『エグゼクティブ・デシジョン』:1996、アメリカ
アメリカ陸軍テロ対策特殊部隊を率いるトラビス中佐は、エル・サイド・ヤファヤファ率いるチェチェン・マフィアに盗まれたビエト製神経ガスDZ−5の奪回作戦を決行する。奪回作戦の計画立案者は、陸軍情報部顧問のグラント博士。しかし、その奪回作戦は失敗に終わってしまう。
3か月後、ヤファはイギリスで逮捕される。しかし、彼の右腕であったナジ・ハッサン達がワシントンD.C.行きの747型ジャンボジェット機をハイジャックし、ヤファの釈放を要求してくる。アメリカ政府は危機対処委員会を開く。そこにはグラント博士やトラビス中佐の姿もあった。
グラントは彼らの目的がヤファ釈放ではなく、毒ガスによるワシントン攻撃だと推測するが、危機対処委員会はその意見を無視。トラビスは新開発された空中輸送機リモーラF117Xを上空で接続させ、特殊部隊のメンバーを送り込むという作戦を提案。実行に移されることになった。
トラビスはメンバーとして、特殊部隊の他に輸送機の設計技師であるケイヒル、そしてグラントを選ぶ。輸送機はジェット機との接続に成功し、特殊部隊やグラント達はジェット機に乗り込んでいく。だが激しい乱気流が発生し、トラビスが輸送機に取り残される。
トラビスはグラントに後のことを頼み、輸送機を切り離す。輸送機は爆発し、地上との通信は不可能になった。輸送機がレーダーから消えたことで、国防総省は全員が死亡したものと考える。アメリカに迫る747機に対し、ついに海軍戦闘機による撃墜命令が下された…。監督はトム・デイ、原作はブラッド・アンダーソン&フィル・リーミング、脚本はティム・ラスムッセン&ヴィンス・ディ・メッリオ、製作はジョン・デイヴィス、製作総指揮はアーノン・ミルチャン&タリク・ジャリル&ジェフリー・ストット&デレク・ドーチー、撮影はグレッグ・ガーディナー、美術はサンディー・コクラン、編集はドン・ジマーマン、衣装はカレン・マシューズ、音楽はクリストファー・レナーツ、音楽監修はデイヴ・ジョーダン&ジョジョ・ヴィリャヌエヴァ。
声の出演はオーウェン・ウィルソン、エマ・ストーン、ジョージ・ロペス、クリストファー・ミンツ=プラッセ、スティーヴ・クーガン、ファーギー、キーファー・サザーランド、デイモン・ウェイアンズJr.、マーロン・ウェイアンズ、サム・エリオット他。 出演は監督はスチュアート・ベアード、脚本はジム・トーマス&ジョン・トーマス、製作はジョエル・シルヴァー&ジム・トーマス&ジョン・トーマス、共同製作はカリン・フィールズ、製作総指揮はスティーブ・ペリー、撮影はアレックス・トムソン、編集はダラス・プエット&フランク・J・アリオステ&スチュアート・ベアード、美術はテレンス・マーシュ、衣装はルイーズ・フロッグリー、音楽はジェリー・ゴールドスミス。
主演はカート・ラッセル、共演はスティーヴン・セガール、ハル・ベリー、ジョン・レグイザモ、オリバー・プラット、J・T・ウォルシュ、ジョー・モートン、デヴィッド・スーシェ、B・D・ウォン他。
カート・ラッセル主演の航空アクション映画。
『エグゼクティブ・デシジョン』という言いにくい原題を、そのまま使った日本の配給会社のセンスが正しいのかどうかは分からない。
ちなみに“エグゼクティブ・デシジョン”とは、「大統領の決定」という意味である。スティーヴン・セガール演じるトラビスはメインキャラクターのように登場しながら、前半で死亡する。
これには意表を突かれるが、作品としての面白味に繋がっているわけではない。
むしろ彼が早く消えたことにより、物語を引っ張ると思われたトラビスとグラントの対立関係が全く生かされなくなっている。爆弾処理の専門家が都合良く気絶したり、また都合良く復活したり、なぜかグラントがジャンボジェット機を操縦できたり、かなり御都合主義の展開が多く見られる。
前述したトラビスとグラントの対立関係や、釈放が決まったヤファの存在など、伏線らしきポイントはほとんど使われない。
わざわざハッサンが英語で「ワシントンD.C.」とメモしていたり、実戦経験の無いグラントを一歩間違えば相手に気付かれる危険な任務に就かせたり、かなり不自然な場面が幾つかある。
そんなわけで、それほどリアリティーがあるわけではない。グラントが終盤に来ていきなり勝手な行動を取り、それによって危機的状況が生まれるのだが、彼が無鉄砲な行動に出た理由は不明。
ちなみにハッサンを演じるのは、『名探偵ポワロ』のデヴィッド・スーシェ。
様々な映画のオイシイ部分を寄せ集めたような感じで、特に目新しい要素があるわけではない。
しかし、起爆装置を持った犯人探し、爆弾解除、時間との戦いなどの要素を上手く絡め、テンポの良いアクションを展開している。
すぐに忘れてしまうタイプの映画だが、一時の娯楽としては合格点だろう。
第17回ゴールデン・ラズベリー賞(1996年)
ノミネート:最低助演男優賞[スティーヴン・セガール]