け入れるとしても、なんでロアークがメフィストだってことを序盤でキッチリと説明しなかったのか、っていうかメフィストからロアークに名称を変更したのは何故なのか、その理由が分からん。
無駄に話を分かりにくくしているだけじゃないのかと。

どうやら製作サイドは、前作の評判が悪かったことを気にしていたようだ(まあ当然っちゃあ当然だろうが)。
だから前作から色々と変更したらしい。
ただ、前作からの繋がりを中途半端にいじって整合性を無くしちゃうのではなくて、前作との繋がりをキッチリと持たせたままで面白い内容にするってことも、その気になれば不可能じゃなかったと思うんだよな。
前作との繋がりをいじるってのは、すげえ安易な方法であり、手抜きしているようにも感じるんだよな。

序盤で引っ掛かるのが、「ジョニーがゴーストライダーの呪いを解いてほしいと思っている」という設定。
でも前作の最後で、ジョニーは「ゴーストライダーとしての呪いを背負い、この力でメフィストを倒す」と誓っていたはずでしょ。
まだメフィストを倒す誓いも果たしていない中で、なんでゴーストライダーを辞めたがっているのかと。
辞めたらメフィストを倒す力も失うのに、それはいいのかよ。
そこも、ひょっとして「前作とは設定が変更されている」ってことなのか。

もう1つ引っ掛かるのが、「ジョニーがゴーストライダーの出現を抑え切れず、いつ出て来るかも分かっていない」ということ。
だけど前作の後半、ジョニーは自動的にゴーストライダーに変身するのではなく、自分の意思で変身できるようになっていた。
そして、自分の意思で元の姿に戻ることも出来るようになっていた。コントロールできるようになっていたのだ。
そこも前作とは設定が変更されているということなのか。
もうさ、勝手な都合で変更されているトコと踏襲しているトコが混じり合っていて、ややこしいわ。

ゴーストライダーの登場シーンは、彼をカッコ良く見せるってのが必要不可欠なはずだ。
つまり、そこは「圧倒的な強さで敵を蹴散らして大活躍」ってのを絶対にアピールすべき箇所だ。
それなのに、ゴーストライダーはキャリガンの発砲を受けて吹き飛ばされ、ダニーを連れ去られるというマヌケっぷりをさらしてしまう。
しかも相手は特殊能力を持った地獄からの使者でもなんでもなく、単なるチンピラなのに。
前作で特殊能力を持つ悪魔を軽く撃退したゴーストライダーが、なんでチンピラごときの発砲で大ダメージを受けているんだよ。

そこでダニーを連れ去ってもらわないと、「見つけ出すために追い掛ける」という展開に移行できないってのは分かる。
だけど、そういう展開にしたいのなら、「キャリガンはダニーを連れて逃亡し、残されたナディアを手下が殺そうとしたら、そこにゴーストライダーが現れて彼女を救う」という展開にでもしたら良かったんじゃないのか。
そうすれば、「ゴーストライダーを活躍させる」「連れ去られたダニーを追い掛ける」という両方を成立させることが出来るでしょうに。

ロアークはダニーに謎の呪文を囁き、「その子は一種のコンピュータだ。あるプログラムを入れた。ファイヤーウォールだよ。バイク男は、もう彼を感知できない」とキャリガンに告げている。
ところが、続けて彼は「もちろん君たちは違う。だから動き続けた方がいいぞ」と言う。
いやいや、ちょっと待てよ。キャリガン一味はダニーをロアークに引き渡すまで、一緒に行動する必要があるんだぞ。
ってことは、ゴーストライダーはキャリガン一味の居場所を突き止めれば、ダニーを見つけることが出来るわけで。
「君たちは違う。だから動き続けた方がいい」と言ってるけど、だったらダニーを感知できなくしても、あまり意味が無いだろ。

