『ゲッティング・イーブン』:1994、アメリカ

レイ・グリーソンは仲間のボビーとカールと共に、150万ドル相当のコインを盗み出す計画を立てた。そこへ妹キティが現れ、結婚して新婚旅行に出かけると告げて、レイと亡くなった妻の間に生まれた11歳の息子ティミーを置いて立ち去ってしまう。
レイと仲間は計画通りコインを盗み出すことに成功し、住んでいるアパートの屋上にコインの入ったバッグを隠す。しかし、ティミーがバッグを別の場所に隠してしまい、返して欲しかったら1週間は自分の言うことを聞くように要求してくる。
ティミーの要求に応じたレイは、彼の遊びに付き合わされることになった。そんな2人に、警察の実習生テレサが接近する。一方、レイに内緒でコインを探し始めたボビーとカールは、警察に捕まってしまう。そしてレイとティミーは、警察にマークされることになる…。

監督はハワード・ドイッチ、脚本はトム・S・パーカー&ジム・ジェニウェイン、製作はケイティ・ジェイコブス&ピアース・ガードナー、製作協力はトム・S・パーカー&ジム・ジェニウェイン&エレナ・スピオッタ、製作総指揮はリチャード・ハシモト、撮影はティム・サーステッド、編集はリチャード・ハルシー、美術はヴァージニア・L・ランドルフ、衣装はルディ・ディロン、音楽はマイルズ・グッドマン。
出演はマコーレー・カルキン、テッド・ダンソン、グレン・ヘドリー、ソール・ルビネック、ゲイラード・サーテイン、サム・マクマレイ、ヘクター・エリゾンド、キャスリーン・ウィルホイト、シドニー・ウォーカー、ロン・カナダ、ダン・フロレック、ラルフ・ペデュート、バート・キニョン、メルヴィン・トンプソン、ダニー・ハンター、スザンヌ・ライム、メアリー・ディルツ、スコット・ビーチ他。


恵まれない環境に育った小生意気なガキが、間の抜けた悪党を振り回す物語。
『ホーム・アローン』でマコーレー・カルキン坊やが作り上げたイメージを思いっきり利用して、安易に受けを狙っていることが非常に分かりやすい作品。

ガキに大人が振り回されるといっても、せいぜい遊びに付き合わされる程度。
だから、軽妙なドタバタ喜劇は成立しない。
後半に入ると物語は親子ドラマへとシフトしていくが、そこに笑いは無い。
どうやらボビー&カールに笑いを任せているようだが、たまに登場する彼らはノンビリした空気を漂わせるだけに終わっている。

レイ達がティミーに脅迫された後は、水族館や野球場などで遊ぶシーンが続く。
レイ達がガキの遊びに付き合わされる様子を、ずっと見せられる。
それだけで、いったい観客は何を楽しめばいいんだろうか。
楽しいのはティミーだけだろう。

ノンビリとした時間が、何となく過ぎて行く。
その中で、たまに分かりやすいギャグが取って付けたように挿入される。
しかし、それらのギャグで笑うのは、無人島で1年ほど暮らして笑いにすっかり飢えてしまった人でもない限り、かなり難しいことだろう。

父レイの前に現れたティミーは、いきなり同情を誘うような態度を見せる。
その態度には、どこか計算高さを感じる。
それは、演じているのがカルキン坊やだから、という理由だけではないだろう。
その後にはコインを奪って父と仲間を脅すのだから、やっぱりティミーは計算高い性格だという設定のあるキャラクターなのだ。

ティミーは可愛げが無く、腹立たしいセリフをクールに吐いてレイ達を脅迫する。
そんなクソッタレなガキに共感するのは、とてもじゃないが無理な話だ。
強盗をやらかしたレイよりも、ティミーの方が遥かに根性の汚いワルに見える。

この作品をハートフル・コメディーとして考えるにしても、コメディーの部分だけでなく、ハートフルの部分もヘナヘナになっている。
ハートフルへの傾きが強すぎることが、逆にハートフルな部分をダメにしている。
というか、これは「カルキン坊やの主演作」というだけで終わっている。

ティミーは妙におとなしく、弾けた感じが弱い。
悪知恵の働くガキの狡猾さばかりが目立つ。
ガキの計算高さが前に出すぎているから、後半の親子ドラマも「ティミーがレイの気持ちを巧みに操作している」と感じられ、素直な感動劇にならない。

この作品は、「カルキン坊やは可愛い」という意識が重要だ。
それが最初に無いと、とても成立しないような映画だ。
しかし、既にカルキン坊やはリッチマンになり、この作品でも多額のギャラを受け取り、「可愛い子役」から「鼻に付くガキ」への変身を開始していたのだ。


第15回ゴールデン・ラズベリー賞

ノミネート:最低主演男優賞[マコーレー・カルキン]
<*『ゲッティング・イーブン』『ページマスター』『リッチー・リッチ』の3作でのノミネート>


第17回スティンカーズ最悪映画賞

ノミネート:【最悪の男優】部門[マコーレー・カルキン]
<*『ゲッティング・イーブン』『ページマスター』『リッチー・リッチ』の3作でのノミネート>

 

*ポンコツ映画愛護協会