ダニーはキャリガンたちの隙を見て、鋭い顔付きで車のハンドルを操作し、自分はシートベルトを着用して準備を整え、横転した車から這い出す。
でも、そこでダニーに「冷静な判断力」とか「大胆不適な行動力」とか、そういうクールで大人びたキャラを付けるのは、どう考えたって得策ではない。そんな様子を見せてしまったら、「ジョニーとナディアが守ってあげるべき対象」としてのイメージが無駄に薄くなるでしょ。
そうじゃなくて、全面的に「保護してあげなきゃダメだ」と思わせる、か弱き子供として見せておくべきだよ。そんで、終盤になって「実は違いました」という転換に移るべきだよ。
そこでクールで大胆な逃亡劇を見せても、すぐに捕まっちゃうから、その行動は全く意味が無いんだし。

ダニーの見せ方では、ゴーストライダーがナディアを殺そうとした時の描写にも違和感がある。
冷静な表情で「もう充分だ。彼女を放せ」と命じるのはいいけど、その後で「再び子供らしい表情に戻る」という手順を踏ませた方がいい。
そうじゃないと、「ダニーの中にいる誰か」ではなく、ダニー本人の行動ってことになるでしょ。
序盤を過ぎると、ずっとダニーを「子供っぽさに欠ける少年」として描いているんだけど、それだと彼を守ってあげたいとは思えないぞ。
そのくせ、聖域へ向かう途中でジョニーと喋るシーンでは、急に子供っぽい質問をしたり、バイクに乗せてもらって子供っぽい笑みを浮かべたりするんだよな。
だけど、思い出したように見せるんじゃなくて、そういう態度をベースにすべきだよ。

キャリガンはロアークから触れる物を全て腐敗させる力を与えられ、救急車を奪ってダニーを追う。
でも、触れる物が全て腐敗するのならどうやって救急車を運転するのか。ハンドルも触れないだろうに。
それと、「救急車の中でサンドウィッチやリンゴを食べようとしたら腐って食べられない」という描写があるのだが、袋に入ったパンだけは腐らずに食べられている。
なんで袋は腐らないんだよ。
あと、彼が聖域に現れた時に周囲が真っ暗になったり、ゴーストライダーと戦う時も同様の現象が起きたりするんだけど、それが「周囲の光を奪って暗闇を作り出す」というブラックアウトの特殊能力であることが全く説明されていないから、ワケが分からんぞ。

発砲で吹き飛ばされるというゴーストライダーの登場シーンは情けないのだが、それ以降も彼の敵はキャリガン一味だ。黒幕はロアークという悪魔だけど、ゴーストライダーと交戦するのは普通の銃火器で武装した人間たちだ。
繰り返しになるけど、前作でゴーストライダーは悪魔を倒している。それなのに、今さらチンケなチンピラたちが銃火器で立ち向かっても、敵うはずがない。
それならそれで、悪魔の力を持つ敵が登場するまでは「圧倒的な強さでゴーストライダーが敵を叩きのめす」という、スティーヴン・セガール的な見せ方をしていけばいい。
それなのに登場シーンで発砲を受けて吹き飛ばされるという情けない姿を描くから、中途半端になっちゃうのよ。

あと、特殊能力を会得したキャリガンも、ラスボスであるロアークも、まるで歯応えが無い敵から、最後まで強敵が存在しないんだよな。
ロアークは「既に衰えている」ってことだから、そもそもゴーストライダーとマトモに戦おうともしておらず、ただダニーを連れて逃げ出しているだけだし。
っていうか、もはやダニーに悪魔の力を移す儀式に失敗した後だから、彼を連れて行く意味が無いだろうに。

(観賞日:2014年10月8日)


第33回ゴールデン・ラズベリー賞(2012年)

ノミネート:最低主演男優賞[ニコラス・ケイジ]
<*『ゴーストライダー2』『ハングリー・ラビット』の2作でのノミネート>
ノミネート:最低序章・リメイク・盗作・続編賞

 

*ポンコツ映画愛護協会